コラム
2023/02/21
【社員インタビュー】勇気と覚悟が創造性をもたらす。新組織のデザイン開発本部長が考える、強いクリエイター組織に必要な「創造性」とは?
2022年8月に新組織として発足したエイチームライフデザインのデザイン開発本部を率いる馬場龍さんは、変革には「勇気」と「覚悟」が必要で、それらが創造性をもたらすと語ります。事業・組織の再編、新サービスである暮らしのまよいを解決する総合メディア「イーデス」の誕生と今後の成長、事業成長に向けた組織基盤の構築など、まさに今が変革期です。創造性の高いビジネスに取り組む組織づくりについてお話を聞きました。
エイチームライフデザイン デザイン開発本部 本部長 馬場龍さん
Slerや制作会社、ゲーム会社を経て、2017年6月にエイチームライフスタイル(現エイチームウェルネス)へ中途入社。入社後はエンジニアとして複数サービスの開発を同時に担当しながら、組織のマネジメントも行う。2021年の秋よりエイチームライフデザイン発足へ向けて、デザイナー及びエンジニアの組織再編を担当する。2022年8月、デザイン開発本部として新組織がスタート。現在、本部長を務める。
エイチームなら大きな変化も乗り越えられる
事業部制から一つの職能で編成される組織へ
2022年2月、ライフスタイルサポート事業本部における事業および組織の再編により、新会社としてエイチームライフデザインが発足しました。最初の半年間は移行期間として事業部制組織で、2022年8月からは各職種の機能から成る職能別組織に再編しました。具体的には、事業ごとに分かれていたデザイナーやエンジニアの組織を、一つの職能組織としてまとめ、デザイン開発本部を立ち上げました。現在は本部長を務めています。
事業や組織の大きな変革は、時には痛みを伴うものです。一筋縄にはいかない。メンバーたちも戸惑うだろう。どうにかして、この変化を組織として乗り切っていこう。当時、そう強く心に誓いました。
お互いを認め合う文化があるからこそ危機を乗り越えられる
これまで、ライフスタイルサポート事業における複数の組織マネジメントを行ってきました。中古車査定・車買取サイト「ナビクル」などを運営する自動車関連事業をメインに担当していた時、様々な外的要因が重なって事業が厳しい状況に陥ったことがありました。
危機的な状況でしたが、事業、組織を立て直そうと事業部が一丸となって全力を尽くした結果、立て直すことができたんです。この時、エイチームは、チーム一丸となって取り組めば上手くいく会社であることを実感しました。
前職までの経験から思うことは、どんな組織でも立て直せるわけではない、変化に対応できるわけではないということ。苦境に立たされたときに、異なる職種間で衝突が起きる事態も目の当たりにしてきました。
しかし、エイチームは職種間で衝突するようなことはない。みんなで目標に向かって突き進んでいける会社です。だからこそ、危機を脱することができたんだと思います。この成功体験があったので、今回の変化も乗り越えられると思ったんです。
デザイン開発本部のミッションと課題
サイト制作だけがミッションではない
エイチームライフデザインのデザイン開発本部は、デザイナー・エンジニアから成る組織です。10を超えるサービスブランドのデザイン、開発を一手に担います。プロダクトの制作がデザイン開発本部の提供価値ですが、それにとどまらず、自社がビジネスを通して実現したいことをエンジニアリングやクリエイティブの力でお客さまに届けることもミッションだと考えています。
もちろん、プロダクトを制作することは大切です。しかし、それ以外にも私たちが力を発揮できることはあります。「ミッションはWebサイトをつくること」と狭く捉えず、「サービスを通してお客さまに価値を届ける」ために、何ができるかを考えます。例えば、営業が営業活動に使う提案資料をデザイナーの力でブラッシュアップすることもできます。それもまた、私たちの提供価値です。
スモールチーム時代の「癖」
事業・組織再編前は、事業部ごとにエンジニアやデザイナーの配属が分かれていました。当時のことを組織内では「スモールチームの時代」と呼んでいます。少人数の小さなチームに分かれており、組織のあり方や役割もシンプルでわかりやすいものでした。業務連携もシームレスで、スピーディです。サービスの改善PDCAをスピーディに回すには適した組織形態です。
活動のテーマも、例えば「CVRを上げてサイトの集客力を上げよう」といった事業成長に直結する内容でした。ただ、この当時でも「Webサイトをつくること」以外の領域で力を発揮する余地はあったと思います。
しかし、事業ごとにセグメントされた組織だったので、「サービスを通してお客さまに価値を届ける」という発想、行動に向かいづらかったんです。スモールチームの時代の傾向を個人的には「癖」と捉え、新組織ではこの「癖」を改めていくべきであると考えたんです。
メンバーたちも安心して働ける組織基盤を
一人ひとりのメンバーが事業成長に強くこだわりを持つ点はエイチームの社員の強みだと思います。一方で、サービスの数が増え、規模も大きくなり、ビジネスも難しくなってきている。これまで通りの戦い方では消耗戦にもなりかねない。
一人ひとりが全力で頑張っています。ひたむきに日々の改善に取り組んでいます。しかし、パワーをかければかけるだけ目減りしていくようにも感じます。組織再編直後はデザイナーやエンジニアのみならず、多くのメンバーが仕事で無理をしているようにも感じていました。一人ひとりが気を配って、ミスが起こらないよう工夫されたオペレーションを実践していたことは素晴らしいと思う反面、その分、無理も生じていたのではないか、と。
改めてメンバーたちが安心して仕事に取り組める組織基盤をつくっていく必要がありました。そのためには、スモールチーム時代の癖を改め、組織の在り方や機能を見直し、私たちの提供価値を再定義しつつ、数多くのサービスにおいて、お客さまに安心してご利用いただけるようにサービスの価値向上に向けて取り組まねばなりませんでした。
変革期に実践したメンバーとのコミュニケーション
長期的な収益基盤の構築のための組織戦略
エイチームライフデザインは、エイチームのライフスタイルサポート事業におけるデジタルマーケティング支援ビジネス(「引越し侍」「ハナユメ」「ナビクル」など)を運営する子会社として発足しました。これは、事業のさらなる成長に向け、分散した経営資源を集中し、機能強化を図り、効率化を目指すものです。さらに、より付加価値の高いサービスをお客さまに提供するために、各事業間のシナジーを高め、CX(顧客体験価値)向上を実現することを目的としています。
各事業の短期的な収益の拡大ではなく、経営資源の効率化によって、各事業間のシナジーを最大化させ、長期的な収益基盤を構築することが狙いです。こうした経営戦略の策定の背景や経緯、目的などを、メンバーに丁寧に伝えていく必要がありました。しかし、この変革の意味をメンバーに理解してもらい、意識を変化させていくことは簡単ではありませんでした。
メンバーとの対話を大切、とにかく丁寧に説明を繰り返す
できる限りメンバーとコミュニケーションを取るようにしました。何か問題が起こっているところには直接介入して、一つひとつ対応するよう努めました。ミッションやビジョンというものは、言葉にしても抽象度が高くなってしまいます。それを現場での個々の事象に照らし合わせながら、つど「こう考えてほしい」と伝えるようにしました。
日報で一貫性あるメッセージを発信
さらに、マネージャーたちにも「当事者意識を持って介入していってほしい」と発信するようにしました。加えて、日報をうまく活用しました。エイチームでは個々人の日報の内容がすべて公開されています。日々、個別に対応した内容を日報に載せることで全社へ向けて発信するようにしたんです。
日報は文字として残るのも良い点です。書くこと自体はパワーがかかりますが、自分の言葉に一貫性を持たせることができます。その時の状況や見えている景色によって伝え方は変わるかもしれませんが、本質的に伝えたいメッセージを、一貫性を持って繰り返し伝えることができたと思います。
目指すは「強いクリエイター組織」
組織として強化したい“変化への強さ”
デザイン開発本部を「強いクリエイター組織」にしたいと考えています。そのために、一人ひとりのクリエイティブ、専門性を強化したい。個人の強化に加えて、組織としても強化したい点が2つあります。
一つは、変化への強さ。組織は、変化に対応して強くなり、それを次のチャンスに活かしてより強くなっていくものだと考えます。それが本来あるべき姿だと思いますが、これまではそのような流れでは進んできませんでした。
エイチームライフデザイン、そしてデザイン開発本部が発足したことは大きな変化です。これから各事業の戦略も変化していくでしょう。そうした変化に順応してフォーメーションを変化させていける組織でありたいと考えています。
気兼ねなく関わり合い、個々が成長できる組織に
もう一つは、人材育成の強化です。個人の成長のために組織をうまく活用していきたいと考えています。
スモールチームの時代は、2~3名のデザイナーやエンジニアで一つの事業を担当するケースが多くありました。少人数で一つのプロダクトを担当することは、幅広い経験を積むことができますし、挑戦の機会も豊富です。
一方で、自分の得手不得手を発見したり、互いに補完し合ったりする機会は少ないです。エイチームは子会社間、部署間の垣根がなくコミュニケーションが活発なので、部署を越えて補完し合う機会はあったと思います。しかし、会社が違えばどこかに遠慮は生じるもの。複数の事業を一つの組織で行うようになった今、その遠慮がなくなったはずです。
デザイナー、エンジニアという同じ職能で一つの大所帯。エンジニアだけでも40人近く在籍しています。その人数で、お互いが気兼ねなく関わり合うことができます。この環境を活用して、個々が成長できるような組織として機能させていきたいです。
専門性、多様化、勇気と覚悟
自社の価値提供をもっと発信したい
エイチームライフデザインの魅力が社外へ伝えられていないように感じます。何をしている会社なのか。社員は何を楽しいと感じているのか。そうしたことがシンプルに発信できていません。
エイチームライフデザインは複数の事業を展開している。社内には大人数で多様性あるクリエイター組織がある。そして創造性豊かな社員たちが、世の中にこんなサービスを提供している。
2022年11月にリリースした暮らしのまよいを解決する総合メディア「イーデス」は、自社の付加価値を世の中に発信していく上で重要なカギになると感じています。「イーデス」のブランド認知を拡大し、多くのお客さまにご利用いただき、暮らしの悩みを解決するサポートをしていく。こうした価値提供は私たちの全体戦略でもあります。
「イーデス」の認知の拡大に伴い、「イーデス」を通して私たちの魅力を知ってもらう。例えば、採用活動においても「この会社に入りたい」「チャレンジできそうな会社だ」と思ってもらう訴求ができるようになる。それは社員たちの自信、やりがいにもつながります。
スキル×専門性で挑戦を促したい
「イーデス」を成長させていくためには、やはり私たちが変化をしていかなければなりません。今までは、デザイナーもエンジニアもそれぞれの職域の中で「モノをつくる」ことに専念してきました。これからは、モノをつくることに集中しながら、そこに何らかの専門性をかけ合わせていきたい。
例えば「自動車系のメディアに誰よりも詳しい」「接客を促進するためのテックのあり方に精通している」「個人情報の取り扱いに関するリスクに対応した業務オペレーションやシステム環境をつくれる」など、どんな専門性でも構いません。それ自体は目立たなかったり、業績への貢献度も大きくなかったりするかもしれませんが、社員の幸福度を上げるようなものであればいいと思います。
メンバーに期待したい“専門性の多様化”
エンジニアでいえば、今までは「プログラムを書いてプロダクトをつくる」ことに活動の主眼を置いていました。これからは「いかにつくらないようにするか」でもいい。「自分たちでつくるのではなく、世の中にあるソリューションを組み合わせて業務を効率化するシステムをつくる」という考えで全く問題ありません。
技術やクリエイティブをどう活かすか、それをどんな専門性で発揮するのか、もっともっと多様化すべきだと思います。エンジニアは「バックエンドを一通りマスターしたので次はフロントエンドの技術を身につけたい」というスキルアップへ向かいがちです。技術を使ってどんな課題をどう解決するのか。それを含めてスペシャリストです。
決まったレールに乗る必要はありません。ただ、会社から使い道を示さないと、メンバーも多様化を目指していいものなのかどうか迷ってしまいます。その点については、しっかりと示していきたいと思います。
勇気と覚悟が「創造性」をもたらす
メンバーとコミュニケーションを取る際、正解を求められることが多いような気がしています。例えば、目標設定を行う面談においても、私たち評価者から「そう、それ」と言ってもらえるような目標を出してくる。自分自身がその目標を面白いと感じているのか、良いと思って設定しているのか、そのあたりが見えてこない。ただ、正解を求めている。
エイチームは貢献欲が高く、仲間と一緒に目標を目指すような人が多いです。そんな性質の人が、組織にうまく歩調を合わせようという意識のもとで、正解を求めてしまうのかもしれません。
私は、もっと尖っていても良いと思っています。粗削りで、突拍子がないことを言うけど、よくよく検討してみると面白い発想。そうしたものがもっと尊重されて、初めて「クリエイティビティ=創造性」があると思います。一人ひとりが正解を求めるのではない。なすべきことを自分で考えて、正解にしていく。
ただ、そんな「創造性」を発揮するには意識改革が必要です。従来のやり方を一度やめてみる勇気も求められるでしょう。上長であるマネージャーも、メンバーの新しい動きを受容しなければなりません。メンバーからの働きかけに対して、大きな投資を承認したり、どこかに節目を設けて撤退させる判断をしたり、時には言いにくいこともしっかり伝えたり、マネージャーも覚悟が必要になると思います。
創造性と技術力でビジネスの付加価値を高めたい
現状に満足せず「便利に」も「楽しく」も追求
「クリエイティビティ」「創造性」という言葉を使いましたが、昨年の9月にエイチームの社会的意義・ミッションである“Ateam Purpose”として、「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」が発表されました。エイチームの目的である「経営理念」のもと、世の中にどのような価値を提供していくのかが示され、手応えを感じられました。
「もっと便利に、もっと楽しくすること」の「もっと」を、私は「現状に満足することなく」と解釈しています。エイチームライフデザインが展開しているライススタイルサポート事業は「もっと便利に」だけでなく、「楽しく」も追及できると考えています。ライフスタイルサポートを通して、楽しさや使い心地の良さを感じていただき、愛着を持っていただく、信頼いただくことを「現状に満足することなく」追求していくことが大切だと考えています。
「Creativity」「Tech」は、デザイナーやエンジニアが自分の担当業務に結びつけやすいワードです。しかし、「Creativity」はデザイナーにとってのグラフィックデザインやUIデザイン、「Tech」はエンジニアにとってのエンジニアリング、といったように狭く捉えてはいけないと思います。先ほどもお伝えした通り、専門性をかけ合わせ、付加価値を高めることが肝心です。
「創造性」の高いビジネスを実践するために
今後、デザイン開発本部として「創造性」の高いビジネスをしていくためには選択と集中が必要です。事業の選択と集中はもとより、日常で当たり前のように続けているオペレーションを捨てるなど、抜本的に変える勇気も要ります。また、その必要性をメッセージとして発信していくことも重要だと考えます。自分たちが専念したい事業に専念していくためには、雑事に煩わされないような状態であることも大切です。単なる無駄ではなくて一定の成果を生むようなものでも、それが原因で選択と集中ができないのであれば、勇気をもって手を引くことも必要だと考えています。