住宅ローンの審査金利とは?審査に落ちないために知っておきたいポイント
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「住宅ローンの審査には『審査金利』が影響すると聞いたけど、審査金利って何?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか?
審査金利とは金融機関が住宅ローン審査を行う際に、借入限度額の計算に使用する金利のことです。
審査金利は通常の適用金利より高めに設定されているため、借入金額によっては審査に落ちる可能性もあります。
こう聞くと審査金利に不安を感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、過度に怖がる必要はありません。
なぜなら大切なのは審査金利ではなく、無理のない借入金額で審査に通過することだからです。
当記事では審査金利について詳しく解説しているので、「審査に通るか不安」という人や、「いくらまでなら借りられるのか気になる」という人は、ぜひ参考になさってくださいね。
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審査金利は住宅ローン審査の際に使われる金利
冒頭でも軽く触れたように審査金利とは、一部の民間金融機関において住宅ローン審査で使用されている金利のことです。
多くの金融機関では住宅ローン利用者の年収にあわせた借入限度額が設定されており、無理な借り入れはできないように制限されています。
この借入限度額を計算する際に、適用金利(=貸出金利)で計算する金融機関と、審査金利で計算する金融機関の2種類があるのです。
審査金利データの出典:「2019年度民間住宅ローン貸出動向調査」より
→21.審査の所要期間、審査事務に関する事項 審査金利の適用(P33)を参照(住宅金融支援機構)
住宅金融支援機構の調査によれば、審査時に審査金利を採用している金融機関は全体のうち4割となっています。
内訳が知りたいところですが、金融機関ごとの審査金利の適用有無は非公開となっています。
したがって、金融機関が利用者の借入希望額をどのように審査しているのか、基準を事前に調べる方法はありません。
つまり審査に通るためには、審査金利の有無に関係なく無理のない借入金額に設定し、適切な対策を取るしかないのです。
審査金利は3~4%程度に設定されることが多い
住宅ローンの審査で一部の金融機関が使用している審査金利は、3~4%に設定されていることが多いです。
2024年の住宅ローン金利相場が1%前後という点を踏まえると、かなり高めに設定されていることがわかりますよね。
ここでは下記のポイントについて触れていきます。
いずれも住宅ローン審査において重要なポイントですので、しっかりチェックしておきましょう。
審査金利が高めに設定されている理由
現在の住宅ローン市場は競争が激しく、金融機関独自のさまざまな割引が実施されています。
特に多い割引内容が「基準金利は2.475%、適用金利は0.6%~1%」という、変動金利タイプや当初固定金利タイプを対象としたキャンペーンです。
この場合、金利割引によって借り入れ時点の適用金利はかなり低いですが、元々の金利は2.475%。
もし将来的に金利が上昇し、金利割引期間も終われば、適用金利は簡単に跳ね上がります。
適用金利が上がって返済額の負担が重くなれば、当然住宅ローンの破綻リスクは高くなります。
つまり金融機関はこうした破綻リスクを警戒し、高めの審査金利を設定して借入限度額を厳しく審査しているのです。
したがって金利上昇リスクがない全期間固定金利では、審査金利が使用されることはありません。
審査金利が使われるのは変動金利や当初固定金利など、金利変動リスクのある金利タイプに限られています。
借入限度額の目安は返済負担率25%~35%以内
借入限度額の目安は年収や金融機関によって異なりますが、返済負担率25~35%以内であることが多いです。
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合を指します。
ここでは返済負担率を35%と仮定し、審査金利と適用金利(貸出金利)でそれぞれの借入限度額がどのように変化するのかを比較しました。
以下表をご覧ください。
年収 | 借入限度額 (審査金利3%適用) | 借入限度額 (適用金利0.6%適用) |
---|---|---|
400万円 | 約3,030万円 | 約4,420万円 |
500万円 | 約3,790万円 | 約5,520万円 |
600万円 | 約4,550万円 | 約6,630万円 |
※返済期間35年、元利均等返済方式、返済負担率35%、他の借入れは一切なしの場合。
※住宅保証機構株式会社の住宅ローンシミュレーションを使用して算出。
上記のように審査金利3%と適用金利0.6%では、借入限度額に1,000万~2,000万円も差が出ます。
「審査金利は厳しい」と思うかもしれませんが、審査金利によって算出された借入限度額は、返済負担から考えると妥当な金額であるケースが多いです。
例えば年収500万円で借入限度額3,790万円の場合、年間返済額は約118万円(適用金利0.6%で算出)です。
年収500万円の手取り年収は390万円程度なので、手取り年収のうち30%を住宅ローン返済にあてる計算になります。
月々の返済額を手取り収入の30%までに抑えることは、現実的な借入額と言えます。
住宅ローンの返済を無理なく進めていくためにも、「審査金利でも支障のない借入限度額に設定すること」が重要でしょう。
借入限度額ギリギリまで借りると返済負担が大きいので注意
「借入限度額」というのはあくまで「金融機関で借りられる上限額」です。
したがって借入限度額ギリギリまで借入するのではなく、限度額の範囲内でゆとりを持って返済できる金額に設定しましょう。
ゆとりを持って住宅ローンを返済できる金額の目安は、手取り年収の25%以内です。
ここでは適用金利0.6%で住宅ローンを借りる際、ゆとりを持って返済できる借入限度額の目安を年収別にまとめました。
年収 (手取り年収) | 月々の返済額 | 借入限度額 |
---|---|---|
年収400万円 (約310万円) | 約6.5万円 | 約2,450万円 |
年収500万円 (約390万円) | 約8.1万円 | 約3,077万円 |
年収600万円 (約457万円) | 約9.5万円 | 約3,605万円 |
※手取り年収は概算値。実際の金額は個々の所得控除などにより異なる。
※月々の返済額は「手取り年収×25%÷12か月」で計算
※適用金利年0.6%、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス払いなしの場合。
※フラット35 毎月の返済額から借入可能金額を計算の住宅ローンシミュレーションを使用して算出。
持ち家の維持には固定資産税や火災保険料などの諸費用がかかります。
そのため住宅ローン返済額は手取りの25%までに抑え、審査金利の借入限度額よりも少ない金額で借入するようにしてください。
これだけで審査にも通りやすく、無理のない返済プランになりますよ。
審査前にチェックしておくべきポイント
借入金額のほか、審査前にチェックしておくべきポイントを簡単に解説していきます。
審査前で特に気をつけるべきポイントは、以下の5点です。
注意点と対策
それぞれの対策とあわせて、わかりやすく解説していきましょう。
より詳細な審査対策を知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
過去に支払いを延滞していないか
過去にクレジットカードや自動車ローンなど、各種ローンの支払いを延滞した経験のある人は要注意です。
金融機関は審査において、あなたの返済能力をチェックします。
つまり決められた期日にしっかり返済できているかどうかを確認するわけです。
個人の返済能力は、各種ローンの返済状況が記録されている「個人信用情報」を見れば一目瞭然です。
もし過去に「カードの支払いを何か月か延滞していたかも」と不安がある人は、個人信用情報を取り寄せて確認してください。
対策:個人信用情報を取り寄せて確認する
延滞に不安がある場合は、ご自身の個人信用情報を下記の機関から取り寄せて確認しましょう。
国内の個人信用情報機関
- 全国銀行個人信用情報機センター(JBA):銀行系
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC):カード系
- 株式会社日本信用情報機構(JICC):消費者金融系
いずれも取り寄せにかかる手数料は500円~1,000円程度です。
まずはご自身の返済能力を確認し、住宅ローンの借入に適切な時期を検討してくださいね。
収入は安定しているか
多くの金融機関では返済能力を審査するとき、収入の多さよりも安定度を重視します。
収入の安定度は「正規雇用者」や「会社員」といった指標で判断されることが多いです。
したがって個人事業主や非正規雇用者は、収入の変動が大きければ審査が厳しくなると予想できるでしょう。
もちろん個人事業主や非正規雇用者でも、過去数年間の収入が安定している場合は審査に通る可能性はあります。
収入の安定度に不安がある場合は、民間金融機関以外の住宅ローン利用も検討しましょう。
対策:フラット35を利用する
個人事業主や非正規雇用者など、収入の安定度で審査に不安がある場合は、フラット35の利用をおすすめします。
フラット35は公的融資と民間融資のハイブリッド型住宅ローンで、職業選定をしません。
つまり職業や雇用形態で審査が不利になることはないのです。
フラット35は変動金利が無く全期間固定金利のみの提供となりますが、返済額が一定なのは安心ですよ。
勤続年数が短くないか
勤続年数の短さも審査では不利に働きます。
勤続年数1年~3年以上(個人事業主は事業開始後3年以上)が、住宅ローンの利用条件になっている金融機関は多いです。
したがって転職したてで勤続年数が短い場合は、勤続年数の条件がない住宅ローンの利用がおすすめです。
対策:勤続年数の条件がない住宅ローンに申し込む
勤続年数が短い人は、勤続年数の条件がない住宅ローンを利用しましょう。
例えばフラット35の場合、勤続年数の縛りがありません。
そのため勤続年数1年未満でも、住宅ローンの申し込みができます。
ただし勤続1年未満の場合、年収見込額を直近数ヶ月分の給与明細で判断するため、思ったほど借りられない事や、職務経歴書などの提出を求められるケースが多いので気をつけてください。
転職したての人はまず金融機関に問合せを行い、審査上の収入の計算の仕方や必要書類を確認したうえで申し込みするようにしましょう。
健康状態や年齢に問題はないか
健康状態や年齢はどの金融機関でも審査で厳しく見られる項目なので、要チェックです。
民間の住宅ローンは団信への加入が必須です。
そのため過去数年以内に大きな傷病歴があったり、現在通院していたりすると、団信の告知項目で引っ掛かり、審査に通らない可能性もあります。
また年齢についても、ほとんどの金融機関で借入時年齢65歳~70歳以下、完済時年齢80歳以下という条件があります。
ただ実際には条件内の年齢であっても、高齢になればなるほど審査は厳しくなります。
健康状態や年齢に不安がある場合は、条件を満たせる住宅ローンを選定して利用するようにしましょう。
対策:条件や審査基準を満たす住宅ローンを利用する
健康状態に不安がある場合は、引受基準緩和型と呼ばれる「ワイド団信」の利用をおすすめします。
ワイド団信は住宅ローン金利に年0.3%ほど上乗せが必要ですが、持病や傷病歴がある人でも加入しやすいので安心ですよ。
年齢に不安がある場合は、親子2世代に渡って住宅ローン返済をしていける「親子リレーローン」という返済方法もあります。
このように、ご自身の条件に適した住宅ローンや返済方法を利用すれば、審査で落ちる可能性を抑えることができるでしょう。
ほかに借りているローンがあるか
住宅ローン以外にクレジットカードや自動車ローン、奨学金など、ほかの借入れがある人も要注意です。
住宅ローン審査時の重要な指標である返済負担率の計算では、ほかの借入れを含めた年間返済額を使用します。
つまり他の借入れがある場合、そのぶん住宅ローンの借入限度額が少なくなるのです。
またクレジットカードに高額なキャッシング枠が付いている場合も、借入れと見なされて審査が厳しくなる可能性があります。
住宅ローンの審査でスムーズに通過するためには、ほかの借入れをできる限り完済し、不要なカードも整理しておくことが大切です。
対策:ローンはできるだけ完済し、不要なカードは解約する
住宅ローンを組むなら、各種ローンはできる限り完済しておきましょう。
また、クレジットカードに付いているキャッシング枠は解約し、キャッシング系のカードもすべて解約するようにしてください。
キャッシング系のカードは、「高利息だけど簡単に借金できてしまう」カードです。
ゆえにこれらのカードを保有していると「簡単にお金を借りる人」という印象を持たれてしまいがちです。
金融機関からの印象を悪化させないためにも、不要なカードは解約し、最低限の保有枚数に整理しておくようにしましょう。
まとめ
住宅ローンの審査金利は、変動金利や当初固定金利の破綻リスクを防ぐため、審査時に一部の金融機関で用いられているものです。
ただ審査金利を過剰に気にする必要はありません。
以下のポイントをふまえて無理のない借入金額と適切な審査対策を取っておけば、住宅ローン審査に落ちる可能性を低くできますよ。
- 審査金利は3~4%なので、借入限度額は少なくなる
- 審査金利で算出した限度額、かつ返済額を手取り年収の25%以内に抑えれば無理なく返済できる
- 住宅ローン審査では延滞歴や年齢などもチェックされるため、適切な対策を取る必要がある
千日太郎 / オフィス千日合同会社 代表社員 公認会計士
【専門家の解説】
わたしが住宅ローンの相談者が審査に通りそうかどうか、無理なく返済できるかどうかを判定するときには、その人が希望している変動金利ではなくその時点の35年固定金利を適用してシミュレーションします。
変動金利は金利上昇の可能性を含んだ商品ですから、金利上昇にどこまで耐えられるか?という判断が複雑になってしまうのです。
また、一部の金融機関が採用している審査金利もあくまで仮定に基づくものですから、リアルな金利ではありません。
35年固定金利の元利均等返済ボーナス払いなしの条件でシミュレーションして出てくる毎月返済額がその人の手取り月
収の4割以下であれば、無理なく返済を続けることができるでしょうし、審査にも通る可能性が高いと判断します。
また、もう一つ重要なのがシミュレーションの結果出てくる定年時の住宅ローン残高です。住宅ローンの開始年齢が高くなるに従って定年時のローン残高は大きくなります。
年金収入になるタイミングで大きな負債が残っているとリスクは大きいため審査でも注目されるポイントですし、無理なく返済できる借入額を知る上でも重要な数字です。
その人の所有資産や年収にもよりますが、定年時の住宅ローン残高は概ね1千万円以下になっていれば安心だと思います。
ご紹介したポイントを参考にしながら審査に挑み、安定返済できる借入れを実現させましょう。