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相続した不動産はどうすべき?売却のタイミングや譲渡税の計算方法を解説

相続した不動産はどうすべき?売却のタイミングや譲渡税の計算方法を解説

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日本人の資産の中で最も割合の多いのが「不動産」です。それゆえ、相続に関わる財産でも、必然的に不動産の占める割合が高くなります。

「相続」や「相続税」、「相続対策」というキーワードは、一部の資産家にのみ関係のある話と思われがちですが、実はそうではありません。

「相続税」がかかる人の割合は、国税庁の発表では9.6%(令和4年度)となっていますが「相続」は財産の有無にかかわらず、多くの人が経験することになります。

相続人が複数いる場合には、足並みが乱れたときに「争族」となりかねないので、事前に話し合いが必要です。

これも「相続対策」の一環です。

典型的な相続財産の組み合わせが「多少の現預金」と「自宅」というケースです。

現預金は分割も容易ですし管理上の注意というのもありません。しかし、自宅の不動産についてはどうすべきでしょうか。

この記事では、実家の土地建物を相続し、それを売却する場合の注意点についてご紹介します。

本記事の執筆者について

田中 裕晃さん

田中 裕晃 / 大峰FP事務所 代表

京都市出身、京都府立大学 文学部史学科卒業、京都府立大学大学院 文学研究科史学専攻 博士前期課程修了(文学修士(歴史学))、大手賃貸仲介業者に就職、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。その後、株式会社大峰の代表取締役に就任、大峰FP事務所を開設し、現在に至る。

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相続した実家はどうしたらいい?

親が亡くなったときもしも同居していたなら、その実家(=自宅)におそらくそのまま住居として住み続けるでしょう。

別居の兄弟がいるケースでは、代償分割としていくらか現金を渡すということも考えられます。

一方、親と子が別世帯で住んでいた場合は、親がいなくなれば空き家になってしまいます。

この時、空き家となった実家をどうするか、以下のパターンが考えられます。

  1. 実家に移り住む(現状のまま、あるいは建て替えて)
  2. 実家は人に貸す(賃貸物件として所有)
  3. 空き家のまま放置する
  4. 売却する

相続人が賃貸暮らしで、かつ生活圏が同じであれば、「1」の選択肢も考えられるでしょう。

しかし、すでに別に家を所有していたり、遠隔地に住んでいて転居できなかったりすると、「2」「3」「4」の選択肢を選ぶことになります。

「2」の賃貸物件化については、そもそも賃貸需要のあるエリアかどうかという問題もありますが、いわゆる大家さんになるだけのノウハウがあるかどうか、信頼できる不動産屋が知り合いにいるかどうかなどがハードルとなります。

また、老朽化の進んだ建物の場合、先行投資としてリフォームしなければならないケースもありますので、物件や相続人の性格などに左右されます。

「3」のそのまま放置するというケースは、おそらく一番多い選択肢ではないでしょうか。

故人の思い出の詰まった家を残しておきたいという気持ちがあったり、遺品の整理などがなかなかできなかったりして、そのままになっているということが多々あります。

そのほかにも

  • 自分で住むつもりはない
  • 人に貸すと返ってこなくなるかもしれないから賃貸物件にしたくもない
  • いずれは売るだろうけど踏ん切りがつかなくて
  • ひょっとしたら自分たちの子供が住みたいというかも

などといったことが原因になります。

こういうケースの人は比較的生活に余裕があることも多く、実家を維持するための経費(固定資産税、火災保険料など)も苦にならないのです。

しかし、無目的に実家を所有し続けることは、経費以外の面でもデメリットがあります。

無目的に実家を所有し続けるデメリット

  • 人が住まなくなった家は、老朽化のスピードが速い
  • 人に貸すと返ってこなくなるかもしれないから賃貸物件にしたくもない
  • 不審者が住み着く、放火されるなど、治安の悪化につながる
  • 上記の心配事について、近隣住民から苦情を受ける

昨今、異常気象の関係で、とくに建物に対するリスクが高まっています。

空き家を放置することで自分がなんらかの賠償責任を負うことになると、経済的にも精神的にもかなりの負担となるでしょう。

将来的に利用する予定がなければ、ある程度区切りをつけて「4」の売却を選択した方が良いでしょう。

売却のタイミングは「できるだけ高く売れるとき」

相続物件にかかわらず、不動産を売却するタイミングは、「できるだけ高く売れるとき」が理想です。しかし、それがいつなのかということは誰にもわかりません。

確実なことは、先延ばしにすればするほど、先ほど挙げたデメリットを甘受しないといけないということです。

かといって、親が亡くなって早々に売却手続きを進めるのも感情的に難しいでしょう。実務でよく聞くのは、

  • 49日が終わってから
  • 100ヶ日が終わってから
  • 1周忌が終わってから

など、法要を区切りにするケースです。これをみても、いかに精神面での区切りのつけ方かということが分かるでしょう。

一方で、金銭的な側面から判断される場合もあります。

例えば、相続税を納めないといけないケースでは、納税資金を確保するために不動産を売却するということもあります。

この場合、相続税の申告期限が相続開始から10ヶ月以内ですので、売却もそれに間に合うように手続きしなければなりません。

相続税がかからないケース、あるいは納税資金に困っていないケースでは、上記のように10ヶ月以内に売却する必要はありません。

ではこういった場合は、前項でご紹介したデメリットを除き、どのタイミングで売却しても有利・不利はないのでしょうか(市況の変化による売却価格の増減は考慮しません)。

この点を考えるために、不動産売却時の税金について確認しましょう。

不動産売却にかかる税金

相続の有無にかかわらず、不動産を売却すると譲渡税(所得税、住民税、復興特別所得税)がかかります。以下の計算式をご覧ください。

譲渡税=(①売却価格-②取得価格-③売却費用)×④税率

  1. 売却価格:売った金額
  2. 取得価格:その物件を買ったときの金額
  3. 売却費用:仲介手数料、印紙代、登記費用など
  4. 税率:短期譲渡は39.63%、長期譲渡は20.315%(それぞれ所得税、住民税、復興特別所得税の合計)

税率の短期と長期は、売却した年の1月1日時点で5年を超えて所有しているかどうかで判断します。超えていれば長期です。

イメージしやすいように、具体例を用いて確認しましょう。

譲渡税の計算例

仮定条件

相続した実家

被相続人(亡くなった人)が1970年に購入。購入時の価格など不明。2018年5月に相続。売却時の価格2,500万円。

売却費用

仲介手数料、印紙代、登記費用などで100万円。

(①2,500万円-②125万円-③100万円)×④20.315%=4,621,662円

①と③は仮定条件の中にそのまま書かれていますので問題ないでしょう。②の金額は一体どこから出てきたのでしょうか。

仮定条件では、「購入時の価格など不明」となっています。

相続物件でよくあるケースです。購入時の価格は売買契約書や領収書で証明しなければいけませんので、仮に金額を覚えていたとしても契約書などを紛失していたら同じく取得費不明扱いになります。

そして取得費が分からない場合は、「売却価格の5%」を概算取得費として控除することができます。上記の例では2,500万円の5%が125万円ということです。

④の税率についても補足しましょう。被相続人が取得したのは50年ほど前ですが、相続人が相続したのは1年前です。

相続人の立場から言うと所有期間は短期に該当しそうですが、相続の場合は取得日を引き継ぐというルールがありますので、この場合も長期で計算します。

結果として、約462万円が納めるべき税額となります。ちなみに、2,500万円で売却した後の手取りは、

2,500万円-100万円(売却費用)-462万円(税金)=1,938万円

となります。

譲渡税は相続税とは全く別のものです。

よく、相続物件の売却時に、「相続税はもう払ったから大丈夫」「相続税はかからないから税金の心配はない」などと言う人がいますが、大きな間違いです。

相続税を納めていても、また相続税はかからなくても、売却時には譲渡税が発生する可能性があります(相続税の一部は譲渡税計算の取得費に加算することができる場合もあります)。

うっかり確定申告を怠ると、大変なことになりますので注意してください。

譲渡税を抑えるための特例

前項の通り、売却価格の約2割も税金を納めないといけないとすると、負担はかなり大きいでしょう。

そこで、少しでも負担を和らげるための特例措置があります。それは、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除特例」という長い名称が付けられた制度です。

適用要件は細かく定められていますが、大雑把に言うと、

  • 昭和56年5月31日以前に建築された一戸建て(分譲マンションは不可)
  • 耐震改修もしくは更地にして売却すること
  • 被相続人の居住用不動産で、相続後は空き家になっていること
  • 相続発生から売却までの間に住んだり貸したりしていないこと
  • 売却代金1億円以下であること
  • 親子や夫婦など特別の関係がある人に対しての売却は適用不可
  • 相続開始から3年後の12月末までに売却すること

という条件です。築年数の新しい物件や分譲マンションの一室などはそもそもこの条件にあてはまりません。

前項の例が上記条件を満たすと仮定すると、以下のようになります。

(①2,500万円-②125万円-③100万円-3,000万円(特別控除))×④20.315%=0円

カッコ内の金額(譲渡益と言います)がマイナスになりますので、譲渡税はゼロ円です(マイナス分の還付はされません)。

もし、更地にするのに150万円の解体費用がかかったとしたら、手取り金額は、

2,500万円-100万円(売却費用)-150万円(解体費)=2,250万円

です。

特例を適用しない場合と比較すると、312万円も差がでます。当てはまる場合は利用しない手はないでしょう。

ただし、要件が複雑ですので、税理士や不動産業者、FPなどと相談して慎重に手続きすることが必要です。

税制面から売却のタイミングを考える

税制面から、もう一度売却のタイミングを考えてみましょう。

まず、現状どれくらいの金額で売却できるのかということは、不動産屋に価格査定を頼むことで分かります。

もしくは、近隣の売却物件を見ることである程度予測を立てることも可能です(地形や道路付きなど、素人では判断しにくいこともあるでしょうが)。

次に、取得した価格が書類として残されているかどうかを確認しましょう。取得費が分かるかどうかは計算上かなり重要なポイントです。

売却価格と取得費が分かれば、譲渡税がいくらくらいかかるかすぐに計算できます。

とくに改装や測量などが必要なければ、譲渡費用は仲介手数料だけで計算すればよいでしょう(仲介手数料は「売却価格の3%+6万円と消費税」です)。

あくまでも概算値を求めるだけです。

この結果、

  1. 譲渡税は発生しない
  2. 譲渡税が発生する

のどちらかになります。②のうち、前項の特例が適用できるケースとそうでないケースに分けると、

  1. A:譲渡税が発生するが、特例は対象外
  2. B:譲渡税が発生するが、特例が適用できる

となります。

および②Aの方は、税制面のみで考えると、いつ売却しても同じです。

②Bは、相続発生から3年後の12月末までに売却するかしないかによって、数百万単位の損益に関わることになります。

もともとかかるであろう譲渡税の金額や、解体費用の金額によっては、特例の適用をしたほうが有利かどうかが変わります。

さらには更地にして売却するのが不適切な場合(再建築不可物件など)など、単純に数字のみで考えることは危険ですが、選択肢の一つとして考慮すべきであるというのは間違いないでしょう。

注意すべきは、売却に出してすぐに売れるかどうかはわかりません。

売り急ぐと買い叩かれる可能性が高いとも言えます。

特例の期限を気にするのであれば、余裕を持って手続きすることをオススメします。

まとめ

以上、相続した不動産の売却について見てきました。

遅かれ早かれ、いずれは手放すというつもりであれば、無意味に先延ばしするのは得策とは言えません。

既にご紹介した通り、空き家を保有するということは、固定資産税などの経費だけでなく様々なリスクを抱えることになります。

ある程度気持ちの整理、荷物の整理が出来たところで、売却する方が良いでしょう。

また、売却時は売却価格だけでなく、諸費用や税金も考慮したうえで手取り金額をイメージしましょう。

その上で、どのような売り方が最も有利か考えて下さい。自分で判断できない場合は、こういった点に精通した不動産業者やファイナンシャルプランナーにご相談されることをオススメします。

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