コラム
2026/02/26
【社員対談】学び続けるプロフェッショナル集団「だから、私たちは個人開発をやり続ける」
エイチームでは、エイチームが大切にする価値観、そのような価値観を持つ人たちを“Ateam People”と定義しています。その中に「学び続ける」という言葉があります。世の中やIT業界が急速に変化を続ける中で、常に知的好奇心を持って新しい知識を学び続ける集団であり続けたいと考えています。
以前公開した記事【日常と遊びを豊かにする「個の創造性」を広げる個人開発の実践エピソード】では、「学び続ける」という価値観を体現するデザイナー・エンジニアたちに個別取材を実施。それぞれの日常や遊びを豊かにした「個人開発の事例」について詳しく紹介しました。
今回は、前回の事例紹介から一歩踏み込み、彼らがなぜ「学び続ける」のか、その根底にある想いや何を目的に個人開発を行っているのか。それぞれの考え方や取り組みについて語ってもらいました。
■綿貫 佳祐さん
Qiita CX向上部 部長 兼 エイチームライフデザイン 会社付
2017年にエイチームへ新卒入社。複数のサービスに携わり、部長とリードデザイナーを兼務。開発としては、企画・デザイン・実装など一連の内容をすべて担う。デザインツールFigmaの書籍出版や雑誌への掲載など、対外的な活動も精力的に行う。来年度より大学で講義を行う予定。 (写真左)
■清野 隼史さん
Qiita プロダクト開発部 部長
アルバイトを経て、2019年4月にIncrements(現 Qiita株式会社)へ新卒で入社。入社後はQiita、Qiita Jobsのプロダクト開発や機能改善等を担当。2020年1月から「Qiita」のプロダクトマネジメントとメンバーのマネジメントを行う。2025年4月よりプロダクト開発部の部長として開発組織の統括を行う。 (写真右)
■遠藤 瑞規さん
エイチームライフデザイン 引越し事業部 引越し開発グループ
2024年、エイチームへ新卒入社。引越し事業部において、SEOをメインに引越し侍のバックエンドエンジニアを担当している。 (写真中央)
個人開発に取り組む私たちの日常
-最近、取り組んだ個人開発について教えてください。

綿貫:
最近まではある案件に掛かりきりだったため個人開発に取り組めていませんでしたが、ようやく一段落したので、自分用にTailwind CSSのテーマ変数を視覚化するツールを作り始めたところです。
私の開発頻度には波があり、今回のように作りたいものがある時は集中しますが、逆にインプットに専念したり記事の執筆ばかりしていたりと、時期によってばらつきがあります。

清野:
今は「みんなが使える実用的なプロダクト」というより、自分が「これを作ったら面白そう」と純粋に思えるものを形にしています。
開発の頻度については、ほぼ毎日ですね。GitHubのコントリビューション(活動量が可視化される指標)を見ても、プライベートの時間を含めて毎日欠かさず何かしらのコードを書いているのが分かるくらい、生活の一部になっています。


遠藤:
私は現在、SNSでのバズを狙ったプロダクトを開発中です。半年ほど前に同様のトライをした際、想定とは異なる層に届いてしまったという反省があるため、今回はそのリベンジとしてターゲットを再設定して取り組んでいます。
基本的には「作りたいもの」がある時に動くスタイルで、一度スイッチが入れば平日でも仕事が終わった後のプライベートな時間を使って、コツコツと開発を進めています。
-日々、それだけ精力的に取り組めるのは何か目的があるからだと思います。皆さんの目的を教えてください。

遠藤:
私が個人開発において最も大事にしているのは、ユーザーに価値を届けること。ユーザーは何に困っているのか。直接聞いた困りごとやSNSで見かけた内容について考え、自分自身がエンジニアとして解決に導けるものをつくろうと考えています。日々の仕事とは別に、個人開発においてもユーザーの役に立ち、ユーザーに良い反応をもらえることに喜びを感じています。

綿貫:
遠藤君のような大それた目的はなくて、私の場合は趣味半分の要素もあります。また、今の役職になってから、自分で手を動かす機会は減りましたが、メンバーを評価する立場として、技術をアップデートし続ける責任があると思っています。個人開発は、ずっとやり続けているのでライフワークのようなものと考えています。例えば犬や猫が好きな人が、その動画をSNSで日常的に見るくらい当たり前のようでもあります。個人開発をやる「目的」を一言で表すのはなかなか難しいですね。

清野:
私も最近は仕事でコードを書くことはほとんどなくて、マネジメントや事業戦略などがメインの業務です。しかし、今でも自分が一番得意なのは開発の領域です。仕事でやらなくなったからといって開発を辞めてしまうのは、もったいないと思うんです。自分はエンジニアとして仕事をしてきて、それが評価されて今のポジションを任されている部分もあると思います。開発という自分の柱を大事にし続けたいと思っています。
最近お会いしたデータサイエンティストで、もともと宇宙工学を専門にされていた方がいます。今、その方はポッドキャストで「宇宙ばなし」というコンテンツを配信しています。現在の仕事では宇宙工学の知識を直接活かす機会はないものの、今でも宇宙工学が好きだから辞めてしまうのはもったいないと話していました。その方は「やり続けていたらいつか今の仕事にもつながるような気がする」ともおっしゃっていて、自分の考えに共通するものを感じました。
個人開発と日々の仕事やキャリアとの関係
-個人開発とご自身のキャリアとの関係について、どのように考えていますか?

綿貫:
「計画的偶発性理論」に近いような気がします。しっかり計画を立てたわけでなくても、さまざまな知識や情報をインプットしたり技術を身につけたりしておくと、何かある問題に直面した時にいろいろな対応ができると思うんです。キャリア形成のためには手札を増やす必要があって、そのために勉強を続けなければならないという考え方です。その一環として、個人開発があると考えています。

清野:
私も計画していなかったことが結果としてキャリア形成に役立っていると感じることは多いです。日々仕事でやっていることが個人開発に活かされることもあるし、一方で個人開発での学びが仕事に活かされることもあります。今までそのようなことを多く経験してきたので、個人開発を継続しているところがあります。また、会社での仕事はどうしても会社の枠組みの中で捉えてしまうと思います。個人開発を行うことで違う切り口でのアウトプットをいろいろと試すことができ、それが自身のキャリアに活かされているような感覚もあります。

遠藤:
技術について言うと、一つの技術に特化するのではなく幅広い技術をバランスよく習得するほうが良いと考えています。「木の板を並べて作った桶」の例え話がありますよね。一枚でも短い板があると、そこから水が漏れてしまって、一番低い板の高さまでしか水が溜まらないという。

綿貫:
「ドべネックの桶」ですね。足りない要素が全体の限界を決めてしまうという考え方です。

遠藤:
はい、それです。自分の弱いところを補う意味でも、個人開発はキャリア形成にとって大切な取り組みだと思います。それにしても「ドべネックの桶」がすぐに出てくるとは、綿貫さんがまさに手札を増やしている証ですね。

綿貫:
ありがとうございます。個人開発以外でも、例えば関係ない分野の本を読むとか、そんなことも意識的にやっています。
-「個人開発に取り組んで良かった」と感じたエピソード、あるいは「良くなかった」と反省したエピソードがあれば教えてください。

綿貫:
個人開発で得た知識をアウトプットし続けた結果、出版社からお声がけいただき本を出版することができました。また、最近は大学からお声がけいただいて、非常勤講師として学生さんに教える機会もいただけることになりました。Figmaの使い方やUIデザインなどに関する講義を行う予定です。


清野:
個人開発の面白さは、やっぱり制約がないことだと思います。すべて自己責任ですし、故に何でも自由に実験することができます。ユーザーのニーズがありそうなものを条件や制約がない中で開発できるのは本当に面白いですし、それは会社の仕事では難しいことだと思います。また、個人開発で生み出したものは世に出る可能性が常にあります。出なかったとしてもマイナスは何もありません。日々、いろいろな個人開発を行う中でそうした可能性を感じられるときがあり、そこは個人開発ならではの楽しさだと思います。
また、スピードが早いことも個人開発の醍醐味です。自分で要件定義を行い、アーキテクチャを設計して開発を進める。今はAIも活用できるので、かなりスピーディーに形にすることができます。もちろん、インフラやコスト計算など自分で対応しなければならないことも多いですが、個人開発のスピードはかなり早いと感じています。仕事の中で「もっとうまくできたんじゃないか」と感じたことも個人開発の中ですぐに試すことができる。会社の仕事では、なかなか同じようにはいきません。


遠藤:
「良くなかった」と反省するエピソードがあります。まだプログラミングに慣れていなかった頃の話です。何かつくりたいと思いつつも特に思いつかなくて、「こんなプログラムがあったらいいと思うものがありますか?」と募集したことがあるんです。その時にニーズを深堀ることができずに、言われたことに対して自分が思うままに実装したことがありました。そのせいか、結局、ぜんぜん使ってもらうことができなかったんです。ニーズをしっかりと聞いて、把握しないとダメだということを思い知りました。

綿貫:
良い経験をしましたね。そのようなことを実際の仕事の中で学べるのは、例えばプロダクトマネージャーという立場になってからだと思います。新卒入社の1年目、2年目ではなかなか経験できません。個人開発で早々に学べたことは、今後、より責任ある立場として開発するようになったときに必ず活かせると思います。

清野:
個人開発って失敗しても自分がガッカリするだけ。すべて学びにもなります。会社の中で同じような失敗をすると、それをリカバリーする必要が生じたり自身の評価に影響したり、何かしら後に続くものが出てきます。個人開発は、続けるも辞めるも全部自分の判断です。

綿貫:
最大のダメージでも、せいぜいお財布がちょっと痛む程度。数千円とか。お金をかけるのも自分次第。お金をかける選択もできるし、お金をかけない技術スタックを組むこともできる。いわば、自分が予算を持つ人になれるとも言えます。

清野:
会社だと「このツールは使えないな」と言われるものを、個人開発ではコストがかからないという理由で使うこともあります。時には、「これ、会社でも絶対使ったほうがいいのに」と思うものもあります。
最近は特に AI 系でそう感じることが多いような気がします。あるいは、社内で「今度これを使ってみよう」という話がある場合、事前に個人開発で触れておくこともありま
す。実際に導入するときに、良い点も悪い点も含めて情報を提供することができます。

綿貫:
世間の評判やデモの動きを見るだけで判断するよりも、実際に触れておいたほうが確かな情報を提供することができます。私や清野君は部長という立場として、そのような準備をしておくことは責務と言えるかもしれません。
個人開発における「創造性」について
-個人開発を行うためには技術力だけではなく、創造性も必要だと思います。皆さんのアイデアの源泉はどこにあるのでしょうか?

清野:
自分がつくるプロダクトをどれだけ使ってもらいたいか。それによってアイデアのレベルも違ってきます。とりあえずつくってみようという実験のようなものであれば、パッと思い浮かんだアイデアをベースに進めていきます。サービスとしてローンチすることを目指す場合は、これまでのプロダクトマネジメントで培った知識や経験を活かしてつくり込んでいきます。

綿貫:
私の場合は「自分が欲しいものをつくる」という形が多いです。自分と似たような人はいるだろう、つまり同じようなものを欲しいと思う人がいるという前提で開発をしていきます。また、創造性やセンスというものは無から生まれるのではなくて、既存の何かと何かを掛け合わせて生まれるものとする考え方があります。そのためにも色々と勉強をして幅を広くしていくとは大事だと思います。知識の幅が広ければ広いほど掛け合わせの幅も広がりますし、全くかけ離れているもの同士を掛け合わせることも可能になります。


清野:
私も最初からターゲットを設定して、そのターゲットに向けて開発するようなやり方ではないように思います。自分がユーザーという立ち位置で開発していることが多いです。また、自分の個人開発のフローをメタ的に改善していくようなこともやっています。私もユーザーをそれほど意識していないかもしれません。

綿貫:
個人開発と聞くと、ターゲットやビジネスゴールをしっかり設定して進めていくような印象を持つ人も多いと思います。でも、私の例で言うと、例えば検索して出てきたものが「なんか嫌だな」と感じて「じゃあ、自分でつくるか」と思って個人開発でつくってみるレベルだったりします。

清野:
そもそも個人開発が目的ではありません。以前開発した家計簿を自動化するものなど「こういうのがあったら便利だな」というものをつくっています。
そういった感覚で個人開発を繰り返していく中で、自分のスキルも磨かれていきます。また、最初は身近な人を対象にしていたものが、だんだんと「こういうシーンに当てはまりそうな人」という形で広がっていくこともあります。最初から「世に出すものを作ろう」と意気込んでしまうと「では何をつくろうか」となって一向に前に進まない。まずは身近な課題を解決するところから始めてみる。その積み重ねの先に「もしかしたら世に出せるかも」という段階が自然と見えてくる。そのくらいの気持ちで取り組むのがちょうどいいと思います。

遠藤:
私の場合は、「一旦、できあがった」「最低限の機能はつくった」という段階が最初にあって、そこから「この機能も加えたいな」と次々にアイデアが広がっていく流れです。より使いやすくするものをつくるという観点で、段階的に創造性を発揮しているように思います。

清野:
まず小さなものをつくる。それを実際に使ってもらう。そこで学んだところから仮説を立てて、より良くなるような機能を考えてつくってみる。そのようなプロセスを回すことは私も意識しています。また、個人開発では、まったく未知の業界やユーザーを対象にするのは、コミュニケーションの面でも難しい部分があります。だからこそ、自分の身の回りや日常の中にある課題を少し引いた視点で捉え、そこで仮説検証を繰り返すことを意識しています。
これからの個人開発へ向けて
-最後に、今後のビジョンや目標を教えてください。

遠藤:
今はOSSのような自由に使ってもらえるものが多いのですが、今後はお金を稼げる商用のものを開発していきたいです。数年以内にチャレンジしたいと思っています。

清野:
自分の柱を大事にしていくためにも、個人開発を継続していくつもりです。新しいものをキャッチアップしながら、引き続き実験を繰り返していこうと考えています。ここ数年で仕事や個人開発で得た経験やノウハウが溜まってきたところなので、より難易度の高い個人開発にも取り組んでいきたいです。より広く使われるようなサービスに発展していく可能性もあると思うので、そういったことも意識しながら個人開発を続けていきたいです。

綿貫:
同じジャンルの中で続けていくのではなく、常に未知のことや新しい領域に踏み込んで幅を広げていきたいと考えています。また、自分自身の人生の目標で言いますと、教育についても取り組んでいきたいです。例えば1対1で教える形ではなく自分の分身のようなものを教材とするとか、何かしらの形で人に教えることを実現していきたい。それを実現するもの自体を開発するのか、あるいはアシストするものを開発するのか、これからいろいろと考えていこうと思っています。
今回の対談を通じて見えてきたのは、彼らにとっての個人開発が単なるスキルの習得手段ではなく、日常に溶け込んだ「習慣」であるということでした。「学び続ける」という姿勢は、決して義務感から生まれるものではなく、純粋な好奇心や「もっと良くしたい」という想いの積み重ねです。
変化の激しいこの時代、自分自身の「柱」を持ち、手札を増やし続ける彼らの姿勢は、まさに“Ateam People”の体現そのもの。まずは身近な「不便」を解消する一歩から。そんな小さな創造の連続が、やがて自分自身のキャリアを、そして世の中を大きく動かす力に変わっていくのかもしれません。