開く日米金利差と進む円安でどうなる?2022年6月住宅ローン金利動向
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こんにちは公認会計士ブロガーの千日太郎です。
米国では5月のFOMCで0.5%の利上げが決定され、米長期金利は節目の3%を超える水準に上昇しました。
このまま日米の金利差が開くとさらに円安が進み、いよいよ日銀の金融政策にも影響するのではないか?との懸念がくすぶっています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2022年6月の住宅ローン金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2022年5月8日時点のものを記載しております。
最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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日本の長期金利の推移と日銀の指し値オペ
こちらは2022年1月4日~2022年5月6日までの日経平均株価と長期金利の推移をグラフにしたものです。
2月にはロシアがウクライナに侵攻したことで、長期金利も日経平均株価も一時大きく下がりましたが、すぐに急上昇しています。
これは、米国の急激なインフレ対策として米FRBが0.25%の利上げを実施し、さらに5月には0.5%の利上げを実施したことによって米国の長期金利が上昇し、日本に波及したためです。
これに対して日銀の黒田総裁は金融緩和政策を堅持しており、債券市場に直接介入する指し値オペによって日本の長期金利を上限の0.25%に抑え込んでいます。
なぜ指し値オペによって長期金利が0.25%を超えないのか?
なぜ金利を上げないようにしたいのか?
簡単に解説しておきましょう。
長期金利の決まり方と指値オペの効果
長期金利とは一般的に10年国債の利回りを言います。利回りとは、投資元本に対する1年あたりの利益の割合です。
例えば額面100円で表面利率1%の10年国債を100円で購入したら1年に1円の利息が貰えて、10年後には額面の100円が返ってくるので、
1年あたりの利回りは1÷100=1%
です。
この10年国債の市場価格が下がって80円のときに購入したら1年に1円の利息が貰えて10年後には額面の100円が返ってきますので、利息に加えて
10年で20円(1年あたり2円)
のキャピタルゲインが得られます。
キャピタルゲインとは
保有している株式や債券などを売却することによって得られる売買差益のこと
1年あたりの利回りは(1+2)÷80=3.75%
となります。
つまり、債券の価格が下がると利回り(金利)が上がる関係にあります。
別の言い方をすると国債の価格と長期金利の関係は負の相関関係にあるのです。
日銀はこの長期金利を0.25%よりも上げないようにする政策をとっているのです。
長期金利が0.25%よりも高くなりそうになったら(=国債の価格が下がりすぎたら)日銀が国債を買い支えて国債の価格を上げて金利を下げるのです。
これが日銀による「指値オペ」です。
日銀は貨幣を製造しているところですから、「お金が足りなくてこれ以上は国債を買えない」ということにはまずなりません。
確実に狙った価格(指値)にすることができるのですね。
日銀が金利を低く維持する金融緩和政策の主な目的は民間銀行が低金利で企業や個人に融資をするように促して、コロナによって勢いを失った国内景気を上向かせることにあります。
また、政府はコロナ対策として多額の補助金を交付していますが、その主要な財源は国債(借金)です。
政府は利息の負担を上げないようにするため、国債の金利を上げたくないという面もあるのです。
しかし、この金融緩和政策が急激な円安を引き起こしているという面もあるのですね。
日米長期金利の比較:日米の金利差がもたらす急激な円安の弊害
こちらは2022年1月4日~2022年5月6日までの日本と米国の長期金利の推移をグラフにしたものです。
先ほどのグラフでは日本の長期金利もそれなりに上昇していることが見て取れましたが、このように米国と並べてみると、金利上昇のレベルが全く違うことが分かります。
さらに日銀は金利を上げないようにしているのに対して、米FRBは積極的に利上げしているのですから、その差はドンドン開いていきます。
これほど利回りに差が生じると、投資家としては日本円よりも米ドルをもっている方が得だということになり、円を売ってドルを買う動きが活発となります。
約6年ぶりと言われる急激なドル高円安は、水が高いところから低いところへ流れるが如く、自然の摂理として発生していることなのです。
円安は中小企業の多くは輸入企業で経費増に繋がり逆風となります。わたしたち一般消費者も輸入品の価格が上がることで家計が圧迫されます。
しかし大企業を中心とする輸出企業にとっては利益増に繋がりますので、追い風となるのです。
日本経済全体にとってプラスになっているかマイナスになっているかは、まだ判断できない状況にあります。
しかし米欧が利上げするなかで日本だけが利下げを続けるという状況が変わらない限り、今の円安傾向がさらに進み、長く続くとすれば、国内景気のさらなる悪化をまねく懸念もあります。
日銀の黒田総裁も「急激な円安はマイナスが大きくなる」とコメントしており、為替の状況によっては円安を招いている金融緩和政策を転換する可能性を示唆しています。
銀行の営業方針:日銀の利上は五分五分なので固定金利が上がってきた
民間銀行の住宅ローン(長期の固定金利)は2022年2月から2022年5月にかけて連続して上昇を続けています。
これに対して変動金利については、基本的に低金利のまま横ばいとなっています。
この背景にある民間銀行の思惑は、日銀による利上げの可能性を折り込んだものでしょう。
固定金利はその固定期間にわたって金利を固定するため、将来金利が上昇するという観測下では高めに金利を設定しておかなければ、将来銀行が損をしてしまうということになります。
しかし、変動金利は6か月ごとに金利を上昇させることができる金利タイプであるため、実際に日銀が利上げをしてから上昇させれば良いのです。
懸念されている円安は日本経済全体にとって、まだ良いとも悪いとも言えない状況なので、日銀が利上げするかはまだ「五分五分」の状態です。
しかし、今の状況になる前は日銀が利上げする要素は「皆無」だったのです。
つまりゼロから50%になったというのは、金融機関の見方としてかなり可能性が上がっているということになるのですね。
金利タイプ別2022年6月の金利予想
では、金利タイプ別に2022年6月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
5月8日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2022年6月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
こちらは、公的融資で30年超の超長期固定金利であるフラット35(買取型)の金利と長期金の推移を2022年2月から2022年5月までとったものです。
2022年2月から3月にかけて大幅に長期金利が上昇しており、フラット35の金利も上昇していますが、公的融資であることからその上昇は抑えられ、3月から5月にかけては比較的になだらかな上昇となっています。
フラット35の金利は前月の中旬に決まります。その時点に青い棒グラフのフラット35(買取型)金利を立てています。
(機構債発表日) | 2月金利 (2022年1月21日) | 3月金利 (2022年2月17日) | 4月金利 (2022年2月17日) | 5月金利 (2022年4月20日) |
---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.13% | 0.21% | 0.20% | 0.24% |
機構債の 表面利率 | 0.40% | 0.48% | 0.46% | 0.50% |
フラット35 | 1.35% | 1.43% | 1.44% | 1.48% |
フラット35は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。
投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。
その長期金利は0.25%以上に上がらないように日銀が指し値オペによって抑え込んでいますが、機構債の表面利率を操作しているわけではありません。
そのため、長期金利はある程度低い金利に抑えられていても、もっと高い金利でなければ機関投資家が機構債を買ってくれない可能性もくすぶっています。
今月の機構債発表のタイミングに長期金利がどのあたりになるのか?
また、実態としての長期金利が何パーセントなのか?
非常に難しいところですが、フラット35についてはまだ上がり代があるでしょう。
フラット35(買取型)の金利は1.5%まで上がる可能性があると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
民間住宅ローンの30年以上の超長期固定金利については、4月から三菱UFJ銀行が35年固定金利を1.2%とする低金利商品を出してきたものの、5月には1.35%に上げてしまいました。
もっと前から35年固定金利を目玉商品としていたみずほ銀行も1.39%に金利を上げてきています。
競合となるフラット35の金利に上がり代があるとすれば、これらの民間銀行の超長期固定金利もまだ上がる可能性があります。
20年前後の長期固定金利の動向
主要銀行の20年固定は2022年3月から4月にかけて大幅上昇する銀行と横ばいとする銀行に分かれています。
そして4月から5月にかけては上昇となる銀行が大半となりましたが、前述した30年固定ほどの上昇とはなっていません。
そのため、さらに上がる可能性と、横ばいとなる可能性の半々と見ています。
10年前後の中期固定金利の動向
ここ数年の10年固定金利は概ね下がり続けてきたものの、2022年5月は大幅上昇となり、ネット銀行では0.8%前後ですがリアルのメガバンクでは1%を超える水準まで上昇してきています。
日銀の利上げの可能性は五分五分であっても、いざ金利が上がった場合も10年は金利を固定しなければならないということもあり、金融機関としてはあまり低金利の設定ができない金利タイプになっています。
そのため、低金利を維持してきたネット銀行でも1%に近い水準に上げてくる可能性があると見ています。
変動金利の動向
変動金利は、長期金利ではなく中央銀行の政策金利に影響を受けます。
政策金利とは、中央銀行が民間銀行に融資するときの金利です。景気後退時には政策金利を下げ、好景気時には政策金利を上げます。
前述したように黒田総裁は金融緩和政策の継続を表明しており、来月に日銀が政策金利を上げる可能性は無いと思います。
2022年6月の主要銀行の変動金利は横ばいで推移するでしょう。
まとめ~金利上昇局面では無理のない返済計画を
円安が進んで輸入品の価格が上昇し、金利も上昇する。住宅ローンを借りるわたしたちにとっては逆風が吹いています。
基本的に金融市場の金利動向は誰にもコントロールできませんし、それによって決まるとされる住宅ローンの金利は債権者である金融機関が決めるものです。
固定金利で考えている人は、住宅ローンの実行時点では、今よりも金利が上がっている可能性があります。
金利が想定外に上昇したとしてもある程度吸収できる、無理のない資金計画を立て、実行していく必要があります。
住宅ローンの返済計画は無理せず、出来るだけゆとりのあるものにするようにしてください。
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