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2024年6月の住宅ローン金利予想

変動金利の対応は予想通りバラけた!金利上昇に対応するにはどうすべき?専門家が2024年6月の住宅ローン金利を予想

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こんにちは公認会計士の千日太郎です。日銀が3月の会合でマイナス金利政策を解除すると、主要銀行が住宅ローンの変動金利を据え置くなか、住信SBIネット銀行、イオン銀行、楽天銀行が変動金利の基準金利を上げ、反対に三井住友信託銀行とSBI新生銀行は適用金利を引き下げています。

銀行それぞれの観測に加え、その営業方針が色濃く反映されて、完全な横並びとはならずにバラける結果となりました。

3月上旬に4月の金利予想として千日太郎がイーデスで公開した記事では、日銀の会合と変動金利に対する各行の対応につき、下記のように予想していたのですが、それがほぼ的中したことになります。

そして市場関係者の関心は、日銀による追加利上げの開始時期とその上げ幅に集まっています。

こちらは2024年5月から6月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。

住宅ローンの金利予想
金利タイプ5月参考(※)6月予想
フラット35
(買取型)
1.83%~

1.8%台の前半

民間の長期固定金利1.7%台~横ばいか若干の上昇
20年固定金利1.3%台~一部例外を除き上昇
10年固定金利1.0%台~上昇傾向が続く
変動金利0.3%台~横ばい

※5月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。

この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年6月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。

※当記事の金利や情報は2024年5月6日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。

気になる内容をタップ

日銀マイナス金利政策解除後の長期金利の推移

こちらは2024年1月4日から2024年5月2日までの日米の長期金利の推移をグラフにしたものです。

日米長期金利

黄色の折れ線グラフは日本の長期金利です。長期金利が1月から2月にかけて上昇しているのは、日銀の政策決定会合で利上げ可能性が示唆されたためです。

上昇後に0.7%台で横ばいに推移しているのは、日銀が利上げ後も金融緩和政策が続くことを公式の場で発信していたためです。

そして3月18日19日の会合でマイナス金利政策解除を決定し、4月25日26日の会合では現状の緩和政策の継続を決定しています。

マイナス金利政策解除の直後は、すでにこれを織り込んでいた債券市場に影響なく、長期金利は横ばいで推移しました。

4月に入ってからグンと上がっているのは、日銀ではなく米国の長期金利上昇の波及を受けてのことです。

このときには日米金利差の拡大に加え、4月の日銀会合で緩和政策の現状維持が決定されたことで一時は1ドル160円の記録的な円安となりました。

米国ではインフレ圧力の根強さが意識されており、利下げ期待が後退したことで長期金利が上昇しています。

直近5月1日のFOMCでは6会合連続で政策金利の据え置きを決めており、エコノミストによる利下げ時期の予想は後ズレしています。

日銀利上げ後の変動金利で異なる対応をとった銀行とは?

3月のマイナス金利政策解除は、表面的にはマイナス0.1%の短期政策金利をゼロ%に上昇させる利上げではありましたが、より強調されたのは金融緩和政策を継続するというものでした。

今後どんどん政策金利を上げていくことは考えていないということです。

植田日銀総裁は会合後の財政金融委員会で、「住宅ローンを含む貸出金利が大幅に上昇するとはみていない」と述べています。つまり利上げとしては「ノーカウント」であり、多数派の金融機関は住宅ローンの変動金利を横ばいとしました。

これに対して、多数派とは異なる対応をとって変動金利の基準金利を上げたのが住信SBIネット銀行とイオン銀行と楽天銀行の3行です。

住信SBIネット銀行とイオン銀行は既存利用者のみ金利を上げる対応

楽天銀行については変動金利の基準金利をTIBOR連動としているため、上がった理由は客観的に明らかです。

今回取り上げるのは住信SBIネット銀行とイオン銀行です。4月から5月にかけての2行の基準金利と引き下げ幅、適用金利を比較してみることでわかることがあります。

これから新規に借りる(借り換える)利用者向けの対応
住信SBIネット銀行4月5月増減
基準金利 2.775%2.875%

 +0.1%

引き下げ幅▲2.477%▲2.577%

▲0.1%

適用金利0.298%0.298%

イオン銀行4月5月増減
基準金利2.37%2.47%

 +0.1%

引き下げ幅▲1.94%▲2.04%

▲0.1%

適用金利0.43%0.43%

両行とも、4月から5月にかけて基準金利を0.1%上げているのですが、同時に引き下げ幅を0.1%増やしているので、適用金利に変更が無いという対応になっています。

じゃあ、前からこれらの銀行で変動金利を借りている人も変更なしか?というとそれは違うのです。

あくまでホームページの引き下げ幅は、これから新規に借りる人、借り換える人向けの値引きであり、過去に変動金利で借りた人は借りた月の引き下げ幅で固定されているのです。

過去(4月)に借りた(借り換えた)利用者向けの対応
住信SBIネット銀行4月5月増減
基準金利 2.775%2.875%

 +0.1%

引き下げ幅▲2.477%

適用金利0.298% 0.398%

 +0.1%

イオン銀行4月5月増減
基準金利2.37%2.47%

 +0.1%

引き下げ幅▲1.94%

適用金利0.43%0.53%

 +0.1%

例えば4月に住宅ローンを借りたならば、そのときの引き下げ幅で固定されるので、5月に基準金利が0.1%上がったら、適用金利も0.1%上がるということになるのです。

つまり、4月に住信SBIネット銀行の変動金利0.298%で借りた人は5月には0.398%に上がります。4月にイオン銀行の変動金利0.43%で借りた人は5月には0.53%に上がるということです。

つまり、これから住宅ローンを組もうとする人向けには以前と変わらない低金利をアピールしつつ、過去に住宅ローンを借りた既存の利用者に対しては金利を上げるという対応です。

既存の住宅ローン利用者が取れる有効な対応策は?

これらの2行で変動金利を借りたばかりの人にとっては、頭の痛い話ですね。

ただし、これらの銀行の変動金利には5年ルールと125%ルールがありますので、翌月から毎月の返済が増えるわけではありません。5年間は直前の元利均等返済額が維持され、増えるのは6年目からです。

ただし、据え置かれる5年間の返済額の内訳として、利息の額が増えてしまうので利息の負担額が増えてしまうということになります。では借り換えるのか?というと、それは割が悪そうです。

例えば5,000万円を35年元利均等返済でイオン銀行の変動金利0.43%と0.53%を比較すると、毎月の返済で2,205円、総支払額で926,025円の差となります。


5,000万円を35年元利均等返済で借りた場合
変動金利0.43%変動金利0.53%増減
毎月返済額 128,251130,456

 +2,205

総支払額53,865,58154,791,606

+926,025

他行へ借り換える場合には、借り換え先の銀行で融資手数料が必要になり、登録免許税や司法書士報酬が必要になります。

5,000万円に2.2%の融資手数料を乗じると110万円となるので、他の費用を加味するとおよそ130万円が追加で必要になってきます。

甘んじて0.53%で借り続けても92万円の負担増ですから、借り換えない方がまだマシという結論になります。

うがった見方をすれば住信SBIネット銀行とイオン銀行は、0.1%程度の金利引き上げなら借り換える方が損になるので、これによって他行に借り換える人は少ないと見越して金利を上げたのかもしれませんね。

そこでお勧めするのが、最も確実に利息を減らせる繰り上げ返済です。

この例であれば90万円を繰り上げ返済すれば総支払額は5,380万円となり、変動金利0.43%の場合と同じ(又はそれ以下)になります。両行ともネット銀行の特徴として、繰り上げ返済は手数料ゼロ円ですからこれを使わない手は無いでしょう。

イオン銀行の直近の金利を例として、借入額を5,000万円、残り期間35年という前提で90万円の繰り上げ返済という数字を出していますが、ご自身の金利と借入残高で把握したい場合は千日太郎が無料で公開しているスマホアプリのAI住宅ローンシミュレーターで計算できます。

またイオン銀行であれば、もう一つ対応方法があります。イオングループでの買い物が住宅ローンの完済まで5%オフになるという特典で取り戻す方法です。

0.43%と0.53%の毎月返済額の差は2,205円ですが、これが利息負担額の平均的な差ということですね。これをイオングループでの買い物5%オフで割り戻すと44,100円です。

食品や生活必需品などの買い物を意識的にイオングループのお店にまとめ、約4万円を維持していくようにすれば、0.1%程度の利上げは取り戻せているということになります。

前述した繰り上げ返済と併用すれば、より効果的になるでしょう。

多数派の銀行が変動金利を上げるタイミングは?

日銀が3月の会合でマイナス金利政策を解除するまで、民間銀行の目論みとしては、“日銀の利上げによって変動金利を上げられることを見越して、あえて今は変動金利を低く抑え、利用者を変動金利に集める。”というものが大半であったと思います。

しかし、前述のように3月の日銀利上げは金融緩和政策を継続する前提、続く4月の会合も緩和維持となっており、変動金利を上げられるまでまだ距離があることが分かってきました。

そこで民間銀行としては、“次回以降の日銀の利上げに期待する”という方針にシフトしていると見ています。大多数の金融機関が変動金利を上げるのは、追加利上げのタイミングからでしょう。

なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。

金利タイプ別2024年6月の金利予想

では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年6月の金利がどうなっていくのか予想していきます。

5月6日までの公開情報を前提とした予想になります。

【金利タイプ別】
2024年6月の金利予想

公的融資フラット35の金利動向

下のグラフは2024年2月から5月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。

オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

フラット35(買取型)と長期金利

該当月
(機構債発表日)
2月金利
(2024年1月19日)
3月金利
(2月21日)
4月金利
(3月15日)
5月金利
(4月18日)
長期金利0.65%0.73%0.78%0.89%
機構債の
表面利率
1.00%1.08%1.14%1.21%
フラット351.82%1.84%1.82% 1.83%

フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。

しかし、2月から5月の長期金利とフラット35の金利推移を見る限り、長期金利は右肩上がりに上昇しているのですが、フラット35の金利はほぼ横ばいで推移していますね。

その理由は住宅金融支援機構が国の子会社的な位置づけにあり、営利を目的としないからです。急激な金利の上昇時は国民の住宅金融の円滑化のために住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があります。

フラット35の金利上昇が長期金利や機構債の上昇に対して抑えられる傾向は、日銀がマイナス金利政策を解除した直後の4月から特に顕著となっています。

米国の長期金利の上昇が波及して国内の長期金利も上昇傾向にありますが、6月のフラット35の金利については、引き続き政策的に1.8%台の前半を維持すると予想しています。

民間の超長期固定金利の動向

マイナス金利政策解除後の3月から4月にかけては、三菱UFJ 銀行は0.05ポイント下げ、みずほ銀行は0.03ポイントの上昇、りそな銀行は0.1ポイントの大幅上昇としており、銀行によって対応の差がありました。

しかし4月から5月にかけて、これら主要銀行は軒並み0.1ポイント前後の引き上げとしています。

固定タイプの金利が長期金利に連動するというのはあくまで建前です。建前通りに金利を下げるケースもあれば、銀行の金利先高観からあえて上昇させるケースもあるのです。

現在は日銀の追加利上げの時期と上げ幅に注目が集まっていますが、その読みが銀行によって異なり、固定タイプの金利に表れています。

5月から6月にかけて、一部の銀行では横ばいとする可能性もありますが、多数派の銀行で若干の上昇と予想しています。

20年前後の長期固定金利の動向

20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする傾向が強くなっていました。

しかし、SBI新生銀行は少し前から20年固定を下げてきており、3月から5月にかけては、多数の銀行が金利を上げるなか、1.35%で横ばいとしています。

SBI新生銀行の特徴として、住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動しないためです。

このような一部の例外を除き5月から6月にかけて若干の上昇傾向が続くと予想しています。

10年固定金利の動向

10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。

前月の予想では、長期金利の上昇傾向から若干の上昇と予想しており、それが的中しています。

10年の固定期間は住宅ローンの固定金利としては短い方になるので、金融機関の間で日銀による追加利上げ期待があるうちは、どうしても上昇圧力がかかります。

5月から6月にかけては、日銀の追加利上げ期待を反映して上昇傾向が続くと予想しています。

変動金利の動向

変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。前述のように利上げとしては「ノーカウント」となっており、一部の例外を除き、主要銀行の変動金利は横ばいとなっています。

逆に変動金利を下げたのが三井住友信託銀行とSBI新生銀行ですが、基準金利を下げているのではなく、引き下げ幅を拡大させる従来と同じ方式で下げていることから、詳細解説は省きます。

次の追加利上げでは横並びで基準金利が上がる可能性がありますが、さしあたり6月の会合で利上げ可能性は低く横ばいで推移すると予想しています。

まとめ~変動金利のポイントはいつ上がる?からどれだけ上がる?へ変わった

本文でも述べたとおり、気の早い一部の銀行はすでに変動金利を上げています。

変動金利については、今後上がることは既定路線となっており、どれだけ上がるのか?に議論が移っています。

本文では差し当たり今回の0.1%上昇を前提としていますが、35年の長きにわたる住宅ローンの返済期間ではさらに複数回の利上げを経験するでしょう。

変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。

早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。

民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。

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