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年内に「マイナス金利解除」の可能性もゼロではない?住宅ローン金利はこの先どうなるか?専門家が2023年10月の住宅ローン金利を予想

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2023年10月の金利予想
住宅ローン金利
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。

9月の日銀会合では大規模金融緩和の継続が全員一致で決定されました。しかし、それ以前に日銀総裁がインタビュー記事で報じられたコメントによって年内の政策修正が警戒されており、長期金利は10年ぶりの高水準となっています。

こちらは9月から10月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。

住宅ローンの金利予想
9月参考(※)10月予想
フラット35
(買取型)
1.80%~1.85%前後に上昇
民間の長期固定金利1.4%台~ フラット35より大幅に上昇
20年固定金利1.6%台~ フラット35より大幅に上昇
10年固定金利0.8%台~ 上昇するが長期固定金利よりは上昇が抑えられる
変動金利0.3%台~横ばい

※9月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。

この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2023年10月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。

※当記事の金利や情報は2023年9月22日時点のものを記載しております。
最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。

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長期金利は10年ぶりの高水準へ

こちらは2023年5月1日から2023年9月22日までの日本と米国の長期金利の推移です。

2023年10月住宅ローンの金利予想 長期日米長期金利

青い折れ線グラフが日本の長期金利、オレンジが米国の長期金利です。

ベースとしては日本の0%が米国では3.3%となっていますので、日米の金利差は実に3.3%もあるということになります。さらに日本よりも米国の方がダイナミックに上昇しています。

特に9月21日には米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利見通しが示され、高金利政策が続くとの観測が台頭したことで、長期金利が急上昇しました。

日本では9月22日に日銀政策決定会合の結果が発表され、全員一致で金融緩和政策の継続が決まりましたが、米国の金利上昇とそれ以前に日銀総裁がインタビューで年内の利上げ可能性に言及したことで金利は上昇傾向となっています。

9月21日には10年ぶりに0.745%という水準まで上昇しました。

日銀総裁は年内に「マイナス金利解除」の可能性に言及

日銀の会合後に複数の日銀審議委員のコメントが報道されていますが、多くの委員が日銀の掲げる物価上昇率2%の目標達成について「見通せる状況にはなっていない」など慎重な見方をしており、現在の金融緩和政策を続ける必要があるとの考えを示しています。

これに対し、日銀の植田総裁は読売新聞社の単独インタビューで、現状は金融緩和政策を維持しつつも、年内にも「マイナス金利の解除」を判断できる材料が出そろう可能性があると述べたことが報じられており、その内容を簡潔にご紹介します。

現状について聞かれたインタビューで植田総裁は、「物価目標の実現にはまだ距離があり、粘り強い金融緩和を続ける」との立場は維持しています。ここは他の審議委員と同じです。

しかし、短期金利をマイナス0.1%としているマイナス金利政策の解除のタイミングについての質問には、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、「経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある」さらに、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と答えています。

そして、マイナス金利解除の具体的な時期については、「到底決め打ちできる段階ではない」としながらも、来春の賃上げ動向を含め「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と答えているのです。

銀行の営業方針~固定タイプの金利に銀行によって差がある

主要銀行は9月の固定タイプの住宅ローン金利を軒並み上げてきていますが、これは長期金利の上昇を反映したものという建前になっています。

しかし、多くの民間銀行が主力とする10年固定金利の上げ幅には主要銀行間でも差があり、中には下げた銀行もあるという点は興味深いですね。

ネット銀行で人気のauじぶん銀行の10年固定金利は前月から2%の上昇、住信SBIネット銀行は1.9%の上昇となっており、これらは長期金利の上昇幅と概ね近似しています。

これらの上げ幅が基本であり、多数派となっています。

これに対して10年固定金利の上昇を明らかに抑えているのが三菱UFJ銀行でその上げ幅は0.1%です。2023年9月適用の最低金利は0.88%であり、ネット銀行よりも低金利です。

では三菱UFJ銀行は日銀の利上げ可能性は低いと考えているのでしょうか?
答えはNOです。

三菱UFJ銀行で市場部門トップを務める関浩之常務は、大規模な金融緩和策を続ける日銀について「早ければ2024年1~3月に政策の正常化に転じる可能性がある」との見方を示しており、日銀の利上げをかなり警戒しているのです。

民間銀行の中でも、いち早く固定金利タイプを上げてきたのが三菱UFJ銀行です。先月7月の主要銀行の住宅ローン金利は下げた銀行が多数派だったのですが、メガバンクの中で三菱UFJ銀行だけが10年固定金利を0.01%上昇させているのです。

むしろ利上げの可能性を高めに見込んでいる銀行といってよいでしょう。

さらに10年固定金利を下げているのがSBI新生銀行であり、前月よりも0.05%下げています。私の知る限り10年固定金利を下げているのはこの銀行だけです。

折しもSBI新生銀行は9月に非上場化が決定されました。

SBI新生銀行の前身は経営破綻した旧日本長期信用銀行で1998年と2000年に国が優先株を取得する対価として3700億円の公的資金が注入されています。

今回の非上場化は、上場したままでは公的資金の返済が難しいためであろうと言われています。

うがった見方かもしれませんが、非上場化によるイメージダウンによって住宅ローンの獲得が難しくなるため、他行との差別化を図るべく、あえて目立つタイミングで住宅ローン金利を下げているのかもしれません。

非上場化することで、株価を気にせず思い切った営業施策を打てるということもあるでしょう。

もしも日銀が政策を修正すれば、いよいよ利上げが近いということですから、さらに長期金利が上がっていきます。

住宅ローンの固定金利は長期金利と連動するという建前ですから、先行して固定金利タイプが上がることになります。

現時点では民間銀行によっても対応に差がある状態です。

銀行の住宅ローン金利の変更は、目立たず、少しずつ行われていくので、ある程度推移を見ていく必要があります。

私は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。

金利タイプ別2023年10月の金利予想

では、住宅ローンの各金利タイプ別に2023年10月の金利がどうなっていくのか予想していきます。

9月22日までの公開情報を前提とした予想になります。

【金利タイプ別】
2023年10月の金利予想

公的融資フラット35の金利動向

下のグラフは7月から9月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移下のグラフは7月から9月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移に10月のフラット35金利予想を加えたものです。

10月は、1.85%前後と予想しました。

オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、青の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

2023年10月住宅ローンの金利予想フラット35(買取型)と長期金利の推移
(機構債発表日)7月金利
(2023年6月16日)
8月金利
(2023年7月21日)
9月金利
(2023年8月17日)
10月金利
(2023年9月21日)
長期金利0.42%0.47%0.62%0.72%
機構債の
表面利率
0.94%0.93%1.02%1.08%
フラット351.73%1.72%1.80%1.85%

フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組み

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。

8月から9月にかけて機構債の表面利率が0.93%から1.02%へと0.09ポイント上がっているということは、投資家が日銀の利上げ可能性を警戒しており高い金利でなければ機構債を買ってくれないということを意味します。

しかしフラット35は公的融資であり、金利の急激な高騰時には政策的に住宅ローンの金利の上昇を緩やかにする傾向があります。

これまでも長期金利の高騰時にあえてフラット35の金利上昇が抑えられたことが何度もありましたが、8月から9月にかけても政策的に上昇を抑えており、0.08ポイントの上昇に抑えられています。

さらにフラット35の上昇が抑えられる理由として、政府が子育て世帯を対象としてフラット35の金利引き下げを方針であることもあります。

2023年度にフラット35で住宅を買う人は、子育て世帯であっても金利引き下げにならないため、住宅購入のタイミングによって生じる不公平を和らげるために全体的にフラット35の金利のベースを下げている可能性があるのです。

このように子育て政策が絡んでフラット35の上昇を抑えている状況ですので、機構債の表面利率の上昇幅よりもフラット35の上昇幅は抑えられ、1.85%前後になると予想しています。

民間の超長期固定金利の動向

民間銀行の超長期固定金利については、7月に決定された日銀会合のYCC政策修正を織り込んで8月の住宅ローン金利は0.1ポイント前後という大幅な上昇となりました。

その後の長期金利は、0.65%で横ばいに推移しているので、8月から9月にかけての上昇はほとんどないはずなのですが、さらに0.2ポイント前後という大幅な上昇となっています。

7月から9月にかけての長期金利の上昇幅は0.2ポイント程度なのですが、住宅ローンの金利は通算0.3ポイント上昇したことになります。

固定タイプの金利が長期金利に連動するというのは、あくまで建前であり、便乗値上げ的に金利を上げることもあるということです。むろん逆に下げることもあります。

8月、9月と連続して金利を上げており、9月から10月にかけても長期金利が10年ぶりの高水準となっていますので、9月から10月にかけても金利を上げる大義名分が与えられたことになります

そのためフラット35よりも少し多めに上がる可能性が高いと見ています。

20年前後の長期固定金利の動向

20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする銀行が相次いでいます。

ここ最近は市場の長期金利の動向にあわせて、超長期固定金利タイプと同じ変動幅で推移する傾向が続いています。

そのため、9月から10月にかけては超長期固定金利と同じ方針となりフラット35よりも少し多めに上がる可能性が高いと見ています。

10年固定金利の動向

10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。

7月から9月にかけて、多数の民間銀行が10年固定金利を上げています。

しかし、その上げ幅には銀行によって差があり、SBI新生銀行に至っては金利を下げています。そのため、今後の物価動向や金融市況によっては銀行間の競争によって再び下がる可能性もゼロではありません。

さらに10月は銀行の中間決算直後であることから、銀行間の競争によって金利が下がりやすい月でもあります。

引き続き住宅ローンに力を入れている銀行については金利が上がるにしても、少し金利上昇が抑えられる可能性も期待できます。

多くの要因があるため、年内は銀行によって対応が分かれる傾向が続くでしょう。

変動金利の動向

変動金利は、政策金利の影響を受けます。植田総裁はYCC政策の修正を行いましたが、前述のように大規模金融緩和の継続を明言しています。

そのため変動金利については基準金利、引き下げ幅ともに横ばいで推移すると予想します。

ただし、インタビューでは年内に「マイナス金利解除」の可能性もゼロではない状況ですので、将来の利上げについては想定したうえで選ぶ必要があると思います。

まとめ~変動金利を選ぶ心構えと情報収集の重要性

千日太郎個人の予想としては、2024年に入ってからの「マイナス金利解除」が濃厚と見ているのですが、植田日銀総裁の口から年内の可能性が示唆されたことは驚きでした。あくまで「その可能性もゼロではない」というレベルのものではありますが、判断材料が揃えばすぐやるということです。

当然、わたしたちの行動は後手にまわるのですから、金利が上がりそうだと確定情報を入手してから行動したのでは遅いのです。基本的には変動金利はいつ上がってもおかしくないという前提で考えるのが後悔の少ない方法だと思います。

変動金利を選ぶ場合には、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってくるということです。住宅ローンは良くも悪くも金融商品なのです。

早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。

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