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2024年8月の住宅ローン金利予想

7月日銀会合が分かれ目になる?国債買い入れ減少が住宅ローン金利に及ぼす影響と2024年8月の住宅ローン金利を専門家が予想

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こんにちは公認会計士の千日太郎です。

日銀は7月30、31日の金融政策決定会合で国債の買い入れ減少計画を決定することを予定しており、国債買い入れの減額計画について市場関係者から意見を聞くとしています。

さらに日銀の植田総裁は7月の会合で追加利上げする可能性も否定していません。

国債の買い入れ減は実質的に金融の引き締めであると言われています。その引き締め具合を決める7月会合の結果によっては、住宅ローン金利動向の大きな分かれ目となる可能性は十分にあります。

こちらは2024年7月から8月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。

住宅ローンの金利予想
金利タイプ 7月参考(※)8月予想

フラット35

(買取型)

1.84%~1.85%前後
民間の長期固定金利1.6%~1.9%台

若干の上昇

又は横ばい

20年固定金利1.3%~1.7%台

若干の上昇

又は横ばい

10年固定金利0.9%~1.3%台

若干の上昇

又は横ばい

変動金利 0.3%台~7月会合で追加利上げなければ横ばい

※ 7月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。

この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年8月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。

※当記事の金利や情報は2024年7月9日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。

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日銀マイナス金利政策解除後の長期金利の推移

こちらは2024年3月1日から2024年7月9日までの日米の長期金利の推移をグラフにしたものです。

日米長期金利

黄色の折れ線グラフは日本の長期金利です。3月18日19日の会合でマイナス金利政策解除を決定し、短期金利を0%~0.1%程度で推移するよう促すとしました。

6月13日14日の会合では短期金利を据え置きましたが、長期国債の買い入れを減額していく方針を決め、市場参加者の意見も確認して7月の会合で今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定することとしました。

6月会合の直後から長期金利が再び上昇に転じています。

オレンジの折れ線グラフは米国の長期金利です。6月に入ってから大きく金利が上下している背景には、世界的にはインフレが鎮静化している中で米国ではインフレが根強く残っており、新たに発表される経済統計やFRB幹部の声明に市場が過剰に反応しているためです。

欧州では利下げ開始後の金融緩和政策が難所であると言われています。

米金融危機や欧州債務危機のように景気刺激や市場安定のために大盤振る舞いする緩和政策ではなく、インフレを再燃させずに金融引き締めを徐々に緩めていく微妙なアクセルワークが必要になります。

その点日銀は他の主要中銀とは真逆で今後は国債の買い入れ減額によって、金融緩和から金融引き締めへ舵を取ります。

そもそも、日銀による国債の買い入れ自体はイールドカーブ・コントロールの前から金融緩和政策として行われてきました。

日銀がお金を払って国債を買い入れることで市中のお金(マネタリーベース)を増やす。あまり余るほどのお金を市中に流すことで物価の引き上げを促し、デフレを脱却することが目的だったのです。

6月までは金融緩和政策は続けたのですが、7月の日銀政策決定会合ではこの国債買い入れを減額する具体的な計画を決めるとのことですので、事実上の金融引き締めに移っていく予告をしたということです。

日銀の7月会合後にメガバンクがとる方針とは?

3月の会合で日銀が行ったマイナス金利政策解除は、表面的にはマイナス0.1%の短期政策金利をゼロ%に上昇させる利上げではありましたが、より強調されたのは金融緩和政策を継続するというものでした。

その後4月はこれを維持、そして6月の会合では事実上の金融引き締めへ舵を切ったということになります。

2024年に入ってからの日銀の政策転換と変動金利を上げた銀行をまとめると下表のようになります。

日銀会合月と決定内容変動金利を上げた銀行上げ幅
3月会合
マイナス金利政策解除を決定し短期金利を0%~0.1%程度で推移するよう促す。

住信SBIネット銀行

イオン銀行

店頭基準金利を0.1ポイント上げ、そこからの引き下げ幅を0.1ポイント上げた。

これにより過去から借りている人の金利は0.1ポイント上昇し、新たに借りる人は横ばいとした。

楽天銀行店頭基準金利を上げ、過去から借りている人も新たに借りる人も同じ上げ幅(3月~7月までに0.137ポイント)上昇した。

6月会合

国債の買い入れ減少を決定し、国債買い入れの減額計画について市場関係者から意見を聞く。

auじぶん銀行

店頭基準金利は横ばいとし、そこからの引き下げ幅を0.01ポイント下げた。

これにより過去から借りている人は横ばい、新たに借りる人は0.01ポイントの上昇とした。

今のところ、変動金利を上げた銀行はネット銀行のみ、その上げ幅は非常に小さなものとなっています。

メガバンクをはじめとする多数派の銀行は、日銀が分かりやすく金融引き締めへ政策転換するタイミングを待っており、日銀が7月に短期政策金利を上げるとなれば、ネット銀行以外の銀行も変動金利を上げる可能性があります。

ただし、千日太郎の予想としては多数派の銀行が変動金利を上げていくのは、まだまだ先になるであろうと見ています。

その主な理由はメガバンクの好調な業績です。三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクは令和5年度の決算は極めて好調で、三菱UFJと三井住友では過去最高益を計上しています。

急いで住宅ローンの変動金利を上げる必要はなくなっているのです。

銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが銀行業の利益の源泉です。

既存の融資金利だけ上げても早い段階で頭打ちになると考えます。

預金が無ければ貸すお金がないわけですからね。銀行としては、まずは預金利息に魅力を感じてもらって多くの預金を集め、しかる後に伸びる事業をやっている会社にどんどんお金を貸すことでドンドン儲かると考えるわけです。

三井住友銀行は、インターネットバンキングを使用した場合の振込手数料を、ほかの銀行宛ての場合、振込金額3万円以上は330円と設定していますが、2024年10月1日からは220円に引き下げるとしています。

三菱UFJ銀行は口座を持っていない人を対象に、スマホで新規口座開設・10万円定期預金で1万円還元のキャンペーンを開始するなど、預金の獲得に乗り出しています。

多数派を占める伝統的な民間銀行が変動金利を上げる前の段階として、変動金利を上げても預金者が他行へ流れていかないような状態を作ろうとするだろうと見ています。

メガバンクとしてはまずは預金金利を上げて預金者を獲得し、他行に逃げられない状態をつくるのが急務であり、それが一段落してから徐々にすこしずつ貸出金利を上げていく手法をとるでしょう。

なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。

金利タイプ別2024年8月の金利予想

では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年8月の金利がどうなっていくのか予想していきます。

7月9日までの公開情報を前提とした予想になります。

【金利タイプ別】
2024年8月の金利予想

公的融資フラット35の金利動向

下のグラフは2024年4月から7月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。

オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

フラット35(買取型)と長期金
(機構債発表日)

 4月金利

(3月15日)

5月金利

(4月18日)

 6月金利

(5月22日)

7月金利

(6月21日)

長期金利 0.78%0.89%0.97% 0.95%
機構債の表面利率1.14%1.21%1.30%1.28%
フラット351.82%1.83%1.85%1.84%

フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。

4月から7月の長期金利とフラット35の金利推移を見る限り、長期金利は右肩上がりに上昇しているのですが、フラット35の金利はほぼ横ばいで推移していますね。

その理由は住宅金融支援機構が国の子会社的な位置づけにあり、営利を目的としないからです。急激な金利の上昇時は国民の住宅金融の円滑化のために住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があります。

フラット35の金利上昇が長期金利や機構債の上昇に対して抑えられる傾向は、日銀がマイナス金利政策を解除した直後の4月から特に顕著となっています。

マイナス金利解除後の国内の長期金利は上昇傾向にありますが、8月のフラット35の金利については、引き続き上昇が抑えられ、上がったとしても1.85%程度であろうと予想しています。

民間の超長期固定金利の動向

マイナス金利政策解除後、4月から6月にかけての民間の35年の超長期固定金利タイプは、軒並み0.2ポイント前後の引き上げなっていました、

しかし6月から7月にかけては一転して0.1~0.15ポイント程度下げる銀行が出てきています。

現在は7月の日銀会合で追加利上げの可能性に注目が集まっていますが、その読みが銀行によって異なり、固定タイプの金利に表れていると考えられます。

また、前述した伝統的な銀行業の収益構造から、利上げに先立って預金者の獲得が優先されるため、融資金利の上昇にブレーキがかかっているのかもしれません。

8月の超長期固定金利は7月の日銀会合の影響を大いに受けるはずですが、今のところ上昇は抑えられる傾向にあると予想しています。

20年前後の長期固定金利の動向

20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっており、6月から7月にかけては金利を下げています。

8月の20年固定金利は7月の日銀会合の影響を大いに受けるはずですが、今のところ上昇は抑えられる傾向にあると予想しています。

最低金利を出しているSBI新生銀行については3月から6月にかけて多数の銀行が金利を上げるなか、1.35%で横ばいとしています。

SBI新生銀行の特徴として、住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動しないためです。

SBI新生銀行の20年固定は8月も横ばいと予想しています。

10年固定金利の動向

10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。

しかし4月から6月にかけてはSBI新生銀行を除き連続して上昇となっています。

mozi 10年の固定期間は住宅ローンの固定金利としては短い方になるので、金融機関の間で日銀による追加利上げ期待があるうちは、どうしても上昇圧力がかかります。

8月の10年固定金利は7月の日銀会合の影響を大いに受けるはずですが、今のところ上昇は抑えられる傾向にあると予想しています。

変動金利の動向

変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。そのため、7月の日銀会合で追加利上げが決定されれば、変動金利を上げる銀行が増えることが予想されます

ただし、前述した伝統的な銀行業の収益構造から、利上げに先立って預金者の獲得が優先されるため、融資金利の上昇にはブレーキがかかるでしょう。

ただし千日太郎個人としては、7月の日銀会合で追加利上げの可能性は低いと見ています。メインの予想として変動金利は横ばいで推移すると見ています。

まとめ~これから住宅ローンを借りる人に必要な心がまえ

6月の日銀会合では、国債の買い入れ減額の方針が決定されており、事実上の金融引き締めがスタートすることになります。

ただしこれはインフレ抑制のためにドンドン金利を上げていく欧米型の金融引き締めではなく、黒田バズーカに象徴されたような異次元の金融緩和政策を正常化し、緩和的でありながらも「金利のある世界」に戻すことにあるというのは変わらないでしょう。

あくまで千日太郎個人の見解ではありますが、7月に追加利上げは無いと見ており、これから変動金利で借りている人の金利が短期的にドンドン上がるということは無いので安心してよいと思います。

しかし金利ある世界で変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。

早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。

民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。

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