任天堂が好き過ぎて株を購入。「任天堂株主総会レポート」中の人が語る、“推し”企業に投資する魅力
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新NISAがスタートし、資産運用として株式投資に興味を持つ人も少なくないのではないでしょうか。
配当金や株主優待も期待できるため、挑戦したい気持ちはあるものの「なんだか難しそう」「どの企業に投資すればいい?」と、投資初心者にとってハードルが高いと感じることもありますよね。
そんな中、大の任天堂ファン・あれっくすさんは、一定の株を購入した人が参加できる「株主総会」に惹かれ、株の購入を決めたのだそう。実際に出席したことで「より企業への愛着が増した」と語ります。
今回は、あれっくすさんが株主総会の面白さをわかりやすく紹介するとともに、自分の好きな企業に「投資」することの魅力を紹介いただきました。
イーデスをご覧のみなさま、はじめまして。20年以上任天堂のファンサイト「N-Styles」を運営しているあれっくすと申します。
今回は任天堂について語っていきますが、ゲームではなく株や株主総会の話をします。
株式会社エイチームライフデザイン
編集者イーデス編集部
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任天堂が好き過ぎて、ついには株を購入
小学生の頃にファミコンと出会い、それ以降任天堂のゲームを楽しんでいる。
インターネットと出会ってからは任天堂のファンサイトを作成し、マニアとの交流を楽しんだりしている。
かつてNINTENDO64(※1)の周辺機器である64DD(※2)に関する情報サイトをやっていたと言えば、一部の人にはそのディープさが伝わるかもしれない。
※1 任天堂が1996年に発売した家庭用ゲーム機。「64(ロクヨン)」などの略称で知られる。
※2 NINTENDO64用専用のディスクドライブ。NINTENDO64本体に装着して使用することで、64DD専用のソフトが利用できるようになる。
そのうち、任天堂ともっと深く関わりたいと思い始めた。ちょうどその頃投資にも興味を持ち始めたので、「任天堂の株を買って株主総会に行けば一石二鳥じゃん」と思い、任天堂株に興味を持つようになった。
ただ、WiiやニンテンドーDSがヒットしていた頃は、手元の資産に対して株価が高すぎて手を出すことができなかった。
しかし、2012年に発売されたWii Uが思いのほかヒットしなかったこともあってか、その後株価が低迷。
「この金額なら買っても良いのでは」と思えるくらいまでになり、2012年5月に「株主総会参加券」として任天堂株を購入。ちなみに購入当時、それまで株主総会に参加するための単元株(100株)を買うのに数百万円必要だったのが、多分90万円くらいに下がっていた。ありがとう(?)、Wii U。
そして2013年に任天堂の株主総会(定時株主総会)に初めて参加した。それ以来、株主総会には9回参加している。
その経験から、今回は株主総会をメインに、好きな企業に投資する楽しさについて語っていこう。
株主総会って、何が面白い?
というわけで、今回の本題。まずは任天堂の株主総会の話をしよう。
任天堂の株主総会は毎年6月下旬ごろの平日に、本社のある京都で開催される。
私は福岡在住のため、総会当日は仕事を休んで参加している。
一般的に上場企業の株主総会はホテルの会議室やホールなどの外部の会場で開催されるようだが、任天堂の場合は長らく社内の会議室で開催されていた。
社内で開催することで株主はより会社への愛着を深めることができる。
おかげで、あこがれの任天堂本社に毎年通うことができた。
現地に到着すると、任天堂のキャラクターを使ったバスタオルや缶入りクッキー(いわゆるお土産)、お茶などが配布される。
ある年に配布されたお土産
紙袋も任天堂の名前入りなので任天堂ファンとしては大変うれしい。
今までもらった紙袋はずっと保管している。
株主総会参加時にもらえる紙袋と、CSRレポート
残念ながらここ数年はお土産の配布はなく、企業が社会に果たした役割を報告するCSRレポートも立派な冊子で配布されていたが、Webでの公開のみとなっている。
これは個人的に少し悲しい変化だ。
参加している株主は比較的年齢層が高く感じるものの、ニンテンドー3DSがはやっていた頃は高齢の株主も含め「すれちがい通信(※3)」をしている人が大勢いた。
純粋な投資家ももちろんいると思うが、任天堂が好きでここに来ている人も多いと感じた。
※3 ニンテンドーDS・ニンテンドー3DS(Newニンテンドー3DS)において、ゲーム機同士が無線通信を用いて互いを自動で探知し、ゲームに関連するデータを自動的に送受信する機能・サービス。すれちがい通信対応ソフトでのみ利用可能。
好きな企業の経営者の「生」の声が聞ける
ここからは、私が思う株主総会に参加する面白さについて紹介したい。
任天堂の株主総会は、最初に議長(社長)が会議の議案や決算内容、今後の計画などを説明後、質疑応答があり、最後に議案の採決が発表される。このあたりはどの会社も同じだろう。
質疑応答以外の部分は事前に公開されている情報なので、個人的に株主総会の参加での一番のキモは質疑応答の部分だと思っている。
株主総会での質疑応答と聞くと、もしかすると堅苦しい、参加のハードルが高い、罵声が飛び交うなどのイメージを持っている人もいるかもしれない。
ただ少なくとも任天堂の株主総会では、経営者を糾弾するような質問が飛び出すことは少なく、任天堂好きの株主が任天堂をより深く知るためにするような質問が多く見られる。
ファンミーティングではないが、好きな企業の経営者と直接やりとりができる貴重な機会でもある。
私もこれまで9回株主総会に参加して、4回質問することができた。
今は亡き岩田社長(※4)と言葉のやり取りをしたり、新作ソフトやマリオ映画のことをうれしそうに話す宮本茂(※5)さんの笑顔を生で見たり、これだけで株主になって良かったなと感じる。
※4 任天堂株式会社 第4代代表取締役社長・岩田聡さん。
※5 任天堂株式会社 代表取締役フェロー / ゲームプロデューサー。『マリオシリーズ』『ゼルダの伝説シリーズ』『ドンキーコングシリーズ』などの生みの親として知られる。
株主総会で出た質疑応答は議事録として後ほど企業の公式HPなどでも公開されるが、要点をおさえてまとめられるため、当日の細かなニュアンスやこぼれ話のようなエピソードは掲載されない場合もある。
当日の生のやりとりは議事録には残らないので、これが聞けるのは参加者の特権と言える。
宮本さんに「(マリオ)映画、見ていただけました?」と挙手をうながされて、元気よく手を上げて満面の笑みを返された経験がありますか? 私はあります。これが株主の特権です。
ただ、あまりにもファン目線で「次のゼルダはいつ出るのか」「××というゲームの⚪︎⚪︎を改善してほしい」などの質問のような要望は「この場でお答えできるものではない」「貴重なご意見として頂戴します」とスルーされる。
この手の質問が多かった年に長期保有の株主から「決算が赤字なのに子供っぽいゲームの話ばかり。経営の話をしてほしい」と質問ついでにお叱りの声が出たこともある。この時は他の株主たちから大きな拍手があがった。
こういった会場の雰囲気を少しでも多くの人に伝えたいと思い、毎回ノートPCを持ち込んでTwitter(最近ではXと呼ばれる)でテキスト実況をしている。
株主総会をきっかけに交友関係が広がった
株主総会の楽しみは質疑応答だけではない。
私の場合、毎年総会後に任天堂株主の友人と昼食を食べるのが楽しみになっている。
お互い株主かつ濃い任天堂のオタクなので、話をする前提条件となる知識の共有が不要で、アクセルベタ踏みの突っ込んだ会話ができる。
最近遊んでいるゲームの話、株主総会の感想、今後発売されるソフトやハードの予想など、非常に濃い任天堂トークを年に一度楽しんで「では、また来年」と言って別れる。
最近、この食事会に新しいメンバーが加わった。
その人は2022年の株主総会で「過去の名作とIP資産の活用」に関する質問をする中で、『F-ZEROシリーズ』というレースゲームを具体例として挙げていた。
全く知らない人だったが、気が合いそうな雰囲気だったので終了後に「いい質問でした。指名されて良かったですね」と声をかけ食事に誘った。
任天堂談義に花を咲かせ、お互い64DDユーザーという任天堂ファンの中でも超レアな存在だったこともあり、意気投合。
総会終了後、株主仲間と任天堂談義
翌2023年にも食事に誘い、たまたま自分も彼も翌日にUSJに行く予定だったので、一緒にスーパーニンテンドーワールドを堪能した。
余談だが、『F-ZERO』については、なにか含みを持たせた感じの回答だったので「おやおやー? これはもしかして」と思っていたら、実際にNintendo Switch Onlineタイトルとしてシリーズ新作『F-ZERO 99』が2023年にリリースされた。
推察だが、すでに作ってたのだろう。こういうニュアンスを感じ取れるのも総会出席者の特権だ。
積極的な個別株の売買をやめた理由
そういうわけで、「任天堂の株主総会に参加したい」という思いから、私は投資の世界に足を踏み入れた。
私のように「株主総会に行きたい」という理由で投資を始める人はそう多くはないようにも思うが、一度始めてみると、任天堂株の調子が良かったこともあり、投資を始めた初期の頃は他のゲーム関連株も気になってくるようになった。
そこで、任天堂株を一時的に売ったり買い増したり、他の個別株を買ったりしてみた。
しかし、数日分の給料に相当する金額がものの数分で手に入ったかと思えば、判断ミスで頭痛がするレベルの損失を出したり、株価が気になって落ち着かなくなったりして、ストレスを感じ始めるようになった。これは良くない。
当時トータルではややプラスにはなっていたものの、そのうち大失敗するだろうと思い、頻繁な売り買いからは撤退することにした。現在は任天堂を含むいくつかの株を長期保有するだけにしている。
ここ数年は個別株の売買はほぼ行わなくなり、NISA枠をフル活用して投資信託に全力投球している。個人的にはオルカン(eMAXIS Slim全世界株式・オールカントリー)が最強だと考えている。
投資判断に使う時間やストレスも投資コストと考えると、何も考えなくて勝手に資産が増えていきやすい投資信託はコストパフォーマンスが非常に良い。
それじゃあ、個別株はいらないんじゃないのと思うかもしれないが、積み立て設定をしてほったらかしというのは味気ないし、余剰資金があるのなら、好きな企業の株を長期保有目的で投資するのは選択肢の一つとしてアリだと思う。
特に、私のようにいわゆる「推し企業」の株を持ち続けることは、いろんなメリットがある。株主総会への参加もその一つとも言える。
そもそも私は「株券」ではなく「株主総会参加券」と思っているので、株価が大きく変動してもあまり損得を感じない。自分の中では任天堂株は資産の枠組みから外れた存在なのだろう。株価の上下が精神的に負担にならないのは助かる。
もし、株主総会に参加するという目的がなければ、ある程度株価が上がった時点で満足して手放していたか、急に株価が下がったタイミングで怖くなって売っていただろう。
株主総会の存在のおかげで「任天堂株を売る」が頭の中に選択肢として存在しなくなり、株価の上下が自分の中で損得と結びつかなくなった。
ただ、平日に仕事を休んで新幹線で駆けつけて参加するイベントかというと、よほど愛がないと厳しいかなと思ったりしないでもない。が、個別株を保有するメリットは株主総会だけではない。
好きな企業の株を持ち続けるということ
一般的に、個別株を保有することの一番のメリットは配当だろう。
簡単に言えば、株を持っているだけで半年に一度もしくは年に一度お金をもらえる。
任天堂の場合は、最近だと1株あたり年間200円程度の配当があった。株価との比率を表す配当利回りは3%程度だ。100万円分持っていれば3万ぐらいお小遣いがもらえる。
株の売買で得られる金額に比べるとささやかだが、長期保有だと割と馬鹿にならない。私は任天堂株の配当を原資にして株主総会参加の旅費やゲームソフト購入費にしている。
それに、売買を目的とせずに「推し企業」の株を長期保有していると「株価が上がる」=「得をする」というより「会社に対する世間の期待が高まってる」という感覚になる。
新商品が発表された後の株価が上がってると「思ったより期待されてるな」と感じ、下がると「世間の予想を超えられなかったか」と感じる。
新作ゲーム情報が出る時に、発売が楽しみという感想だけでなく、株式市場からどう評価されるだろうという予測をするようになる。その結果を株価という数字ですぐに答え合わせできるのが、純粋に楽しい。
もう一つ、株を持つことのメリットとしてよく聞く株主優待にも少しだけ言及しておこう。
任天堂株には株主優待がないが、企業によっては配当と一緒に商品券などの株主優待が還元されることがある。
よく利用する外食チェーンや交通関連企業などの株を持っていると、その利益を享受できるだろう。ただほとんどの場合、配当金と比べて還元額が小さいのでおまけ程度と捉えておこう。
株主総会に参加するにはどうすればいい?
さて、株主総会に参加したり、優待を得るにはどうすればいいだろうか。
基本的には「決算日(決算月の権利確定日)に単元株を保有していること」が条件となる。
任天堂の場合は3月末に100株持っていればいい。Yahoo! ファイナンスなどの株式情報サイトで、
- 単元株数
- 最低購入代金
- 決算日
の項目を見れば分かりやすい。
単元株は株を買うのに必要な最低株数のこと。銘柄ごとに売買できる単位(単元)が決められていて、基本的には100株単位で取引される。
最低購入代金とは、現在の株価に単元株数を掛けたもので、この金額を用意すれば株主総会に参加できる。
理論上は、決算日の直前で株を買って決算日より後に売っても株主総会に出席は可能だが、あまりおすすめはしない。決算後に急激に株価が下がることはよくあるので結構危険なギャンブルになる。
東京証券取引所の方針で、最低購入代金は50万円未満にするのが望ましいとされている(※6)。なので、だいたいの会社は50万円あれば参加できる。10万円以下で株主総会に参加できる会社も結構ある。
※6 参照:投資単位の引下げ / 株式分割の仕組み・効果
任天堂は、2022年10月の時点で最低購入代金が600万円ぐらいになっていたため、1株を10株に分割することになり、新規の株主は当時60万円ほどで総会に参加できるようになった。
50万円は超えているものの、株主総会の参加のハードルはぐっと下がった。
その結果、個人株主がもりもり増えて任天堂社内の広い会議室でも席が足りなくなったのか、2023年の総会は外部の会場で開催されるようになった。
そして、以前の総会と比べて目に見えて年齢層が下がり、20−30代の若い株主が増えたように感じる。夫婦や友達同士で参加していると思われる方々も目にするようになった。以前にはあまり見られなかった光景だ。
任天堂社内で開催されなくなったのは悲しいが、若い人たちの意見が増えていくことはいいことだ。
まずは「推し」企業の株価をチェックするだけでもいい
株主総会は楽しい。もっと多くの人に参加してほしい。参加することで、直に経営陣の声を聞くことができるし、運が良ければ質問もできる。他の株主がどういう考えを持っているか知る機会にもなる。
株を保有しているだけでも配当はもらえるが、それだけでは得られない体験があると思うし、一度参加してみると、その企業への関心度が高まるようにも思う。
2024年に始まった新NISAの成長投資枠は個別株にも利用可能で、配当や売却益が非課税となる。投資するにはいいタイミングだろう。
「お金を増やす」「将来の資産形成のため」といった理由での投資も大事だが、自分が「いい」と思う企業に投資するのは、シンプルに面白い。
株主総会に行きたい! というモチベーションでなくともいい。まずは気になる企業の最低購入代金を調べるところから始めてみてはどうだろうか。
編集:はてな編集部
著者プロフィール
あれっくす
福岡在住の会社員。株取引歴は12年ほど。趣味はゲームと漫画とインターネットと映画の応援上映。
最近はXのスパム調査・報告を日課としている。
X(Twitter): https://twitter.com/NStyles
Web:N-Styles: https://n-styles.com/
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