コラム
2025/12/24
【社員インタビュー】ヘアケアブランド「レチスパ」誕生秘話。商品開発担当が語る、妥協なきブランドづくり
化粧品ブランド「lujo(ルジョー)」等のD2C事業を運営するエイチームウェルネスは、2025年1月に新ブランドとしてヘアケアブランド「レチスパ」をリリースしました。現在は「レチスパクリームシャンプー」「レチスパヘアオイル」「レチスパ炭酸頭皮ケア美容液」など、複数の商品を展開中。今回は新ブランドの立ち上げを担当した、商品開発チームの新堂友貴さんにお話を伺います。品質への徹底したこだわりから、顧客に提供する「価値」を最大化するためのチームの戦略、直面した困難と克服のプロセス、今後のブランドへの想いなどについて伺うとともに、その背景に潜む“妥協しないブランドづくり”を明かしていただきます。
エイチームウェルネス D2C事業部 マーケティンググループ 商品開発チーム 新堂友貴さん
SEOコンテンツディレクションやアプリ運営を経験した後、2019年にエイチームへ中途入社。エイチームブライズ(現・エイチームライフデザイン)で『ハナユメ』のSEOを担当する。その後、エイチームウェルネスのD2C事業部へ。現在は商品開発チームの一員として、自社オリジナル商品の開発に携わる。
ヘアケア市場に参入した理由
「ニードルセラム」好調の陰で感じた危機
D2C事業のビジネスモデルの特徴として、デジタルマーケティングにおける集客効果と広告宣伝費が事業全体の業績に影響を与えます。エイチームウェルネス D2C事業部は主力商品として塗る針美容液「lujoニードルセラム」が好調である一方で、事業の非連続な成長という観点で見た場合、1つの商品に集客と売上を頼る状況というのは、非常にリスクがあると考えていました。
デジタルマーケティングにおける広告効果は、自社でコントロールできない部分も多くあります。例えば薬機法(※)の改正により広告表現の訴求に制約が生じたり、強力な競合他社が現れたりなど外部環境に大きく影響されます。このリスクを避けるため、「lujoニードルセラム」に続く商品を!と開発を進めてはいましたが、なかなか同じようなヒット商品を生み出すことができない状況が続いていました 。
※薬機法…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
より自由に訴求できるクリームシャンプーへ着目
そんな中で私たちが着目したのがクリームシャンプーという商材です。ヘアケア商品は、製品の特性から、ビフォーアフター画像など、商品の持つ魅力や効果をウェブ広告で視覚的に伝えられるため、情報伝達の自由度が非常に高いと考えました。さらに、既に市場で成功を収めている先行商品が存在し、市場の成立が確認できたこと、そしてエイチームグループのデジタルマーケティングノウハウをもってすれば、その市場で十分に勝算があると考えました。
こうしたマーケット分析により、2025年1月に、レチスパブランドとして「レチスパクリームシャンプー」の販売開始に至りました。

妥協なき品質追求 理想の使用感を実現するために
理想の使用感を実現するための徹底したこだわり
私たちが目指したのは、理想の使い心地を追求することでした。クリームシャンプーというアイテムは、その特性上、泡立たないため「洗った実感が得にくい」といった声が市場に存在することも認識していました。そこで、その満足度を確かなものにするため、まず「洗った実感」を追求しました。具体的には、より強い清涼感を追求すること、かつ手触り感のあるレチノール入りカプセルを配合することで、頭皮の汚れをかき出す感覚を演出しました。また、「毛先はまとまるが、トップはふんわり立ち上がる」という理想の仕上がりを、オイル成分の配合割合で実現するなど、徹底的にこだわりました。
チーム一丸となった徹底的なこだわりとOEM製造会社との協業
この理想を実現するため、OEM製造会社様とは、窓口担当者だけでなく処方研究員の方にも参加いただき、入念な打ち合わせを重ねました。「しっとり感、サラサラ感」といった表現だけでなく「使用直後や翌朝の使用感」というように具体的な要望を伝え、処方の実現に努めました。
さらに、プロモーションやCRM(顧客関係管理)のメンバーを含むチーム全体で研究員による勉強会に参加し、原料や配合の意図を深く理解することで、自信を持って商品を売れる体制を構築できたんです。この商品づくりへの徹底的なこだわりは、製造会社様からも「ここまでこだわる会社は珍しい。」と高い評価をいただくほどでした。
品質を追求するプロセス ユーザーとしての気づきと社内モニターの活用
ユーザーとしての実体験から見出した可能性
私自身がパサつきやすい髪質のため、元々は「トリートメント不要」なんて考えられないと思っていました。でも、圧倒的シェアを持つ先行のクリームシャンプーを試した際、「トリートメントなしでもいいかも」と感じて、このカテゴリーに可能性を見出しました。その後、様々なクリームシャンプーを試す中でそれぞれの良し悪しを体感し、「自分たちはもっと良いものをつくりたい」と強く考えるようになりました。
社内モニター調査の実施とフィードバックの活用
商品開発の最終段階では、試作品を事業部メンバーだけでなく、エイチームグループの社員に社内モニターになってもらい、定性的・定量的なフィードバックを得ました。何度か実施する中で、社内モニターと一般の消費者の反応が一致していることが確認できましたし、言語化が得意な社員から忖度のない率直でわかりやすい意見を得られる点が大きなメリットでした。このフィードバックは、項目ごとに数値化した上でOEM製造会社様にも伝え、「改良の方針がわかりやすい」と評価され、品質向上に役立てています。

初めての店舗販売 挑戦と相乗効果
信頼関係を基盤とした店舗販売への参入
「レチスパ」はAmazon(モール)でのオンライン販売のみというスモールスタートから、小売店や広告代理店から「シェア1位商品に続く2番手を探している」というお声がけを機に、リアル店舗での販売を決断しました。もともとエイチームグループが広告代理店との間に信頼関係を築いていたことで、売れている商品があると「エイチームさん、これつくらないんですか?」と言っていただく機会もありました。
私の社会人一年目の「隣の席の同僚もお客様だと思え」という指導にルーツがあるんですが、社内外問わず、信頼関係の構築を大切に実践してきた意識がここに繋がっていると感じています。OEM製造会社様とも信頼関係を築くために遠方でも足を運び、工場や研究所を見学させていただくなど、足を使ってリアルな接点を増やし、関係性を構築しています。
販路拡大で得られた相乗効果とノウハウ
オンライン販売戦略がうまくいかなかったときのリスクヘッジという考え方以上に、店舗販売(リアル)とオンライン販売の相乗効果を実感しました。例えば、大手小売店での販売実績をウェブ広告で訴求することで信頼性が高まり、オンラインでの売上が向上。オンラインからの流入で店舗での売上も伸びるという好循環が生まれました。また、店舗販売の経験を通じて、ECモール、自社ECサイト、店舗のそれぞれで売れやすい商品の要件が異なることを学び、販路に応じた失敗のない商品づくりのノウハウを獲得することができました。
初めての挑戦で直面した「壁」と、乗り越えたチームの力
タイトなスケジュールと妥協なきディスプレイへのこだわり
店舗での販売は初めての経験でしたが、最も大変だったのはスケジュールがタイトだったことです。オンライン販売は自分たちのペースで進められましたが、店舗販売は小売店側のスケジュールに合わせる必要があり、限られた商談機会で多くのことを決めなければなりませんでした。初めてのことばかりで大変でしたが、クオリティは妥協したくなかったんです。
店舗での訴求は、商品そのものかディスプレイの什器に頼るしかありません。ウェブ広告の知識を活かしつつも、本当にこれで良いのかと立ち止まり、オンラインでアンケートを取ったり、シールを何パターンも作って試したりと、何度もテストを繰り返して文言やデザインを吟味していきました。
特に、店頭のディスプレイについては、最後まで妥協したくありませんでした。什器の色味を試作した際、想定していた色味と微妙に違ったんです。正直、「ちょっと違うだけだから量産するときに微調整すれば想定した通りの色で仕上がるかもしれない」「このくらいなら妥協してもいい色味なのではないか」などと迷った瞬間もありましたが、お客様に最高の形で届けるために、そこは妥協できませんでした。 メーカーの方にお願いして再度試作をお願いしました。その後も、シールの素材についても検討するなど、細部に徹底的にこだわって仕上げていきました。
※什器(じゅうき)…商品の世界観をより魅力的に訴求するためのディスプレイ棚


「人ではなくコトに意識を向ける」強いチーム力
困難を乗り越えられた最大の要因は、チーム内で「人ではなくコトに意識を向ける」という考え方を共有していたことです。スケジュールが過密になったりすると、厳しい意見を交わすような瞬間もあります。それでも、それは誰かへの批判ではなく、「みんなでより良いものをつくる」という「コト」に対する発言であることを共通認識として持つことができていました。誰かの気持ちが沈むことなく、『確かにこうしたらもっと良くなるね』とお互いに受け取り合いながら、みんなでポジティブに進めていくことができました。
良い仲間と環境、やりがいを感じられる仕事
本当に良いメンバーが揃っていると実感しています。どれだけ忙しくても、困難に直面しても雰囲気が悪くなることがありません。一人ひとりが厳しいことをやっているというよりも、新しいチャレンジをさせてもらっていると感じながら仕事をしています。新しいチャレンジをさせてもらっているのは会社から信頼されている証だと思えますし、私も「ありがたいな」と思いながら仕事ができています。私がずっとエイチームで働き続けているのは、働きやすい職場環境の中で、日々仕事にやりがいを感じられて、楽しく働くことができているからだと思っています。
「レチスパ」の今後へ向けて、商品の力で選ばれる実感
周りの反応と商品の力で選ばれる実感
「レチスパ」は店舗販売を始めてから、家族や友人、同僚からも「〇〇で見かけたよ」「△△でも売っているんだね」と声をかけてもらえるようになり、周囲のブランドに対する見え方が変わってきたことを実感しています。声をかけてくれるとやっぱり嬉しいです。また、多角的な観点で商品開発ができるようになったことも実感していますし、事業部としてもう一つの柱になり得るブランドができたことも良かったと思っています。
特に嬉しかったのは、小売店の方や卸問屋のバイヤーの方から、「実際に使ってみて凄く良い商品だと思うから扱いたい」というお言葉をいただいたことです。以前から私たちD2C事業部は、良い商品をつくることを重視してきましが、エイチームグループは広告出稿やオンラインでのコミュニケーションが得意なので、それが要因で商品が売れることもあります。つまり、商品の力で買っていただいていることを実感しづらい。でも今回は商品のクオリティが事業部の成果に直結することを強く感じられました。品質に妥協することなくこだわってきて、本当に良かったと心から思っています。

反省点を活かし、再現性のあるブランドづくりへ
一方で反省点もあります。特に店頭に置く什器については、こだわりを詰め込み過ぎた結果、費用に関する知識が不足しており、かなりコストがかかってしまいました。その後、関わったメンバーで集まって初回の費用の内訳を確認し、反省を次に活かすようにしています。今は、半期に一度のディスプレイ変更の際に、初回の内容をしっかり振り返って、試作ごとに見積りを出して進めるなど、必要以上にコストがかからないよう改善を重ねています。
これからも、取引先の皆さまにも、お客様にも喜んでいただける商品をリリースしたいです。また、D2C事業部として新しいブランドを立ち上げるのは「lujo」以来です。「レチスパ」というブランドづくりを再現性あるやり方で進めていきたいです。今後、新しいブランドを立ち上げる際に参考になるようなものもつくっていきたいと考えています。