松岡エイチーム設立20周年、おめでとうございます。
林ありがとうございます。1997年に個人事業のソフトウェア開発でスタートし、2000年2月にエイチームを設立。現在は、様々なウェブサービスを提供する「ライフスタイルサポート事業」、ゲームアプリなどを提供する「エンターテインメント事業」、自転車専門通販サイトを運営する「EC事業」の3事業を柱としています。
松岡『持たざる経営の虚実』にご共感いただいたのはどんな点でしょうか。
林“選択と集中”の経営という固定概念ではなく、複合企業の再評価を打ち出された点です。我々が事業を多角化してきたことの理論的な裏付けを得て、「複合企業でやっていっていいんだ」と確信できた気がしました。
松岡企業活動を単一事業に絞ることは短期的に見ればメリットもあります。しかし、事業が早く成長してすぐに年老いてしまうことが多い。
林ある事業が導入期から成長期、安定期、衰退期と移行する中で、複数の事業の波を重ねることが大切だと考えています。一つの事業の衰退とともに会社全体が衰退しては意味がありません。エイチームは「今から100年続く会社にすること」を経営理念に掲げており、永久に存続する企業をめざします。
松岡そう、まさに「長期的視野がない」ことが選択と集中の大きな欠点なのです。林社長は新事業のアイデアをどう発想し、それを現実化していくのですか。
林規模が小さい頃にやっていたのは、あるビジネスモデルが一つの市場で軌道に乗ったら、そこから水平展開を図ることです。例えば、ある市場で成功したら、そこから一定の法則性を読み取って他の市場に横展開していく。これなら事業の多角化で懸念される過剰なコスト発生も抑えることができます。ところで、数多くの企業のコンサルティングやM&Aに携わってこられた目にはエイチームがどう映るでしょうか。
松岡例えば「引越し侍」というサイトでは、一般の人がいろんな引越し業者を簡単に比較検討できますね。これは“時間の節約”という価値を生み出すものです。一方でゲームアプリなどでは“時間を楽しむ”という価値を創造している。つまり「時間をつくって、それを楽しむ」という2方向の価値を提供する企業というのがエイチームに対する私の理解です。
林確かに、そういう見方もできますね。