
トランプ相互関税で長期金利は急降下で2025年5月の住宅ローン金利はどうなる?専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。トランプ米大統領が発表した「相互関税」によって世界経済が減速するとの懸念が強まり、株価と長期金利は急降下し、日銀の利上げ観測が急速に後退しています。
こちらは2025年4月から2025年5月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 4月参考(※) | 5月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.94%横ばい | 若干の低下 |
民間の長期固定金利 | 2.1%~2.8%台 | 下がる |
20年固定金利 | 2.1%~2.3%台 | 下がる |
10年固定金利 | 1.6%~1.8%前後 | 下がる (銀行の営業方針により対応に差が出る) |
変動金利 | 0.15%~0.35%の上昇 | 横ばい (5月見直しの銀行は0.25%前後の引き上げ) |
※4月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2025年5月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2025年4月6日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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トランプ相互関税が市場にもたらしたショック
トランプ米大統領が打ち出した「相互関税」をきっかけに、景気悪化への不安が世界中に広がりました。日米欧の株価は急落し、長期金利のも急降下しています。
しかし、トランプ氏は「政策は決して変えない」と宣言しており、高関税政策で製造業の米国回帰を促す方針を堅持していることが報じられています。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は講演で、関税引き上げ幅は「想定よりも著しく大きい」と大きなショックを受けたこと、さらに米国経済が「インフレ高進と失業増のリスクに直面している」ことも表明しています。
これを受けて市場では、年末まで少なくとも2回とされていた利下げの回数を3回に修正しました。
背景にあるのは、トランプ氏による高関税が消費者物価を押し上げるより、景気後退を招く影響の方が大きいとの見方です。
日本には24%の税率が課されることが判明しており、4月2日~4日までの日経平均株価の下落幅は2千円近くに達しています。
日銀は4月30日に次の金融政策決定会合が予定していますが、このように市場が荒れている状況での利上げは株価下落に拍車をかけることになるため、まず見送られることになると予想されています。
トランプ相互関税で日銀の利上げはストップか?
こちらは2024年12月2日から2025年4月4日までの日経平均株価(黄色の折れ線)と日本の長期金利(オレンジ色の折れ線)の推移です。

長期金利は3月末まで右肩上がりに上昇していましたが、4月のトランプ大統領の相互関税による世界的な景気不安から急降下しています。
これに対して日経平均株価の方は2月あたりから低下に転じており、4月にはさらに下げています。
この対象期間においては、長期金利は上昇前の水準に戻っただけですが、株価は大きく下げている状態です。
このようになっている理由は、直前の長期金利の上昇が日銀の利上げ観測によるところが大きかったためです。
日銀が今後も利上げを継続することを前提として、近い将来にさらに短期の金利が上がることを市場が織り込んでいたからです。
それが、トランプ大統領の相互関税の影響によって「日銀が利上げを続けられない可能性」ひいては「逆に景気後退で利下げしなければならなくなる可能性」が浮上してきたわけですね。
日銀が利上げを継続するとしている前提条件は、経済と物価が想定通りに緩やかに上昇していくことです。
トランプ大統領の相互関税は世界的な景気後退をもたらす危険を含んでいるわけですから、状況が見えるようになるまではいったん利上げをストップせざるを得ないでしょう。
主要銀行の変動金利は4月か5月に0.15~0.35%上昇する
今後の利上げはストップするとの予想ですが、民間銀行の変動金利は既に1月に行った日銀の利上げによって上昇することが決まっており、これが停止することはありません。
下表は3月から4月にかけての主要銀行の変動金利(新規借入)の推移です。
変動金利 | 3月 | 4月 | 上昇幅 |
---|---|---|---|
住信SBIネット銀行 | →0.448% | ↑0.698% | 0.250% |
auじぶん銀行 | →0.479% | ↑0.829% | 0.350% |
三菱UFJ銀行 | 0.345%~ 0.475% | 0.595%~ 0.625% | 0.250% |
りそな銀行 | →0.390% | ↑0.640% | 0.250% |
三井住友銀行 | →0.625% | ↑0.925% | 0.300% |
三井住友信託銀行 | ↑0.730% | →0.730% | 0.000% |
みずほ銀行 | →0.375% | ↑0.525% | 0.150% |
SBI新生銀行 | →0.430% | →0.430% | 0.000% |
イオン銀行 | ↑0.830% | →0.830% | 0.000% |
ソニー銀行 | →0.647% | →0.647% | 0.000% |
PayPay銀行 | ↑0.530% | ↑0.780% | 0.250% |
ソニー銀行とSBI新生銀行が4月に変動金利を上げていない理由は、規定で5月に上げることとなっているためです。
これに対して三井住友信託銀行とイオン銀行は規定よりも早い3月に変動金利を引き上げていますね。
新規向けに最も引き上げ幅を大きくしたのはauじぶん銀行です。これは、過去に新規客向けには既存客よりも0.1%引下げ幅を大きくしていた措置をやめて、同じ条件にそろえたことによるものです。
これに対して、最も引き上げ幅が小さいのはみずほ銀行の0.15%です。しかしこれにはカラクリがあります。
みずほ銀行では新規客向けの見直し月を3月1日の短プラ基準としているのですが、1月の日銀の利上げに伴う短プラの引き上げは3月3日に決定しており、次の9月1日の短プラ基準に引き上げとなるためです。
今年4月の0.15%の引き上げは昨年9月2日に引き上げた0.15%によるものです。つまり他行よりも約6か月遅れで変動金利の引き上げを行っているのです。
ただし、これは利用者にとってそこまでお得ではありません。借りた瞬間から「既存客」のルールが適用されて概ね6か月後には遅れが取り戻されて金利が上がる仕組みになっているからです。
つまり低い金利で借りられるのは最初の6か月だけということです。
下表は主要銀行の変動金利の見直し月、新しい金利の適用月、5年ルールの有無をまとめたものです。
みずほ銀行だけは新規客と既存客で異なるタイミングで見直しを行う規定としており、新規客向けには日銀の利上げに対して他行から約6か月遅れて金利が上がるように運用していることも分かるようになっています。
銀行 | 変動金利の見直し月 | 金利の運用時期 | 5年ルール |
---|---|---|---|
PayPay銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | なし |
住信SBIネット銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
auじぶん銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
ソニー銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | なし |
SBI新生銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | なし |
三菱UFJ銀行 |
|
| あり |
りそな銀行 | 4月1日と10月1日 | 3か月後の約定日の翌日 | あり |
みずほ銀行 |
|
| あり |
三井住友信託銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
三井住友銀行 | 4月1日と10月1日 | 2か月後の約定日の翌日 | あり |
イオン銀行 | 5月1日と11月1日 | 1か月後の約定日の翌日 | あり |
金利タイプ別2025年5月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2025年5月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
2025年4月6日までの公開情報を前提とした予想になります。
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年12月から2025年4月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

(機構債発表日) | 12月金利 (11月20日) | 2025年1月金利 | 2月金利 (2025年1月23日) | 3月金利 (2月19日) | 4月金利 (2025年3月19日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 1.05% | 1.07% | 1.19% | 1.41% | 1.48% |
機構債の表面利率 | 1.35% | 1.36% | 1.49% | 1.71% | 1.82% |
フラット35 | 1.86% | 1.86% | 1.89% | 1.94% | 1.94% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
ここ最近は、長期金利が上がり続けているのに対して、フラット35の金利はかなり抑えられて推移しています。
住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向が続いているのです。
4月の長期金利については前述したように下がることが予想されますが、これまでは金利上昇に対してフラット35の金利を抑えてきた分があるため、5月のフラット35の金利は下がるにしてもその下がり幅は小さいと予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
4月の民間の超長期固定金利タイプについては、全ての主要銀行が長期金利と同程度かそれ以上の上げ幅で適用金利を上げました。
銀行としては預金を集めるフェーズで住宅ローンを取り込みたいインセンティブがありますが、主要銀行の営業戦略としては変動金利に利用者を集める方針のようです。
ただし、前述のようにトランプ大統領の相互関税のショックにより長期金利は引き続き低下傾向が続くことが予想されます。
長期金利が下がれば住宅ローンの超長期固定金利に対して引下げ圧力がかかるため若干低下すると考えられます。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定については多くの主要銀行で、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
同じ金利水準であれば固定期間が長い方が有利であるため、20年間金利を固定することが最優先されるような、ごく一部の人を除いてはお勧めしにくい金利タイプです。
5月については、前述のようにトランプ大統領の相互関税のショックにより長期金利の低下傾向が続くことが予想されます。
長期金利が下がれば住宅ローンの20年固定金利に対して引下げ圧力がかかるため若干低下すると考えられます。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行が変動金利に次いで主力としている金利タイプです。
営業方針から、長期金利に反して下がることも期待できる商品です。
2024年7月の1回目の利上げ後から上昇傾向となっており、2月から3月にかけて全ての主要銀行が長期金利と同程度の上げ幅で適用金利を上げました。
しかし固定金利タイプの中では固定する期間が短い分だけ、ベースとしての金利は低めを維持しています。
4月から5月にかけては、トランプ大統領の相互関税による長期金利の低下を反映して下がるでしょう。ただし下げ幅には各銀行の営業方針が反映されて差があると見ています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けますが、その日銀は1月に0.25%の追加利上げを決定しました。多数の銀行では各行の規定に従い4月に金利を引き上げています。
一部の銀行(ソニー銀行、SBI新生銀行)は5月を見直し月としているため、0.25%前後の引き上げが行われると予想します。4月までに既に引き上げた銀行は横ばいとなるでしょう。
まとめ~先の見えない今、変動か固定か?判断のコツ
4月の変動金利は3月の水準+0.25%上がるという予想はほぼ的中しました。
さらに重要なのは利上げ終了時の最終的な変動金利の水準ですが、日銀としては最低でも政策金利1%とする姿勢を示していますので、4月の水準+0.5%(4月に上げていない銀行は+0.75%)が想定しておくべき変動金利の水準ということになります。
4月の記事では、「下がる可能性も残されている」ことを申し上げましたが、トランプ大統領の相互関税によって世界的な景気後退がやってくれば、意外に早くその時くるかもしれません。
もし下がったとしたら、又は、日銀が想定する1%に達することがなければ変動金利が得だったということになります。
ただし、住宅ローンの決定において大事なことは、このように現時点でどちらか分からないことに対して、あえて楽観的な判断で決めないことです。
想定どおりにならなかったときに、望まぬタイミングで家を手放さなければならなくなるのなら、むしろ家など買わない方が良かったということになります。
ギャンブルに勝つための判断ではなく、負けないための判断に軸足を置くようにしてください。
また、購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。
この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。
また、購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。