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植田日銀の追加利上げはいつ?変動金利は上がる?専門家が2024年5月の住宅ローン金利を予想

最終更新日:

2024年5月の住宅ローン金利予想
住宅ローン金利
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。日銀は3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除しました。

いわゆる金融引き締めではなく、金融緩和政策を継続しながらのマイナス金利解除であり、主要銀行は住宅ローンの変動金利を据え置きました。そして市場関係者の関心は、追加利上げの開始時期と上げ幅に集まっています。

こちらは2024年4月から5月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。

詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。

住宅ローンの金利予想
金利タイプ4月参考(※)5月予想
フラット35
(買取型)
1.82%~

1.8%台の前半

民間の長期固定金利1.5%台~横ばい
20年固定金利1.3%台~一部の銀行で下がる可能性
10年固定金利0.9%台~横ばいか若干の上昇
変動金利0.3%台~0.3%台~
一部の銀行で下がる可能性

※4月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。

この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年5月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。

※当記事の金利や情報は2024年4月9日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。

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日銀マイナス金利政策解除後の長期金利と株価の推移

こちらは2023年12月1日から2024年4月5日までの日本の長期金利と日経平均株価の推移をグラフにしたものです。

日経平均と日本の長期金利

オレンジ色の折れ線グラフは長期金利です。昨年12月から今年の1月にかけて、米国のインフレ鎮静化から米国の金利低下が波及し、さらに能登半島地震の影響から下がりました。

2月にかけて上昇しているのは、3月から4月の利上げ可能性が示唆されたためです。上昇後に0.7%台で横ばいに推移しているのは、日銀が利上げ後も金融緩和政策が続くという見方を公式の場で発信していたためです。

そして3月19日の金融政策決定会合の直前には3月利上げのリーク情報が相次ぎ、事前発信の通りに金融緩和政策を維持しながらのマイナス金利政策解除が決定されたため、すでにこれを織り込んでいた債券市場にほとんど影響がなく、長期金利は0.7%台で横ばいに推移しています。

黄色の折れ線グラフが日経平均株価です。3月に入ってからは史上初の4万円台に到達しました。

米国の株高や日本企業の好業績に加え、マイナス金利政策の解除後も金融緩和政策が続くという見通しから、利上げとなっても国内企業の資金調達への影響が軽微なものになるという観測が立ったためです。

3月19日の金融政策決定会合でのマイナス金利政策の解除後にも再び4万円超の株高を記録しており、植田日銀の利上げは市場に肯定的に受け止められていると思います。

3月利上げは「ノーカウント」市場は次の利上げに注目

3月の植田日銀のマイナス金利政策解除は、表面的にはマイナス0.1%の短期政策金利をゼロ%に上昇させる利上げではありましたが、より強調されたのは金融緩和政策を継続するというものでした。

つまり、前任の黒田総裁が「異次元」と表現した金融緩和政策を「普通」の金融緩和政策にするということです。

植田総裁は会合後の記者会見で、今後は短期政策金利を操作する伝統的な手法で物価の安定を実現していきたいという方向性を示しました。ここから二つのことが読み取れます。

①3月のマイナス金利政策解除は「ノーカウント」

一つ目は何度も強調しているように、3月の利上げ後もしばらくは金融緩和政策が続くということであり、今後どんどん政策金利を上げていくことは考えていないということです。金融引き締めではないのですね。

通常、利上げといえば金融引き締めであり、銀行の短プラが上がって住宅ローンの変動金利も一斉に上がるというのがセオリーです。

3月の利上げでこのセオリー通りにはなっていない理由は、表面的には政策金利が上がったのだけれど、実質的には利上げではないと日銀が説明し、市場もその説明を受け入れたためです。つまり利上げとしては「ノーカウント」なのですね。

ですから、市場の注目が集まっているのは利上げにカウントすべき短期政策金利の上昇はいつ行われるのか?そして、今後どこまで短期政策金利は上がるのか?ということなのです。

②任期中に0.25%の利上げを複数回行いたい

そして、日銀の植田総裁は短期政策金利を操作する、中央銀行の伝統的な政策手法へシフトさせたいと言っています。

これを実現するには、現在のゼロ%のままではダメなわけです。ゼロから金利を下げると再びマイナス金利政策に逆戻りしてしまうからですね。

短期政策金利を操作するには、最低でも今のゼロから1段階金利を上げなければなりません。できれば、上げられるうちに2段階くらい上げておきたいというのが本音ではないかと思います。

通常、中央銀行が短期政策金利を操作する場合の最少単位は0.25%です。現在のゼロ%から1段階上げれば0.25%、2段階上げれば0.5%ということになりますね。

日銀総裁の任期は5年ですが、この5年の間にできれば複数回の利上げを行いたいと考えていると見ています。

銀行の営業方針~今回は当てが外れて日銀の追加利上げを熱望

昨年までの民間銀行の営業方針としては、“日銀の利上げによって変動金利を上げられることを見越して、あえて今は変動金利を低く抑え、利用者を変動金利に集める。”というものが大半であったと思います。

しかし、3月のマイナス金利政策解除後も日銀が緩和政策を継続するということで、結果として変動金利を上げられなかったわけですから、この民間銀行の思惑が外れていることを意味します。

利用者を変動金利に集めたところで、思っていたほどは儲からない。仮に変動金利を上げたところで、変動金利を据え置いた他行へ借り換えられて顧客を失ってしまう状況になっているわけです。

むしろ、4月からはSBI新生銀行と三井住友信託が変動金利の適用金利を下げるという対応をとっています。

おそらく民間銀行としては、“次回以降の日銀の利上げに期待する”という方針にシフトしていると見ています。

産経新聞社が主要エコノミスト20人を対象に実施したアンケートによると、半数は2024年9月から12月の金融政策決定会合で日銀が追加利上げに踏み切ると予想したと報じています。

あくまで私見ですが、これには民間銀行に所属しているエコノミストの希望的観測が多分に含まれているように思います。年内に追加利上げはあまりに早すぎるからです。

産経新聞社はアンケートに集計されたエコノミスト全員の内訳を明らかにしていませんが、日銀政策委員会審議委員を経験した野村総研の木内氏は来年の1月~3月の追加利上げを予想していると明らかにしており、千日太郎もこれを支持します。

年内に追加利上げをしたのでは、金融緩和政策を続けるといった舌の根も乾かぬうちに利上げをしたということになり、その後の市場との関係に影を落とすことになるでしょう。

民間銀行としては早期の追加利上げを熱望しており、それがアンケートの結果に反映されていると見ています。

なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。

金利タイプ別2024年5月の金利予想

では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年5月の金利がどうなっていくのか予想していきます。

4月9日までの公開情報を前提とした予想になります。

【金利タイプ別】
2024年5月の金利予想

公的融資フラット35の金利動向

下のグラフは2024年1月から4月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。

オレンジ色の折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

フラット35(買取型)と長期金利
該当月
(機構債発表日)
1月金利
(2023年12月15日)
2月金利
(2024年1月19日)
3月金利
(2月21日)
4月金利
(3月15日)
長期金利 0.67%0.65%0.73%0.78%
機構債の
表面利率
 1.05%1.00%1.08%1.14%
フラット35 1.87%1.82%1.84%1.82%

フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。

日銀が3月会合でマイナス金利政策の解除を決めるよりも前に発表された4月分の機構債の表面利率は、長期金利の上昇に伴い0.06ポイント上昇しました。

通常ならば4月のフラット35金利は同じ幅の0.06ポイント上がるということになるのですが、住宅金融支援機構はあえて0.02ポイントの低下としています。

フラット35の金利が長期金利や機構債の上昇に対して逆方向に下がることは非常に珍しいことです。

直近の長期金利の動向としては、米国FRBの早期利下げ観測が後退して米長期金利が上がってきたことで上昇傾向にあります。

しかし日銀のマイナス金利政策解除に伴い、機構がフラット35の金利を下げた背景には政策的な意図があるものと考えられます。

そのため、5月のフラット35の金利については政策的に1.8%台の前半が維持されると予想しています。

民間の超長期固定金利の動向

日銀がマイナス金利政策を解除する直前の2月から3月にかけては、フラット35の金利が0.02ポイント上昇しましたが、再び民間の超長期固定金利については対応が分かれ、三菱UFJ銀行が0.15ポイントの大幅上昇となり、みずほ銀行とりそな銀行は0.05ポイント前後の低下となりました。

そしてマイナス金利政策解除後の3月から4月にかけては、三菱UFJ銀行は0.05ポイント下げ、みずほ銀行は0.03ポイントの上昇、りそな銀行は0.1ポイントの大幅上昇としており、銀行によって対応の差が浮き彫りとなっています。

固定タイプの金利が長期金利に連動するというのはあくまで建前です。建前通りに金利を下げるケースもあれば、銀行の金利先高観からあえて上昇させるケースもあるのです。

現在は日銀の追加利上げの時期と上げ幅に注目が集まっていますが、その読みが銀行によって異なり、固定タイプの金利に表れています。

各行の想定する次の利上げ時期と利上げ幅について、すでに4月の固定金利に反映しているとすれば、4月から5月にかけての変動要素は長期金利の動向のみであり、フラット35の金利水準も低いことから横ばいで推移すると予想しています。

20年前後の長期固定金利の動向

20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする傾向が強くなっていました。

しかし、2月から3月にかけては、住信SBIネット銀行が0.22ポイントも下げており、日銀のマイナス金利解除直後の3月から4月にかけてさらに0.01ポイント下げました。

今のところはまだ1.5%台であるため、フラット35の子育てプラスで最大の1%引き下げになるケースの人と比べれば高いですが、今後は期待できるかもしれません。

また同じグループのSBI新生銀行も少し前から20年固定を下げてきており、3月と4月は1.35%としているので、グループ子会社間の競争によって下がっていく可能性もあります。

今後は一部の銀行で営業方針によって金利低下を期待できます。

10年固定金利の動向

10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。

前月の予想では、3月に日銀が利上げを決定した場合、10年固定金利のように比較的短い期間の金利を固定する商品については敏感に反応しやすいと考えられるため、4月は上昇すると予想していました。

結果としては、金利を上げた銀行、横ばいの銀行、下げた銀行と完全にバラバラとなっています。

ただし最低金利では2月に0.86%としていた三菱UFJ銀行が、日銀利上げ後の4月には0.98%に上がっていることから、ベースとして上昇傾向にはあるものと考えられます。

各行の想定する次の利上げ時期と利上げ幅について、すでに4月の固定金利に反映しているとすれば、4月から5月にかけての変動要素は長期金利の動向のみであり概ね横ばいか若干の上昇で推移すると予想しています。

変動金利の動向

変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。

3月の日銀マイナス金利政策解除で短期政策金利が0.1ポイント上昇したのですが、前述のように利上げとしては「ノーカウント」となっており、主要銀行の変動金利は横ばいとなっています。

なお、逆に変動金利を下げた銀行もありますが、基準金利を下げているのではなく、引き下げ幅を拡大させる従来と同じ方式で下げています。

次の利上げでは横並びで基準金利が上がる可能性がありますが、さしあたり5月に利上げはなく横ばいで推移すると予想しています。

まとめ~年内に追加利上げの可能性は?

戦後初の学者出身の植田総裁は、就任からたった1年足らずで歴史的な大規模緩和の幕引きを混乱なく成功させたとして、内外から高く評価されています。

そして市場の関心は早々と次の追加利上げに移っています。

本文でご紹介したように、年内の追加利上げを予想するエコノミストが最多数となっていますが、3月の会合では9名中2名の審議委員が時期尚早であるとしてマイナス金利政策解除に反対しています。

今回の利上げの影響が顕在化するまでにはタイムラグがあり、統計データのとりまとめにも時間を要することを鑑みると、年内の追加利上げがあるとするならば想定外の円安進行など、やむを得ない事象が条件となるでしょう。

また、金融緩和を継続するという発言が有効なのは長くても1年程度と考えられます。

一方で住宅ローンの返済期間は最長35年の長きにわたります。変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。

早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。

民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。

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