日銀政策修正で長期金利は急上昇!住宅ローン金利はこの先どうなるか?専門家が2023年9月の住宅ローン金利を予想
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こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
7月27日~28日の日銀会合で、大規模金融緩和という方針はそのままにYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の運用が修正されました。
従来は長期金利の上限を0.5%としていたのですが、今後は0.5%程度を目途としつつこれを超えることを容認し、1%を超えそうになったら指値オペで上昇を抑えるというものです。
この運用修正が市場では実質的な金融の引き締めではないか?と捉えられて長期金利が急上昇し、8月の民間住宅ローンの固定金利タイプは軒並み上昇しています。これから住宅購入を計画している人にとっては、逆風ですね。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2023年9月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2023年8月18日時点のものを記載しております。
最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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長期金利は9年ぶりに0.6%台まで上昇
こちらは2023年4月3日から2023年8月18日までの日本と米国の長期金利の推移です。
3月と5月に米中堅銀行が相次いで経営破綻しましたが、米国のインフレは依然進行を続けたため、米中央銀行のFRBはペースを抑えつつも政策金利の利上げを続けており、米国の長期金利についても小刻みな上下を繰り返しつつ、右肩上がりに上昇を続けています。
日本の長期金利については、動きは小さいものの米銀の経営破綻で下がっています。
6月の日銀会合までは、植田新総裁は拙速な政策転換が2%の物価安定目標の達成の芽をつんでしまうコストは極めて大きいと、緩和修正しない見方を示しており、さらに国債の貸付料を値上げするなどの対策も相まって、日本の長期金利は下がってきていました。
これが、7月27日~28日の日銀会合の直後から大幅に上昇しています。
冒頭で述べた、YCC政策の運用修正によるものです。米国の上昇と比べると小さく見えますが、0.6%台まで上がるのは実に9年ぶりですから、市場心理に与えるインパクトとしては決して小さくはありません。
植田総裁の説明力でYCC政策修正のサプライズは収束
植田総裁の会見直後にこそ、市場に驚きと困惑が広がったYCC政策修正ですが2週間ほど経った現在では、おおむねポジティブに受け入れられているようです。
長期金利の上昇も0.6%台でおおむね横ばいに推移しています。
大きな要因としては大規模金融緩和政策を維持するという植田総裁の説明が、市場に受け入れられたことにあります。
植田総裁の時間軸政策(一定の条件が整うまで金融緩和を続けると宣言することで、市場に安心感を与え中長期金利を安定させる手法)が上手くはまっているのです。
金融緩和によって安定して物価を上昇させていくには、強く意識されている金融引き締めへの警戒感を、できるだけ薄める必要があります。
植田日銀は安定的な2%の物価上昇率を目標とし、それまでは金融緩和政策を続けると宣言しています。
7月会合では2023年の物価上昇率は2.5%と予想しており、2%をクリアしているのですが2024年は1.9%と予想しており、安定的な2%を達成するまでにはいまだ距離があると説明しているわけです。
経済学者である植田総裁の「説明力」が発揮されています。
今年2月、植田氏の総裁起用が報じられた際に「学者なので論理的に判断したい。説明を分かりやすくすることが重要だと思う」と言っていた通りの対応でした。
今回のYCC政策の修正は、その説明力で市場に対して大規模緩和の継続を強調しつつYCC政策をフェードアウトさせるという、とても難しいことをやってのけた感があります。
銀行の営業方針~最短2024年度の利上げ可能性もあるか?
YCC政策修正のサプライズが収束する一方で、日銀による利上げ時期については最短2024年もありうるのではないか?という見方もできます。
三菱UFJ銀行で市場部門トップを務める関浩之常務は、大規模な金融緩和策を続ける日銀について「早ければ2024年1~3月に政策の正常化に転じる可能性がある」との見方を示しています。
前述のとおり、植田総裁は2024年の物価上昇率を1.9%と見積もっており、安定的な2%は達成できていないと表明しています。
しかし、うがった見方をすれば1.9%は、ほぼ2%といっても良いのではないでしょうか。予想よりもほんの少し上振れすれば2%を達成することになります。
2024年の物価上昇率が上振れて2%をクリアし、2025年はさらに上がる見込みということになれば、2023年から連続して3年間にわたり2%をクリアする(見込み)ということになります。
「2度あることは3度ある」ということわざがありますが、2年連続で2%をクリアしたならば3年目も達成するという見込みが市場に受け入れられやすくなります。
当初は達成しないであろうと予想していたものが、想定外に上振れして達成できた!ということになると、その後の予想もこの実績に引っ張られて高めに見積もられるものです。
そうなると2024年度中の利上げということが現実味を帯びてくるのですね。
もしも日銀が政策を修正すれば、いよいよ利上げが近いということですから、長期金利が上がっていきます。
住宅ローンの固定金利は長期金利と連動するという建前ですから、先行して固定金利タイプが上がることになります。
民間銀行の中でも、いち早く固定金利タイプを上げてきたのが三菱UFJ銀行です。
先月7月の主要銀行の住宅ローン金利は下げた銀行が多数派だったのですが、メガバンクの中で三菱UFJ銀行だけが10年固定金利を0.01上昇させ、30年~35年の全期間固定金利を0.02ポイント上昇させているのです。
どちらの金利タイプも主要銀行の中でトップクラスに低金利であり、金利の上昇も小さいため、上がったことがほとんど目立たず、気づいている人も少ないです。
銀行の住宅ローン金利の変更は、目立たず、少しずつ行われていくので、ある程度推移を見ていく必要があります。
私は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2023年9月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2023年9月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
8月19日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2023年9月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフはフラット35の金利と長期金利の推移を6月から8月のフラット35金利については実績、9月のフラット35金利については予想でとったものです。
6月から8月までは長期金利の水準に対してフラット35の金利水準は低く推移してきましたので、9月の金利もその傾向を加味して予想しています。
フラット35の金利は前月の中旬に決まります。その時点に青い棒グラフのフラット35(買取型)金利を立てています。
(機構債発表日) | 6月金利 (2023年5月19日) | 7月金利 (2023年6月16日) | 8月金利 (2023年7月21日) | 9月金利 (2023年8月17日) |
---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.38% | 0.42% | 0.47% | 0.62% |
機構債の 表面利率 | 0.96% | 0.94% | 0.93% | 1.02% |
フラット35 | 1.76% | 1.73% | 1.72% | 1.81% ~1.77% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
8月から9月にかけて機構債の表面利率が0.93%から1.02%へと0.09ポイント上がっているということは、投資家が日銀の利上げ可能性を警戒しており高い金利でなければ機構債を買ってくれないということを意味します。
機構債の上昇と同じ幅だけ素直にフラット35の金利も上昇すると仮定すれば、9月のフラット35の金利は1.81%前後という予想になります。
しかしフラット35は公的融資であり、金利の急激な高騰時には政策的に住宅ローンの金利の上昇を緩やかにする傾向があります。
これまでも長期金利の高騰時にあえてフラット35の金利上昇が抑えられたことが何度もあり、なかでも1か月の上昇幅は0.05ポイントを超えない程度となっているケースが多くありました。
今回も政策的に上昇を抑えると仮定すれば、9月のフラット35の金利は1.77%前後という予想になります。
さらに、ここ最近は長期金利の水準に対して、フラット35の金利は低下傾向にありました。
その背景には、2024年3月ごろまでにスタートすることを目途として、政府が子育て世帯を対象としてフラット35の金利引き下げを方針であることも影響してくるでしょう。
2023年度にフラット35で住宅を買う人は、子育て世帯であっても金利引き下げにならないため、住宅購入のタイミングによって生じる不公平を和らげるために全体的にフラット35の金利のベースを下げている可能性があるのです。
このように子育て政策が絡んでフラット35が下がっている状況ですので、日銀の利上げが警戒されて長期金利が上昇傾向ではありますが9月は1.81%~1.77%あたりで推移すると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
民間銀行は月末に翌月の住宅ローン金利を決定するため、7月28日に決定された日銀会合のYCC政策修正を織り込んで8月の住宅ローン金利が決まります。
そして、主要銀行の住宅ローン金利は7月から8月にかけて0.09ポイント程度上昇しました。
これに対して、民間の超長期固定金利と競合するフラット35の金利は7月から8月にかけて0.01ポイント下がりました。
これはフラット35の金利が月の中旬あたりに機構債の表面利率を通して決まるため、7月28日の日銀会合を織り込んでいないためです。
前述したフラット35の金利予想では、機構債の表面利率の上昇幅が0.09ポイントであることから、保守的なシナリオとしては0.09ポイント上昇するとしています。
つまりフラット35金利予想の0.09ポイントの上昇は、民間の住宅ローンの金利上昇に1か月遅れて上がる予想なのだとも言えるのですね。
民間銀行は日銀のYCC政策修正をすでに織り込み済みであり、8月から9月にかけては金利上昇しない可能性もありますが、フラット35の金利上昇に便乗して金利を上げる可能性も否定できないと思っています。
銀行によって対応が分かれてくるのではないでしょうか。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする銀行が相次いでいます。
ここ最近は市場の長期金利の動向にあわせて、超長期固定金利タイプと同じ変動幅で推移する傾向が続いています。
そのため、8月から9月にかけては金利上昇しない可能性もありますが、フラット35の金利上昇に便乗して金利を上げる可能性もあるでしょう。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
特に5月から7月にかけては、多くの主要銀行が10年固定金利を下げてきましたが、7月から8月には主要銀行は軒並み金利を上げています。
しかし今後の金利動向によっては銀行間の競争によって再び下がる可能性もあります。
9月は銀行の中間決算と重なること、3月に次いで住宅の引き渡しが多い月であることから、銀行間の競争によって金利が下がりやすい月ではあります。
長期金利が上がっていることと、フラット35の便乗で金利上昇のリスクもありますが、住宅ローンに力を入れている銀行については金利上昇が抑えられる可能性も期待できます。
多くの要因があるため、銀行によって対応が分かれる可能性があります。
変動金利の動向
変動金利は、政策金利の影響を受けます。
植田総裁はYCC政策の修正を行いましたが、前述のように大規模金融緩和の継続を明言しています。
そのため変動金利については基準金利、引き下げ幅ともに横ばいで推移すると予想します。
ただし、前述のように最短では2024年の利上げ可能性もささやかれる状況ですので、将来の利上げについては想定したうえで選ぶ必要があると思います。
まとめ~複数の住宅ローンでリスクヘッジと情報収集の重要性
前回の記事では7月会合では金融緩和政策の継続を前提とした予想をしましたが、下記のとおり『フラット35の金利は上がらず、民間銀行の固定金利が上がる可能性もある』ことを示唆していました。
もし、7月会合で金融政策の引き締めが示唆されたら、民間銀行は8月の固定金利タイプを上げるでしょう。しかしフラット35については、先に機構債が決まっているため、大きく上がらないということになります。
フタを開ければ大規模金融緩和を継続しつつYCC政策修正という複雑な舵取りが行われたのですが、月末に長期金利が急上昇したことで8月の民間銀行の固定金利は上昇してしまいました。
不幸中の幸いで大きな上昇にはならなかったのですが、これがもっと大きな金利上昇となっていたとしたら、住宅購入を諦めなければならなくなった可能性も否定できないのです。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。