
日銀利上げ継続で長期金利は15年ぶり1.5%超え2025年4月の住宅ローン金利はどうなる?専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
日銀の利上げ観測が長期金利にも波及し、3月6日10の国内債券市場では長期金利の指標となる10年国債利回りが1.5%を超え、2009年6月以来の高水準となっています。
一方株価はトランプ大統領の関税政策から日本企業への悪影響を懸念して低下、米国の長期金利はインフレ懸念が再燃して日本とは逆に低下傾向となっています。
こちらは2025年3月から2025年4月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 3月参考(※) | 4月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.94%~ | 上昇が抑えられる |
民間の長期固定金利 | 1.9%~2.7%台 | 上昇傾向 |
20年固定金利 | 1.9%~2.2%台 | 上昇傾向 |
10年固定金利 | 1.5%~1.7%前後 | 上昇傾向だが抑える銀行もある |
変動金利 | 横ばい、 イオン銀行は0.25%上昇 | 0.15~0.25%の上昇 |
※3月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2025年4月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2025年3月10日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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トランプリスクと日米長期金利の動向
こちらは2024年11月1日から2025年3月9日までの日経平均株価(黄色の折れ線)と日本の長期金利(オレンジ色の折れ線)の推移です。
長期金利は右肩上がりに上昇を続けているのに対し、株価は2025年2月ごろから急激に下げていますね。

トランプ関税による株安と春闘の記録的な賃上げは日本企業の利益を圧迫
2月以降の株安の一番の原因はトランプ関税です。主として輸出企業=大企業の利益を圧迫することになるため株価は下落します。
トランプ関税の影響は米国企業にとっても輸入価格の上昇を通じて利益を圧迫するため米国でも株価を下げています。
さらに、連合が公表した2025年春闘の賃上げ要求(定期昇給分を含む)は加重平均で6.09%と、昨年の5.85%を上回ったことが報じられています。
6%を超えるのは1993年(7.15%)以来32年ぶりということで、これが日銀の利上げ継続を後押しするだろうと言われていますね。
しかし日本企業にとってはこれらの要素は逆風になります。
トランプ関税に伴う輸出経費の増加、そして賃上げによる恒常的な人件費の増加は、ダブルパンチで短期的にも長期的にも利益を圧迫するためです。
日銀利上げ観測による債券安で長期金利が上昇
このように、先行きが暗いときにはリスク資産である株式が売られて株価が下がり、安全資産である債券が買われることで債券価格が上がって長期金利が下がるというのが、通常の流れです。
しかし、そうはならずに長期金利は上昇を続け、とうとう1.5%を超える水準で推移するようになっています。
これは、日銀が今後も利上げを継続することが見込まれており、近い将来にさらに短期の金利が上がることを市場が織り込んでいるからです。
長期金利は10年国債の利回り、これに対して日銀の政策金利は翌日物ですから、長期金利は短期金利よりもかなり上でなければ割に合わないのです。
つまり、今の債券の利回りは低すぎるので、日銀が利上げする前に売ってしまえという話になるわけですね。
そのため、日本企業の利益に暗雲が立ち込め株価が下がっている局面でも、債券が売られて債券価格が下がり、長期金利が上がるという流れになっているのです。
現在の長期金利は1.5%前後に対して、政策金利は0.5%です。日銀は政策金利を最低でも1%まで上げていくと言っています。
政策金利が1%になる可能性があることを考えると、長期金利にもまだまだ上がり代が残っているということになりますね。
主要銀行の変動金利は4月以降に上昇していく
変動金利タイプは日銀の政策金利の影響を受けます。3月にはイオン銀行が1月の日銀利上げを反映して変動金利を0.25%引き上げました。
多くの銀行では変動金利の見直し月が規定で決まっており、4月又は5月から変動金利を見直す銀行が多くなっています。
下表は主要銀行の変動金利の見直し月、新しい金利の適用月、5年ルールの有無をまとめたものです。
銀行 | 変動金利の見直し月 | 金利の運用時期 | 5年ルール |
---|---|---|---|
PayPay銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | なし |
住信SBIネット銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
auじぶん銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
ソニー銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | なし |
SBI新生銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | なし |
三菱UFJ銀行 |
|
| あり |
りそな銀行 | 4月1日と10月1日 | 3か月後の約定日の翌日 | あり |
みずほ銀行 |
|
| あり |
三井住友信託銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
三井住友銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
イオン銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | あり |
イオン銀行は規定上5月と11月に見直し月としているので、3月の基準金利の引き上げはイレギュラーな決定ですね。
上記の規定は、あくまで既存客に限定したルールである可能性もありますが、それでも他行に先駆けて変動金利を上げる決定の背景には、明確な考えがあるのでしょう。
多くの銀行で変動金利の基準金利が上がるのは4月からでしょう。ただし、全ての銀行がイオン銀行と同じ0.25%の引き上げとはならない可能性もあると見ています。
日銀の利上げが本格化していない以上、民間銀行としては依然として預金者を集めるフェーズにあります。
既に多くの銀行で短期プライムレートを0.25%上げるという決定が行われていますが、あえて短期プライムレートの決定を遅らせる銀行、変動金利の基準金利の上げ幅を抑える銀行、また基準金利からの引下げ幅を大きくして変動金利が上がったことを目立たなくするなど、さまざまな手法が出てくることが予想されます。
この記事を執筆している時点では、3月18日、19日の日銀の金融政策決定会合が行われていませんが、そこでの決定と植田日銀総裁の今後の政策運営に関する発言が大いに影響してくる可能性があります。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2025年4月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2025年4月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
2025年3月10日までの公開情報を前提とした予想になります。
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年11月から2025年3月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジ色の折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

(機構債発表日) | 2024年11月金利 (2024年10月18日) | 12月金利 (11月20日) | 2025年1月金利 | 2月金利 (2025年1月23日) | 3月金利 (2月19日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.96% | 1.05% | 1.07% | 1.19% | 1.41% |
機構債の表面利率 | 1.27% | 1.35% | 1.36% | 1.49% | 1.71% |
フラット35 | 1.84% | 1.86% | 1.86% | 1.89% | 1.94% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしこのグラフによると、長期金利が上がり続けているのに対して、フラット35の金利はかなり抑えられて推移しています。
住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向が続いているのです。
今後の長期金利については前述したように上昇が続くと見ていますが、これまで同様にフラット35の金利については上昇が抑えられると想定し、4月のフラット35の金利の上昇は小幅なものに抑えられると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
3月の民間の超長期固定金利タイプについては、全ての主要銀行が長期金利と同程度の上げ幅で適用金利を上げました。
また、直近の報道でも長期プライムレートを上げる銀行も増えてきています。
銀行としては預金を集めるフェーズで住宅ローンを取り込みたいインセンティブがありますが、主要銀行の営業戦略としては変動金利に利用者を集める方針のようですね。
また、みずほ銀行は3月10日に3月の長期プライムレート(最優遇貸出金利)を前月から0.15%引き上げると発表しています。
さらにSBI新生銀行、あおぞら銀行、商工中金もみずほ銀と同水準まで引き上げると発表しました。
長期金利が上昇する流れを受けて住宅ローンの超超期固定金利にも引き続き上昇圧力がかかると考えられます。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定については多くの主要銀行で、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
同じ金利水準であれば固定期間が長い方が有利であるため、20年間金利を固定することが最優先されるような、ごく一部の人を除いてはお勧めしにくい金利タイプです。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの20年固定金利については銀行独自の判断から、昨年の日銀の利上げ後も低金利を続けていたのですが2024年12月と2025年2月3月に連続して金利を上昇させており、他行と変わらない水準となっています。
今後も長期金利が上昇する流れを受けて超長期固定金利と同様に上昇傾向が続くと見ています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行が変動金利に次いで主力としている金利タイプです。
営業方針から、長期金利に反して下がることも期待できる商品です。
2024年7月の1回目の利上げ後から上昇傾向となっており、2月から3月にかけて全ての主要銀行が長期金利と同程度の上げ幅で適用金利を上げました。
しかし固定金利タイプの中では固定する期間が短い分だけ、ベースとしての金利は低めを維持しています。
3月から4月にかけては、長期金利の上昇を反映して上がるでしょうが、営業方針から上げ幅を抑える銀行も出てくる可能性もあります。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けますが、その日銀は1月に0.25%の追加利上げを決定しました。
前述したように日銀の1月利上げが4月から変動金利に反映されるため上昇が予想されます。
4月の予想としては、1月の日銀による政策金利の利上げ幅と短期プライムレートの上げ幅である0.25%をベースとして同じ幅で変動金利を上げる銀行が多数派ながら、一部で新規客向けには上げ幅を0.15%程度に抑える銀行もでてくると予想しています。
まとめ~変動か固定か?判断のコツ
現時点では4月に変動金利は3月の水準+0.25%上がるという前提で考えておく必要があります。
さらに重要なのは利上げ終了時の最終的な変動金利の水準ですが、日銀としては最低でも政策金利1%とする姿勢を示していますので、3月の水準+0.75%というのが想定しておくべき変動金利の水準ということになります。
今のところ市場では上振れするリスクの方が強く意識されている状況にあります。
ただし、上がることが決まっているわけではありません。下がる可能性も残されているのです。もし下がったとしたら、又は、日銀が想定する1%に達することがなければ変動金利が得だったということになります。
住宅ローンの決定において大事なことは、このように現時点でどちらか分からないことに対して、あえて楽観的な判断で決めないことです。
想定どおりにならなかったときに、望まぬタイミングで家を手放さなければならなくなるのなら、むしろ家など買わない方が良かったということになります。
ギャンブルに勝つための判断ではなく、負けないための判断に軸足を置くようにしてください。
また、購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。
この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。