コラム

2021/07/08

【AI談義/エンジニア×デザイナー】体調管理アプリ『ラルーン』がAIを活用した新機能をリリース。プロジェクトメンバーの2人が語る開発秘話

【AI談義/エンジニア×デザイナー】体調管理アプリ『ラルーン』がAIを活用した新機能をリリース。プロジェクトメンバーの2人が語る開発秘話

2010年のサービス開始以来、『ラルーン』は多くの女性に利用されている生理日・排卵日管理アプリです。2019年12月にAIの技術により生理日を予測できる機能をリリース。今年2021年2月には新たに「排卵日のAI予測機能」をリリースしました。今回はそのプロジェクトに参加したエンジニアのH.K.さん、非エンジニアとしてはじめてAIのプロジェクトに参加したデザイナーのM.H.さんにインタビューしました。同期入社の2人に、ざっくばらんに当時を振り返ってもらいながらAIプロジェクト談義を行いました。

H.K.さん エイチーム EC事業本部 エンジニア

秋田県出身。専修大学ネットワーク情報学部卒。大学ではコンピュータサイエンスを専攻。2017年、エイチームに新卒入社、エイチームライフスタイルに所属。生理日予測・体調管理アプリ「ラルーン」の生理日AI予測機能のプロジェクトに参加した後、排卵日AI予測機能のプロジェクトではプロジェクトリーダーを務める。現在はエイチーム EC事業本部に異動、新規事業の開発に携わっている。

M.H.さん エイチームライフスタイル ヘルスケア事業部 デザイナー

埼玉県出身。駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部卒。デザイナーを志し、独学でデザインスキルを身につける。2017年、新卒でエイチームに入社、エイチームライフスタイルに所属。自動車・不動産などの事業を経験した後に、2020年より「ラルーン」のUI/グラフィックデザインを担当。現在も引き続きデザインでサービスの改善に貢献している。

AIのプロジェクトはこうして始まった

H.K.:
2019年12月に「ラルーン」では生理日のAI予測機能をリリースしています。自分はエンジニアとしてプロジェクトに参加し、サーバーサイドの設計・開発やアプリのUIの開発を担当しました。

M.H.:
プロジェクトはどんな経緯で立ち上がったんですか?

H.K.:
既に会員数も多くデータも豊富に溜まっていたので、AIを活用できるんじゃなかという話になりました。事業の方針や戦略などトップダウンで下りてきたというよりも、事業部としてサービス向上について日々会話を重ねていく中で出てきた話です。「ラルーン」の機能の中でも生理日の予測は重要なもの。その予測機能の精度をAIの技術で高めていこうと。

M.H.:
社内にはAIの技術に詳しいエンジニアの方もいますしね。

H.K.:
はい。AIの開発はすべてその方にお願いしました。

M.H.:
そして、2021年の2月。サービスをさらに強化する目的で、排卵日のAI予測機能をリリースしました。

H.K.:
ユーザーの方に入力してもらった体調記録をもとに次の排卵日を予測して、アプリを通してユーザーに伝えるというシステム。生理日のときと同様、予測精度の向上を目的にAIを導入しました。

M.H.:
これは主に妊活中の方をサポートするための機能です。

H.K.:
自分は生理日のプロジェクトに続いての参加だったけど、HさんにとってAIのプロジェクトは初めてだったよね。参加が決まったときはどんな気持ちでしたか?

M.H.:
最初はとても戸惑いました。

エンジニア、非エンジニアそれぞれのAIへの向き合い方

M.H.:
排卵日の予測AI機能プロジェクトのメンバーは4人。K君を含めてエンジニアが2人、企画やマーケティング担当が1人、そしてデザイナーである私。

H.K.:
その4人に加えて、生理日のプロジェクトでも力をかりたAIのエンジニアの方に参加してもらいました。

M.H.:
AIのプロジェクトは初めての参加だったので戸惑いました。「そもそもAIって何?」って状態でしたし・・・とにかくK君にいろいろと質問しAIの仕組みを理解するところから始まりました。

H.K.:
いろいろと聞かれたのは覚えています。予測の仕組みとか。

M.H.:
そう。「そもそもどんな仕組みなの?」というところから。その後も、日常的に様々な質問をしていたと思います。何かわからないことがあったらすぐにK君に教えてもらっていました。理解が怪しいところは、完全に分かるようになるまで何度も教えてもらいました。

H.K.:
はい、よく質問されましたが、悪い気はしませんでしたし、むしろありがたいなと思っていました。
プロジェクトをマネジメントする立場としては、メンバー全員が情報に対して共通認識を持っている必要がありました。だから、Hさんの「知ろう」とする姿勢、関心を持って質問してくるところにプロジェクトリーダーとして嬉しく感じていたんです。

M.H.:
それを聞いて安心しました。いつも嫌な顔一つせずに答えてくれたので、こちらも聞きやすかったです。

H.K.:
AIをサービスに落とし込む上で難しかったのは、例えば、ユーザーの方が体調記録を入力する度にAIによって排卵日が再計算されていくんですが、それが現実にはあり得ない日付になってしまうこともデータの世界では起こってしまったり。

M.H.:
うん、そんなことがありましたね。

H.K.:
結局は更新のタイミングやデータ入力の項目などを調整することで改善していきましたが、AIが出したデータをどう扱うかを考えながら実装していく必要がありました。

プロジェクトで苦労したこと、工夫したこと

M.H.:
とにかくスケジュールがタイトでした。

H.K.:
タイトでしたね。スケジュール通りに進めることを目的に、必要な情報を可視化することとコミュニケーションを密に取ることを徹底していました。朝会でも細かい進捗共有をしたり、互いの困りごとをヒアリングしたり。

M.H.:
私は困ったことがあったら、すぐにPJメンバーの皆さんに相談するようにしていました。何もかもが初めてのことばかりでいろんな壁にぶつかりましたが、皆さんのおかげで何とか乗り越えられました。

H.K.:
仕様が決まっていないので、常に自分たちで考えていく必要もありましたね。

M.H.:
排卵日の予測をどのように見せるとユーザーさんに伝わりやすいかについても話し合いました。また、リリース方法もかなり悩みました。機能追加でユーザーさんが戸惑ってしまわないよう、β版として先行リリースし使いたい人が試せる期間を設けたりしました。

H.K.:
「この日が排卵日です」というAIの予測結果をアプリでどう表現するか。表現と言ってもUIの設計、通知の仕方…何がポイントになるのか。都度、相談をしながら進めていきました。

M.H.:
マネジメントする立場として大変だと感じたことは?

H.K.:
一番は人手が足りなかったことです。仕様決め、「ラルーン」の複数プラットフォームへの対応、事業インパクトの検討、機能品質の担保など、人数の割にやることが多く大変でした。

M.H.:
確かにK君はいろんなことをやっていたと思います。そのうち「ラルーン」の別プロジェクトが立ち上がり、それも私たち4人が担当することになったしね。

H.K.:
Hさんはデザイナーとしてどんな苦労があった?

M.H.:
UI設計が最も苦労しました。排卵日の予測はAI導入前と導入後でロジックが違います。ロジックが変われば、予測結果もそれぞれ変わってきます。AI導入前と後の結果が混在してしまうとユーザーの方が混乱してしまう。ユーザーの方を混乱させないためには、どんなUIを設計したらいいのか。その点は悩み、いろんな先輩に相談しながら決めていきました。

H.K.:
混乱を避けるためには複数あるロジックのどれを使うのか切り分けをしないといけません。それはUIとも密接に関係する話なので、この件についてはHさんとかなり話をした記憶があります・・・でも、今回一緒に仕事をして改めてデザイナーって凄いなと思いました。

抽象的な概念を具現化できるところ。「こういうものをユーザーの方へ届けたい」という曖昧なものを、見える形にして、しかも使いやすいと思ってもらえる状態になるまで作り込む。そこは本当に凄いと思います。

M.H.:
ありがとうございます。デザイナーにとってもこだわりがある点です。今回はタイトなスケジュールでしたけど、UIやグラフィックは時間をかけて作り込みました。

プロジェクトと同時期に「AI基礎研修」に参加

H.K.:
エイチームグループとして全社員を対象にした「AI基礎研修」が実施されました。Hさんは参加してどう思った?

M.H.:
私にとっては、苦手な数学の授業を受けているような感覚でした。それほど、研修の内容は難しいと感じました。

H.K.:
研修が実施されたのはプロジェクトに参加していた時期だったよね。何か役に立ったことはあった?

M.H.:
研修ではAIの概念や仕組みを学んだけど、それがK君から説明を受けた内容とつながる瞬間がありました。「ああ、あのときの説明はこのことを言っていたのか!」と。おかげで理解しやすいところはあったように思います。あとはAIに対するアレルギーがなくなったことです。私にとってAIは魔法のようなものでしたが、正体がわかって怖くなくなりました。K君は研修についてどう思った?

H.K.:
会社がAIを推進していくことをエンジニアとしては嬉しく思いました。研修の基本的な内容は既に理解していることが多かったので、これからはAIを上手く活用し、サービスを改善できるようになりたいですね。サービスをつくってユーザーに提供する。蓄積されたデータを活かす手段としてAIを導入して、サービスをより良くしていく。そんな循環が生み出せれば、サービスの可能性がもっと広がっていくと思います。

M.H.:
そうですね。私もAIには可能性を感じています。例えばユーザーのニーズや属性にマッチした広告表示や商品の提案など、AIを用いた取り組みは今後「ラルーン」に限らずあらゆるサービスで実現していくのではないかと思います。

プロジェクトに参加して得られたもの

H.K.:
今回はプロジェクトリーダーでもあったので、マネジメント能力が鍛えられたと思います。タスクの管理やメンバーの意思統一など、プロジェクトマネジメントに関するさまざまなスキルを身につけることができました。プロジェクトのマネジメントを経験するのは初めてだったので、もちろん不安はありましたけど。

M.H.:
特にスケジュールは不安だったよね。

H.K.:
「これは間に合わないんじゃないか?」っていつも思っていました(笑)。なんとか間に合わせることができたのは、周りの人々の協力があったからだと思います。プロジェクトメンバーのみんなには本当に助けられました。また、上司や他部署のマネージャーの方にも面談をさせていただき、そのときにアドバイスを貰えたことも大きかったですね。

M.H.:
私は技術面で不安がありました。未知の領域であるAIのプロジェクトであり、しかもプロジェクト内にデザイナーは私ひとりでした。一番苦労をしたのは仕様決めとUI設計。苦労した分、随分とスキルが上がったように感じています。

H.K.:
他にも、AIに携わったことで得られたことはある?

M.H.:
はい。一見敬遠してしまうようなことでも、その分野に強いパートナーと組むことで、一緒に成果を生み出すことができるという経験を得られたことです。

お互いへのメッセージと今後の目標

H.K.:
排卵日のAI予測機能のプロジェクトが終わり、別の事業部に異動になりました。

M.H.:
それを聞いたときはショックだった。K君はずっといるものだと勝手に思っていたので。

H.K.:
リリース以降はケアができていませんが、Hさんをはじめ残ったメンバーに託したいと思っています。プロジェクトリーダーとして、たぶん無理なことも言ってきたように思います。それでもついてきてくれたメンバーには感謝しています。Hさんにも「最後まで付き合ってくれてありがとう」と言いたいです。

M.H.:
こちらこそ感謝しかありません。K君は最初の仕様決めからリリースまでチームを引っ張ってくれました。K君じゃなければ、大きなトラブルなく進められなかったと思うよ。

H.K.:
Hさんには「ラルーン」に対して強い想いがあると思います。「ラルーン」をより良くするための改善をどんどん実施していってほしい。やりたいことがあれば積極的にチャレンジしてほしいと思っています。

M.H.:
はい。K君に良い報告ができるように、引き続き「ラルーン」を育てていきますよ。K君が言ってくれた通り、私には強い想いもあります。

H.K.:
その想い、ぜひ聞かせてください。

M.H.:
「ラルーン」がリリースされて10年以上が経ちます。その間、いくつか課題も出てきたと思いますが、私はそれらをすべて改善したい。そして「ラルーン」を世界で一番使いやすい体調管理アプリにしたい!

H.K.:
素晴らしい!絶対に実現してほしい。

M.H.:
そのためにはAIのさらなる導入も検討していかないといけませんね。K君は自分の将来についてどう考えていますか?

H.K.:
夢はいろいろありますよ。まずはエイチームをエンジニアが憧れるような会社にすること。

M.H.:
今はそうじゃないってこと?

H.K.:
うん、まだまだだと思う。世の中にいるエンジニアの人たちにとっては、それほど知名度が高いとは言えないと思います。でも、実際に中で働いている自分から見ると間違いなく技術力は高いし、他社より誇れる部分もたくさんある。このギャップを埋めていきたい。それを実現するために、エイチームの技術力を引っ張っていけるような存在になりたいと思っています。

M.H.:
AIについては?

H.K.:
エイチームがAIを推進していることは良いことだと思うし、もっとやっていくべきだと思います。あと、これはAIに限らずに言えることだけど、社内にR&Dの部門があったほうが良いと思います。

M.H.:
社内に研究開発の部門を置くべきである、と。

H.K.:
研究開発が変革の種になることがあると思っています。もちろん、芽が出るには時間がかかることもあるけど。どちらかと言うと、エイチームはビジネスに力を入れている会社。そこに研究開発が加わると、これまでとは違う可能性が出てくるんじゃないかと。

M.H.:
プロジェクトが終わって違う部署になってしまったけど、お互いに夢に向かって頑張りましょう。本日はありがとうございました。

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