コラム
2026/06/30
<引越し侍 20周年特別対談>「Creativity × Tech」で挑む、「引越し侍」の泥臭い挑戦と引越し会社様への想い
エイチームグループを代表するサービスである『引越し侍』が2026年6月をもって20周年を迎えました。今回は20周年の特別企画として、『引越し侍』の生みの親でもあるエイチームグループの代表・林高生社長と、長年にわたり事業責任者として『引越し侍』の成長を牽引してきた渡邊竜一さんの対談インタビューを実施しました。“Ateam Purpose”で掲げる「Creativity × Tech」を駆使して育ててきた『引越し侍』への想い、苦労したエピソードなど、立ち上げから現在まで、そして今後の展望について語り合ってもらいました。
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株式会社エイチームホールディングス 代表取締役社長 林 高生
1971年、岐阜県土岐市生まれ。1997年に個人事業としてエイチームを創業、ソフトウェアの受託開発を開始。2000年に有限会社エイチームを設立し、代表取締役社長に就任。2012年4月に東証マザーズ上場後、史上最短の233日で東証一部への市場変更を実現。
株式会社エイチームライフデザイン 引越し事業部 部長 渡邊 竜一
2010年、新卒でエイチームに入社。入社後はブライダル事業で企画営業を担当。その後、新卒採用や人事領域、EC事業の立ち上げ期などに携わった後、2015年に当時のエイチーム引越し侍(現 エイチームライフデザイン)へ異動。2020年、同社代表取締役社長に就任。現在はエイチームライフデザインに所属し『引越し侍』の事業責任者を務める。
20年前からずっと大切にしていること
-『引越し侍』がサービス開始から20周年を迎えました。まずは率直な感想をお聞かせください。

渡邊:
私が『引越し侍』に関わるようになったのは2015年です。その一年後に10周年を迎えた時のことも覚えています。あれから10年。途中で代表を務める機会もありました。なんだか感慨深いですね。

林:
こんなに多くの方に使っていただけるサービスになるとは思っていませんでした。今では、400社以上の引越し会社様、6,913万件の累計紹介件数、そして累計で1,000万人近くの方々に使っていただいています。
立ち上げ期は引越し業界の生の声を聞くことを目的に、全国の引越し会社様を訪問して、さまざまなお話を伺いました。その時に勉強させていただいたことやリスペクトの気持ちが、サービスの成長につながったと感じます。ユーザーの皆様はもちろん、引越し会社様にとっても良いサービスであることを常に考えてきました。20年続けてきた現在でも、ユーザーの皆様にとって良いサービスでありたいと思うと同時に、「引越し侍」の本当の主人公は引越し会社様であるという考えも持っています。

渡邊:
世の中には、ユーザーをメインに考えてつくられているサービスが多いと感じますが、私たちのように、ここまで事業者様に目を向けて、事業者様にとって良いサービスであることを重視しているサービスは珍しいかもしれません。

―技術革新や市場の変化で入れ替わりの激しいIT業界において、なぜ『引越し侍』は20年間成長し続けられたのでしょうか。

渡邊:
やはり一番の要因は、引越し会社様にとって良いサービスであることを徹底的に重視してきたからだと思います。私たちのビジネスは、引越し会社様がいて初めて成り立ちます。例えば、サービス内容を改善する際にも皆様のご協力が不可欠です。立ち上げ当初から「共に引越し業界をより良くしていこう」という想いを持ち続け、多くの会社様と強固な信頼関係を築いてきたこと。このパートナーシップこそが、サービスが成長し続けられた最大の理由です。

林:
今では良い関係性を築けていますが、立ち上げ当初は引越し会社様と契約することは困難でした。既に他社と契約があった事業者様も多かったですし、エイチームが当時はモバイルゲームに特化した企業だったため「ゲームの会社がそんなことできるの?」という印象もあったと思います。20社集まったらサービスを開始しようという目標を掲げていたのですが、その20社に到達するまでが大変でした。その後、粘り強く何度も足を運び、熱意を伝え、なんとか20社ご契約いただき、「引越し侍」がスタートしました。
集客方法については、デジタルマーケティングの黎明期であるこの頃から、リスティング広告に着目しました。当時はリスティング広告自体、一般的にまだ知られていない時代だったのですが、その効果がすごく良くて私たちも驚きました。リスティング広告の効果により顕在利用者が多く存在することが実感でき、引越し会社様との契約が増えていけば、サービスは順調に伸びていくだろうと考えました。
-林社長は「愛されるブランドをつくる」と過去に語っています。『引越し侍』はなぜ多くの人たちに愛されるブランドに成長したのでしょうか。

林:
『引越し侍』というサービス名を決めた時の話です。引越しの見積りは「主婦の方が月曜日の朝に行う」と聞いたことがありました。それをもとに議論を重ねる中で、心理的に安心感があることが大事であろうという仮説に至り、私たちのサービスも「頼れる存在」であることが重要だと考えたんです。頼れる存在を象徴するようなものをいくつか書き出していった中で、「お侍さん」が最もしっくりきました。利用者にとって「頼れる存在」であることがサービス名の由来であり、それを意識してサービスを提供してきたことが「愛されるブランド」につながったと思っています。

「創造性」×「技術力」で、挑戦を繰り返す
-“Ateam Purpose”の「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」は、『引越し侍』でどのように実践されてきましたか。

渡邊:
『引越し侍』は一括で最大10社の見積もりが取れる便利なサービスとして多くの方に利用いただいてきましたが、その一方でユーザー様から「電話が多い」というお声も多く寄せられていました。その課題の解決を目指し、過去には「引越し予約サービス」をリリースしたり、「引越し進化プロジェクト」を立ち上げ、プロトタイプをいろいろと試したりしました。しかし、いつも惜しいところまではいくものの、思うような成果には繋がらず試行錯誤と失敗の連続でした。
引越し会社様との関係性構築や広告プロモーション、日々の細かな施策の積み上げによって、長い期間たくさんのユーザー様にご利用いただいてきましたが、この先10年、20年を見据えたとき、これまでの延長線上だけで選ばれるサービスであり続けるのは容易ではないという強い危機感がずっと続いていました。
そんな中、ようやくたどり着いたのが、見積もり依頼の配信数を最大10社から3社に絞るという新しいサービスのあり方です。この言葉だけでは、配信社数が変わっただけの シンプルな内容に聞こえると思います。ですが、その裏には、実はたくさんの深い考察と細かい工夫、仕掛けがあります。ここに至るまでには相当な「創造性」が必要でした。
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-具体的に、どのようなことを実施したのでしょうか。

渡邊:
どんな形であればユーザーの皆様が使いやすいか、そしてできる限り多くの引越し会社様のニーズと両立させられるか。それを徹底的に考えました。考え抜いた結果、ユーザー観点では「比較網羅性」「手間の削減」「ユーザーの後押し」の3要素に着目し、これらを強く意識しました。取りこぼしなく比較ができ、ちゃんと安いもの・お得なものが選択でき、かつ手間がかからずに利用できるサービスを目指しました。そのために自社のこれまでの数々のサービス、競合サービス、他業種における類似サービスを分析し、ユーザーインタビューと引越し会社様へのヒアリングによる定性調査、ユーザーアンケートによる定量調査を行い、サービスの本質について何度も入念に考察しました。そして誕生したのが「引越し侍 スマート比較」です。

林:
『引越し侍』は、「電話が多い」という課題に対して、これまでにさまざまな挑戦を繰り返してきました。すべてがうまくいったわけではなく失敗も経験しています。そうしたなか、配信社数を3社に絞った「引越し侍 スマート比較」に手応えを感じたため、リリースに踏み切りました。その背景には、私がずっと昔から繰り返し伝えてきたライフスタイルビジネスの本質である「不安の解消」に徹底的に向き合ったことにあります。
ユーザー心理には、「知らない引越し会社・知らない価格帯があるのではないか」「もっとお得なものがあるんじゃないか」という数々の不安が出てきます。「多くの選択肢の中から比較して決定した」という納得感を得られる体験こそが、我々のビジネスの本質である「不安の解消」につながります。この本質に向き合いながら、チームの皆が高い創造性を発揮した結果、新たな価値を生み出してくれたように思います。
自分がサービスの成長を止めるわけにはいかない
-渡邊さんは2020年に事業責任者のバトンを受け取りました。その際、どのような心境を持ちましたか。


渡邊:
『引越し侍』は、エイチームグループのメディア系サービスの中で最も歴史のあるサービスです。重要な事業を任せていただけることに対して責任を感じました。また、林社長をはじめとした創業メンバーの方々が熱い想いで生み出し、育ててきた「大切なものをお預かりする」という意識も強かったです。皆さんが苦労して育ててきた『引越し侍』、その成長を自分が止めてしまう、衰退させてしまうようなことは絶対にあってはならない。そのために、とにかく全力で臨む。でも、変にプレッシャーに感じすぎることはなく、前向きに捉えることができていたように思います。
-なぜ、前向きな気持ちになれたのでしょうか。

渡邊:
「引越し侍」の運営メンバーだった頃から、サービスを進化させるという大きな挑戦をしたいと考えていたからだと思います。当時から「家族や友人に手放しでオススメできるサービスに育てたい」という思いがありました。この「手放しでオススメ」というのが重要です。その思いがあったので、2020年に引越し侍の事業責任者になってすぐに「引越し進化プロジェクト」を立ち上げたんです。
しかし、意気込んで始めたものの、なかなか思い通りには進みませんでした。理屈では「こうすればいい」ということはわかるんです。でも、実行してみると様々な問題に直面しました。ユーザー様の細かい反応を考慮しなくてはならないのはもちろんのこと、引越し会社様のニーズにも応える必要がある。理屈、理論通りにはいかないことばかりであることを痛感しました。一年半ほど成果が出せない時期が続きました。

林:
「引越し進化プロジェクト」の立ち上げに向けて、早々に「こういうのをやりたい」と相談を受けましたね。その後、なかなか成果に結びつかない時期が続いたのは、いわゆる“生みの苦しみ”ですね。何かを生み出すためには、机上で理屈を考えるのではなく、泥臭く地道に動くことで自らが体感した情報をもとに、本質に向き合って高い創造性を発揮することが大事です。

渡邊:
実際に自分がこの苦労を知ったことで、これまで社長をはじめとした先人の皆さんが生み出してきたサービスの裏側には、高い創造性と技術力はもちろんのこと、泥臭さや執念のようなものがあるということも実感しました。また、『引越し侍』の立ち上げ期から脈々と流れている「やり切る」「最後まで執着する」といったDNAの深さも知ることができました。泥臭く動いて情報を得ながら、頭を使って緻密に考え、高い創造性を発揮することの重要性を大いに学びました。

-「引越し侍」のDNAの継承や“Ateam Purpose”を実践していくために、メンバーにどんなことを伝えてきましたか。

渡邊:
最も力を入れて伝えてきたのは「なぜ?」の部分です。プロダクトを改善する際も「なぜ、今、それをやるのか」を丁寧に伝えますし、「自社や競合が今どんな状況にあり、その中で私たちはどこを目指し何で勝負するのか」という背景をしっかり共有するようにしています。今、まさにその改善プロジェクトを本格的に拡大しようとしているのですが、新たに加わるメンバーたちには、まずプロジェクトに込められた想いや経緯、『引越し侍』のこれまでの歴史について熱量を持って語りました。そうした「想い」の土台があった上で、ビジネスの観点から売上や競合優位性の話を伝えたことにより、メンバーの納得感も高まったと思います。
-林社長にお聞きします。渡邊さんが事業責任者になってから変化したと感じる点はありますか。

林:
それまでも、引越し会社様に寄り添う姿勢はありました。変化したと感じるのは、そこに引越し会社様にとっての利便性、ユーザーの方々にとっての利便性が一層加わったことです。緻密なデータ収集と分析をもとにロジカルに考え抜き、高い創造性を発揮して施策を展開することで、引越し会社様・ユーザーの皆様双方にとって、より価値のあるサービスを構築・運営できるようになったと考えています。

渡邊:
林社長も一緒に考えてくださるので心強いです。エイチームグループとして一丸となって前進してきたことを実感しています。

『引越し侍』は次のステージへ
-最後に、今後の展望をお聞かせください。

渡邊:
2026年6月17日より、配信数を3社に絞るという新しいサービス「引越し侍 スマート比較」をスタートさせました。先ほど申し上げた通り、泥臭く、そして入念な考察をもとに創造性を発揮してつくりこんだサービスです。それを引越し会社様、ユーザーの皆様にとって価値のあるサービスに磨き上げていき、『引越し侍』をますます拡大していきたいと考えています。私を含めて『引越し侍』のメンバー全員が同じ方向を向いており、同じ熱量を持っています。本当に良い仲間に恵まれていると感じています。仲間と一緒になって、今以上に良いサービスに育てていきます。

林:
多くの皆様のご支援により、『引越し侍』は20周年を迎えることができました。引き続き、引越し業界に貢献できるサービス、引越し市場をより便利で価値あるものにできるサービスに育てていきたいと考えています。『引越し侍』のメンバーは今後も“生みの苦しみ”を経験していくと思いますが、それを乗り越えて、新しいステージへ向かっていきたいと思います。
生みの苦しみから始まり、泥臭い挑戦と失敗の連続で進化し続けてきた「引越し侍」。引越し会社様とユーザー様と共に歩んだ20年の歴史を糧に、これからも「Creativity × Tech」を駆使しながら、皆さまに愛されるサービスへと成長してまいります。