
日銀の利上げ観測と長期金利の上昇が続く2025年3月の住宅ローン金利はどうなる?専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
1月の日銀の金融政策決定会合では、追加の利上げが決定され政策金利は0.5%と16年ぶりの水準となっています。
その後の日銀総裁や委員の発言から、利上げ到達点を高く見積もる人が増えてきており、これを反映してか長期金利は上昇傾向が続いています。
米国ではトランプ大統領の関税政策が着々と進んでおり、関税をまんべんなく課す方針も見えてきており、引き続きインフレ懸念が広がっています。長期金利は日本とは逆に低下傾向となっています。
こちらは2025年2月から2025年3月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 2月参考(※) | 3月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.89%~ | 上昇が抑えられる |
民間の長期固定金利 | 1.8%~2.5%台 | 上昇傾向 |
20年固定金利 | 1.7%~2.0%台 | 上昇傾向 |
10年固定金利 | 1.2%~1.5%前後 | 上昇傾向 |
変動金利 | 横ばい | 横ばい |
※2月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2025年3月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2025年2月11日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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トランプリスクと日米長期金利の動向
こちらは2024年10月1日から2025年2月11日までの日本と米国の長期金利の推移です。
トランプ大統領の就任後の米国の長期金利は低下傾向となり、日本の長期金利はなだらかですが、右肩上がりの上昇傾向が続いています。

トランプリスクに対する市場の警戒感は低下
前月の記事では米国の長期金利の上昇をトランプリスクで読み解きました。トランプリスクによって、本来は安全資産とされる債券も売られているという分析です。
投資家のリスク回避が行きすぎて安全資産とされる債券まで売る行動に出たために、債券価格が下がり、長期金利が上がるというものです。
就任直後のトランプ大統領は、当初から懸念されていたほどの強硬策に出ることはなく、関税を取引材料としながらも、相手の出方を見るような慎重さも見せています。
米国の長期金利が下がってきた背景にはトランプリスクに対する市場の警戒感が緩み、通常のリスクに対する対応にシフトしてきていることがあると見ています。
日銀の利上げ観測は上方修正
トランプリスクが想定の範囲内にあるとの見方は、1月に日銀の金融政策決定会合で追加利上げが決まったことにも繋がっています。
昨年12月の会合で利上げが見送られた主な理由の一つに米国経済の動向、つまりトランプ氏の関税政策への懸念がありました。
日銀の植田総裁は引き続き不確定要素が大きいとしていますが、現実的に利上げを決めた背景にはトランプリスクに対して一定の見切りを付けたということでしょう。
今後も経済と物価が想定通りに推移していけば、中立金利に向けて追加の利上げを行っていくことを明言しています。
その中立金利は最低でも1%という試算が日銀のウェブサイトで公開されており、市場としては政策金利が1%まで上がることについては、ほぼ既定路線と考えられています。
この記事を執筆している時点で、日本の長期金利は1.3%まで上昇しています。短期政策金利が1%まで上がるのであれば長期金利はより高くなるため、今後長期金利が1.5%くらいまで上がることもあるでしょう。
さらに一部の市場関係者からは「日銀の利上げ到達点がこれまで想定していた1%ではなく、1.25%の可能性があると市場が思い始めているのかもしれない」との見方も出てきています。
長期金利は日銀の今後の追加利上げの先高観を反映して上がっていく傾向にあります。
主要銀行の変動金利は4月以降に上昇していく
変動金利タイプは日銀の政策金利の影響を受けます。日銀は昨年12月の会合までは、2025年度後半に政策金利を1.0%の水準まで段階的に利上げしていく考えを公表しており、今年の1月に0.25%の追加利上げしたことで0.5%となっています。
2月の変動金利にはまだ1月の追加利上げが反映されていませんので、1月から横ばいとなっています。しかし多くの銀行で今後、基準金利に反映されていくことになります。下表は主要銀行の変動金利の利上げルールです。
銀行 | 変動金利の見直し月 | 金利の運用時期 | 5年ルール |
---|---|---|---|
PayPay銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | なし |
住信SBIネット銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
auじぶん銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
ソニー銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | なし |
SBI新生銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | なし |
三菱UFJ銀行 |
|
| あり |
りそな銀行 | 4月1日と10月1日 | 3か月後の約定日の翌日 | あり |
みずほ銀行 |
|
| あり |
三井住友信託銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
三井住友銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
イオン銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | あり |
変動金利の見直し月に、その時点の短期プライムレートを参考として変動金利の基準金利を見直すことになります。
1月の日銀の利上げによって、既に短期プライムレートが上がっていますが、多くの銀行で変動金利の基準金利が上がるのは4月1日ということになります。
また、実際に私たちの返済額に反映されるのはさらに1か月~3か月後となります。なお、5年ルールのある銀行から元利均等返済方式で借りている場合は、5年間は利上げ前の毎月返済額が維持されます。
このままだと、元本の返済が予定どおりに進まないので6年目から返済額が増えるのですが、その場合は直前の1.25倍までを上限とすることになっています。
民間銀行としては、預金者を集めるフェーズにあり、変動金利で借りている人が流出するおそれのある利上げに対しては非常に神経質になっています。
既に多くの銀行で短期プライムレートを0.25%上げるという決定が行われていますが、あえて短期プライムレートの決定を遅らせる銀行、変動金利の基準金利の上げ幅を抑える銀行、また基準金利からの引下げ幅を大きくして変動金利が上がったことを目立たなくするなど、さまざまな手法が出てくることが予想されます。
民間銀行は利上げに備えて預金者を集めるフェーズにある
日銀は今後も利上げを継続していく立場なのですが、民間銀行は日銀の利上げに備えて預金者を集めるフェーズにあると見ています。
伝統的な銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが利益の源泉です。
融資金利だけ上げても預金のボリュームが少ないと早い段階で頭打ちになると考えます。低金利で調達する預金が銀行の利益の上限を決めるといっても過言ではありません。
銀行としては、まずは預金利息に魅力を感じてもらって多くの預金を集め、しかる後に利上げした水準でどんどんお金を貸すことでドンドン儲かると考えるわけです。
住宅ローンの変動金利を低金利に抑えるのも、住宅ローンを入口として預金者を集めようとする動きなのです。特に、新規顧客向けに対してのみ変動金利を低金利に抑える動きは今後も続くとみています。これは金利ある世界への過渡期に特有のものです。
変動金利は利上げ後も銀行の主力商品であり続け、住宅ローンの利用者から安定した預金の獲得を狙っている状況にあります。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2025年3月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2025年3月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
2025年2月11日までの公開情報を前提とした予想になります。
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年10月から2025年2月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

(機構債発表日) | 2024年10月金利 (2024年9月19日) | 11月金利 (10月18日) | 12月金利 (11月20日) | 2025年1月金利 | 2月金利 (2025年1月23日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.82% | 0.96% | 1.05% | 1.07% | 1.19% |
機構債の表面利率 | 1.16% | 1.27% | 1.35% | 1.36% | 1.49% |
フラット35 | 1.82% | 1.84% | 1.86% | 1.86% | 1.89% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしこのグラフによると、長期金利が上がり続けているのに対して、フラット35の金利はかなり抑えられて推移しています。
住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向が続いているのです。
今後の長期金利については前述したように上昇が続くと見ていますが、これまで同様にフラット35の金利については上昇が抑えられると想定し、3月のフラット35の金利の上昇は小幅なものに抑えられると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
2月の民間の超長期固定金利タイプについては、ほぼ全ての主要銀行で金利を上げました。
また、直近の報道でも長期プライムレートを上げる銀行も増えてきています。
銀行としては預金を集めるフェーズで住宅ローンを取り込みたいインセンティブがありますが、主要銀行の営業戦略としては変動金利に利用者を集める方針のようですね。
また前半で述べたように、市場では日銀の利上げ到達金利を従来よりも高めに見込む投資家が増えてきており、長期金利が上昇する流れを受けて住宅ローンの超超期固定金利にも引き続き上昇圧力がかかると考えられます。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定については多くの主要銀行で、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
同じ金利水準であれば固定期間が長い方が有利であるため、20年間金利を固定することが最優先されるような、ごく一部の人を除いてはお勧めしにくい金利タイプです。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの20年固定金利については銀行独自の判断から、2024年7月の1回目の利上げ後も横ばいを続けていたのですが2024年12月と2025年2月に金利を上昇させています。
今後も長期金利が上昇する流れを受けて超長期固定金利と同様に上昇傾向が続くと見ています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行が変動金利に次いで主力としている金利タイプです。
営業方針から、長期金利に反して下がることも期待できる商品です。さらに固定期間が比較的短いこともあり、固定金利タイプの中では変動金利に近い低金利となることもあります。
その代わり、その時々の銀行の営業方針や金利の展望によって、大きな振れ幅で上がったり下がったりしやすい金利タイプでもあります。
2024年7月の1回目の利上げ後から上昇傾向となっており、2025年1月の2回目の利上げ後も上昇しましたが、固定金利タイプの中では比較的低金利を維持しています。
10年固定は変動金利と超長期固定金利の折衷案として一定の需要があり、今のように日銀の利上げ幅が高めに見込まれ始めている状況下では、変動金利から乗り換える受け皿としての役割がクローズアップされており、金利上昇を抑える傾向も出てくると見ています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けますが、その日銀は1月に0.25%の追加利上げを決定しました。
前述したように日銀の1月利上げが具体的に変動金利に反映されるのは4月1日以降であるため3月は横ばいで推移することが予想されます。
4月の予想としては、1月の日銀による政策金利の利上げ幅である0.25%をベースとして同じ幅で変動金利を上げる銀行と、預金者獲得のため上げ幅を抑える銀行に分かれると予想しています。
4月以降の動向としては、経済と物価が想定通りに推移しているという前提で、日銀の植田総裁は中立金利へ向けて利上げを継続していく方針を維持しており、今後の追加利上げに伴う変動金利の上昇は想定しておくべきでしょう。
まとめ~先行き不透明な状況下での住宅ローン決断のコツ
2025年1月の日銀金融政策決定会合の主な意見が公開されています。
金融政策運営に対する意見の中で、「上下双方向のリスクがかなり大きいことを考えると、利上げのペースやターミナル・レートを示唆することには極めて慎重であるべきである。」というものがあり、2024年12月の会合では書かれていた「2025年度末まで」「最低でも1%」という表現が今は封印されています。
上下双方向のリスクですから、到達金利が下振れする可能性もあるのですが、今のところ市場では上振れするリスクの方が強く意識されている状況にあります。
ただし、上がることが決まっているわけではありません。下がる可能性も残されているのです。
住宅ローンの決定において大事なことは、このように現時点でどちらか分からないことに対して、決め打ちをして決断しないことです。
想定どおりにならなかったときに、望まぬタイミングで家を手放さなければならなくなるのなら、むしろ家など買わない方が良いと思います。
また、購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。
この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。