3月利上げで住宅ローンはどうなる?変動金利の引き上げ幅は?専門家が2024年3月の住宅ローン金利を予想
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このたびの令和6年能登半島地震で被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
1日も早い復旧・復興、そして平穏な日常が戻りますことを心よりお祈りいたします。
こんにちは公認会計士の千日太郎です。
2024年元旦に発生した能登半島地震の影響もあり、1月の金融政策決定会合ではマイナス金利を含む大規模な金融緩和政策の現状維持が決定されました。
その一方で3~4月の春闘の結果次第では日銀がマイナス金利政策の解除へ踏み切るとの見方が強まっています。
こちらは2024年2月から3月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 2月予想(※) | 2月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.82%~ | 1.87%前後 |
民間の長期固定金利 | 1.5%台~ | 大幅上昇はない |
20年固定金利 | 1.6%台~ | 大幅上昇はない |
10年固定金利 | 0.8%台~ | 下がる可能性もゼロではないが上がる可能性の方が高め。ただし大幅上昇はない |
変動金利 | 0.3%台~ | 月初は横ばいでスタート、 日銀が利上げすれば翌日から0.1~0.2ポイント上がる |
※2月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年3月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2024年2月15日時点のものを記載しております。最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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日銀の利上げ観測が強まる中で株価が高騰した理由とは?
こちらは2023年10月2日から2024年2月14日までの日本の長期金利と日経平均株価の推移をグラフにしたものです。
オレンジの折れ線グラフの長期金利は昨年11月に0.95%台に高騰した後、右肩下がりに下がっていたのですが、今年の2月にかけては再び上昇してきました。
昨年11月に長期金利が急上昇した理由は、10月の金融政策決定会合で7月に続きYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の運用が修正されて、日銀が設定する長期金利の上限について、1%を「上限のめど」とし、1%を超えることを一定程度容認したためです。
その後金利が下がったのは、米国のインフレ鎮静化から米国の金利低下が波及したためと言われています。
そして2024年には元日に発生した能登半島地震が甚大な被害を及ぼし、1月22日23日の金融政策決定会合ではマイナス金利政策を含む大規模緩和政策の現状維持が決定されました。
にもかかわらず長期金利が上昇傾向に入ってきたのは、3月4月に予定されている春闘の結果によってはマイナス金利政策を解除する可能性があることが示唆されたためです。
さらに2月に入ってからは日経平均株価が続伸し一時3万8千円台に到達したことが報じられています。
これは平成2年のバブル経済期以来、約34年ぶりの高値水準です。
これは、米国の株高や日本企業の好業績に加え、日銀副総裁が講演で大規模緩和策の転換後も「急速な利上げにはなりにくい」と語ったことで、マイナス金利政策の解除後も金融緩和政策が続くという観測が追い風となったものと思います。
こちらは2023年10月2日から2024年2月14日までの日米の長期金利の推移をグラフにしたものです。
黄色の折れ線グラフが日本の長期金利、オレンジが米国の長期金利です。
日米を同じ目盛りで比較すると、昨年まではオレンジが黄色を大きく上回っていましたが、今年に入るとオレンジが黄色よりも下で推移する期間が長くなってきています。
これは、米国にインフレ鎮静化の兆しが見えたことから長期金利が一時期よりも落ち着いてきているためです。
株高に加えて、外国為替市場の円相場が一時1ドル=150円88銭と約3カ月ぶりの円安水準を付けており、財務省の為替介入の可能性を示唆したことが報じられています。
しかし日米金利差は昨年10に為替介入したときよりも日米の金利差は縮まっているので、おそらく一時的なものだと見ています。
銀行の営業方針~短期的には変動金利を上げにくい環境
住宅ローンの変動金利は日銀の政策金利に連動するという建前になっています。
そのため、現在のところ多数のエコノミストが予想しているように3月か4月にマイナス金利政策が解除されれば、その月から住宅ローンの変動金利は横並びで上昇することになります。
しかし、前述した日銀副総裁のコメントのように「急速な利上げにはなりにくい」とするならば、毎会合ごとに政策金利が上がっていくとは考えにくいですね。
現在は、日銀当座預金口座の一部にマイナス0.1%が適用されているのがゼロ又は0.1%になるとして、最初の利上げ幅が0.1%~0.2%程度であり、その後は一定期間にわたってその効果を観測するという流れになりそうです。
政策金利が順調に上がっていかないとすると、金融機関としても利用者を変動金利に集めても儲けが少ないということを意味するわけです。
あくまで私見ですが、そうした「読み」をしていると見られるのがメガバンクの三菱UFJ銀行です。
今年の1月から2月にかけて、多くの金融機関が日銀の利上げ観測と長期金利の上昇に合わせて固定タイプの住宅ローン金利を上昇させたのですが、メガバンクのなかで三菱UFJ銀行だけが10年固定タイプの金利を0.16ポイントも引き下げているのです。
普段は低金利を売りにしているネット銀行は逆に0.05ポイント上げているので、対応差としては0.21ポイントもあるのです。
ここ最近の流れとしては、三菱UFJ銀行が他行に対して金利をリードする場面が多かったため、こうした先読みが他行にも波及していく可能性もありますが、これからの日銀の動向と金融市場の環境変化はかなり流動的で、翌月には三菱UFJ銀行が方針を変える可能性も否定できません。
現時点ではっきりとしたことが言えないのが正直なところです。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2024年3月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年3月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
2月15日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2024年2月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは昨年11月から今年2月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。
該当月 (機構債発表日) | 2023年11月金利 (2023年10月20日) | 2023年12月金利 (2023年11月17日) | 2024年1月金利 (2023年12月15日) | 2024年2月金利 (2024年1月19日) |
---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.84% | 0.79% | 0.67% | 0.65% |
機構債の 表面利率 | 1.16% | 1.11% | 1.05% | 1.00% |
フラット35 | 1.96% | 1.91% | 1.87% | 1.82% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。
投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
直近では1月の日銀会合後の総裁記者会見で3月4月に予定されている春闘の結果によってはマイナス金利政策を解除する可能性があることが示唆されたため、長期金利は上昇傾向となっています。
2024年3月は長期金利が上昇すればフラット35の金利も上昇するものの、利上げ後もしばらく緩和的な金融環境が続くとの観測から大幅な上昇可能性は低いと予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
今年の1月から2月にかけて、フラット35は0.05ポイント下がりましたが、民間の超長期固定金利については対応が大きく分かれており、三菱UFJ銀行が0.19ポイントの大幅な低下であったのに対し他行は0.1ポイント前後の大幅な上昇としています。
三菱UFJ銀行以外の主要銀行では、りそな銀行は1月の1.395%から2月は1.525%へ0.13ポイント上がり、みずほ銀行は1月の1.68%から2月は1.82%へ0.14ポイント上がりました。
ネット銀行ではauじぶん銀行が1月の2.10%から2月は2.19%へ0.09ポイント上げています。
固定タイプの金利が長期金利に連動するというのはあくまで建前です。建前通りに金利を下げるケースもあれば、銀行の金利先高観からあえて上昇させるケースもあるのです。
1月から2月にかけては、銀行ごとの金利観測によって真逆に動く典型的なケースであると見ています。
3月は1年でもっとも住宅ローンの実行が集中する月であり、民間銀行としては3月に向けて低金利をアピールする戦略をとります。
つまり、3月はあえて金利を下げるインセンティブが低い月であるとも言えます。
月末に向けて長期金利が上昇すれば住宅ローンの金利も上昇するものの、利上げ後もしばらく緩和的な金融環境が続くとの観測から大幅な上昇可能性は低いと予想しています。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利とする銀行が相次いでいます。
ここ最近は市場の長期金利の動向にあわせて、超長期固定金利タイプと同じ変動幅で推移する傾向が続いています。
そのため、超長期固定金利と概ね同じ動きになると見ています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
目下の動向としてはメガバンクの中で三菱UFJ銀行だけが10年固定金利を下げており、他行がこれに追随して下げてくる可能性もあります。
ただし、3月は1年でもっとも住宅ローンの実行が集中する月であり、民間銀行は例年3月に向けて低金利をアピールする戦略をとるため、3月はあえて金利を下げるインセンティブが低い月であることから、その期待は少し低めとなります。
下がる可能性もゼロではありませんが、長期金利の上昇に伴って上がることを想定しておくべきです。
ただし利上げ後もしばらく緩和的な金融環境が続くとの観測から大幅な上昇可能性は低いと予想しています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。
2月には会合が予定されていませんので、3月の変動金利は横ばいでスタートすると予想しています。
ただし3月には18日と19日に金融政策決定会合が予定されています。
この会合で政策金利を上げることが決定されるとその翌日には変動金利も上がるものと考えておく必要があります。
上がるとすれば前述のように0.1~0.2ポイント程度であろうと予想しています。
まとめ~複数の住宅ローンで審査を通す重要性
住宅金融支援機構が実際に住宅ローンの借り入れをされた方を対象に調査した最新の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、変動金利を利用した方の割合が74.5%となっており、2023年4月調査の72.3%を上回る結果となっています。
日銀の利上げが強く意識されたことで固定金利が割高になってきたことが、変動金利を選ぶ人の増加につながっているようですね。
しかし、本文で述べたように変動金利の上昇ペースが緩やかであるとの見込みから、特定の金融機関では固定金利が再び下がる兆候を見せています。
変動金利の上昇ペースは緩やかというのはあくまで数年単位の短期の予想です。
一方で住宅ローンの返済期間は最長35年の長きにわたります。
変動金利を選ぶということは、「金利が上がっても自分は返済を継続できるか?」「どの程度までならば許容できるのか?」こうした判断を、市況を見ながら随時行うことが必要になってきます。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。