コラム

2024/03/21

【M&A事例】人材事業「Career Picks」がM&A後に売上規模8倍・営業利益4倍、成長の要因とは

【M&A事例】人材事業「Career Picks」がM&A後に売上規模8倍・営業利益4倍、成長の要因とは

エイチームは業績向上を前提とした株価向上へ向けての取り組みとして、①「刷新した成長戦略の遂行」、②「投資事業の成長及び収益性が悪化した事業の回復」について、2023年10月13日に適時開示において「上場維持基準適合に向けた計画の進捗状況及び計画内容の一部変更について」を発表しました。①「刷新した成長戦略の遂行」においては、当社グループの強みであるデジタルマーケティング力を中心に周辺市場・周辺機能を拡充し、より多くの取引先に対してサービスを提供していきます。そして、M&Aによるインオーガニック投資でメディア・機能などを獲得して、さらなる事業成長を狙います。

FY2024 第1四半期決算発表資料

今回のコラムではインオーガニック成長の実績として、人材事業「Career Picks」のM&A後の背景や狙い、統合プロセス(PMI)、統合後の事業成長及び既存組織・事業とのシナジーなどについて、エイチームライフデザインの代表取締役社長を務める間瀬文雄氏にインタビューを実施しました。

人材事業「Career Picks」が累積黒字を達成、成長フェーズへ!
M&Aでエイチームグループ入りして約3年、売上規模8倍・営業利益は4倍へ

エイチームライフデザイン 代表取締役社長 間瀬文雄

証券会社に新卒で入社後、2008年にエイチームへ転職。ライフサポート事業本部比較サイト事業部長を経て、2013年にエイチームライフスタイル(現・エイチームウェルネス)代表取締役社長に就任する。2018年にエイチームの取締役、2020年にライフスタイルサポート事業本部長に就任。2022年にはエイチームライフデザインの代表取締役に就任している。

M&Aにより、新たな領域「人材事業」への参入

「Career Picks」のM&Aを行った背景

エイチームライフデザインが運営する人材事業「Career Picks」は、M&Aにより2021年2月にエイチームグループ入りをしました。2023年8月に累積損失を解消して累積黒字を達成しており、売上規模は統合前の8倍、営業利益は4倍まで成長しています。「Career Picks」は転職サイト・転職エージェントの比較・紹介サービスです。M&Aの狙いは、市場規模が大きい人材市場に参入して、エイチームグループのデジタルマーケティングノウハウを活用することにより、さらなる事業成長を加速させて人材領域におけるシェア拡大を図ることです。

人材市場でニッチトップを狙える事業

転職サイト・転職エージェントを比較・紹介するサイトは、人材市場においては非常なニッチな領域です。ニッチトップを目指せる事業であると考えたこともM&Aを実行する背景となりました。また、当時のM&Aの方針では特定の事業を絞るのではなく、多様な事業領域に参入して事業ポートフォリオを増やすことを掲げていました。以前から人材領域への関心もあり、M&Aを含めた経営方針や新規の事業領域への関心度が高まるなどM&Aを実行する条件が整っていたと言えます。

さらなる事業成長への手応え

M&Aによる統合前から「Career Picks」はコンテンツマーケティング(SEO)による集客が上手くいっており、PPC広告(クリック課金型広告)を強化すれば事業をさらに拡大できる状況にありました。SEOを最初から育てていくにはそれなりの期間を要します。その点、「Career Picks」は次の成長フェーズにあり、私たちとしてもWeb広告の領域に投資をすることで、収益はさらに拡大するだろうと手応えを感じていました。

デジタルマーケティングとテクノロジーがもたらすシナジー

機能面のシナジーで高利益体質へ

先ほど申し上げた通り、当時の経営方針は様々な事業領域に参入することで多様な事業ポートフォリオを構築することでした。事業領域を増やすことが目的であり、M&Aを実施する当時は事業間のシナジーには重きを置いていませんでした。

とはいえ、マーケティング施策の効率化や開発システムなどの機能の面ではシナジーを期待したところがあります。例えば、統合前はリスティングをはじめとした広告の領域は改善の余地がある状態でした。エイチームのデジタルマーケティングのノウハウとテクノロジーを発揮すれば、利用件数やARPU(利用者一人あたりの売上高)は向上し、高利益体質に変えられると考えていました。

データ分析基盤を構築して高効率な改善を実施

デジタルマーケティングのノウハウに加えて、高速でPDCAを回してサイト改善を図るためにデータ分析基盤の構築にも取り組みました。人材事業のデザイン開発部のエンジニアやデザイナーと連携して、成果に直結する様々なKPIのデータ統合や計測するようにしました。それにより、高い精度の分析と効果的な改善施策の実施が可能になりました。

また、ユーザーのニーズや行動を分析したユーザー視点での改善にも取り組みました。エイチームのノウハウやテクノロジーによって基盤を構築したことで、よりコンバージョンにつながりやすいユーザーの集客を実現するなど、ユーザーの獲得効率においても確かな成果が出ています。

人材事業「Career Picks」が急成長できた要因

SEOの基盤があり急成長を実現

「Career Picks」は、2022年4月に当社のライフスタイルサポート事業において過去最高のスピードで通期黒字化を達成しました。2023年8月に累積損失を解消し累積黒字を達成しており、M&Aによる統合から約3年でM&A投資を回収しています。これほどまで早く成長できたのは、統合前からSEOの基盤が構築されていたことが要因の一つであると考えます。こうした条件下のもと、エイチーム持ち前のアドテクノロジーを発揮しやすい状況にもあったことが急速な成長につながりました。

共通の価値観を持つことの重要性

エイチームとリンクス(当時)の両社のメンバー同士の相性が良かった点も成長を後押したと言えます。SEOの基盤を活かしながらPPC広告に投資して事業を拡大していく。この意志を全員が共通して持ち、認識や方針の齟齬もなく一体感を持って進めることができました。

社内の仕組みやシステムの統合についても問題なくスムーズに進行できたと感じます。M&Aにおいては両社の価値観が共通していることが重要であると実感しています。価値観が共通していたので、事業を計画通り進めることに注力することもできました。

今後のインオーガニック成長へ向けて

人材領域を拡大して市場価値を向上

「Career Picks」は、継続的なメディアの運営に加えて、当社グループのサービス理念である「三方よし」のもと提携企業様との折衝・交渉の強化により、利用件数の増加や単価の適正化に成功しています。統合後の利用件数は約4倍に増加し、ARPU(利用者1人あたりの売上高)も大幅に向上しました。

また、SEO件数は堅調に推移しつつ、PPC広告出稿による利用件数も増加傾向にあり、CPA(顧客獲得単価)の適正化を図ることができています。人材ビジネスの市場環境は引き続き良好であることが見込まれています。現在、看護人材の領域を取り扱っていますが、今後はニーズの高いIT人材領域や派遣領域、新卒領域などにも拡大を図り、「Career Picks」の市場価値をより一層高めていきたいと考えています。

アセットを活かしたインオーガニック成長

SEOやWeb広告運用などのデジタルマーケティングノウハウと実績は私たちが保有するアセットであり、インオーガニック成長においても活かすべき点であると考えています。また、私たちはそのアセットを活用しつつ、プロフェッショナルな人材も育てながら、様々な事業を成長させてきました。そうした強みが発揮できる領域や事業において、今後もインオーガニック成長に取り組んでまいります。


当社は、引き続き刷新した成長戦略の遂行としてインオーガニック成長への取組を推進してまいります。今後、M&Aの進捗など開示すべき事項が発生しましたら速やかにIR情報として開示いたします。

投資家・株主の皆様のご期待に添えられるよう引き続き尽力してまいりますので、引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。

このエントリーをはてなブックマークに追加