個人事業主になるには開業届が必要?開業届について正しい知識を身につけよう
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個人事業主になるためには開業届を税務署に提出する必要があります。
厳密に言うと職種や業態によっては開業届以外にも提出しなければならない書類があり、従業員を雇うとなるとさらに手続きが必要です。
この記事では個人事業主を目指す人に向けて、以下について解説していきます。
ぜひ最後まで目を通していただき、個人事業をはじめるときの参考にしてみてください。
個人事業主のクレジットカードについては、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。

福岡大学法学部法律学科卒業。
1995年4月 情報通信会社入社。
2006年11月 ファイナンシャル・プランニング技能士1級取得。
2017年10月 独立。
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆および監修も行い、現在年間200本以上の執筆および監修をこなしている。これまでの執筆および監修実績 は1,000本以上に及ぶ。
監修実績
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個人事業主になるには税務署への開業届の提出が必要
個人事業主は税務署へ開業届を出すことで正式に名乗れるようになります。
開業届を出さずに個人事業主を名乗るフリーランスの方もいますが、「自称」にしかならず、公的に個人事業主と認められるには開業届を出さなければならないのです。
一般的に「開業届」と言われていますが、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類になります。
事業所得に対して所得税が課されることはみなさんご存知だと思いますが、事業規模が大きくなると個人事業税も課されます。
さらに消費税の課税事業者になると消費税についても申告して納めなければなりません。
それぞれの税金は国税と地方税に分かれますので、納税する先も税務署と都道府県税事務所に分かれます。
開業届は個人事業主として事業を営むことを税務署や都道府県税事務所に報告するためのもので、青色申告承認申請書を提出することによって、青色申告が可能となり、白色申告のときには得られなかった税制面での優遇を受けられるようになります。

新井智美 / トータルマネーコンサルタント
【専門家の解説】
青色申告特別控除で65万円の適用を受けることができるのは、55万円の適用を受けることができる要件を満たしており、さらに「その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること」もしくは「その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出をe-TAXで行うこと」という要件を満たす青色申告者です。
開業するにあたり、会計ソフトを用意しておくことも大切です。
起業当初は取引が少なく、自分で帳簿を作成できると思う人もいるかもしれませんが、青色申告の際に55万円もしくは65万円の控除を受けるためには青色決算書を作成する必要があり、手作業で行うと非常に手間がかかります。
税理士さんにお任せするのであれば不要ですが、確定申告を自分で行おうと思っているのであれば、会計ソフトの選定および導入も開業にあたって必要な作業です。
ビジネス用の通帳やクレジットカードを新しく作ることも忘れないようにしましょう。
それまで利用していた個人の通帳やクレジットカードをそのまま使っても構いませんが、事業を行うにあたって、プライベートとビジネスはきちんと分けておくことをおすすめします。
意外と知られていない都道府県へ提出する書類
個人事業主になるときは開業届を出すだけでいいと一般的に思われているようですが、本来は都道府県税事務所に「個人事業税の事業開始等申告書」も提出しなくてななりません。
しかし、個人事業税の事業開始等申告書はとくに提出しなくても、確定申告時に自動で都道府県税事務所に通知されるようになっているので、提出を忘れていたとしても心配いりません。
未提出でも罰則はないため、あえて提出しないという個人事業主もいるようです。
個人事業税の事業開始等申告書への記入事項は屋号や住所、事業主の氏名などが主で、至ってシンプルです。
さまざまな情報を細かく記載するような書類ではないので、提出しなくても問題ないとはいえ面倒くさがらずに申請しておくとよいでしょう。
任意で提出する書類
開業届や個人事業税の事業開始等申告書以外にも、任意で提出しなければならない書類があります。
該当する人はこれらの書類も忘れずに提出するようにしましょう。
青色事業専従者給与に関する届出書
自分の家族を従業員にして給与を払っている場合に提出します。
この書類を提出すれば、家族(=従業員)に対して支払う給与が必要経費になります。
その分は課税対象から外されるので、家族に給与を払っている個人事業主は提出するようにしましょう。
給与支払事務所等の開設届出書
正式には「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」と呼ばれる書類です。
従業員を雇い、給与を支払う事業を営む場合に提出します。
ただし、開業届を出して事業を新しくはじめたばかりの個人事業主については提出不要です。
源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
従業員の人数が10人未満の場合に、源泉所得税納期を変更できる書類です。
通常では源泉所得税について徴収翌月の10日に納める決まりになっていますが、この書類で申請することにより半年ごとにまとめて納付できるようになります。
毎月納めるのが面倒だと感じている個人事業主は申請を検討してみてはいかがでしょうか。
次は開業届を出すと受けられるメリットについて説明します。
開業届を出して個人事業主になるメリット
開業届を出して個人事業主になると、確定申告が白色申告から青色申告になります。
青色申告では複式簿記が必要になるなど、白色申告よりも事務が面倒になるのであえて開業届を出さないという人もいるかもしれません。
しかし、青色申告には白色申告にはないメリットが多いことはしっかりと知っておきましょう。
主なメリットは以下です。
- 30万円未満の減価償却資産なら一括で経費へ計上できる「少額減価償却資産の特例」
- 家族を従業員にすることで支払う給与を経費にできる「青色事業専従者給与」
- 赤字を前年までの黒字と相殺できる「純損失の繰越し」
- 損失を繰り戻して前年の所得税の還付が受けられる「純損失の繰戻し」
しかし一番大きなメリットといえるのは、青色申告する個人事業主なら誰でも受けられる所得の特別控除による節税効果です。
個人事業主になるか検討中の方は、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
青色申告の節税効果はバツグン
青色申告には特別控除の制度があり、55万円か10万円の所得控除(一定の条件を満たす場合は65万円)を受けることが可能です。
控除による節税効果を考えただけでも青色申告にするメリットは充分あります。
控除額が2種類設定されていますが、これは定められた条件を満たせるか否かで控除額が変わるということです。
国税庁では、55万円の控除が認められるには以下の条件が必要だとしています。
- 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
- これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
- 2の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
(引用元:国税庁|No.2072 青色申告特別控除)
これらの条件を満たせない場合は10万円の控除になります。条件を満たしていても、確定申告の期限内に申告できなかった場合は10万円控除になってしまうので注意が必要です。
屋号が持てるので信用度もアップ
開業届を出すと正式に屋号を持つことができます。
開業以前には個人名で事業を営んでいましたが、企業のように屋号を名乗れるようになるので対外的な信用度は格段に向上します。
また、屋号を名義にして事業用の銀行口座も開設できます。
もちろん個人口座を事業用に使用することも可能ですが、経理の手間を考えたら口座は分けておきたいものです。
個人事業主の口座を分けるかについては、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
このように、屋号を持てることも開業届を出すメリットになるのです。
開業届を出すことで様々なメリットが受けられますが、誰でも出すべきなのかといえばそうとも言えません。
次は出さない方が良いケースを見ていきましょう。
立場によっては開業届を出さないほうがいいケースも存在
開業届を出して個人事業主になることに多くのメリットがあることはわかりましたが、人によっては開業届を出さないほうがいい場合もあります。
事業を営むからといって必ずしも開業届を提出する必要はなく、提出しなければ青色申告による税制面の優遇を受けられないだけです。
反対に現行の制度上、開業届を出すことが不利益に繋がってしまうケースもあります。
下記のようなケースに当てはまる人の場合は、開業届の提出がむしろデメリットになってしまうことが多いので注意しましょう。
失業手当を受給している間
失業手当を受給している人は、開業届を出してしまうと失業手当が打ち切られてしまいます。
事業を始めてすぐに収入が失業手当を上回れば問題ないと思いますが、会社員と違って個人事業の場合は仕事が軌道に乗るまで時間がかかることが多いでしょう。
収入がある程度安定するまでは、アルバイトや内職、手伝い収入としてハローワークに報告し、失業保険が支払われる期間内は手当を貰っていたほうが安心です。
開業届を出すということは無職ではなくなるということです。
開業届を出したにもかかわらず失業手当をもらい続けると不正受給になってしまうので、それだけは避けるようにしましょう。
扶養されている人は扶養から外れることも
扶養されている人が個人事業主になってしまうと、扶養の対象から外されてしまうことがあります。
既婚者が個人事業主になると、配偶者が受けていた扶養控除、配偶者控除が対象外となってしまう場合があるので、開業届を出す前に配偶者とよく話し合ったほうがよいでしょう。
これは健康保険についても同様で、個人事業主になると扶養者の健康保険から外され、新しく国民健康保険に入らなければなりません。
ただし健康保険組合によってはそのまま扶養対象でいられるところもあるので、あらかじめ確認するようにしましょう。
開業届を出す場合、従業員がいるかいないかで書類の量が変わってきます。
次は両パターンにおける手続きの違いについて見ていきましょう。
従業員の有無で異なる開業届の手続き
開業するときに、従業員がいるかいないかで提出する書類が変わってきます。
それぞれでどのような書類が必要になるか見ていきましょう。
従業員がいないと書類は少ない
従業員がいなければ税務署に開業届を提出するだけです。
なお、売上げから経費を差し引いた所得が290万円を超えてしまうと個人事業税が発生するため、都道府県税事務所に個人事業開始等申告書も提出しなければなりません。
ただし個人事業開始等申告書については、確定申告時の所得が該当した時点で都道府県税事務所へ税務署から通知が行われるので、とくに意識する必要はないでしょう。
従業員がいると書類が多く手続きが面倒
家族を含めて従業員がいる場合には提出する書類が増えて手続きが面倒になります。
これらの書類のほとんどは、従業員がいることにより発生する給与や源泉徴収の納税、労働保険、社会保険に関するものとなります。
税務署に提出する書類
- 開業届(個人事業の開廃業等届出書)
- 青色事業専従者給与に関する届出書(※家族を従業員にして給与支払いする場合に必要)
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(※従業員の数が10人未満で特例を希望する場合に必要)
労働基準監督署に提出する書類
- 労働保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
ハローワークに提出する書類
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
社会保険事務所に提出する書類
全て従業員の数が5人以上いる場合に必要です。
- 新規適用届
- 新規適用事業所現況書
- 被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者届
次は開業するまでにしておきたい準備について説明します。
開業するまでにしておきたい用意や手続き
個人事業主になって開業するには、開業届等の必要書類以外にもさまざまな準備や手続きが必要です。
どのような準備や手続きをすればいいか一つずつ見ていきましょう。
事業自体に必要な許認可や届け出申請
事業によっては、業務に必要な許認可や届出申請が必要なものもあります。
不動産業なら宅地建物取引業免許、中古品販売なら古物商許可というように、許認可がないと営業できない業種があるので、自分が開業しようとしている業種に関係する許認可や届け出はしっかりと確認して手続きや取得をしておきましょう。
事業所の用意
業種によっては事務所や店舗が必要となるので開業日までに用意しておきましょう。
事業が軌道に乗るまでは地代を節約するために自宅をオフィスにする方法もあります。
しかし外部の人間がひんぱんに出入りするような業種の場合治安の問題も。
できればプライベートと仕事はしっかり分けたほうが安心なので、運転資金に余裕ができたら貸事務所や貸店舗を契約してしまうことをおすすめします。
自宅で仕事をする場合でも、事業所の所在地を別にすることは可能です。
住所だけ借りるバーチャルオフィスは費用がかからないので、自宅住所を公にしたくない人にはおすすめ。
商談をしたいときにも会議室を利用できるバーチャルオフィスは便利です。
大きな事務所を必要としないソフト開発やフリーライターを業種にする人は検討してみてはいかがでしょうか。
名刺の用意
名刺は大切なビジネスアイテムです。
開業前は個人名だけで名刺を作っていた人も、開業届提出後は屋号を添えた名刺を用意しましょう。
このときに肩書きをつけたいのであれば「代表」としましょう。
「取締役」としたい人ももしかするといるかもしれませんが、取締役は法人で経営に携わる人物の肩書きです。
法人格を持たない個人事業では代表が適した肩書きになります。
事業決済用の銀行口座を用意
個人事業は個人用口座を使っても問題ありませんが、個人のお金と事業で使ったお金の区別がつきにくくなることが多いので、事業決済用の銀行口座を用意するようにしましょう。
開業届を出せば屋号を持つことができ、その屋号をつかって口座開設することができます。
事業決済用の口座があれば確定申告の書類作成も楽になるので、事業が始まってお金の動きが起こる前に口座を作っておきましょう。
ホームページの用意
ホームページは取り引き先や顧客にアピールするだけでなく、クレジットカードを申し込むときにも役立つ可能性が。
どのカード発行会社でも行っているわけではありませんが、カード申込時に屋号からホームページを調べて事業内容の確認をすることもあると噂されています。
絶対的に有利になるとは言い切れませんが、ホームページは開設しておくに越したことはないでしょう。
個人事業主になると法人カードの申込みができるようになります。
個人事業主の手続きについては、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
最後は法人カードについて見ていきましょう。
個人事業主になったら法人カードの申込みが可能
個人事業主になったら法人カードを持つことが可能になります。
事業用に銀行口座を開設する理由と同じで、クレジットカードも事業決済用に法人カードを作ったほうが便利です。
法人カードは法人名義でなければ作れないイメージがありますが、最近では個人事業主にも門戸を開いたカードが存在します。
さすがに開業してすぐに発行してもらうのは難しいかもしれませんが、確定申告を経験して安定した収入を証明できるようになれば審査の敷居も下がってくれるでしょう。
開業した人におすすめの法人カード5選
開業して個人事業主になった人におすすめの法人カードをご紹介します。
いずれもステータス性が高く、使い勝手のよいカードなので、法人カードを検討する際にはぜひ参考にしてみてください。
三井住友カード ビジネスオーナーズ
三井住友カード ビジネスオーナーズは、年会費が永年無料で、申込時は登記簿謄本や決算書などの提出が不要です。
ショッピング限度額は最高500万円(※)まで利用することができ、支払い方法も、1回払い、2回払い、リボ払い、分割払い、ボーナス一括払いと選べるので便利です。
※所定の審査があります。
またキャッシング機能も付帯(※)しているので、少額の資金調達にも利用することができます。
※利用枠や手数料等は三井住友カード公式サイトにてご確認ください。
年会費もかからないので、持っておくと何かと役立つカードといえるでしょう。
NTTファイナンス Bizカード
NTTファイナンス Bizカードは、本人確認書類と引き落し用の個人口座を用意するだけで、いつでもオンラインから申し込むことができます。
年会費は永年無料ですが、ポイント還元率は1.0%と高還元率で、ポイントの使い道も、利用金額に充当できるキャッシュバックや、他ポイント、ANAマイル、カタログギフトなどに交換できます。
また、ビジネスをサポートするサービスも充実しており、海外・国内旅行傷害保険、ショッピング保険も付帯するなど、持っているとかなり重宝するカードです。
起業して間もない方はもちろん、初めて法人カードを利用する方にも使い勝手の良い1枚となるでしょう。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
ステータス性が高く、持っているだけで取り引き先の印象が高くなるカードがアメックスです。
かつては加盟店数が少なく国内では使いづらいこともありましたが、現在ではJCBと提携するなどして改善されており、ほとんどのお店で使えるようになりました。
国内外で安心して使える1枚です。
EX Gold for Biz S
代表者の本人確認書類だけで申し込める敷居の低い法人カードです。
年会費は2,200円(税込)。
初年度については会費無料というコストパフォーマンスは個人事業主の味方だといえるでしょう。
ビジネス向けの付帯サービスも充実しており、低コストで維持しながらビジネスカードの恩恵を受けられる要注目のカードとなっています。
JCB CARD Biz ゴールド
JCBは日本生まれの国際ブランドなので、国内でビジネスをする個人事業主にとって役立つサービスが充実しています。
年会費は11,000円(税込)ですが、個人事業主にとっても大きな負担とはならない額だと思います。
オンライン入会すれば初年度無料になるので、事業が軌道に乗りつつあるときでも申込みやすいのではないでしょうか。
まとめ
個人事業主の開業についてご紹介しました。
開業届を出すと確定申告が青色申告となり、複式簿記が求められるようになり経理事務が大変になりますが、税制面で優遇されたり社会的信用度が上がったりするなど、白色申告では得られなかったメリットをたくさん実感できるようになります。
開業を検討している人はこの記事を参考にして個人事業主へとステップアップしてみてはいかがでしょうか。
個人事業主のクレジットカードについては、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
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イーデス編集部
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