
10月に主要銀行で分かれた変動金利の営業戦略から2024年11月の住宅ローン金利を専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
住宅ローンの変動金利の店頭基準金利は短プラに連動するのですが、10月の変動金利については主要銀行でもその対応に違いがあり、まさに千日太郎の予想が的中となりました。
また一部のネット銀行では変動金利を上げる一方で長期金利の低下から10年固定タイプを下げる動きも見られ、今後は変動から固定への借り換え需要を狙って固定金利を下げる銀行が増えてくる可能性があります。
こちらは2024年10月から11月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 10月参考(※) | 11月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.82%~ | 1.80~1.85%で推移 |
民間の長期固定金利 | 1.6%~2.2%台 | 上昇傾向 |
20年固定金利 | 1.3%~1.7%台 | 上昇傾向 |
10年固定金利 | 0.9%~1.2%前後 | 銀行により分かれる |
変動金利 | 0.4%台~ | 横ばい |
※ 10月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年11月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2024年10月10日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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9月の日銀会合では政策金利の据え置きと『時間的余裕』
こちらは2024年6月3日から10月9日までの日経平均株価と長期金利の推移です。
利上げの決定があった7月末を境として日経平均株価と長期金利が大幅に低下しました。

7月31日の金融政策決定会合で日銀が政策金利を0.15%引き上げた後、総裁会見でのタカ派寄りの回答が市場に大きな衝撃となったことに加え、米国の景気後退懸念も重なって円高と株安がすすみ、8月5日にはブラックマンデーを超える史上最大の下げ幅となりました。
その後株価は戻ったのですが、長期金利は利上げ前の1~1.1%前後の水準から0.8%台に急低下し、直近では米国の経済指標の好調さから上昇傾向にありますが、未だ利上げ前の水準までは戻っていません。
先行き不安のある局面では国債が買われることで長期金利の低下圧力がかかります。
9月の日銀会合では政策金利が据え置かれましたが、会合後の総裁会見では政策判断に当たって、内外の市場動向やその背後にある海外経済の状況を丁寧に確認していく「時間的な余裕はある」との発言もあり、今後の日銀の追加利上げはペースダウンすると見ています。
変動金利の規定は銀行により千差万別で上昇にタイムラグがある
10月には多くのメガバンクや地銀でき住宅ローンの変動金利が0.15%の上昇となっています。
しかし一部の銀行では、変動金利タイプのウェブサイトでの表示が横ばいとなっており、銀行によって戦略の違いが顕在化しています。
そこでこのような銀行については今後も金利が上がらないのか?と期待されている方も多いと思います。
しかし、そういうことはありません。一見上がっていないように見える銀行でも、ほとんどの銀行が既存客の基準金利を0.15%以上引き上げており、それをあえて公開していないだけなのです。
既存客には個別に郵送等で基準金利の改訂をお知らせするルールとしている銀行が多数派なのです。
また、新規客についても、銀行によっては短プラを上げてから基準金利を上げるまでに最長6か月のタイムラグが生じるような調整を行っている銀行もあります。
こうした銀行のウェブサイトでは、今年の10月の新規客に対する基準金利が上がっていないように見えていても、6か月後の来年4月あたりには時間差で基準金利が上がることになります。
多くの銀行では、変動金利の5年ルールが適用されているため、基準金利が上がっても5年間は毎月の元利均等返済額は変わりません。
そのかわり利息の支払が増える分だけ元本の減りが遅くなります。
銀行からの郵便物をよく確認しないでいると、金利上昇に伴って毎月増えた利息分を銀行に吸い取られ続けるので、負担が重くなるまで気づかない可能性もありますね。
変動金利の5年ルールは金利が上昇しても5年間は毎月の元利均等返済を据え置くため、毎月の家計にすぐにはダメージかないという点で、基本的にわたしたち債務者側にメリットのあるルールです。
しかし、金利上昇が毎月返済額にダイレクトに表れないことが逆にアダとなってしまう側面もあるため注意が必要です。
変動金利の基準金利の改定ルールは銀行ごとに独自のものとなっており、ウェブサイト上で公開していない銀行も多くあり、その読解方法も複雑であるため、具体的にご自身の場合はどうなるのかについては、自分だけで判断せず、銀行に直接問い合わせのうえ確認することをお勧めします。
たいていの銀行は返済中の利用者からの問い合わせのために、住宅ローン専用の電話窓口を設置しています。
なお、現時点では金利が上がったとはいえ小幅な上昇であるため、差し当たって家計には大きな影響のない人が多いと思いますが、残りの借入期間にわたる長期の支出増ですから、ご自身の借入残高で毎月いくらの影響があるかは確認しておくべきでしょう。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2024年11月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年11月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
10月10日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2024年11月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年6月から10月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジ色の折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

(機構債発表日) | 6月金利 (5月22日) | 7月金利 (6月21日) | 8月金利 (7月19日) | 9月金利 (8月22日) | 10月金利 (9月19日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.97% | 0.95% | 1.03% | 0.87% | 0.82% |
機構債の表面利率 | 1.30% | 1.28% | 1.34% | 1.17% | 1.16% |
フラット35 | 1.85% | 1.84% | 1.85% | 1.82% | 1.82% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしこのグラフによると、長期金利が上がっても下がっても、フラット35の金利がほぼ横ばいで推移しています。
住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があり、ここ最近は金利低下時も下げない傾向が続いているのです。
つまり今後の長期金利がこれまでと同じくらいの水準で推移していくとすれば、11月のフラット35の金利についてはこれまで同様に1.80~1.85%前後で推移すると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
3月のマイナス金利政策解除後は全体的に上げる銀行が多かったのですが、8月から9月にかけては多くの銀行が長期金利の低下に伴い0.1~0.2ポイント下げました。
しかし9月から10月にかけては0.1ポイント未満の微妙な上昇としている銀行が多いようです。
マイナス金利政策の解除後は、上がったり下がったりの繰り返しなのですが、下がり幅よりも上がり幅の方が大きく、趨勢としては緩やかな上昇傾向となっていますね。
目下の長期金利は米国の金利上昇の波及を受けて上昇傾向にありますので、戦略的に金利を下げる銀行も出てくる可能性はありますが、上げる銀行の方が多いと予想しています。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
そのため、超長期固定金利と同様に変動から固定に乗り換えたい住宅ローン利用者を受け皿とする銀行が出てくる可能性があります。
11月の20年固定金利は超長期固定金利と同様に上げる銀行の方が多いと予想しています。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動せず、SBI新生銀行の20年固定は11月も横ばいと予想しています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
直近の9月から10月の動きとしても、超長期固定金利や20年固定金利とは異なり、上げるばかりではなく、下げるところもあり据え置く銀行もありとその対応は銀行によってバラバラです。
具体的にはauじぶん銀行と住信SBIネット銀行が10年固定金利を下げているのですが、この両行は変動金利で基準金利を0.25%上げており、他行が0.15%の上昇であるのに対して変動金利の上昇が大きくなっている点に注目しています。
もしかしたら変動金利を上げる分、固定金利で訴求しようとしているのかもしれません。そのため、10年固定金利については銀行によって対応が180度変わってくるものと予想しています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。
日銀が政策金利の据え置きを決めた9月の金融政策決定会合の主な意見が公開されており、その金融政策運営に関する意見のなかでは1%という短期政策金利の水準と時期に言及されています。
経済・物価がオントラックで推移していく場合、早ければ2025年度後半の1.0%という水準に向けて、段階的に利上げしていくパスを考えている。したがって、今回、政策金利は現状維持でよい。
現在は0.25%であり、1.0%まではあと0.75%です。一回の利上げが通常0.25%であることに鑑みれば2025年度後半までにあと3回利上げにチャレンジしようとしているわけですね。
なお、10月30、31日の会合では、最大の不確実性と位置付ける11月の米大統領選挙の影響を見極める必要性や前回利上げから3カ月しか経過していない点を踏まえれば、利上げの可能性はかなり低めであろうと見ています。
そのため、11月の変動金利は横ばいと予想しています。
まとめ~嵐の前の静けさか?
11月の住宅ローンについてはあまり大きな動きがあるとは予想していませんが、10月27日には日本では衆議院の解散総選挙の投開票、11月5日には米国では大統領選挙を控えています。11月は嵐の前の静けさかもしれません。
金利ある世界で変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。