コラム

2025/12/17

「技術で挑む実務貢献編」創造性×技術力で日常の課題に対するソリューションを発案。個人の技術とアイデアで実務環境を豊かにする挑戦エピソード

「技術で挑む実務貢献編」創造性×技術力で日常の課題に対するソリューションを発案。個人の技術とアイデアで実務環境を豊かにする挑戦エピソード

本シリーズは、エイチームグループのエンジニアやデザイナーたちが、”Ateam Purpose”である「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」で掲げられる「創造性と技術力」、そして共通の価値観である「学び続ける」意識を、個人開発を通じてどのように体現しているのかをまとめたものです。

前回12月10日(水)に、シリーズ前編「日常と遊びを豊かにする創造性編」を公開しました。

「日常と遊びを豊かにする創造性編」創造性×技術力で「やりたい!」を実現。日常と遊びを豊かにする「個の創造性」を広げる個人開発の実践エピソード

今回は後半となる「技術で挑む実務貢献編」です。個人の自発的な挑戦である個人開発が、どのように日々の業務改善や仕組み化、マネジメントといった「実務貢献」に繋がっているのか、具体的なエピソードを通じてお届けします。

日々の「ちょっと不便」から誕生!シンプル設計で業務を快適にするSlack CLI「slkecho」

川上 信也さん ストレイナー リードエンジニア

2016年にエイチームへ中途入社。金融メディア事業や保険代理店事業でサービスの開発・運用を経験。2025年11月よりストレイナーにて「Strainer」や「Finboard」の開発に携わる。

  • 担当プロダクト:Strainer, Finboard
  • 好き・得意な技術:Ruby on Rails、Google Cloud

【今回開発したプロダクトのご紹介】

個人開発:Slackのメッセージ投稿CLIツール「slkecho」を開発

開発のポイント

  • 機能の絞り込みによるシンプル化: Slackメッセージ投稿に機能を限定し、echoコマンドのようなシンプルな操作性を追求
  • 業務課題の解決と汎用化: GitLab CI通知のメンション付与の複雑な処理を解決し、汎用的なCLIツールとして公開
  • Ruby標準ライブラリの活用: コマンド引数解析にOptionParserを採用し、Ruby標準機能への理解を深化
日々の業務で感じる「ちょっと不便だな」という感覚が、開発の源泉

私が個人開発に取り組んだプロダクトは、Ruby製のSlackメッセージ投稿CLIツール「slkecho」です。これは、slkechoコマンドにチャンネル名とメッセージを指定するだけで、手軽にSlackへ投稿できるシンプルなツールとして、Ruby Gemとしても公開しています。

当時、GitLabで開発を行っており、GitLab CIの実行完了をSlackに通知したいと思いました。その際、CIの実行完了を確実に気づいてもらうため、結果の通知と同時にCI実行者へメンションもつけたいと考えました。

しかし、GitLabとSlackではユーザーIDが異なるため、そのままではメンションを指定できません。メールアドレスは共通のため、両者のユーザー情報を紐づけることは可能ですが、既存の方法では複数のSlack APIを呼び出し、その結果を組み合わせて処理する必要がありました。この複雑な処理を実現するため、まずはスクリプトとしてまとめ、さらに「汎用的に誰でも使えるCLIツール」として整理しよう、と考えたのが「slkecho」開発の出発点です。

「echoコマンドのようにシンプルに」機能を絞り込んだ設計の工夫

「slkecho」では、意図的に機能を絞り、Slackにメッセージを投稿することにフォーカスしました。例えば、Slack APIを使えば、ファイルアップロードやスレッドへのリプライなど、多くの機能を実装できますが、これらを実装するとCLIツールが複雑化すると考え、あえて対応しませんでした。機能を取捨選択し、echoコマンドのようにシンプルにSlackにメッセージを投稿できるように工夫しました。この「機能を絞り込む」という判断が、ツールの使いやすさに直結しました。チーム内で導入してもらったときに「類似ツールに比べて使いやすかった」と言ってもらえたのは、工夫した点がうまくはまったと感じ、とても嬉しかったです。

また、開発を進める過程では、Rubyの標準機能に対する理解が深まりました。例えば、コマンドライン引数の解析には、外部ライブラリの導入を検討していましたが、標準ライブラリのOptionParserが必要な機能をすべて備えていることを知り、採用しました。普段はRuby on Railsでのアプリケーション開発が中心で、純粋なRubyの標準ライブラリに触れる機会が少なかった私にとって、理解を深めるいい機会になりました。

「開発者視点」が業務に活きる醍醐味

日々の業務における「ちょっと不便だな」という感覚を課題として切り出し、一般化・抽象化してツールとして形にする過程で、自分なりの理解が深まっていく手応えがありました。そして、その結果生まれたツールが、私自身だけでなく誰かの役に立つと分かったときに、「作ってよかったな」と心から思えるのが、モノづくりの醍醐味だと感じます。

個人開発を通じて、ライブラリやツールの開発者視点を得られたことが大きな学びであり、現在の業務にも活きています。「利用者がどこで迷うか」「どう感じるか」を想像しながら設計する習慣が身につきました。また、自身や社内の利用に閉じずに公開したことで、より一般的なユーザー像を意識することができました。このことは業務でサービス開発する際にも活きているのかなと感じます。

マネジメントをエンジニアリングする。仕組み化で勤怠打刻忘れをゼロに

本多 竜斗さん エイチームライフデザイン 引越し事業部 引越し開発グループ マネージャー

2019年にエイチームへ新卒入社。ライフエンディング事業でフルスタックエンジニアとして幅広く活躍する。現在は引越し関連事業のエンジニアマネージャーとして、10名以上のエンジニアのマネジメントを行う。

  • 担当プロダクト:引越し関連事業(引越し侍、引越し侍のピアノ買取、など)
  • 好き・得意な技術:Ruby on Rails、Next.js

【今回開発したプロダクトのご紹介】

個人開発:勤怠打刻システムとチャットシステムをつなげ、勤怠の打刻時に選択したチャネルに自由にメッセージを自動配信できるChrome拡張機能を開発

開発のポイント

  • 技術で「人」と「動き」をデザインする:エンジニアの視点を活かし、チームの行動を技術的に探求する。
  • 仕組み化:「仕組み」で、自発的な行動を促す。
  • リアルなフィードバック:身近なユーザーからのダイレクトな反応で、プロダクトを磨き上げる醍醐味。
マネジメントをエンジニアリングする

私の個人開発のテーマとして掲げたのは、「マネジメントの課題を、技術的なアプローチで解決できないか」という挑戦です。きっかけは、「エンジニアマネージャー」というキャリアを考え始めたことでした。作成したのは、「勤怠打刻システムとチャットシステムをつなげて打刻時に選択したチャネルに自由にメッセージを自動配信できるChrome拡張機能」です。開発技術を手段とした、仕組み化・自動化がマネジメントにどう活かせるかを模索しました。

「勤怠打刻忘れ」の課題を仕組みで解決

開発にあたり私が最も工夫した点は、「間接的な仕組みで解決すること」です。気をつけて欲しいことや、守って欲しいルールを人の成長や意識的な改善で解決するのではなく、自然に意図した行動につながるようなプロダクト・ユーザー体験を目指しました。

まず打刻忘れをよくするメンバーの日々の行動を観察してみると、終業時にチャットで「お疲れ様でした」と挨拶を交わしている様子が目に留まりました。そこで、毎日同じメッセージを送るという単調な作業を自動化すれば、入力の手間が省けるだけでなく、打刻忘れの可視化にもつながると考えました。

勤怠打刻ツールとチャットツールを連携し「チャットへの挨拶入力が不要になる」というインセンティブを設計することで「打刻忘れを防ぐ」というマネジメント課題にアプローチしています。

「学び続ける」を体現

今回の開発は、私個人の「エンジニアだからこそできるマネジメント」を模索するためのプライベートな開発でしたが、実用的なプロダクトだったことから実務にも導入し、多くの方に利用いただいていて、職種や部署を問わず感謝の声をいただいています。

小さなマーケットですがプロジェクトをローンチし、リアルなフィードバックを受けてPDCAを回せたことが、結果として個人開発のモチベーションにつながり、エイチームグループの共通の価値観である“Ateam People”の「学び続ける」の体現にもつながったように思います。

個人開発経験を通して「小さな工夫で多くの人の行動を変えられる」という成功体験を作れたことは、自身の成長にも大きく寄与しています。


創造性×技術力がもたらす、実務への貢献と学びの循環

今回の「技術で挑む実務貢献編」では、2名の社員の個人開発を通じて、個人の創意工夫が日々の業務の不便解消や仕組み化にどのように結びついたかをご紹介しました。

個人開発は、自由な発想と技術を試す機会であり、既存の枠組みを越えた新たな喜びや、さらなる成長へと繋がる、「学び続ける」ための土台となります。

この活動を通じて得られる利用者の視点やシステムの汎用性を深く理解する「開発者視点」こそが、業務の効率化や組織の課題を解決する上で、価値のあるものです。

社員一人ひとりの技術探求によって得られた視点や知見が実務に還元されることで、チームや組織全体がより生産性の高い状態へ押し上げられることにつながると考えています。

前半の「日常と遊びを豊かにする創造性編」もぜひご覧ください。

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