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2024年9月の住宅ローン金利予想

7月日銀の追加利上げが住宅ローン金利に及ぼす影響と2024年9月の住宅ローン金利を専門家が予想

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こんにちは公認会計士の千日太郎です。

日銀が7月30日31日の会合で0.15ポイントの追加利上げを決定し、メガバンクを筆頭に主要銀行が相次ぎ9月、10月からの短期プライムレート(短プラ)を0.15~0.25ポイント上げることを決めています。

住宅ローンの変動金利の店頭基準金利は短プラに連動するため、変動金利で住宅ローンを借りている人の金利負担が上がることになります。

ただし、金利ある世界への過渡期のタイミングである今は、住宅ローンの適用金利について銀行によって対応に差が出る可能性があると見ています。

抜け駆けて変動金利を上げない銀行が出てくる可能性、変動から固定への借り換え需要を狙って固定金利を下げる銀行が出てくる可能性はあると思います。

こちらは2024年8月から9月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。

住宅ローンの金利予想
金利タイプ8月参考(※)8月予想

フラット35

(買取型)

1.85%~1.83~1.84%前後
民間の長期固定金利1.7%~2.0%台

銀行により対応が分かれる

20年固定金利1.3%~1.8%台銀行により対応が分かれる
10年固定金利0.9%~1.3%台金利上昇の傾向はあるが上昇幅は抑えられる
変動金利0.3%台~0.15%の上昇又は横ばい

※ 8月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。

この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年9月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。

※当記事の金利や情報は2024年8月11日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。

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株価下落で日銀はタカからハトへ?

こちらは2024年4月1日から8月9日までの日経平均株価と長期金利の推移です。利上げの決定があった7月末を境として株価と金利が大幅に低下しています。

日経平均と日本の長期金利

7月31日の利上げ会合後の総裁会見では、記者から日本の政策金利が過去30年0.5%を超えたことが無い、0.5%以上の利上げを判断するにあたり、現状と比べて更に追加で必要な材料があるのかとの質問に対して、今の見通しのままでも引き続き金利を上げていくし、0.5%を超えることもあるという趣旨の回答を行いました。

特に0.5%を超えることもあるということが市場に大きな衝撃となって円高と株安がすすみ、8月5日の為替は1ドル142円台、日経平均終値は前週末比4,451円28銭安の31,458円42銭。1987年10月ニューヨーク株式市場の大暴落ブラックマンデー翌日に付けた3,836円48銭をはるかに超える史上最大の下げ幅であったことが報じられています。

翌日には反動で買い戻されて記録的な上げ幅となりましたが、下落前の水準までには回復していません。

8月7日には日銀の内田副総裁が北海道函館市で記者会見し、今後の利上げについて「金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない」と述べ「(日銀の)政策変更に伴って円安の修正が進んだ。これが、株価がより大きく下落した要因の一つだ」との認識を示しました。

7月の植田総裁の記者会見を全て観たのですが、個人的な印象としては植田総裁が前触れもなくタカ派発言を行ったことに驚きました。これがここまでの株安を引き起こすとは思っていなかったのですが、それは日銀も同じでしょう。

日銀にとっては、追加利上げについてこれまでより慎重に考える要素が生じており、今後の利上げペースはかなり鈍化するものと見ています。

主要銀行は軒並み短プラを上げたが今後は対応が分かれる可能性も

7月の追加利上げを受けてメガバンクをはじめとする主要銀行が短期プライムレート(短プラ)又は変動型住宅ローンの基準金利の上昇を決めています。

銀行の種別短プラ、変動型住宅ローンの基準金利の動向
3大メガバンクほか多くの地銀

9月から短期プラを0.15%上昇する。

変動型住宅ローンの基準金利も同様に上がる可能性が高い。

住信SBIネット銀行

10月から短期プラを0.15%上昇する。

既に5月に0.1%上げているので通算0.25%上昇となる。

変動型住宅ローンの基準金利も上がる可能性が高い。

auじぶん銀行

10月から変動型住宅ローンの基準金利を0.25%引き上げると発表。

3大メガバンクと住信SBIネット銀行の短プラ上昇の決定は日銀植田総裁の「タカ派」記者会見の翌日であり、その後の株安と内田副総裁の「ハト派」会見よりも前です。

つまり、日銀の利上げが今後早いペースで行われることを想定しての利上げと見られます。

これに対してauじぶん銀行の利上げ決定は8月9日であり株安後の副総裁ハト派会見よりも後に公表されています。

個人的な感想ですが、今上げておかないと上げ時を逃してしまうという意味合いが含まれているような気がします。

ほぼ全ての銀行が変動型の住宅ローン金利を上げる方向に舵を切っているように見えますが、今の時点で変動金利を上げることを明言しているのはauじぶん銀行だけです。

株価下落でハト派に鞍替えした日銀が追加の利上げをする時期はかなり後退することが予想されるため、住宅ローンの金利をどうするかについては、銀行によって対応に差が出てくる可能性は残されています。

銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが銀行業の利益の源泉です。

リスク回避で安全資産への回帰は銀行にとって預金を獲得するチャンスでもあります。抜け駆けして住宅ローンの金利を上げない銀行も出てくる可能性があるわけですね。

なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。

金利タイプ別2024年9月の金利予想

では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年8月の金利がどうなっていくのか予想していきます。

8月11日までの公開情報を前提とした予想になります。

【金利タイプ別】
2024年9月の金利予想

公的融資フラット35の金利動向

下のグラフは2024年4月から8月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。

オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

フラット35(買取型)と長期金
(機構債発表日)

 4月金利

(3月15日)

5月金利

(4月18日)

 6月金利

(5月22日)

7月金利

(6月21日)

8月金利
(7月19日)
長期金利 0.78%0.89%0.97% 0.95%1.03%
機構債の表面利率1.14%1.21%1.30%1.28%1.34%
フラット351.82%1.83%1.85%1.84%1.85%

フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。

4月から8月の長期金利とフラット35の金利推移を見る限り、長期金利は右肩上がりに上昇しているのですが、フラット35の金利はほぼ横ばいで推移しています。

その理由は住宅金融支援機構が国の子会社的な位置づけにあり、営利を目的としないからです。急激な金利の上昇時は国民の住宅金融の円滑化のために住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があります。

フラット35の金利上昇が長期金利や機構債の上昇に対して抑えられる傾向は、日銀がマイナス金利政策を解除した直後の4月から特に顕著となっています。

7月の追加利上げで長期金利は下がっていますが、これまでの長期金利の上昇局面でフラット35の上昇を抑えていた分、同じ幅でフラット35が下がるとは考えにくいです。

今後の長期金利が0.8%~0.9% 前後の水準で推移していくとすれば、フラット35の金利は5月か8月くらいの水準に落ち着くと見ています。9月のフラット35の金利については、1.83~1.84%前後と予想しています。

民間の超長期固定金利の動向

マイナス金利政策解除後、4月から6月にかけての民間の35年の超長期固定金利タイプは、軒並み0.2ポイント前後の引き上げなっていました、

しかし7月以降、追加利上げの決まった8月にかけては逆に0.1~0.15ポイント程度下げる銀行も出てきています。

現在は7月日銀の追加利上げと短プラの引き上げに注目が集まっていますが、預金と融資の利ザヤを追求する伝統的な銀行業の収益構造から、預金者の獲得を優先して融資金利の上昇にブレーキがかかっているのかもしれません。

また、変動金利が横並びで上がるタイミングには、固定金利への借り換えニーズが高まるタイミングでもあります。

固定金利はこれまで上昇傾向にありましたが、まだゼロ金利時代の感覚を引きずった低金利ではあるのです。

変動から固定に乗り換えたい住宅ローン利用者を受け皿とする銀行が出てくる可能性があるのです。

9月の超長期固定金利は銀行の営業方針によって上げる銀行と下げる銀行に分かれてくると予想しています。

20年前後の長期固定金利の動向

20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。

そのため、超長期固定金利と同様に変動から固定に乗り換えたい住宅ローン利用者を受け皿とする銀行が出てくる可能性があります。

9月の20年固定金利は超長期固定金利と同様に上げる銀行と下げる銀行に分かれてくると予想しています。

また、SBI新生銀行の住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動せず、SBI新生銀行の20年固定は9月も横ばいと予想しています。

10年固定金利の動向

10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。

4月から6月にかけては、SBI新生銀行を除き、軒並み0.2ポイント前後の引き上げなっていました。

しかし7月以降、追加利上げの決まった8月にかけては逆に0.05ポイント程度下げる銀行も出てきています。

金利動向としては超長期固定金利と似ているのですが、金利を下げるときの下げ幅が小さいですね。固定期間が短い分だけ日銀による追加利上げ期待があるうちは、どうしても上昇圧力があるのです。

9月の10年固定金利は今後の利上げペースを銀行がどう予想するかで対応が分かれそうです。今のところ日銀副総裁のハト派発言により上昇は抑えられると予想しています。

変動金利の動向

変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。

前述のとおり7月の日銀会合で追加利上げが決定されたこと、主要銀行が短期プライムレートの上昇を決めていることから9月から10月にかけて0.15~0.25%の金利上昇が予想されます。

ただし、前述した銀行業の収益構造から、預金者獲得のために抜け駆けして住宅ローンの金利を上げない銀行が出てくる可能性があります。

ただし、こうした対応のバラつきは過渡期に特有のものであり、日銀が(ゆっくりでも)利上げを継続していく以上は、最終的に同じような上げ幅に収束していくものと考えられます。

まとめ~7月利上げ後に変動金利を借りる人の心構え

7月の日銀会合で追加利上げが決定されましたが、これが引き金となった記録的な株価下落が今後の日銀の利上げペースを鈍化させることと思います。

現状の日銀の政策方針は金融引き締めではなく金融緩和です。

金融緩和政策を正常化し、緩和的でありながらも「金利のある世界」に戻すことにあるというのは変わらないでしょう。

前回の千日太郎個人の予想では、7月に追加利上げの可能性は低いと見ていたので予想を外したことになります。

しかしこの前倒しで行った利上げが市場から大きな反発を受けたことで、次の利上げ時期はいくらか後退したものと思います。

しかし金利ある世界で変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。

早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。

民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。

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