元利均等返済と元金均等返済は"お得さ"だけで選んではいけない!違いや特徴を解説
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住宅ローンについて調べていると出てくる「元利均等返済」「元金均等返済」という言葉。
馴染みのない言葉なので違いが分かりづらく、どちらを選べば良いのか迷ってしまいますよね。
2つの返済方式は「どちらの方がお得なのか」という軸で比較されることが多くありますが、大切なことは「どちらのほうがご自身の返済計画やライフスタイルに合っているか」です。
当ページではそれぞれの返済方式の違いや、実際に計算するとどのくらいの金額差が生まれるのかについて解説していきます。
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住宅ローンの"元利均等返済"と"元金均等返済"の違い
元利均等返済は「毎月の返済額」が一定になる返済方式で、多くの人が利用しているのはこの元利均等返済のほうです。
対して、あまり一般的にはない元金均等返済は、毎回の返済額のうちの「元金」が一定になる返済方式で、当初の返済額が多く、返済が進むにつれて返済額が少なくなっていきます。
元利均等返済の特徴
元利均等返済の特徴
- 住宅ローンの毎月返済額が一定になる
- 元金均等返済より借入当初の返済負担が少なくなる
元利均等返済方式では毎月の返済額が一定になるため、安定した返済計画を立てやすいことが特徴です。
さらに変動金利で元利均等返済を利用する場合には、125%ルールや5年ルールが適用されることも大きなメリットのひとつです。
- 金利が上昇時でも毎月の返済額は、直前の返済額の125%までに抑えられる
- 毎月の返済額は5年に一度見直される
- どちらも変動金利のみに適用される
元金均等返済と比べると住宅ローン残高の減りが遅いため、同じ条件の総返済額では元利均等返済のほうが高くなります。
また金利が急上昇した場合には、「未払い利息」が発生する可能性がある点には注意が必要です。
金利が急上昇したときに毎月の返済額は125%までに抑えられていても、125%を超える部分の利息は見えない部分で蓄積していきます。
この蓄積している部分の利息のことを「未払い利息」といい、金融機関によっては住宅ローン返済期間の終了時に一括支払いにより清算しなければいけないこともあります。
元金均等返済の特徴
元金均等返済の特徴
- 借入当初は返済額が大きく、年数とともに徐々に少なくなっていく
- 元利均等返済より総返済額が少なくなる
元金均等返済方式では元金を優先して返済していくため、住宅ローン残高の減少が元利均等返済に比べて早く、総返済額も安くなります。
ただし、元金均等返済では変動金利の125%ルールや5年ルールが適用されず、金利上昇時には急激に返済負担が大きくなってしまうリスクも存在します。
また住宅ローン残高の減りが早いことによって、住宅ローン控除の控除額が少なくなってしまう点にも注意が必要です。
さらに元金均等返済は借り入れ当初の返済額負担が重くなるため、借り入れ当初の時期と子どもの進学時期が重なれば、住宅ローンと教育費の支出によって家計を圧迫するリスクも考えられます。
このように元利均等返済も元金均等返済も、金利タイプとの組み合わせや使い方次第でメリットとデメリットの現れ方が大きく変わります。
そのため、それぞれの返済方式の特徴を把握しつつ、各家庭の状況に適した方法を選ぶことが大切なのです。
元利均等返済と元金均等返済はどちらがお得なのか
住宅ローンの返済方式を選ぶにあたって、「元利均等返済と元金均等返済の比較ではどちらがお得なのか」は必ず議論になるテーマです。
結論から言えば、まったく同じ条件(金利・返済期間・借入金額)で比較した場合は、元利均等返済よりも元金均等返済の方が少しだけお得です。
「少しだけ」なのは低金利が続くとそもそも利息額自体が小さくなるため、「元金均等返済の方がお得!選択すべき!」といえるほどの差が出ないからです。
毎月の返済額 ※元金均等返済は 初月の返済額 | 総返済額 ※費用は含めない | |
---|---|---|
元利均等返済 | 10万2,817円 | 3,701万4,273円 |
元金均等返済 | 11万9,583円 | 3,654万2,971円 |
差額 | 1万6,766円 | ▲47万1,291円 |
※金利変動がなかった場合として算出。
※借り入れ金額3000万円 / 適用金利年1.450% / 返済期間30年の場合。
※住宅保証機構株式会社の住宅ローンシミュレーションを使用して算出。
今回の例では総返済額で約47万円の差が出ていますが、「長い目で見てこれだけ差があるなら、元金均等返済のほうがお得かも」と考える方は注意が必要です。
上記は繰り上げ返済を行わない前提で計算していますが、もしも繰り上げ返済を予定している人であれば、総返済額の差はまた少し変わってくるということも知っておくとよいでしょう。
実は繰り上げ返済のほうが返済額への影響が大きい
住宅ローンの総返済額を少なくしたいのであれば、実は返済方式にこだわるよりも計画的な繰り上げ返済を行うほうが影響が大きくなります。
以下の表は、元利均等返済で借入から10年後に150万円の繰り上げ返済を行った場合と、元金均等返済で繰り上げ返済なしの場合の総返済額を比較したものです。
毎月の返済額 ※元金均等返済は 初月の返済額 | 総返済額 ※諸費用は含めない | |
---|---|---|
元利均等返済 (10年後に150万円の繰り上げ返済) | 10万2,817円 | 3,653万8,623円 |
元金均等返済 (繰り上げ返済なし) | 10万7,500円 | 3,654万3,150円 |
差額 | ▲4,683円 | ▲4,527円 |
※借り入れ金額3000万円 / 返済期間30年 / 元利均等返済の場合。
※返済開始から10年後に150万円を期間短縮型で繰り上げ返済を行った場合。
※三井住友銀行の繰り上げ返済シミュレーションを使用し算出。
こちらの表では、元利均等返済で繰り上げ返済を行ったほうが総返済額が少なくなっています。
つまり、返済方式による総返済額の差は、繰り上げ返済をすることで変わってくるということです。
もちろん元金均等返済で繰り上げ返済を行えばさらに利息負担は少なくなりますが、元金均等返済では変動金利の125%ルールが適用されない等のデメリットも存在します。
返済方式を選ぶ際にはそれぞれのデメリットも把握した上で、返済の安定感とお得感の両方を加味して選ぶようにしましょう。
当初10年間の返済負担額の違い
繰り上げ返済なしでは元金均等返済のほうが総返済額が少なくなりますが、借入当初の返済負担では元金均等返済のほうが大きくなります。
ここでは、借入開始から10年間における返済負担の違いを見てみましょう。
毎月の返済額 (元金均等返済は 初月の返済額) | 当初10年間の 合計返済額 (諸費用は含めない) | |
---|---|---|
元利均等返済 | 10万2,817円 | 1,233万8,040円 |
元金均等返済 | 11万9,582円 | 1,363万944円 |
差額 | ▲1万6,765円 | ▲129万2,904円 |
※借り入れ金額3000万円 / 適用金利1.45% / 返済期間30年の場合。
※楽天銀行の住宅ローンシミュレーションを使用して算出。
返済開始の当初では毎月返済額は1万5,000円以上の差があり、さらに10年間の支払い額の合計では約130万円もの差が生まれます。
この金額差は、子どもの教育費などとタイミングが重なる人にとっては特に大きく感じるでしょう。
借り入れからどのようなライフイベントがあるのかを想定した上で、どちらが無理なく返済できるのかを考えてみてくださいね。
ライフイベントを考慮して余裕のある返済計画にする
返済方式を選ぶ際は、ライフイベントによって収入や出費状況が変わったとしても無理なく返済できるか、を事前に想定しておきましょう。
特に共働き世帯では、「将来的に妻の収入が少なくなる可能性」を考慮できていないケースが多く見受けられます。
家計への影響が大きいライフイベントの例
- 子どもの進学(特に大学進学時期は教育費支出のピークになる)
- 親の介護
- 転職や離職(妻が家庭に入ったり、パートに切り替えたりする場合も考慮すること)
- 子どもの出産、育児(共働き世帯は妻が産休に入るタイミングなど考慮すること)
今の働き方を今後も十数年継続できると過信せず、ライフスタイルの変動を考慮してできるだけ柔軟な返済計画を立てておくことが重要です。
まとめ
「元金均等返済と元金均等返済はどちらの返済方式がお得なのか」という議論も多くありますが、繰り上げ返済を想定しない場合の総返済額での比較では元金均等返済方式がややお得になります。
ただし、利息負担の損得だけで判断するのではなく、それぞれの返済方式では特徴が異なるため、メリットやデメリットを理解した上でご自身のライフスタイルに合わせて選びましょう。
具体的な返済金額の違いを知りたい場合は、以下の住宅ローンシミュレーションツールもご活用ください。
金利タイプや借入先で
返済額が変わる!
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まずはシミュレーションで
住宅ローンを一括比較
千日太郎 / オフィス千日合同会社 代表社員 公認会計士
【専門家の解説】
かつて私もそうだったのですが、住宅ローンのシミュレーションを行うにあたって、つい注目してしまうのが「総支払額の差」です。
住宅ローンは数千万円もの借金を最長35年にわたって借りる契約ですから、総支払額は当然借入額よりも大きくなります。
その金利(%)や返済方式(元利均等と元金均等)を変えてみることで、ときには百万円以上の差が発生することも珍しくありません。
しかし、元利均等返済と元金均等返済は「総支払額の差」で決めるものではありません。
あくまで「総支払額の差」は35年間もの超長期間にわたって積み上げられた差であるうえ、金利が変わらず、繰り上げ返済も行わないという多くの仮定の上に成り立っている、いわばフィクションの金額であり、リアルな金額ではないのです。
まずは、ライフスタイルの変動や収入の減少可能性を考慮した、リスクに強い返済計画を立てることが大事です。
本文で詳しく解説しているようにリスク面では「元利均等返済」にメリットがあります。
「総支払額の差」は最後に念のため確認する、または、二つの案で甲乙つけがたいときに最終判定につかう程度の位置づけの数字とし、これを主要な判断基準として住宅ローンを選ぶことの無いようしてください。