植田新総裁は金融緩和をいつまで継続する?2023年5月の住宅ローン金利を予想
最終更新日:
このページにはPRリンクが含まれています
また当サイトで得た収益は、サイトを訪れる皆様により役立つコンテンツを提供するために、情報の品質向上・ランキング精度の向上等に還元しております。※提携機関一覧
こんにちは公認会計士の千日太郎です。
4月8日黒田総裁の任期が満了し植田新体制の日銀がスタートしました。
植田新総裁が前任の黒田総裁の緩和政策を転換するとの見込みから、すでに複数の海外投資家が日本国債の空売りをし始め、長期金利は再び上昇していますが、10日の就任会見では金融緩和政策の継続を表明しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2023年5月のローン金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2023年4月12日時点のものを記載しております。
最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
株式会社エイチームライフデザイン
編集者イーデス編集部
「ユーザーが信頼して利用できるWEBメディア」を目指す編集部チーム。実際のユーザーの声や業界知識の豊富な専門家の協力を得ながら、コンテンツポリシーに沿ったコンテンツを制作しています。暮らしに関するトピックを中心に、読者の「まよい」を解消し、最適な選択を支援するためのコンテンツを制作中です。
■書籍
初心者でもわかる!お金に関するアレコレの選び方BOOK
■保有資格
KTAA団体シルバー認証マーク(2023.12.20~)
■許認可
有料職業紹介事業(厚生労働大臣許可・許可番号:23-ユ-302788)
気になる内容をタップ
長期金利が再び0.4%台後半に上昇した背景と今後の動向
こちらは2023年1月4日から2023年4月11日までの日経平均株価と日本の長期金利の推移です。
長期金利は黒田日銀が設定した上限0.5%に張り付き推移していましたが、3月10日の会合で金融緩和政策の継続を決定し、その直後に発生した米欧の銀行破綻から一時は0.2%台まで急低下しました。
しかし、その後は再び上昇し0.45%を超える水準となっています。
先月の当記事では、3月後半から植田氏が新総裁に就任する4月にかけては再び上限の0.5%に向けて上昇していくものと予想していましたので、今のところはわたしの予想通りの展開となっていますね。
市場の基本的な見方としては、近く日本国債の価格は今よりも下がる可能性が高いと考えているのです。
そのため、複数の海外投資家は国債先物のショート(売り持ち)ポジションを構築しているそうです。
これは、植田新総裁の就任後初となる4月27〜28日の会合で政策がタカ派寄りに転換し、それによって国債価格が下がることを見越して儲けるための空売りです。
つまり今の金利上昇は、経済の基礎的条件に基づかない金利の上昇であり、日本国債が再びマネーゲームの標的となっているということです。
しかし4月10日に行われた植田新総裁の就任会見では金融緩和政策の継続を明言しており、おそらく海外投資家の見込む展開とはならないと予想しています。
植田新総裁は4月の会合でも金融緩和政策を継続する(予想)
つまり千日太郎の予想としては、海外投資家は今回も肩透かしを食らうことになると思います。
米欧発の金融不安によって長期金利が下がり、イールドカーブ・コントロール政策の看板を下げる好機であったのは確かですが、10日の就任会見で徹底して金融緩和政策の継続を強調した以上、わずか2週間後に180度立場を翻すようなことはないと思います。
新総裁となる植田日銀が、債券市場に介入するイールドカーブ・コントロール政策をやめるにしても日本国債が投機の対象となっている間には下手に動かないのではないかと見ています。
しばらくは市場の期待と不安をよそに黒田日銀の緩和政策を粛々と継続する展開となるでしょう。
これも先月から立てていた予想ですが、まだそれを修正すべき状況にはなっていません。
異次元緩和から軌道修正して正常化していくにしても細心の目配りをし、出口戦略(金融引き締め)それ自体を目的とするような拙速な政策修正はやらないでしょう。
特に4月前半の金利上昇は、経済の基礎的条件に基づかない投機筋の空売りによることはわかっています。
ここでわざわざタカ派のレッテルを貼られるような動きをとることはないというのが、私を含めた大勢の見方だと思います。
銀行の営業方針:子育て支援によるフラット35の金利引き下げの影響
最近のトピックとしては、3月末に政府が子育て世帯を対象として住宅ローン、フラット35の金利引き下げを行う議論をスタートしたことが報じられています。
既にフラット35の金利引き下げ制度の中には「子育て支援」というカテゴリーが設けられているのですが、おそらくこれが拡充されることになります。
既に昨年からフラット35の金利引き下げ制度が拡充されており、最長当初10年間、最大0.5%金利が引き下げとなるので『民業圧迫』では?という指摘もあったのですが、これに関しては少子化対策の方が優先されるのだと思います。
4月の公的融資のフラット35(買取型)は3月の1.96%から0.2ポイント下がって1.76%となっています。
公的融資のフラット35がここまで下がると民間銀行としても、固定金利タイプの住宅ローンの金利を上げられない状況になってくるでしょう。
さらに、3月には米欧発の金融不安から長期金利が急低下したことを反映し、民間銀行の固定金利タイプも大幅に下がりました。
民間銀行の35年の超長期固定金利や多くの銀行が主力商品とする10年固定金利も同様に0.2ポイント前後の低下となっています。
ただし、住宅ローンを取り扱う金融機関としては、依然として利上げの可能性を捨てていないだろうというのが私の考えです。
金融機関としては金利が上がった方が儲かるので、どうしても利上げ期待のバイアスがかかるのです。
各銀行の営業方針にもよるでしょうが、固定タイプに見切りをつけて、変動金利に顧客を誘導しようとする銀行も出てくる可能性があります。
そうなると、その銀行の固定金利は大幅に上がるため、銀行の意図が透けてみえことになります。
金利タイプ別2023年5月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2023年5月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
4月12日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2023年5月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
公的融資の超長期固定金利であるフラット35(買取型)は2023年に入ってから長期金利の上昇に伴い、大幅な上昇となりましたが4月に再び下がってきています。
下のグラフはフラット35の金利と長期金利を2023年1月から2023年4月までとったものです。
フラット35の金利は前月の中旬に決まります。その時点に青い棒グラフのフラット35(買取型)金利を立てています。
(機構債発表日) | 1月金利 (2022年12月22日) | 2月金利 (2023年1月25日) | 3月金利 (2023年2月16日) | 4月金利 (2023年3月17日) |
---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.48% | 0.41% | 0.50% | 0.30% |
機構債の 表面利率 | 1.02% | 1.01% | 1.09% | 0.95% |
フラット35 | 1.68% | 1.88% | 1.96% | 1.76% |
特に2023年1月から2月にかけてのフラット35の金利上昇は、これまで住宅金融支援機構が行ってきた「急激な金利上昇を緩和」する方針とは異なります。
また、日銀の金融緩和政策にも逆行しており、おそらく政府サイドの意図による上昇と考えられます。
つまり「国債の金利は上げず住宅ローンの金利は引き上げたい」という意図によって上がっているわけです。
これに対して3月から4月のフラット35の金利低下は、おおむね長期金利の低下幅と同じ幅で下がったものと見てよいと思います。
米欧で発生した相次ぐ銀行の経営破綻よって投資家がリスクを回避するようになり、より安全な資産に資金が向かいやすい相場状況となっています。
つまり安全資産である国債が買われ、長期金利が下がるという展開となりやすいのです。
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
4月の前半では植田新総裁が金融政策を転換するかも?という警戒感から長期金利が上がってきていますが、就任会見で明言した金融緩和を継続するというメッセージが浸透すれば再び下がる可能性があります。
5月はおおむね1.7%~1.8%程度の水準と予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
30年超の超長期固定金利や全期間固定金利は公的融資であるフラット35がライバルとして存在するため超長期固定金利に力を入れている銀行は上げない傾向があります。
そのフラット35はおおむね横ばいと予想していますので、民間の超長期固定金利もおおむね横ばいと予想しています。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退する銀行が相次ぎました。
長期金利の低下に伴い下げる可能性もありますが、後述する30年以上の超長期固定金利の方が低金利です。金利予想としては、目立った動きはなく横ばいで推移すると予想しています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
金融市場においては植田日銀の引き締め方向への政策転換が強く意識されているものの、植田新総裁の就任会見では現在の緩和政策の継続が明言されているため、やはり金利を上げにくい状況にあります。
加えて、直近では米欧発の金融不安から長期金利が急低下し3月にはほぼすべての主要銀行が10年固定金利を下げました。
変動金利より高い水準ではあるものの、このまま1%未満の低い水準で横ばいに推移する可能性が高いと見ています。
変動金利の動向
変動金利は、政策金利の影響を受けます。民間銀行の観測としては、将来的には植田日銀による利上げ可能性があると見ているでしょう。
しかし10日の就任会見では金融緩和の継続を明言しており、現時点ではまだ変動金利を上げる大義名分がありません。
そのため変動金利については基準金利、引き下げ幅ともに横ばいで推移するでしょう。
まとめ~世界的な景気後退のなか日本だけで利上げが意識されている
IMFによれば、2023年は先進国の90%で成長が減速する見通しだそうです。
金融引き締め政策で米国とユーロ圏の需要が圧迫され、経済活動が鈍化するとしています。
住宅ローンの金利は下がってもよさそうなものですが、植田新総裁による出口戦略(金融引き締め)が強めに意識されているので、住宅ローンの固定金利は少し下がりにくくなっています。
これから住宅ローンを借りる人にとっては、先の読みにくい環境が続きそうです。
なお、当記事は現時点で入手可能な公開情報を参考にして、千日太郎個人の考える今後の予想ですから、その後の状況変化によって予想が変化していくものですし、そもそも私の予想が外れる可能性も大いにあり得ることです。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、すくなくとも住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。
2024年最新版
おすすめ住宅ローン
金利比較
最新金利や
住宅ローンの選び方まで!
たった
1分
まずはシミュレーションで
住宅ローンを一括比較