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2024年7月の住宅ローン金利予想

6月日銀会合の追加利上げは?メガバンクの変動金利はどう動く?専門家が2024年7月の住宅ローン金利を予想

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こんにちは公認会計士の千日太郎です。日銀は3月にマイナス金利政策を解除し、国内債券市場では日銀が6月か7月の会合で追加利上げする可能性があると予想する声もあります。

一方、世界の中央銀行では、金融引き締めから緩和局面へ転機を迎えています。

欧州中央銀行(ECB)は6月6日に利下げ開始を決め、カナダ中銀も5日に利下げに転じました。世界的なインフレが収まりつつあり、米国の中央銀行(FRB)にも波及しそうです。

市場関係者の関心は、6月の日銀会合で金融緩和から引き締めへの政策転換があるか?具体鄭には追加利上げがあるのか?に集まっています。

こちらは2024年6月から7月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。

詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。

住宅ローンの金利予想
金利タイプ6月参考(※)7月予想
フラット35
(買取型)
1.85%~

横ばい

民間の長期固定金利1.7%台~横ばいか若干の上昇
20年固定金利1.3%台~横ばいか若干の上昇
10年固定金利1.2%台~横ばいか若干の上昇
変動金利0.3%台~まだ横ばい

※6月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。

この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年7月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。

※当記事の金利や情報は2024年6月9日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。

気になる内容をタップ

日銀マイナス金利政策解除後の長期金利の推移と各国中銀の動向

こちらは2024年2月1日から2024年6月7日までの日米の長期金利の推移をグラフにしたものです。

日米長期金利

黄色の折れ線グラフは日本の長期金利です。3月18日19日の会合でマイナス金利政策解除を決定し、4月25日26日の会合では現状の緩和政策の継続を決定しました。現在に至るまで概ね右肩上がりに上昇していますね。

特に5月の後半からは13年ぶりに1%を超える水準まで上がったのですが、米国の金利低下が波及して0.9%台に下がっています。

オレンジ色の折れ線グラフは米国の長期金利です。インフレ圧力の根強さが意識されており、利下げ期待が後退したことで長期金利が上昇傾向にありました。

6月に入ってから大きく金利を下げているのは6月5日発表の雇用関係の指標が弱く、米国中央銀行(FRB)の利下げ期待が広がったためと報じられています。

6月5日にはカナダの中央銀行が利下げに踏み切り、6月6日には欧州中央銀行(ECB)も利下げ開始を決めており、世界的にはインフレが鎮静化に向かっており、金融引き締めからの転換が焦点になりつつあります。

欧州では利下げ開始後の金融緩和政策が難所であると言われています。

米金融危機や欧州債務危機のように景気刺激や市場安定のために大盤振る舞いする緩和政策ではなく、インフレを再燃させずに金融引き締めを徐々に緩めていく微妙なアクセルワークが必要になります。

その点、日銀は他の主要中銀とは異なる独自の道を歩んでいます。長く続いたゼロ金利政策からの転換です。景気後退させずに、徐々に金融緩和から引き締めていく絶妙なブレーキングが必要となっています。

今はちょうどアクセルからブレーキに足を置き換えようとして、アクセルから足を放そうとしている瞬間、という感じでしょうか。

個人的には、6月の時点ではまだ植田日銀総裁の足はブレーキには移っていない=利上げはないと見ています。

日銀による政策金利上げでメガバンクがとる方針とは?

3月の会合で日銀が行ったマイナス金利政策解除は、表面的にはマイナス0.1%の短期政策金利をゼロ%に上昇させる利上げではありましたが、より強調されたのは金融緩和政策を継続するというものでした。

植田日銀総裁は会合後の財政金融委員会で、「住宅ローンを含む貸出金利が大幅に上昇するとはみていない」と述べています。つまり利上げとしては「ノーカウント」であり、多数派の金融機関は住宅ローンの変動金利を横ばいとしています。

多数派とは異なる対応をとって変動金利の基準金利を上げたのが住信SBIネット銀行とイオン銀行と楽天銀行の3行ですが、その詳細と既存の住宅ローン利用者が取れる有効な対応策については、前回の記事で詳しく書いているのでよろしければ読んでみてください。

メガバンクをはじめとする多数派の銀行は、日銀が分かりやすく金融引き締めへ政策転換するタイミングを待っています。これが多数派の銀行が変動金利を上げるタイミングです。

しかし千日太郎個人の見解としては、これにはまだ少し距離があると見ています。

日銀の中村審議委員は6月6日に札幌市で記者会見し、今月開く金融政策決定会合での政策判断について「今のタイミングでの利上げは早い気がする」との見解を示したそうです。

また中村氏は利上げが消費低迷につながる可能性があることを指摘しており、国債買い入れ減額は、経済の回復状況に応じ時間をかけて進めることが適当との考えを示したことが報じられています。

また、三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクは令和5年度の決算は極めて好調で、三菱UFJと三井住友では過去最高益を計上しています。急いで住宅ローンの変動金利を上げる必要はなくなっているのです。

利上げが銀行にとっての追い風となるのは、住宅ローンの金利上昇が理由ではありません。預金金利を上げることができるようになり、定期のようなコストの安い資金調達を行えることにあります。

三菱UFJ銀行は口座を持っていない人を対象に、スマホで新規口座開設・10万円定期預金で1万円還元のキャンペーンを開始するなど、預金の獲得に乗り出しています。

メガバンクとしてはまずは預金金利を上げて預金者を獲得するのが急務であり、それが一段落してから徐々にすこしずつ貸出金利を上げていく手法をとるでしょう。

なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。

金利タイプ別2024年7月の金利予想

では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年7月の金利がどうなっていくのか予想していきます。

6月9日までの公開情報を前提とした予想になります。

【金利タイプ別】
2024年7月の金利予想

公的融資フラット35の金利動向

下のグラフは2024年3月から6月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。

オレンジ色の折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

フラット35(買取型)と長期金利

該当月
(機構債発表日)
3月金利
(2月21日)
4月金利
(3月15日)
5月金利
(4月18日)
6月金利
(2024年5月22日)
長期金利0.73%0.78%0.89%0.97%
機構債の
表面利率
1.08%1.14%1.21%1.30%
フラット351.84%1.82% 1.83% 1.85%

フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。

しかし、3月から6月の長期金利とフラット35の金利推移を見る限り、長期金利は右肩上がりに上昇しているのですが、フラット35の金利はほぼ横ばいで推移していますね。

その理由は住宅金融支援機構が国の子会社的な位置づけにあり、営利を目的としないからです。急激な金利の上昇時は国民の住宅金融の円滑化のために住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があります。

フラット35の金利上昇が長期金利や機構債の上昇に対して抑えられる傾向は、日銀がマイナス金利政策を解除した直後の4月から特に顕著となっています。

マイナス金利解除後の国内の長期金利は上昇傾向にありますが、7月のフラット35の金利については、引き続き政策的に抑えるため横ばいで推移すると予想しています。

民間の超長期固定金利の動向

マイナス金利政策解除後の4月から5月にかけて、民間の主要銀行は35年の超長期固定金利タイプを軒並み0.1ポイント前後の引き上げとし、5月から6月にかけても0.1ポイント前後の上昇としました。

2か月連続での大幅な上昇は、ほぼ横ばいとしているフラット35と好対照です。

固定タイプの金利が長期金利に連動するというのはあくまで建前です。建前通りに金利を下げるケースもあれば、銀行の金利先高観からあえて上昇させるケースもあるのです。

現在は日銀の追加利上げの時期と上げ幅に注目が集まっていますが、その読みが銀行によって異なり、固定タイプの金利に表れています。

6月から7月にかけても、一部の銀行では横ばいとする可能性もありますが、多数派の銀行で若干の上昇と予想しています。

20年前後の長期固定金利の動向

20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする傾向が強くなっていました。

しかし、SBI新生銀行は少し前から20年固定を下げてきており、3月から6月にかけては、多数の銀行が金利を上げるなか、1.35%で横ばいとしています。

SBI新生銀行の特徴として、住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動しないためです。

このような一部の例外を除き6月から7月にかけては若干の上昇傾向が続くと予想しています。

10年固定金利の動向

10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。しかし4月から6月にかけてはSBI新生銀行を除き連続して上昇となっています。

10年の固定期間は住宅ローンの固定金利としては短い方になるので、金融機関の間で日銀による追加利上げ期待があるうちは、どうしても上昇圧力がかかります。

6月から7月にかけても、一部の銀行では横ばいとする可能性もありますが、多数派の銀行で若干の上昇と予想しています。

変動金利の動向

変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。前述のように利上げとしては「ノーカウント」となっており、一部の例外を除き、主要銀行の変動金利は横ばいとなっています。

逆に変動金利を下げたのが三井住友信託銀行とSBI新生銀行ですが、基準金利を下げているのではなく、引き下げ幅を拡大させる従来と同じ方式で下げていることから、詳細解説は省きます。

次の追加利上げでは横並びで基準金利が上がる可能性がありますが、さしあたり6月の会合で利上げ可能性は低く横ばいで推移すると予想しています。

まとめ~金利ある世界の変動金利

本文では変動金利を横ばいと予想しています。しかし、今はゼロ金利時代から金利ある世界への入り口に立っています。

今後35年の長きにわたる住宅ローンの返済期間ではさらに複数回の利上げを経験することと思います。むろん上がることがあるということは、下がることもあると考えられます。

金利ある世界で変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。

早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。

民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。

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