コラム

2026/11/04

【社外取締役インタビュー】「創業メンタリティ」を組織の力に。 エイチームが目指す「100年企業」 -社外取締役・火浦 俊彦氏が語るエイチームの経営姿勢と企業の成長-

【社外取締役インタビュー】「創業メンタリティ」を組織の力に。 エイチームが目指す「100年企業」 -社外取締役・火浦 俊彦氏が語るエイチームの経営姿勢と企業の成長-

2025年10月にエイチームホールディングスの社外取締役に就任した火浦 俊彦氏。ベイン・アンド・カンパニーで30年以上にわたり企業の経営支援に携わり、多くの大企業や創業オーナー、若手起業家を支援し、向き合ってきました。

火浦氏が重視するのは、企業が成長した後も、革新性、現場へのこだわり、オーナーマインドから成る「創業メンタリティ」を組織に根づかせることです。当社代表・林高生の経営姿勢や社員との関わりをどう見ているのか。そして、当社の価値の源泉である「創造性×技術力」を駆使し、今から100年続く企業を目指すエイチームに何を期待するのか。火浦氏の経験と視点からお話を聞きました。

株式会社エイチームホールディングス 社外取締役 火浦 俊彦(ひうら としひこ)

東京大学教養学部卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程(MBA)修了。 1983年4 月、株式会社日本興業銀行(現 株式会社みずほ銀行)入行。同行を退職後、1986年2月、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッドに入社。30年以上にわたり、様々な分野における日米欧の企業に対するコンサルティング活動に携わり、2008年1月同社日本オフィス代表パートナー、2014年4月会長に就任。2002年日本産業パートナーズ創設支援に深く関わる。2019年6月、株式会社エクサウィザーズ社外取締役、2023年アイリス株式会社社外取締役(現任)、2025年10月当社 社外取締役(現任)に就任。

大手コンサルティングファームでの経験を経て、若手起業家支援へ

——はじめに、これまでのご経歴と現在の活動についてお聞かせください。

キャリアのスタートは株式会社日本興業銀行(現:株式会社みずほ銀行)でしたが、3年ほどで退職し、1986年に戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニー(以下、ベイン)へ入社しました。以降、34年間にわたりベインでクライアントの経営支援に携わってきました。

ベインでは当初、誰もが知るような大企業を中心にコンサルティングを行っていました。しかし、次第に創業オーナーが率いる企業との仕事に魅力を感じるようになりました。ベインでの後半には「創業オーナーとだけ仕事をする」と周囲に宣言し、多くの創業ファミリーを支援するスタイルへと舵を切りました。

さらに退社する数年前からは、「より若い起業家と一緒に仕事がしたい」という想いが強まりました。自ら足を運んで若手起業家に自己紹介しながら関係づくりを行い、徐々に仕事もさせていただきながら、スタートアップに特有の経営課題も解ってまいりました。そんな中、2025年にエイチームホールディングス(以下、エイチーム)とご縁をいただき、社外取締役に就任いたしました。

創業オーナー、そして若手起業家支援へのシフト

――ベインの後半から大企業よりも創業オーナー、そして若手起業家との仕事にシフトされた理由をもう少し詳しく教えていただけますか?

やはり、創業オーナーの方々は、経営に対する切迫感・危機感が強いですね。会社が倒れたら、社員も、自分の家族もみんな倒れてしまう。なんとしても勝たなければ、生き残らなければという思いが強いですね。コンサルタントとしてもこういう方々とのお仕事は、創業オーナーの熱意に負けないくらいの熱量で取り組まなければいけない。そうすれば私の提案に対しても真剣に向き合い、スピード感を持って実行に移してくれるので、支援する側としても非常にやりがいと手応えを感じ、創業者と一緒に仕事をするようになりました。

さらに若手の起業家の発想から自分にはない視点を教えられることも多いし、いつの間にか保守的になっている自分を発見して恥ずかしくなることもある。そんな思いがベインの後半のころから強くなり、大企業よりオーナー企業、さらには若手起業家と仕事をしたいとどんどん思うようになりました。

そんな中、ある投資ファンドがエイチームに投資をしていて、私に「社外取締役になったらどうか」というお話をいただき、林さんと初めてお話しして、まさに創業メンタリティを感じたので、オファーを受けて今に至りました。

——企業価値を高める「創業メンタリティ」とは

コンサルタントとしてクライアントの価値を高めることが最大のミッションです。その鍵を探るために、継続的に企業価値を向上させている企業についてグローバルな調査・分析を行ない、非常に興味深いデータが得られました。のちに『創業メンタリティ(※)』という本にまとめられているのですが、 私も執筆陣の一人として参画し、グローバルの皆で意見を交わしながらこの本を仕立て上げました。

この調査・分析の結果、創業者や強い創業メンタリティを持つ企業の企業価値は、一般的な企業と比較して圧倒的に早いスピードで成長し、高い企業価値を創出していることがわかったのです。

創業者が自身のすべてと社員の未来を懸けて戦う姿勢を考えれば当然の結果かもしれませんが、調査・分析を通して、改めて「創業メンタリティ」の重要性を痛感しました。
※『創業メンタリティ』…出版:日経BP、クリス・ズック (著)、 ジェームズ・アレン (著)、 火浦俊彦(監訳)

創業メンタリティを構成する「3つの要素」

——「創業メンタリティ」とは、具体的にどのような要素で構成されているのでしょうか。

私たちが分析・定義した「創業メンタリティ」には、大きく分けて 3つの要素があります。

  1. 革新性(大志)
  2. まず1つ目は、革新性です。「現状の世の中はおかしいのではないか」「もっとこうした価値が必要なのではないか」という、ある種の反体制的な発想から生まれる革新性と、それを世の中に広めていこうとする強い大志です。

  3. 現場へのこだわり
  4. 次は、現場へのこだわりです。創業期は、経営者自身が社員や顧客と密に接しながら事業を作り上げます。製造業大手の某社の社是で知られる「現場・現物・現実」の思想と同じく、実際に手を動かし、現場で何が起きているかを泥臭く把握し続ける姿勢を指します。このように現場をものすごく大事にするというのが2つ目の要素です。

  5. オーナーマインド
  6. そして3つ目は、「自分が最後の責任を持ってやり遂げる」「すべては自分の責任である」という強い当事者意識です。

これら「革新性(大志)」「現場へのこだわり」「オーナーマインド」の3つを兼ね備えていることこそが、強力な「創業メンタリティ」を持つ経営者であると我々は定義づけ、『創業メンタリティ』という本にまとめました。

企業の拡大に伴う「創業メンタリティの衰退」というリスク

——事業が拡大し、企業規模が大きくなるにつれて、創業メンタリティはどのように変化するのでしょうか。

多くの企業は創業者の想いから始まりますが、企業が成長・拡大する過程で創業メンタリティを失う事例は少なくありません。

会社が大きくなると、社内に安定志向が芽生えやすくなります。また、急速な成長に対応するために専門人材を外部から登用し、オペレーションの仕組み化や効率化が進んでいきます。その結果、専門家の意見や管理の仕組みが重視されるようになり、創業時の熱量や現場の声が届きにくくなることがあります。

さらに部門が増えると、組織の階層化や専門分化が進み、部署間の調整業務が急増します。互いに波風を立てないよう配慮し合う傾向が強まると、社内で健全な議論や意見交換が生まれにくくなってしまいます。

そうなると、もともとあったミッションや経営理念、「世の中を変えたい」という創業時の想いが薄れ、挑戦や変化が生まれにくい組織になっていくことがあります。 そして緩やかに衰退へと向かう——。これは、多くの企業に見られる典型的なパターンです。

だからこそ、経営において最も大切なのは、組織がどれだけ大きくなっても創業メンタリティを維持し続けることなのです。

火浦氏から見たエイチームホールディングス社長・林高生とは

——林社長に対する火浦さんの印象を教えてください。

林さんとはプライベートでも食事やお酒を一緒にする機会が多く、人間的な魅力に触れる場面が多々あります。以前、性格診断のようなものを二人で試したことがあるのですが、驚いたことに林さんと私は全く同じ結果が出ました。それが「令和のマザー・テレサ」だったのです(笑)。

実際に林さんはとても人想いな方です。他者を喜ばせることや、私と一緒の時も私が快適に過ごせるよう細やかな気配りをしてくれます。会社においても社員を大切にし、皆が活躍できる環境を常に考えておられる。

一方で、非常に尖った好奇心と「少年のような探究心」を併せ持っています。それを象徴するエピソードがあります。社員向けの研修課題に関連して、私たち社外取締役へ取り組みの説明があった際のことです。「空に掲げる凧に特殊な仕掛けを組み込んだ工作を作る 」というテーマがありました。林さんは自らホームセンターへ足繁く通い、材料を集めて手を動かしながら、「こうすれば特殊な仕掛けを実現できるのではないか」と、実に楽しそうに思考を巡らせて手を動かすことを繰り返していたのです。自ら手を動かしながら試し、面白いものを追求する姿勢には非常に感銘を受けました。

この「令和のマザー・テレサ」と「少年のような探求心」という2つの要素が見事にマリアージュしている点こそが、林さんの最大の魅力です。スタートアップの経営者の中には、「自分がトップとして前に出たい」という強いタイプも多く見られます。しかし、林さんにはそうした自己誇示がありません。何よりも仲間やチームを大切にし、常に周りの人のことを考えています。

この姿勢は、私が以前在籍していたベインのカルチャーとも深く共通しています。ベインには「A Bainie never lets another Bainie fail (ベインの人間は、他のメンバーを絶対に失敗させない)」という言葉があり、お互いを支え合う文化があります。

林さんも同様に、「どうすればこの会社で皆が幸せになれるか」を本気で考えています。しかし、単なる「仲良し集団」で終わるつもりはありません。「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」という”Ateam Purpose”を掲げ、現場で自ら手を動かしながら愚直に解を模索し続けています。

定期的に火浦氏による役員・事業責任者向け勉強会を開催。
2025年は「創業メンタリティ勉強会」、2026年には「PayPal創業者 ピーター・ティール勉強会」を開催

今から100年続く企業へ——「Creativity × Tech」が紡ぐ未来

——火浦さんがこれからのエイチームに期待することはなんですか。

先ほども申し上げましたが、企業が大きくなる過程で官僚化が進み、創業時の理念を語る人が遠ざけられてしまうケースは多々あります。管理することが目的化し、自己承認欲求を満たすための管理者が増えてしまうと、組織は健全性を失います。

だからこそ、私は社外取締役ではありますが、会社の皆さん、特に現場の最前線の方々と話す機会をたくさんいただいています。林さん抜きで話す機会もありますが、社員の皆さんからは「林LOVE」を感じます(笑)。「この人のために」という想いが非常に強くあり、 林さんがいるからエイチームにいるんだという想いを強く感じます。

また、林さんがよく口にされる言葉の中に、私が非常に共感している言葉があります。それは「今から100年続く企業にすること」という経営理念です。 私は、エイチームが現在の素晴らしいチームやカルチャーをベースにして、ぜひ100年続く会社になっていただきたいと願っています。それは先ほど申し上げたような、組織が官僚化し、仕組みだけで会社を回して「ただ規模を大きくしていく」ということではありません。 林さんが”Ateam Purpose”で掲げる「Creativity × Tech」を駆使して、世の中をもっと便利にするんだ、もっと楽しくするんだ、という想いに共感する仲間が集い、今のカルチャーを大切に保ちながら今から100年続く会社にするということです。

私はこれまで、日本の多様な創業ファミリーと仕事をご一緒してきましたが、単に規模を追うのではなく、独自の創業スピリットや価値観を明確に持ったまま長きにわたって存続している企業が確かに存在します。エイチームもぜひ、そのような独自の強みを持った企業へと進化してほしいと期待していますし、私自身も社外取締役としてその実現に向けて全力で支援していきたいと考えています。


引き続き、当社グループの価値の源泉である企業文化を大切にしながら、持続的な企業価値の向上に取り組んでまいります。「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」という経営理念のもと、“Ateam Purpose”の実現を目指します。

株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様の信頼に応え、社会に価値を提供し続ける企業を目指してまいります。

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