コラム
2026/03/06
【サステナビリティ】エイチームの持続的な成長を目指して。「ビジネスと人権」に真摯に向き合った人権プロジェクト
昨年、エイチームグループではサステナビリティプロジェクトの派生プロジェクトとして「人権プロジェクト」を発足させました。企業の持続的な成長において、人権を尊重する体制の構築が不可欠な経営基盤であるという認識のもと、国連指導原則やESG評価機関の評価基準を考慮し、約1年間にわたり活動を推進してきました。
本プロジェクトでは、人権デュー・ディリジェンス(人権DD)の実施、「エイチームグループ人権方針」の策定と開示、そして取締役から全社員に至るまでの階層別の人権研修を実施しました。本コラムでは、エイチームグループの「ビジネスと人権」に関する一連の取り組みの背景と、実効性を意識した策定プロセスについて振り返ります。
サステナビリティサイト「人権の尊重に向けた取組」
1.人権プロジェクト発足の経緯と目的
人権プロジェクトの発足
エイチームグループでは、持続的な企業成長に向けたサステナビリティ経営の実践、および昨今厳格化するサステナビリティやESGに関する取組・開示の要請に対応するため、2023年5月に「サステナビリティプロジェクト(以下、サステナPJ)」を発足させています。
サステナPJは、IR・開示部門を中心とした横断組織であり、経営戦略、人事・労務、情報セキュリティ、法務、内部統制などの各専門領域の担当部門、ガバナンスを担う取締役会事務局などによって構成され、国際機関やESGスコアリング機関、金融庁や東証が推奨する枠組みを意識した活動を行ってきました。
このサステナPJの活動において、以前より人権への取組の必要性は認識されておりましたが、具体的に以下の2点の事象が契機となり、エイチームホールディングス経営会議(以下、HD経営会議)での付議を経て、「人権プロジェクト」が正式に立ち上がりました。
取引先に関連する人権課題の顕在化
人権プロジェクトの発足の直接的な契機は、2025年初頭に当社子会社の広告出稿先であるメディア企業において、重大な人権侵害事案が報じられたことにあります。CM出稿中の各企業が放映可否の判断を迫られる中、当社としてもサプライチェーンを含めた人権に関する明確な方針と対応基準を持つ必要性を強く認識しました。
資本市場からの要請
機関投資家との対話(ESG面談)において、人権リスクの特定や方針策定に関する具体的な開示を求められる機会がありました。特に海外の機関投資家は人権への取り組みを重視する傾向にあり、ESG評価機関のスコアリング向上という観点に加え、グローバルスタンダードに準拠した対応が急務となっていました。
経営レベルでの合意形成
これらを契機に、HD経営会議において、当社を取り巻く環境や状況、人権遵守に向けた取り組みとして人権方針の策定の必要性を説明し、合意形成を図りました。このようにして、人権プロジェクトは2025年3月に発足しました。
また、本プロジェクトにおいて最も重視したのは、「人権リスク」の定義です。「人権リスク」とは企業が被る経営リスクを指すのではなく、「ライツホルダー(権利保持者)の人権を侵害するリスク」を指すという点を明確にしました。
当社の経営理念である「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」を実現するためには、従業員、ユーザー、取引先、地域社会など、あらゆるステークホルダーの人権尊重が大前提となります。人権への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)であると同時に、当社の持続的成長の土台であるという認識を取締役と共有しました。
2. 実効性を重視した人権DDと人権方針策定プロセス
人権DDの実施プロセス
本プロジェクトでは、形式的なガイドラインの作成にとどまらず、実効性を伴う方針策定を目指しました。そのため、外部への全面委託ではなく、社員で構成される人権プロジェクト事務局が主体となり、各事業部門へのヒアリングを通じてリスクを特定するプロセスを採用しました。
人権方針の策定に先立ち、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」や「OECD多国籍企業行動指針」の枠組みに沿って、人権リスクのインパクト評価を実施しました。

リスクの特定プロセス
国連指導原則には26の人権課題が示されていますが、IT企業である当社のビジネスモデルにそのまま適用することは適切ではない考えました。そこで事務局では、26の課題をベースにコーポレート部門および各事業部門へのヒアリングを実施。潜在的・顕在的なリスクの棚卸しを行いました。
事業部門へのヒアリングにおいては、具体的な事例を用いながら、業界特有のリスクや各事業部門でしか知り得ない実態を可視化することに注力。その結果、当社グループに関連する137個の具体的な人権リスク事項を特定しました。
リスクの評価と重要課題の特定
特定された137個のリスクに対して、深刻度(被害規模・範囲・是正困難度)および発生可能性を「低・中・高」の3段階で評価しました。その結果、高リスクおよび中リスクと判定された項目を抽出し、当社のビジネス特性を加味して、以下の「6つの重要課題(カテゴリ)」に再整理しました。
特定された6つの重要課題
- 適切な労働時間、労働安全衛生の管理
- ハラスメント
- テクノロジー・AIに関する人権問題
- 個人情報や第三者の権利の保護
- ユーザーの安心・安全
- 多様性に配慮した情報発信や対応
特に「テクノロジー・AI」や「ユーザーの安心・安全」を重要課題に据えた点は、多くのユーザーにサービスを提供するIT企業として、事業活動と人権の結びつきを重視した結果です。
また、上記重要課題に加え、人権DDの結果を踏まえて、14項目を具体的な人権課題として認識し、保護・尊重することを定めています。
※人権方針 第6条「人権尊重に向けた人権課題への対応」
3.ステークホルダーに向けた情報開示
本プロジェクトは、人権方針の策定のみにとどまらず、当社グループのサステナビリティへの取り組みを広く社会へ伝えること、および各機関からの開示要請に的確に応えることも重要な目的として推進しました。
特に、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示義務化に伴い、投資判断に資する透明性の高い情報提供に努めています。より多くのステークホルダーに対し、当社の「ビジネスと人権」に対するスタンスを明確に表明すべく、開示内容の精査と表現の工夫を重ね、以下の媒体を通じて公表しました。
<主な開示実績>
プレスリリース(コーポレートサイトおよび東証適時開示等)
「エイチームグループ人権方針」の策定を広くお知らせしました。
https://www.a-tm.co.jp/news/54887/
サステナビリティサイト「人権への取組」ページの開設
特定した人権課題や推進体制について、詳細な情報を集約・公開しました。
https://www.a-tm.co.jp/sustainability/human-rights/
有価証券報告書【サステナビリティに関する考え方及び取組】
法定開示書類においても、当社のガバナンスおよびリスク管理の一環として人権への取り組みを明記しています。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/yuho_pdf/S100WXAF/00.pdf

4. 組織への浸透を目指した階層別研修の実施
人権方針の策定と並行して、組織全体への浸透を図るため、2025年8月から12月にかけて、対象者の役割に応じた「階層別人権研修」を実施しました。単なる知識のインプットにとどまらず、各階層に求められる役割と責任を明確にすることを目的としました。
階層別人権研修の概要
- 役員研修(取締役・子会社社長対象)
- 管理監督者向け研修
- 全社員向け研修
人権方針を付議したHD経営会議と同日に実施。経営の意思決定層として、「ビジネスと人権」が企業価値やガバナンスに与える影響について理解を深めました。
管理監督者や事業責任者に対し、ビジネスにおける人権への関連性についての情報を提供。国内外の動向、人権DDの実践方法、労働管理におけるリスクなど、現場マネジメントに必要な知識をインプットしました。管理監督者は事業の責任者として、人権を遵守した対応がより求められるためです。
2025年12月1日~12月25日(国際人権デーに合わせて実施)、 Eラーニング形式(約20分)で実施しました。「人権とは何か(導入編)」として、社員として守られるべき人権、ビジネスにおいて第三者の権利を侵害しないための考え方などを学習しました。
※「1.役員研修」及び「3.全社員向け研修」については、外部の専門家を講師としてお招きして実施しました。
研修後のアンケートを振り返って
全社員向け研修の実施にあたり、「人権」というテーマは、日常業務とはかけ離れており、イメージがしづらいのでは、という心配もありました。しかし、研修後のアンケート結果は、そうした懸念を払拭する非常に前向きなものでした。
多くの社員が「企業として人権に対する姿勢やスタンスを公表することは誇らしい」「広告表現やデータ活用など、自分自身の日頃の業務と密接に関わっていると実感した」といった感想を寄せてくれました。また、法令遵守やコンプライアンスといった守りの側面だけでなく、自分たちの仕事の品質に関わる重要なテーマとして受け入れられたことに、大きな手応えを感じています。

5. サステナビリティへの取り組みの深化に向けて
本プロジェクトを通じて、エイチームグループ全体として、高まる社会からの期待や要請に確かな水準で応えうる体制を構築し、情報開示の質を一段階高められたことは、極めて大きな進展でした。何より、取締役から社員一人ひとりに至るまで、人権をはじめとするサステナビリティへの理解を深め、組織全体の啓発につなげる機会にできたことは、本プロジェクトの最大の意義があったと捉えています。
サステナビリティへの取り組みは、日々の誠実な企業活動の積み重ねこそが、持続可能性へと繋がります。 私たちは、プライム市場上場企業としての社会的責任を深く自覚し、今回の成果を一過性のものとせず、今後も実効性のある取り組みと改善を続けてまいります。変化の激しい事業環境においても、多様な価値観を尊重し、社会からの要請に真摯に向き合い続けることで持続可能な社会の実現に貢献し、企業価値の向上を図ってまいります。