黒田日銀は緩和継続のまま植田日銀にバトンタッチで住宅ローン金利はどうなる?2023年4月の住宅ローン金利を予想!
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
3月10日に行われた黒田日銀の最後の金融政策決定会合では、金融緩和政策の継続が決定されました。
これによって長期金利は急低下しています。次期日銀総裁の植田和男氏は緩和路線のままバトンタッチを受けることとなりました。
植田氏の日銀総裁就任後には異次元の金融緩和策が修正される可能性が意識されていましたが、そのペースは当初警戒されていたものより緩やかなものになりそうです。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2023年4月のローン金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2023年3月11日時点のものを記載しております。
最新の金利情報は、必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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長期金利が一時0.3%台まで低下した背景と今後の動向
こちらは2022年12月1日から2023年3月10日までの日経平均株価と日本の長期金利の推移です。
昨年12月に黒田日銀が長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大して以降、長期金利は新たな上限0.5%に張り付き推移してきましたが、3月10日の会合で金融緩和政策の継続を決定すると、一時は0.385%と急低下し1月24日以来の低水準となりました。
0.5%に貼り付いていたときは、一部の機関投資家の中で「最後の黒田日銀が再び長期金利の上限を引き上げるのではないか?」という目算があり、大量の売りが入っていたのですが、ふたを開けると緩和継続ということで売りを解消する買いが大量に発生し反動で大幅に金利が下がったということですね。
では、今後も長期金利が去年までのような低水準で推移するか?というとそれはないでしょう。
この急低下の背景には、3月の会合で「ワンチャン」黒田総裁による最後のサプライズがあるのでは?という妙味に投機筋が動いており、それが外れたので下がったという一時的な動きなのです。
市場の基本的な見方としては新総裁となった植田氏の日銀が近くイールドカーブ・コントロール政策を修正すると見込んでおり、新総裁となってからの日本国債の価格は今よりも下がる可能性が高いと考えているのです。
3月後半から植田氏が新総裁に就任する4月にかけては再び上限の0.5%に向けて上昇していくものと予想しています。
植田新総裁はしばらく金融緩和政策を継続する
植田氏は2月24日の所信聴取で黒田総裁の金融政策の継続を明言しており、加えて黒田日銀が目標として達成できなかった「物価目標2%」を達成するとも言っています。
これは前年比で物価が2%ずつ上昇していく、ゆるやかなインフレ状態を目指すということです。経済学者として、客観的なデータに基づき現状では緩和継続が適切と判断しているのだと思います。
このことは、これから住宅ローンを借りる私たちにとって、ありがたいことですね。異次元緩和から軌道修正して正常化していくにしても細心の目配りをし、出口戦略(金融引き締め)それ自体を目的とするような拙速な政策修正はやらないだろうと思います。
黒田日銀ではアベノミクス第一の矢として「黒田バズーカ」と呼ばれるようなサプライズ政策を連発してきました。
その副作用として日本国債が投機の対象となり、債券市場の機能不全を起こしてしまっているところもあります。今回の投機筋による空売りなどが良い例ですね。
新総裁となる植田日銀が、債券市場に介入するイールドカーブ・コントロール政策をやめるにしても日本国債が投機の対象となっている間には下手に動かないのではないかと見ています。
しばらくは市場の期待と不安をよそに黒田日銀の緩和政策を粛々と継続する展開となるのではないでしょうか。
銀行の営業方針:各金融機関で割れる植田新総裁の政策予想
黒田日銀が3月の会合で金融政策の継続を決めたこと、4月から新総裁となる植田和男氏の経歴、その所信聴取での発言内容に鑑みると、日銀の利上げ時期は当初の予想より少し後退するということになります。
一方で、金融緩和の継続が必要という植田氏の発言は、市場にくすぶっている政策の急変への懸念と期待を和らげる意図でもあります。しかし将来となると話は別です。ずっと緩和政策を続けるわけではないでしょう。
おそらく、住宅ローンを取り扱う金融機関としては、依然として利上げの可能性を捨てず、住宅ローンの固定金利を上げる傾向はつづくとみています。金融機関としては金利が上がった方が儲かるので、どうしても利上げ期待のバイアスがかかるのです。
そして、住宅金融支援機構がその期待を後押ししています。31年~35年の全期間固定フラット35(買取型)の金利は1月の1.68%から2月には1.88%へと大幅に上昇させており、さらに3月には1.96%に上昇しました。
フラット35は去年から金利引き下げ制度が拡充されており、最長当初10年間、最大0.5%金利が引き下げとなるので、もとの金利が低すぎると銀行の利益を圧迫してしまう可能性があるため、金利を上げている面もあるでしょう。
このように金融機関の多数派が住宅ローンの固定金利を上げるなかで、メガバンクの三菱UFJ銀行など一部の銀行は3月に固定金利を下げています。これは植田日銀の利上げ時期をかなり後ろ倒しに、利上げ幅を小さく見込んでいるためとも考えられます。
まだ情報の少ない植田新総裁の今後の動向によっては、金融機関によって対応が真っ二つに分かれていく可能性もあるでしょう。
金利タイプ別2023年4月の金利予想
では、各金利タイプ別に2023年4月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
3月11日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2023年4月の金利予想
変動金利の動向
変動金利は、政策金利に影響を受けます。民間銀行の観測としては、日銀の利上げ可能性が上がっていると見ていますが、実際に日銀が利上げしない限り変動金利を上げることはできません。
そのため基準金利は横ばいで推移するでしょう。
ただ3月の決算月が終わっているため、キャンペーンで金利を下げていた銀行が、もとの金利にもどすという趣旨で新規実行の適用金利を上げてくる可能性はあります。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行で主力商品としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
金融市場としては、日銀の利上げ観測が根強くあり、住宅ローンの固定金利を上げる民間金融機関が多数派となっています。
しかし前月に予想していたとおり、次期総裁の植田氏就任に伴う金融政策の予想は各金融機関で割れており、3月は10年固定金利を上げる銀行と下げる銀行に割れました。
今後も銀行によって対応が割れる傾向が続くでしょう。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定は去年までは複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退する銀行が相次ぎました。
長期金利の低下に伴い下げる可能性もありますが、後述する30年以上の超長期固定金利の方が低金利です。
基本的に上がる傾向は続き、主力商品から姿を消していくと予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
依然として住宅ローンの固定金利を上げる民間金融機関が多いと予想しています。
しかし、30年超の超長期固定金利や全期間固定金利は公的融資であるフラット35がライバルとして存在するため超長期固定金利に力を入れている銀行は上げない傾向があります。
また、3月は超長期固定金利を上げる銀行と下げる銀行に割れました。今後も銀行によって対応が割れる傾向が続くでしょう。
公的融資フラット35の金利動向
公的融資の超長期固定金利であるフラット35(買取型)は2023年に入ってから長期金利の上昇に伴い、大幅な上昇となりました。下のグラフはフラット35の金利と長期金利を2022年12月から2023年3月までとったものです。
フラット35の金利は前月の中旬に決まります。その時点に青い棒グラフのフラット35(買取型)金利を立てています。
(機構債発表日) | 12月金利 (2022年11月17日) | 1月金利 (2022年12月22日) | 2月金利 (2023年1月25日) | 3月金利 (2023年2月16日) |
---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.25% | 0.48% | 0.41% | 0.50% |
機構債の 表面利率 | 0.76% | 1.02% | 1.01% | 1.09% |
フラット35 | 1.65% | 1.68% | 1.88% | 1.96% |
特に2023年1月から2月にかけてのフラット35の金利上昇は、これまで住宅金融支援機構が行ってきた「急激な金利上昇を緩和」する方針とは異なります。
また、日銀の金融緩和政策にも逆行しており、おそらく政府サイドの意図による上昇と考えられます。つまり「国債の金利は上げず住宅ローンの金利は引き上げたい」という意図によって上がっているわけです。
前述のように、民業を圧迫するほどに低金利であったフラット35の金利を民業圧迫にならない程度に上げる意図があったのかもしれません。
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
そして2023年2月から3月にかけてのフラット35金利は長期金利の上昇幅、機構債の表面利率の上昇幅と概ね近似した0.08ポイントの上昇となっています。
4月の予想としては、植田新総裁の情報が少なく材料に乏しいこともあり、3月の水準で横ばいとなるか、上がっても2.0%までと予想しています。
まとめ~金融機関でも見解の分かれる難しい時期
当記事は現時点で入手可能な公開情報を参考にして、千日太郎個人の考える今後の予想ですから、その後の状況変化によって予想が変化していくものですし、そもそも私の予想が外れる可能性も大いにあり得ることです。
現状としては、植田総裁による出口戦略(金融引き締め)が強めに意識されており、住宅ローンの固定金利は上昇傾向にありますが、一部の金融機関は3月の固定金利タイプを下げており、金融機関によっても見解が分かれている難しい時期です。
早い段階で一つの金利タイプ、一つの金融機関に決めてしまい、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りざるを得なくなってしまいます。
複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、すくなくとも住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。
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