コラム
2025/12/10
創造性×技術力で「やりたい!」を実現。日常と遊びを豊かにする「個の創造性」を広げる個人開発の実践エピソード「日常と遊びを豊かにする創造性編」
IT企業であるエイチームグループは、急速に変化・進化し続けるIT業界で、創造性と技術力を駆使しながら、常に新しい挑戦を続けています。今回は、“Aeam Purpose”である「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」で掲げられる「創造性と技術力」、共通の価値観である“Ateam People”にある「学び続ける」について、エンジニアやデザイナーたちの個人開発を通じてをどのように体現しているのかをご紹介します。
本シリーズは、前半と後半の2つの記事で構成されます。前半の本記事では、まず「日常と遊びを豊かにする創造性編」として、日常と遊びを豊かにした開発事例を深堀します。
次回の後半では「技術で挑む実務貢献編」では、個人開発の挑戦がチームや組織の課題解決にどう貢献しているのか、具体的な事例を通じてお届けします。
ミニマルさを求めて自作。その挑戦が私にくれた「実践的な学び」
綿貫 佳祐さん Qiita CX向上部 部長 兼 エイチームライフデザイン 会社付

2017年にエイチームへ新卒入社。複数のサービスに携わり、部長とリードデザイナーを兼務。開発としては、企画・デザイン・実装など一連の内容をすべて担う。デザインツールFigmaの書籍出版や雑誌への掲載など、対外的な活動も精力的に行う。
- 担当プロダクト:Qiita、ナビクル、ハナユメ
- 好き・得意な技術:色々ありますが、最近は3DCGでしょうか
【今回開発したプロダクトのご紹介】
個人開発: ミニマルなタイマー、ルーレット、文字数カウントツールをまとめたサイト

開発のポイント
- できるだけミニマルな設計:広告や不要な情報を極力省き、ノイズがなく直感的に使えるデザインを徹底的に追求
- 集中を妨げない配慮:広告を載せない代わりにGitHub Sponsorsへのリンクを載せるという実験的な試み
- 技術的挑戦:これまで使ったことがなかった、JavaScriptフレームワークであるSvelteを採用
デザイナーが追求した「ミニマル」な理想形
レクリエーション時などWeb上のタイマーやルーレットを使いたいことがよくありましたが、多くのツールは広告が多かったりと、純粋な機能を利用する上で集中を妨げていると感じていました。先人の作ったものを悪く言いたいわけではないのですが、「もう少しミニマルなサイトがあっても良いのに……」と常々思っていて。探してもなかなか理想的なものが見つからなかったので、自作することにしました。
本当に必要な機能だけを残し、ノイズがなく、直感的に使えるツールをまとめたサイトをつくりました。
評価者の責任感が生んだ、実践で学ぶ価値
開発を始めた当時、ある部署が採用していた「Svelte」を私自身がほとんど触ったことがなく、これではメンバーをまともに評価できないと思い、実践的な学習としてこの個人開発にSvelteを使うことを決めました。
ただ、初めて触る技術ですから全体的に苦労しました。最初はいきなりコードを書き始めましたが、あまりにも分からず、一度立ち止まって公式のチュートリアルで体系的に学びました。大変でしたが、結果的に良かった点だと思います。
また、恥ずかしながら今まで個人開発ではほぼ書いてこなかったテストコードも今回はそれなりに書きました。今はAIがありますから、未経験の私でもおおよそのものはさっと作れました。しばらく書いているうちに「こういうケースを想定しておいた方が良いのではないか」という勘所が自分の中に生まれ、技術的な成長を実感できました。
挑戦が私にもたらした技術の「引き出し」
開発したツールは個人的に使うときもありますし、紹介した同僚からも「ときどき使っているよ」という声もいただきました。また、「すっきりしていて良いね」と声をかけてもらったときは、当初の狙いどおりだったので本当に嬉しかったですね。
Svelteを使った挑戦は、私自身の技術的な視野を広げてくれました。これまで自分の中ではReact一辺倒だったのが、少し俯瞰して考えられるようになりました。ちょうど同じ頃にAstroも触り始めていたこともあり、以前よりプロジェクトの要件やメンバーのスキルにあわせて、柔軟に技術選定や提案ができるようになった気がします。
「誰かを楽しませたい」が原動力。AI駆動開発で追求したユーザー体験
遠藤 瑞規さん エイチームライフデザイン 引越し事業部

2024年 エイチームへ新卒入社。引越し事業部において引越し侍のバックエンドエンジニアを担当。
- 担当プロダクト:引越し侍
- 好き・得意な技術:Web系
【今回開発したプロダクトのご紹介】
個人開発:特定のソーシャルゲームに特化したクイズサイトの開発
開発のポイント
- 快適性:画面遷移の待ち時間を解消するレンダリングを実装し、保守性よりもユーザーの快適性を追求
- 技術的挑戦:AI駆動開発やユーザー行動分析ツール「Clarity」を導入
- 拡散設計: SNSシェア機能によるコンテンツの拡散
「楽しませたい」から始まった、クイズサイト開発
私は普段、エンジニアリングを通じて「誰かに価値を提供すること」を常に意識しており、業務外でも特定の課題を解決するツールを作ることが多いです。しかし、今回の個人開発の動機は、課題解決ではなく、純粋なエンターテイメントとしてユーザーを楽しませたいという思いでした。
対象としたのは、特定のソーシャルゲームのファンコミュニティです。ファン同士が一緒に盛り上がれる「場」を提供し、コミュニティに貢献したいと考えました。開発したクイズサイトは、ゲームに関するクイズを出題し、ユーザーは全問正解という目標を目指します。SNSで結果をシェアできる機能を実装することで、ファン同士の話題を生み出すコンテンツとなることを目指しました。
保守性よりもユーザーの快適性を最優先
個人開発では、できる限り未経験の技術を取り入れることをルールにしています。今回は、AI駆動での開発を試行し、ユーザー行動分析ツール「Clarity」を導入して、利用者の体験を徹底的に高めることを重視しました。
最も工夫を凝らしたのは、ユーザー体験の最適化です。クイズサイトでは問題が次々と切り替わるため、画面遷移時の待ち時間がストレスとなり得ます。この課題を解決するため、ユーザーが解答を待っている間に、次の問題の画像ダウンロードとレンダリングを完了させました。これにより、画面の切り替えが視覚的にスムーズになり、ユーザー体験が向上しました。この工夫は実装コードの複雑性が増しましたが、保守性よりもユーザーの快適性を最優先しました。
ユーザーの反応からプロダクト改善へ。個人開発でトレンドを体得する価値
多くの方がゲームをプレイしてくださり、SNSでの結果シェア機能を通じてたくさんの方が感想のポストをくださるだけでなく、ユーザーによるプレイ動画がYouTubeに4本もアップされました。また、多言語対応(i18n)を施したことで、アクセスの2割が海外からのユーザーとなり、コンテンツを世界のファンにも届けることができました。
ユーザーからのダイレクトな反応が得られ、多くの人に届けることを目標にゲームの設計やシェア機能を実装していたため、思い通りにコンテンツが拡散されて非常に嬉しかったです。
そして、この経験を通じて得られた知見は業務にも活きています。Clarityを利用したユーザー行動分析の手法は、現在の業務におけるサービス改善提案に直結しています。AI駆動開発のように、これから導入されていく技術やトレンドを個人開発を通して一足先に体得しておくことが、業務の改善提案につながっていくと考えています。
技術の力で精算のストレスを解消。自分のスキルが人の役に立つ喜びを実感
清野 隼史さん Qiita プロダクト開発部 部長

アルバイトを経て、2019年4月にIncrements(現 Qiita株式会社)へ新卒入社。入社後はQiita、Qiita Jobsのプロダクト開発や機能改善等を担当。2020年1月から「Qiita」のプロダクトマネジメントとメンバーのマネジメントを行う。2025年4月よりプロダクト開発部 部長として開発組織の統括を行う。
- 担当プロダクト:Qiita、Qiita Team
- 好き・得意な技術:AIコーディング
【今回開発したプロダクトのご紹介】
個人開発: シェアハウスの家計精算を自動化するSlack Bot
開発のポイント
- 自動化:家計精算を自動化し、精神的負担を軽減。
- 手間を省く:住民全員が手間を感じない「入力インターフェースの設計」を追求。
- プロダクト開発の醍醐味:自分のスキルが人の役に立つ喜びを実感。
「手計算での精算」というストレスの大きい課題を、技術の力で解決
私は以前シェアハウスに住んでいました。そこで、シェアハウスにおける毎月の煩雑な費用精算をなくし、精神的な負担を解消したいという強い思いを持ったことがきっかけで、個人開発に取り組みました。4人の住民が家賃や光熱費、食費などを不規則に立て替えるため、月末には「誰が何を支払ったか」を各自が報告し、手計算で精算していたんです。この作業は計算ミスが起こりやすく、誰かが報告を忘れると催促もしづらいなど、金銭的な問題が人間関係に影響しかねない、ストレスの大きい課題を抱えていました。
非効率で精神的負担の大きいプロセスを、技術の力で完全に自動化し、全員が快適に過ごせるようにしたいと考え、開発に着手しました。
お金のやり取りを自動化し、より円滑な共同生活へ
開発するうえで最も工夫したのは、メンバー全員が手間なく続けられる「入力インターフェースの設計」です。入力忘れやミスが無いよう、スマートフォンで完結できる複数のツールを比較検討しました。また、Slackへの通知メッセージも、誰が見ても一目で理解できるよう、送金関係をシンプルに図式化して表示するよう工夫しました。
このBotを導入した結果、毎月1時間近くかかっていた精算作業が完全にゼロになりました。これまで月末になると漂っていた「精算しなきゃ…」という憂鬱な空気がなくなり、金銭に関するストレスから全員が解放されました。お金に関するやり取りが自動化されたことで、より良好で円滑な共同生活につながったことが最大の効果だと感じています。
自分のスキルが人の役に立つ喜びこそ、プロダクト開発の醍醐味
私自身が日常生活で感じていた課題を自らの技術で解決できた瞬間に、一番面白さを感じました。頭の中で描いていた「こうなったら便利だな」というアイデアが、コーディングを経て実際にSlackに通知として現れたときの達成感は格別でした。また、シェアハウスの住民である友人からも直接感謝されることで、自分のスキルが人の役に立つ喜びを実感しました。これこそが、プロダクト開発の醍醐味だと思います。
そして、今回の個人開発では、業務の中で培ってきたスキルを活かすことができました。この経験を通して、今まで業務を通して身につけたスキルの裏付けもでき、自分自身の能力に自信が持てました。
「学び続ける」循環が、創造性×技術力の土台となる
今回の「日常と遊びを豊かにする創造性編」では、3名の社員が、個人の純粋な課題意識や遊び心を、「創造性×技術力」で具現化し、どのように体現したかをご紹介しました。
個人開発は、自由な発想と技術を試す機会であり、既存の枠組みを越えた新たな喜びや、さらなる成長へと繋がる、「学び続ける」ための土台となります。
こうした社員一人ひとりの知的好奇心と成長の積み重ねこそが、企業としての私たちの強さとなります。私たちは、変化に対応し、自らをアップデートし続ける集団でありたいと考えています。
次回の「技術で挑む実務貢献編」もぜひご覧ください。