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売掛金とは?をわかりやすく解説!仕訳方法や買掛金との違いから回収方法まで

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売掛金とは?をわかりやすく解説!仕訳方法や買掛金との違い
売掛金
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売掛金とは

  • (読み方:うりかけきん)

    売掛金は、商品の販売などの主たる営業活動により発生した代金を受け取る権利のこと。
    製品などを「売る立場」で販売代金を後払いにした時に「売掛債権」が生じ、この売掛債権を会計上の勘定科目では「売掛金」と呼ぶ。

ビジネスで取引をする際に必ずと言って良いほど目にする「売掛金」という言葉。

事業を営む場合や、帳簿をつける際にはまず避けて通ることはできないことでしょう。

しかし「売掛金」の正確な意味や事業における重要性をスラスラと説明するのは難しいと感じている人も多いと思います。

売掛金は会計上の勘定科目のひとつにすぎませんが、事業の命運を握っている極めて重要なポジションを占めています。

今回は、売掛金を7つの項目で誰にでもわかりやすく解説していきます。

最後までお読みいただくことで売掛金に関する疑問を解消でき、売掛金を適切に管理&活用できるようになるでしょう。

また、売掛金にありがちな回収トラブルへの対処方法も把握できます。

  • ファイナンシャルプランナー

    監修者金子 賢司

    東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

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売掛金(売掛債権)とは何か?

売掛金(売掛債権)とは

売掛金とは、簡単に言うと掛取引をした時に「後で受け取るお金」のことです。

商売や事業を行っていると、「掛(代金後払い)」の取引をする場面がかなりの頻度で出てきます。

この掛取引のうち、「売る立場」の時に生じるのが売掛金となります。

こちらでは「売掛金」の正確な定義などについて、わかりやすく解説します。

売掛金の正確な定義とは

売掛金の正確な定義は「商品の販売などの主たる営業活動により発生した代金を受け取る権利」です。

製品などを「売る立場」で販売代金を後払いにした時には「売掛債権」が生じ、この売掛債権のことを会計上の勘定科目では「売掛金」と呼んでいます。

ビジネスの現場では、いわゆる「現金取引」をすることはそれほど多くありません。代金を指定期日でいったん締めて、翌月に振込等で支払うなど「後払い」にするのが一般的です。

特に、月に何度も取引があるような場合、そのたびに現金決済するよりも後でまとめて支払った方が効率は良くなります。

居酒屋の常連客が「ツケ」で飲んで、給料日にまとめて支払うのと同じようなものです。

経営者ですと、売掛金は「基本中の基本」ですから、普段は特別に意識することはないかもしれません。

しかし、取り扱いによっては事業の命運を左右しかねない極めて重要なファクターなので、ある程度のベテラン経営者でも一度しっかりと確認しておきましょう。

売掛金の発生と消滅

売掛金の発生と消滅は、次の通り非常にシンプルで、難しく考える必要はありません。

  • 商品などを「掛け」で販売した時点で「発生」
  • 売掛金を「現金」「振込」「手形」などで回収した瞬間に消滅


ちなみに会計の基本ルールとなる「簿記」を少しでもかじったことがあると「発生主義」「現金主義」という言葉を目にしたことがあるはずです。

売掛金を正確に理解する上でこれらを理解しておくと、より正確に売掛金を理解できるので、参考までに簡単に整理しておきましょう。

発生主義

お金のやり取りに関係なく、実際に取引が発生した時点で計上する方法。
現金収支にタイムラグがあっても比較的実態に沿った損益を把握できるメリットがある。
日本の会計制度では原則として発生主義を前提としている。
個人事業主でも青色申告では発生主義の複式簿記での帳簿管理が義務とされる。

現金主義

お金のやり取りを基準として取引を計上する方法。
比較的シンプルで理解しやすい反面、掛取引を多用する場面などでは、損益を正しく把握し難い欠点がある。


つまり、会計の基本となる発生主義においては、「売掛」が発生した時点で「売掛金」を計上することになります。

売掛金に時効はある?

取引先の事情により、約束した期日に支払ってもらえない場合、「支払い忘れ」レベルならまだ良いのですが、取引先の経営悪化などによる支払遅延は大問題です。

「無い袖は振れない」とばかりに何年も売掛金の支払いを放置されると、時効にならないか心配になるものです。

結論から言うと、売掛金にも時効が適用される場合があります。

時効にはいくつかの種類がありますが、売掛金には「消滅時効」が適用される可能性があるのです。

消滅時効の成立は、以下が基本とされています。

  • 債権:10年
  • その他の財産権:20年


しかし、民法や商法により売掛金には「短期消滅時効」が適用されるケースがあるのです。

短期消滅時効には最短6カ月~最長5年の時効期間が定められています。



「消滅時効」
が適用される場合
・債権:10年
・その他の財産権:20年
「短期消滅時効」
が適用される場合
・最短6カ月~最長5年



詳細の解説は省きますが、売掛金を未回収のまま一定期間放置してしまうと消滅時効が成立しかねないわけです。

ざっくりと一般的な売掛債権については、2年経過で消滅時効にかかると思ってください。

いったん消滅時効が成立してしまえば、回収の見込みはほとんどなくなってしまいます。

消滅時効の成立を防ぐためには、適切な方法で時効を「中断」させる必要があります。

なお、売掛金の消滅時効は以下の方法で中断可能です。

  • (裁判上の)請求
  • 支払督促
  • 差押、仮差押、仮処分
  • 支払督促
  • 債務承認


時効中断方法の解説はここでは省略しますが「時効を中断する手段がある」ということだけは覚えておきましょう。

請求漏れによる時効は意外な落とし穴に

消滅時効は相手先に起因する事由ばかりでなく、売手側の「請求書の送付忘れ」から成立してしまうケースもあります。

取引先数や取引件数が少ないうちは請求書を忘れる心配はあまりないでしょう。

しかし業容が拡大し大量の取引が発生するようになると、中には請求書の送付を失念してしまうことも考えられます。

親切でマメな取引先であれば請求書忘れを指摘してもらえるかもしれませんが、全ての取引先にそのような対応を期待するのは厳しいものです。

日頃から確実に請求書を送付できる体制を整え、くれぐれも失念したまま時効を迎えないように気をつけましょう。

CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子 賢司の一言コメント!
毎月取引をしているのであれば、請求漏れも気づきやすいのですが、すべての得意先と毎月取引をしているとは限りません。単発での取引、不定期の取引もあるような場合、管理を怠っていると請求漏れは起こり得ます。同じ取引先で請求漏れを繰り返すと、「弊社との取引は重視されていないのではないだろうか?」「大した金額ではないので後回しにされているのかも?」など悪い印象を持たれてしまう可能性があるため、注意が必要です。

金子さん

金子さん

売掛金と未収金、買掛金などの違い

売掛金と良く似た勘定科目に「未収金」があります。

また「売掛金」と同じ掛取引の勘定科目に「買掛金」もあります。

これらの違いをしっかりと理解することで、掛取引に関する正確な仕訳イメージを掴めるようになるでしょう。

こちらでは未収金と買掛金について、売掛金と対比しながら解説します。

売掛金と未収金は「主たる営業活動で生じたか否か」が違う

未収金とは読んでそのまま「いまだに収まっていないお金」のことです。

つまり「現時点では支払いを受けていないが、将来受け取ることが約束されているお金」です。

「未収金」と「売掛金」は、「まだ受け取ってないお金」という意味では同じと言って良いでしょう。

しかし、別々の勘定科目となっているのは、次の違いがあるからです。

売掛金主たる営業活動(本業)による取引で生じた未回収金
未収金主たる営業活動以外による取引で生じた未回収金

内容はシンプルですが、具体的にどのように使い分けるかはイメージが難しいかもしれません。

もっと簡単なイメージとしてまとめると次のようになります。

  • 商品や製品の売却(未回収)代金 → 売掛金
  • 商品や製品以外の資産売却(未回収)代金 → 未収金


「大した差はない」と感じてしまうかもしれませんが、ここを曖昧にしてしまうと正確な財務状況の把握が難しくなってしまいます。

金融機関に融資を相談する際にも、財務諸表に間違いがあると「いいかげんな企業だな」と融資担当者にネガティブな印象をもたれかねないので注意してください。

銀行などの金融機関はもちろん、税務署でも「きちんとした決算書」が歓迎されます。

基本的なところしっかり抑えることで信頼を勝ち取ることができるのです。

未収金は流動資産と固定資産に分かれる

売掛金は回収までの期間にかかわらず流動資産へ計上することになっています。

これに対して未収金は、次のように計上します。

  • 1年以内に回収予定のもの:流動資産
  • 1年を超えるもの:固定資産


流動資産か固定資産かで財務指標に影響しますので、間違えないように注意しましょう。

売掛金と買掛金は売り手か買い手かの立場の違いで入れ替わる

売掛金も買掛金もその名の通り「掛取引」に関わる勘定科目です。

「売」か「買」かの違いですから、売り手なのか買い手なのかの違いと素直に捉えればOKです。

商品や製品を仕入れたものの、代金をまだ支払っていない状態(ツケ払い)の時に「買掛金」が発生するわけです。

買い手は売り手に対して債務を負う状態なので、「流動負債」に計上されます。

買掛金と未払金の使い分け

「売掛金に対する未収金」と同じように、買掛金に対する「未払金」という勘定科目も存在します。

基本的には仕入れに関するものは「買掛金」、それ以外の経費などは「未払金」と考えればOKです。

なお未払金は未収金と同様に1年以内に支払う予定なら流動負債、1年超なら固定負債(長期未払金)となります。

売掛金の仕訳方法

簿記の基本については省略しますが、資産の増加となる売掛金(発生)は「借方」に記載するのが原則です。

こちらでは実際に起こり得る売掛金の仕訳方法を、例を挙げながら解説します。

※イメージを理解していただくことを優先するため、シンプルな例をもとに解説します
※仕訳の方法には「100%の正解」というものはありません。管轄の税務署の担当者や委託している税理士の方針、現実の取引内容等にあわせて柔軟に対応してください。

一般的な売掛金の仕訳方法

売掛金が発生した場合の仕訳方法を確認しましょう。

基本的には「借方に売掛金」「貸方に売上高」を記帳すればOKです。
例えば「10万円の製品を掛取引で売り上げた場合」の仕訳は以下の通りです。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売掛金100,000円売上高100,000円

仕訳のポイント

  • 流動資産の売掛金増加なので借方に記載する


「上記の売掛金を現金で回収した場合」の仕訳は以下の通りです。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
現金100,000円売掛金100,000円

仕訳のポイント

  • 現金入金は流動資産増加のため借方へ記載
  • 流動資産の売掛金が回収で消滅のため貸方へ記載

消費税を含めた売掛金の仕訳方法

製品を販売した場合の「消費税込み」の仕訳方法を紹介します。
「税別10万円の製品を販売した場合」の仕訳は以下の通りです。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売掛金100,000円売上高100,000円


消費税込みの場合は、売掛金と売上高ともに消費税込みの金額を記載すればOKです。

なお消費税は税別で仕分けすることも認められます。

後から値引きした場合の仕訳方法

売掛金は期日になれば全額が取引先から支払われるのが原則です。

しかし、時には不良ロットの混入や不具合などが判明し、その分を値引きして対処する場合もあります。

10万円の製品を販売したものの、製品に製造時のミスで傷があったため10%割引した代金を現金で支払ってもらった場合の仕訳は以下のとおりです。

★売上時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売掛金100,000円売上高100,000円


★割引後の代金を受け取った時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売上高100,000円売掛金100,000円
現金90,000円

返品を受けた場合の仕訳方法

製品に致命的な不良や欠陥があった場合、値引きでは済まずに返品になることがあります。

10万円の製品を販売したものの、不良品のため返品になった場合の仕訳は以下の通りです。

★売上時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売掛金100,000円売上高100,000円


★製品が返品になった時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売上高100,000円売掛金100,000円


売上時と反対の仕訳をすることで相殺され、取り消しをしたのと同様の効果が生じます。

売掛債権担保融資を利用した場合の仕訳方法

売掛金は資産のため、金融機関に担保として差し入れて、融資を受けられる場合があります。

これを「売掛債権担保融資(後述)」と言いますが、ここでは仕訳方法を紹介しておきます。

10万円の売掛債権を担保として10万円を売掛債権担保融資で借りた場合の仕訳は以下のとおりです。
支払利息は1,000円と仮定

★売掛債権担保融資を受けた時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
普通預金100,000円借入金100,000円


※普通預金へ融資金が入金された場合

★売掛債権担保融資を返済した時の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
借入金100,000円普通預金100,000円


※普通預金から引き落とし返済された場合

★利息支払の仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
支払利息1,000円普通預金1,000円


※普通預金から利息が引き落とされた場合

ファクタリングを利用した場合の仕訳方法

売掛債権を譲渡することで、譲渡代金を得る「ファクタリング(後述)」という資金調達方法があります。

ここではファクタリングを利用して売掛債権を現金化した場合の仕訳方法を紹介します。

10万円の売掛債権をファクタリングで早期現金化した場合の仕訳は以下のとおりです。
※ファクタリング手数料(諸費用込)は1万円と仮定

ファクタリング契約時の仕訳
(契約時即日入金のケース)


借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
普通預金90,000円売掛金100,000円
売掛債権売却損10,000円


※売掛債権売却損は雑損失などの勘定科目でもOKです。

★ファクタリング契約時の仕訳
(契約日と入金日にタイムラグがあるケース)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
未収金100,000円売掛金100,000円


※実際に入金された際に上記の「契約時即日入金」と同じように仕訳をします。

売掛金の適切な管理方法とは

売掛金は掛取引で約束された期日に入金が約束されたお金ですが、万が一売掛金が入金されないとなると、たちまち運転資金が枯渇して企業経営を危機に陥れかねません。

致命的な回収不能に至る前に、売掛金は適切に管理する必要があります。

すこし面倒に感じるかもしれませんが、管理を怠ったツケの方が重くのしかかる可能性が高いので、売掛金の管理方法について再確認しておきましょう。

請求が大切

売掛金を回収する基礎となるのが「請求」です。

取引成立後は可能な限りすみやかに、正確かつ明確な請求書を取引先に送付しなければなりません。

日常生活でも「後でやろう」とちょっと後回しにしただけで、すっかり忘れてしまうことは誰でも経験があるでしょう。

また取引先でも「すぐに請求書が送られてくる」ことで支払への意識が高まり、支払準備を整える余裕が生まれます。

反対にすぐに送らずに「期日ギリギリ」になってしまうと、取引先が支払いを失念してしまうリスクが高まります。

そうなると取引先が資金を手当できずに回収トラブルに発展する可能性も出てくるので、請求書は早めに出すように心がけて下さい。

厳格な売掛金管理でキャッシュフローを改善

厳格な売掛金管理により、思いがけないほどキャッシュフローが改善することがあります。

売掛金にはさまざまな「回収リスク」がありますが、その多くは次のような「取引先の都合」によるものです。

【回収リスクとしてよくあるケース】

  • 取引先の支払いを失念
  • 取引先の資金繰り悪化による支払遅延
  • 取引先の倒産
  • 取り込み詐欺(代金を支払わずに商品を搾取される)
  • 請求書の送付漏れ


一見すると「対処のしようがない」と感じられますが、適切な売掛金管理により、上記のようなリスクのかなりの部分は予防できます。

実はキャッシュフローが悪化して「黒字倒産」を起こしている企業では、売掛金管理が甘いケースが多くなっています。

きちんと売上高は上がっているのに、売掛金の回収がルーズなので手持ち資金が枯渇してしまうのです。

手持ち資金が枯渇すると、買掛先への支払いや借入返済に支障をきたし、信用が一気に悪化しかねません。

信用悪化の情報はすぐに巡ってしまうもので、取引の打ち切りや融資謝絶といった悪循環に陥りがちです。

CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子 賢司の一言コメント!
売掛金管理は未収金チェックにも役立ちますが、継続していると、「A社は毎年5月に取引が多い」「B社は毎年2月の取引がない」など、一定の周期性が見えてくることがあります。取引先とコミュニケーションをとる中で、こうした周期性について確認しておくと、固有の事情などが確認できます。また、例えば毎年2月はB社からの取引が少ないので、2月は他の企業の業務を増やそうといった対策が立てられます。取引先からは売掛金管理をしっかりできている事業者として、高い評価を受けられるでしょう。

金子さん

金子さん

このような状況を防ぐためには厳格な売掛金管理が不可欠ですので、簡単に売掛金管理のポイントを解説しておきましょう。

顧客リストの整備

基本中の基本と言えるものの、売掛金トラブルが発生しがちな企業では顧客リストが杜撰なケースが意外と多い。
取引先数が膨大になる場合には、独自の顧客IDによる管理も必要。

請求システム構築

適切な請求フローを確立し、ミスの生じにくいシステムを整備する。
取引が少なければExcel管理でも良いが、更新が多発するようなケースではクラウド請求書サービスの導入も検討を。

遅延管理の徹底

数日程度の支払い遅れを放置していると、次第に大きな回収トラブルに発展するリスクが高まる。
期日に支払がない取引はアラート表示させるなどの方法で適切に取引先への支払催促できるようにし、支払期日厳守を徹底する。

定期的な見直し

遅延が恒常化している取引先については、経営状況の把握などの情報収集を怠らないようにする。
定期的に取引先の見直しを行い、やむを得ない場合には取引中止も視野に入れて検討する。

CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子 賢司の一言コメント!
今は問題がなくても、支払の遅延が恒常化、あるいは多発している取引先は、後になって自社の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。日ごろから定期的な取引先の見直しを行う他、支払サイトが長い取引先に対しては、粘り強くサイト短縮の交渉をしておくことをおすすめします。いざ資金繰りが苦しくなった時に交渉しても、すぐに改善される可能性は低いでしょう。
※支払いサイト・・・取引期間の締日から、実際にお金が振り込まれる期間のこと

金子さん

金子さん


手持ち資金がないからといって安易に借入に頼るのではなく、売掛金管理徹底で改善できないかを再検討することも大切です。

売掛金を上手に活用する2つの方法

売掛金を活用する方法に資金調達方法には以下の2つがあります。


売掛金の管理徹底により、健全なキャッシュフローを維持可能となりますが、業務内容によってはどうしても売掛金が多くなりがちなケースも出てきます。

従来型の掛取引では「約束手形」がメインだったため、銀行の手形割引で手軽に資金調達できていた面があります。

しかし近年ではすっかり手形取引は少なくなり、振込みによる後払いが主流となっています。

こうなると「手形以外の売掛金」による資金調達方法を検討する必要が出てきます。

手形の裏書譲渡については、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。

売掛債権担保融資を資金調達に活用

売掛債権担保融資とは、その名の通り「売掛債権」を「担保」にして「融資」を受ける仕組みです。

銀行などの金融機関へ売掛債権担保融資利用の相談の上、申込&審査を受けることができます。

※譲渡禁止特約のついた売掛債権は原則として利用できません

売掛債権が担保となるため、申込者だけでなく「売掛先」の信用が重視されます。

手形割引でも信用力の高い大手企業の手形は低い割引料で優遇されているのと同じで、売掛債権担保融資でも信用によって担保評価が変化するのです。

当然ながら担保評価が高いほど有利な条件で融資を受けることができます。

信用保証協会が債務保証を行う「売掛金債権担保融資制度」が有名ですが、平成21年には制度が拡充され「流動資産担保融資保証制度」に改称されています。

この制度の対象となる売掛債権は以下のようなものです。

  • 売掛金債権
  • 割賦販売代金債権
  • 運送料債権
  • 診療報酬債権
  • その他の報酬債権
  • 工事請負代金債権 など

※中小企業庁金融サポート「在庫や売掛債権を担保とする融資・保証について」より

なお従来は「売掛債権」に限定されていたところ、新制度では「在庫」も対象となっています。

制度の対象となる在庫は以下のようなものが挙げられます

  • 商品仕入れによる在庫商品
  • 製造業における製品在庫
  • 仕掛品、半製品、原材料、貯蔵品

※固定資産に計上されている機械設備や車両運搬具は該当しません

ファクタリングで売掛金を早期現金化する

売掛債権担保融資では売掛債権を担保にして融資を受ける仕組みであるのに対し、売掛債権を直接業者に買い取ってもらう仕組みが「ファクタリング」です。

売掛金の支払期日前に早期現金化できるため、短期的なキャッシュ枯渇時の対応に向いています。

ファクタリングの特徴を簡単にまとめると以下の通りです。

ファクタリングの特徴

  • 比較的スピーディーに売掛金を譲渡して現金化できる
  • 利用者の財務内容よりも売掛先の信用が重視される
  • 決算書に借入として計上しなくて良い
  • 手数料が比較的高額設定のことが多い
  • 悪質業者も存在するので利用の際は慎重な見極めが必要


ファクタリングについては「ファクタリングとは何?仕組みを図解でわかりやすく解説」で詳しく解説しているので、興味のある人はぜひご参照ください。

売掛金トラブルを回避するための5つの予防方法

売掛金回収に関するトラブルを0にするのは難しい面があります。

しかし、可能な限りトラブルを回避する心がけは、経営の安定化を図るうえで不可欠ですので、次の5つをおさえておきましょう。

  • 回収がルーズだと、相手の支払いもルーズになる
  • 売掛先とコミュニケーションを密にして経営状況を把握しておく
  • 売掛先のほかの取引先と懇意にして情報をもらう
  • 保証ファクタリングで、未回収リスクに対処
  • 買取ファクタリングで債権譲渡


売掛金管理と一部重なる部分もありますが、より具体的な回収の心がけについて詳しく解説します。

回収がルーズだと、相手の支払いもルーズになる

回収トラブルを未然に防止するのに最良なのは、売掛金はきっちり回収するという意思表示をすることです。

当たり前すぎて、今更という印象を持たれるかもしれませんが、何事も基本をおろそかにしてはいけません。

実際に数日程度の遅れを許容していると、いつの間にか週単位で遅れるようになります。

そして、週単位で遅れだしたら月単位で遅れるのは意外と速いものです。

回収で甘い態度を見せてしまうと、相手も甘く考えてしまうため、遅れがちな取引先にはピシャリと厳しい言葉を掛けることも大切です。

売掛先とコミュニケーションを密にして経営状況を把握しておく

スマホやネットが発達した現在では取引先とめったに顔を会わせないことが増えてきているようです。

さらにはメールやチャットが便利なので、電話による会話もほとんどないようなケースも見受けられます。

相手先の経営がずっと健全であれば特に問題はないのかもしれませんが、コミュニケーションが薄いと経営悪化を察知するのは難しい面があります。

ちなみに銀行員が融資先を頻繁に訪問するのは営業&サービスの面もありますが、実は融資先のナマの状況を把握する目的もあるのです。

売掛は「信用でお金の支払をツケにしてあげている」という意味では、取引先に「短期の融資」と近いものがあるかもしれません。

銀行の融資担当者のように、時には売掛先を訪問して経営者と直接言葉を交わすことは意義深いものです。

経営状況の把握はもちろん営業的にも好結果をもたらすことでしょう。

売掛先のほかの取引先と懇意にして情報をもらう

売掛先にはさまざまな業種の取引先が関わっていることが多いものです。

取引先によっては経営者と親密であったり、実は経営者が親戚同士だったりすることも意外とあることです。

そのような取引先と親しくすることで、例えば下記のような「ここだけの話」をしてもらえることもあります。

「最近どうも金払いが悪くて」
「在庫がたまっているようで、仕入れを絞られて困った」

ここまでは具体的に話してもらえなくても、会話の裏側に経営トラブルが示唆されていることもあるものです。

情報交換や営業を兼ねて、ほかの取引先と仲良くしておくことは決して損ではありません。

危険を察知した時は情報収集を強化

通常の売掛先に関する情報収集は先述の心がけでも十分ですが、「ちょっとおかしい」と感じた時には情報収集を強化していく必要があります。

具体的な情報収集の手段としては以下のようなものが挙げられます。

  • 帝国データーバンクや東京商工リサーチなどで売掛先の評点や概要をチェックする
  • インターネットやSNSなどで売掛先の企業名や社長名を検索して不穏な情報がないか確かめる
  • 登記情報を確認し、ヤミ金まがいの登記が入っていないかなどを確認する

保証ファクタリングで、未回収リスクに対処

保証ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社が保証してくれるもので、万が一の貸倒れのリスクヘッジが可能となります。

保証料の負担が生じますが、万が一の際には保証限度額内で保証してもらえます。

ただし保証を履行してもらうには「売掛先の倒産が確定」などの条件があり、保証金の受取にタイムラグが生じるケースがあるので注意が必要です。

買取ファクタリングで債権譲渡

先にも紹介した売掛債権の買取ファクタリングで債権譲渡してしまう方法もあります。

ただしファクタリングを検討する際には以下のような点に注意して下さい。

  • 信用状況に不安がある売掛先は手数料が高額になりがち
  • 経営が悪化している売掛先はファクタリングを断られることがある
  • 不都合な事実を隠してファクタリングすると、後から損害賠償請求されるリスクがある
  • 悪質ファクタリング業者では、万が一の際に償還請求権を行使される可能性がある

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監修者 金子 賢司の一言コメント!
買取型ファクタリングも、取引先の倒産などで売掛金が回収できなくなったときのリスクは、ファクタリング会社が負う「償還請求権なし(ノンリコース)」が基本です。しかしまれに「償還請求権あり(ウィズリコース)」契約になっている場合もあります。償還請求権ありのファクタリング契約では、売掛金の未回収リスクを回避する効果がありません。ファクタリング契約をする場合、契約書の中身を十分確認してください。

金子さん

金子さん

売掛金トラブルが発生したら?3つの解決方法

売掛金のトラブルはできる限り避けたいものですが、時にはどうしても防げないこともあるので、トラブルが発生した場合の解決方法を覚えておきましょう。


万が一売掛金回収に問題が発生した場合には、少しでも早いタイミングで積極的に対処するのがベターです。

こちらでは3つの対処方法について解説します。

売掛先がなぜ支払ってくれないのかの理由を探るのが第一歩


約束の期日になっても入金がないと、悪い方に考えてしまいがちかもしれません。

入金遅れが確認できたら、まずはきちんと請求書を出しているかをチェックしてみましょう。

間違いなく請求書を出しているなら、確認の電話をできるかぎり早いタイミングで掛けるようにしてください。

数日程度の遅れなら「ついうっかり」ということで、お互いに納得しやすいものですが、入金遅れが長期化してくるほどに、お互いに重い雰囲気になりがちです。

ここで万が一「申し訳ないが支払いを待ってほしい」という申出があったなら、遅れの理由をはっきりと聞くようにしてください。

仮に相手が嘘の理由を話したとしても以降の言い訳が難しくなり、効果的にプレッシャーを掛けられます。

売掛金の未払いについては、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。

義理と人情を履き違えないように注意

取引が長くなるほどに、取引先への義理や人情を感じてしまうかもしれませんが、ビジネスとして考えた場合、あまりに人情に流されすぎるのは考えものです。

厳しいビジネスの世界で私情にとらわれてしまうと、肝心の自社の経営までも傾きかねません。

プライベートな感情とビジネスではきっちり一線を引き、冷徹な目で判断する必要があり、遅延の理由が納得できない時には、ある程度厳しい態度で交渉に臨まねばなりません。

買掛金との相殺や、商品の引き上げなどを示唆しながら交渉すれば、相手も本気にならざるを得ないでしょう。

相手の甘えを許さない態度によって、状況が打開される可能性は意外とあるものです。

交渉が暗礁に乗り上げたら内容証明などの強行手段も検討

電話に出なかったり居留守をつかったりなど、相手が逃げ回るようであれば、悠長なことは言っていられません。

法的措置などの強硬手段を実施していく段階に来ていると言って良いでしょう。

なかなか強行措置は気が引けるものですが、実施するなら早いタイミングの方が効果的です。

強行措置としては具体的には以下のような方法が挙げられます。

  • 内容証明郵便で督促状を送付する(訴訟へ移行した際に重要な証拠となります)
  • 公正証書を作成する
  • 調停、和解を申し立てる
  • 支払督促をする(一般的な督促ではなく法的な手続です)
  • 訴訟を起こす

まとめ

こちらでは売掛金についてくわしく解説しました。

最後に重要なポイントを簡単に振り返っておきましょう。

  • 売掛金とは「商品の販売などの主たる営業取引により発生した未収入金」のこと
  • 一般的な売掛債権は放置していると2年経過で消滅時効が成立することがある
  • 資産の増加となる売掛金の発生は「借方」に記載するのが原則
  • 売掛債権担保融資やファクタリングを利用して、売掛金で資金調達が可能
  • しっかりとした売掛金の管理は、経営の安定化には必須


これらを理解していただいたことで、売掛金に関する疑問をかなり解消できたのではないでしょうか。

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