9月の民間銀行短プラ上げと長期金利の低下から2024年10月の住宅ローン金利を専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
7月に日銀が0.15ポイントの追加利上げを決定し、9月からはメガバンクを筆頭に多数の地方銀行が短期プライムレート(短プラ)を0.15ポイント上げています。
住宅ローンの変動金利の店頭基準金利は短プラに連動するため、各行がそれぞれ定める金利の適用月から金利負担が増えることになります。
変動金利が上昇する一方で長期金利の低下から住宅ローンの固定タイプは低下してきています。今後は変動から固定への借り換え需要を狙って固定金利を下げる銀行が出てくる可能性があります。
こちらは2024年9月から10月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 9月参考(※) | 10月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.82%~ | 1.80~1.85%で推移 |
民間の長期固定金利 | 1.6%~2.2%台 | 下がる傾向 |
20年固定金利 | 1.3%~1.7%台 | 下がる傾向 |
10年固定金利 | 0.9%~1.3%台 | 下がる傾向 |
変動金利 | 0.3%台~ | 0.15%の上昇 又は横ばい |
※ 9月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年10月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2024年9月7日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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監修者イーデス編集部
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ブラックマンデー以来の株価暴落は戻ったが長期金利は戻らず
こちらは2024年5月1日から9月6日までの日経平均株価と長期金利の推移です。
利上げの決定があった7月末を境として日経平均株価と長期金利が大幅に低下しました。
7月31日の利上げ会合後の総裁会見では、政策金利を今後も引き続き上げていく、0.5%を超えることもあるというタカ派寄りの回答を行いました。
これが市場に大きな衝撃となったことに加え、米国の景気後退懸念も重なって円高と株安がすすみ、8月5日の為替は1ドル142円台、日経平均終値は1987年10月ニューヨーク株式市場の大暴落ブラックマンデー翌日に付けた3,836円48銭をはるかに超える史上最大の下げ幅となりました。
翌日には反動で買い戻されてこれも市場最大の上げ幅となり、現在は下落前の水準にもどってきています。
株価は戻ったのですが、長期金利は利上げ前の1~1.1%前後の水準から0.8%台に急低下し、その後に少し上がったものの、0.8~0.9%前後の水準で推移していることから、利上げ前の水準までは戻っていません。
これは10年国債の価格が利上げ前よりも高い水準にあることを意味します。国債は安全資産と言われ、先行き不安のある局面に多く買われることで価格が高くなる傾向があります。
個人的に7月利上げは一つの可能性として織り込んではいましたが、植田総裁が前触れなくタカ派発言を行ったことには驚きました。長期金利が戻らない背景には、市場が日銀の次の動向を読みかねていることがあるでしょう。
日銀としても、株価がここまで下落するとは見ていなかったはずです。今回の株価の乱高下は今後の日銀の追加利上げペースは鈍化させる要素と見ています。
主要銀行の短プラ上げと変動金利上昇のタイムラグ
メガバンク、地方銀行が相次いで短期プライムレート(短プラ)を0.15%上げるとした9月には住宅ローンの変動金利は横ばいでした。そのため、「まだ住宅ローンの変動金利には影響しないの?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、そうではありません。住宅ローンは各銀行が取り扱う商品であり、銀行ごとに変動金利の「見直し月」と「適用月」を独自に設定しているのです。
「見直し月」は短プラ上昇の後に新しい変動金利の基準金利を発表する月であり、この時点では新しい基準金利の発表だけでまだ借りている人の金利は上がりません。
そして「適用月」は見直し月で発表した金利が実際に適用になる月です。つまり、適用月から金利上昇分の負担が増えることになります。
下記は、この記事を執筆している時点でわかっている情報をまとめたものです。
銀行の種別 | 短プラ、変動型住宅ローンの基準金利の動向 |
---|---|
3大メガバンクほか多くの地銀 | 9月から短期プラを0.15%上昇する。 変動型住宅ローンの基準金利も同様に上がる可能性が高い。 |
住信SBIネット銀行 | 10月から短期プラを0.15%上昇する。 既に5月に0.1%上げているので通算0.25%上昇となる。 変動型住宅ローンの基準金利も上がる可能性が高い。 |
auじぶん銀行 | 10月から変動型住宅ローンの基準金利を0.25%引き上げると発表。 |
3大メガバンクほか多くの地銀で9月の変動金利が上がらなかった理由は、多くの銀行で「見直し月」が10月以降となっているためです。いずれにしても、変動金利が上がるのは時間の問題であろうということですね。
ただし、今の時点で変動金利を上げることを明言しているのはauじぶん銀行だけです。
株価下落で利上げに慎重となった日銀が追加の利上げをする時期は後退することが予想されるため、住宅ローンの金利をどうするかについては、銀行によって対応に差が出てくる可能性は残されています。
銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが銀行業の利益の源泉です。
リスク回避で安全資産への回帰は銀行にとって預金を獲得するチャンスでもあります。抜け駆けして住宅ローンの金利を上げない銀行も出てくる可能性があるわけですね。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2024年10月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年10月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
9月7日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2024年10月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年5月から9月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。
(機構債発表日) | 5月金利 (4月18日) | 6月金利 (5月22日) | 7月金利 (6月21日) | 8月金利 (7月19日) | 9月金利 (8月22日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.89% | 0.97% | 0.95% | 1.03% | 0.87% |
機構債の表面利率 | 1.21% | 1.30% | 1.28% | 1.34% | 1.17% |
フラット35 | 1.83% | 1.85% | 1.84% | 1.85% | 1.82% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしグラフの長期金利とフラット35の金利推移によると、長期金利が急上昇している期間にフラット35の金利がほぼ横ばいで推移しています。
住宅金融支援機構は急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があるのです。
その理由は住宅金融支援機構が国の子会社的な位置づけにあり、営利を目的とせず国民の住宅金融の円滑化を最優先するからです。
7月の追加利上げによって長期金利は低下傾向にありますが、これまでの長期金利の上昇局面でフラット35の上昇を抑えていた分、同じ幅でフラット35は下がりにくいと見ています。
今後の長期金利がこれまでと同じくらいの水準で推移していくとすれば、10月のフラット35の金利については、1.80~1.85%前後と予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
マイナス金利政策解除後、4月から6月にかけての民間の35年の超長期固定金利タイプは、軒並み0.2ポイント前後の引き上げなっていました。
しかし追加利上げの決まった7月から8月には一部に下げる銀行、そして8月から9月にかけては多くの銀行が長期金利の低下に伴い0.1~0.2ポイント下げています。
現在は7月日銀の追加利上げと短プラの引き上げに注目が集まっていますが、預金と融資の利ザヤを追求する伝統的な銀行業の収益構造から、預金者の獲得を優先して融資金利の上昇にブレーキがかかっているのかもしれません。
また、10月は多くの銀行で「見直し月」となっており、いよいよ変動金利が横並びで上がるタイミングとなり、固定金利への借り換えニーズが高まるタイミングでもあります。
変動から固定に乗り換えたい住宅ローン利用者を受け皿とする銀行が出てくる可能性があるのです。
10月の超長期固定金利はさらに下げる可能性があると予想しています。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
そのため、超長期固定金利と同様に変動から固定に乗り換えたい住宅ローン利用者を受け皿とする銀行が出てくる可能性があります。
10月の20年固定金利は超長期固定金利と同様に下げる可能性があると予想しています。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動せず、SBI新生銀行の20年固定は10月も横ばいと予想しています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。4月から6月にかけては、SBI新生銀行を除き、軒並み0.2ポイント前後の引き上げなっていました。
しかし追加利上げの決まった7月から8月には一部に下げる銀行、そして8月から9月にかけては多くの銀行が長期金利の低下に伴い0.1~0.2ポイント下げています。
金利の下げ幅は超長期固定金利と同じくらいなのですが、元の金利が低いためそのインパクトは大きいです。
そして10月は変動金利の基準金利が上がる「見直し月」であるため、10月の10年固定金利は超長期固定金利と同様に下げる可能性があると予想しています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。
日銀が追加の利上げを決めた7月の金融政策決定会合の主な意見が公開されており、その金融政策運営に関する意見のなかでも1%という短期政策金利の水準に言及されています。
2025年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきである。
中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある。
日銀は中立金利を最低1%とみていますが、あくまで会合時点の目安であり、現実にそうなるか?というとそれは誰にも分かりません。
変動金利を選ぶということは、先の見えない金利変動に対して情報収集と準備を行うこととセットになっているのです。
短期的には7月の日銀会合で追加利上げが決定されたこと、主要銀行が短期プラの上昇を決めていることから9月から10月にかけて0.15~0.25%の金利上昇が予想されます。
ただし、一部には預金者獲得のために抜け駆けして住宅ローンの金利を上げない銀行が出てくる可能性があります。
ただし、こうした対応のバラつきは過渡期に特有のものであり、日銀が(ゆっくりでも)利上げを継続していく以上は、最終的に同じような上げ幅に収束していくものと考えられます。
まとめ~「金利ある世界」に変動金利を借りる人の心構え
7月の追加利上げと総裁のタカ派発言が引き金となった記録的な株価下落によって、少なからず今後の日銀の利上げペースを鈍化させることと思います。
しかし、その後の副総裁や日銀委員のコメントによると、今後物価が見通しに沿って推移し、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など前向きな企業行動の持続性が確認されれば、金融緩和度合いのさらなる調整を進めて「金利のある世界」にしていくことが必要という基本スタンスは変えていないようです。
金利ある世界で変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。