能登半島地震で日銀大規模緩和からの出口は後退か?専門家が2024年2月の住宅ローン金利を予想
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このたびの令和6年能登半島地震で被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
1日も早い復旧・復興、そして平穏な日常が戻りますことを心よりお祈りいたします。
こんにちは公認会計士の千日太郎です。
昨年12月18日、19日の金融政策決定会合ではマイナス金利を含む大規模な金融緩和政策の現状維持が全員一致で決定され、2024年元旦に発生した能登半島地震の影響もあって日銀のマイナス金利政策解除は後退したとの見方が強くなっています。
こちらは2024年1月から2月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 1月予想 | 2月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.87%~ | 下がる又は横ばい |
民間の長期固定金利 | 1.30%台~ | 下がる |
20年固定金利 | 1.60%台~ | 下がる |
10年固定金利 | 0.90%台~ | 下がる |
変動金利 | 0.30%台~ | 横ばい |
※1月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から、2024年2月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2024年1月9日時点のものを記載しております。最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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能登半島地震の影響で日銀のマイナス金利政策解除は後退
こちらは2023年9月1日から2024年1月9日までの日本の長期金利と日経平均株価の推移をグラフにしたものです。
昨年7月と10月の金融政策決定会合で相次ぎYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の運用が修正され、長期金利は1%を「上限のめど」に修正し、1%を超えることを一定程度容認することを決めました。
これによってYCC政策はほぼ形骸化し一時は1%を超えそうな水準まで上昇しましたが、その後米国のインフレ鎮静化から米国金利が下がったことで下がりました。
さらに米国FOMCでは2024年に複数回の利下げ可能性が示唆され、12月の日銀会合では、マイナス金利を含む大規模な金融緩和政策の現状維持が全員一致で決定されたことでさらに金利が下がりました。
そして2024年には、元日に発生した能登半島地震が甚大な被害を及ぼしました。
日銀の植田総裁は全国銀行協会の会合で、「金融機能の維持および円滑な資金決済を確保するため銀行界と協力し、万全の措置を講じる」と述べ、能登半島地震で金融面に混乱が生じないよう全力を挙げる考えを明らかにしました。
これを受けて投資家の間では、マイナス金利政策の解除は後退するとの見方が強まっています。
こちらは2023年9月1日から2024年1月9日までの日米の長期金利の推移をグラフにしたものです。
黄色の折れ線グラフが日本の長期金利、オレンジが米国の長期金利です。日米を同じ目盛りで比較すると明らかですね。日本の金利よりも米国の金利の方がダイナミックに動いています。
ここ最近の日本の長期金利の動向の背景にはまず米国の金利動向があります。
米国の金利水準はインフレ鎮静化の兆しが見えたことから一時期よりも落ち着いてきており、日本も地震の影響を見極める必要から日銀の政策正常化が後退しているとの見方があるため、ここ最近では珍しく上昇する要素の少ない時期にさしかかっています。
銀行の営業方針~能登半島地震の被害が落ち着くまでは動けない
能登半島地震の影響は日銀の政策だけでなく、民間銀行の営業方針にも影響します。
日本銀行は能登半島地震を受けて、民間銀行に対して被災者への対応などを要請しており、銀行各社は、通帳などをなくした場合でも預金の引き出しができるなどとしています。
さらに能登半島地震に伴う災害が、災害救助法の適用を受けることになりました。
地震の被害によって住宅ローンなどの返済が続けられない、または近い将来弁済できないことが確実と見込まれる個人の債務者は「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を活用することにより、金融機関に対して住宅ローンなどの免除・減額を申し出ることができます。
このガイドラインを活用することで、弁護士等の「登録支援専門家」による手続支援を無料で受けられる。財産の一部を手元に残せる(具体的には個別事情により異なる)。
債務整理したことが個人信用情報(いわゆるブラックリスト)として登録されないといったメリットがあります。
つまり金融機関としても、能登半島地震による債務免除や減額への対応が一段落するまでは、基準金利を上げるといった対応をやりくいわけですね。
昨年、ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に12月1日~6日に実施したアンケートによると、日銀が政策金利を引き上げる時期は、4月の会合までの予想が67%となったそうですが、ここで再びアンケートを行ったとしたら、時期を後ろ倒しに修正するエコノミストが増えそうです。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2024年2月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年2月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
1月9日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2024年1月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは昨年10月から1月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。
該当月 (機構債発表日) | 10月金利 (2023年9月21日) | 11月金利 (2023年10月20日) | 12月金利 (2023年11月17日) | 2024年1月金利 (2023年12月15日) |
---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.72% | 0.84% | 0.79% | 0.67% |
機構債の 表面利率 | 1.08% | 1.16% | 1.11% | 1.05% |
フラット35 | 1.88% | 1.96% | 1.91% | 1.87% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
直近では米国のインフレ鎮静化の影響から長期金利が下がっています。国内では能登半島地震の影響によって、日銀の大規模金融緩和政策の出口が後退するとの見方が強くなっており、長期金利は低下傾向が続いています。
またフラット35の子育て支援策は、2024年2月13日資金受取分から新制度が適用となり、ポイント上限と金利引き下げ幅が拡大されます。2月にはこの制度がスタートするため、これまで政策的に金利を下げていたのを意図的にやめる可能性も考えられます。
2024年2月は長期金利の低下要因と政策による上昇要因が相殺されると見ており、1月よりも若干下がるか、横ばいで推移すると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
昨年12月から1月にかけて、フラット35は0.04ポイント下がりましたが、民間の超長期固定金利は0.1ポイント前後の大幅な低下となっています。
主要銀行では、りそな銀行は12月の1.485%から1月は1.395%へ0.09ポイント下がり、みずほ銀行は12月の1.77%から1月は1.68%へ0.09ポイント下がりました。
そして昨年11月から12月にかけて金利を上げた三菱UFJ銀行は、12月の1.89%から1月は1.82%へ0.07ポイント下がりました。
固定タイプの金利が長期金利に連動するというのはあくまで建前です。建前通りに金利を下げるケースもあれば、銀行の金利先高観からあえて上昇させるケースもあるのです。
三菱UFJ銀行は昨年11月から12月にかけてはメガバンクで唯一上げた銀行ですが、その三菱UFJ銀行が12月から1月にかけて金利を下げたということは、他の銀行にも波及しそうです。
能登半島地震の影響から金利が上がる可能性はかなり後退していますが、すでに低金利を反映して大幅に金利を下げているため、あまり下がり代が残っていないとも考えられます。
2月の予想としては、若干の低下又は横ばいで推移すると見ています。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする銀行が相次いでいます。
ここ最近は市場の長期金利の動向にあわせて、超長期固定金利タイプと同じ変動幅で推移する傾向が続いています。
そのため、若干の低下又は横ばいと見ています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
昨年の11月から12月にはメガバンクが10年固定を下げるなか、三菱UFJ銀行が0.08ポイント金利を上げました。当時は、日銀のマイナス金利政策解除が近いと見たためと考えられます。
そして12月から1月にかけて、三菱UFJ銀行は0.1ポイント低下させています。これはマイナス金利政策解除の予想を後ろ倒しに修正したためと考えられます。
住宅ローンに力を入れている銀行については金利を下げる可能が高く、3月の需要期を前にして10年固定を下げる可能性が期待できます。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が決める短期政策金利の影響を受けます。
前述のように能登半島地震の影響で日銀が1月の政策決定会合でマイナス金利政策を解除する可能性はかなり後退しています。
1月から2月は横ばいで推移すると予想しています。
まとめ~複数の住宅ローンで審査を通す重要性
昨年までは2024年の早い時期での利上げが強く意識されていましたが、元日に発生した能登半島地震の影響から、その予想は後退しつつあります。
また、日銀がマイナス金利を解除したとしても、米欧諸国ほど急激に政策金利を上げていくことは無いでしょう。
しかしそれはあくまで数か月単位で様子をみるというものであり、年単位ではないと見ています。
住宅ローンの返済期間は最長35年の長きにわたります。変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。
また、長期金利の動向としては米国ほど大きな上昇にはならないとしても、今までの上昇幅よりも大きな上昇となる可能性が高いでしょう。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。