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あさのますみ

積極的な投資は一時的に「お休み中」。声優・浅野真澄さんに聞く資産運用とお金の話

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お金の知識は身に付けたいけれど、何から始めていいか分からない。株式投資? iDeCo? それとももっと身近な節税対策……?

今回お話を伺ったのは、声優・作家・ナレーターなど幅広く活躍する浅野真澄さん。浅野さんは、2015年から2020年までのあいだ、お金をテーマにしたラジオ番組『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』のパーソナリティを務めたことをきっかけに、投資を始めたのだそう。ただ、最初は投資どころかお金に対する知識が全くなかったのだとか。

浅野さんは株式投資を始めたばかりの頃、3カ月で300万円の利益を出したこともありましたが、2023年現在は、積極的な投資は「お休み」中。証券口座のひとつも解約したと語ります。ただし、身近な節税対策に力を入れたり、iDeCoやふるさと納税を続けたりしているとのこと。浅野さんの投資との向き合い方、お金との付き合い方は、どのように変わっていったのでしょうか。

  • 秋田県生まれ。2001年、声優「浅野真澄」としてデビュー。『Go!プリンセスプリキュア』キュアマーメイド役ほかアニメ・ゲーム・洋画・ナレーション・ラジオパーソナリティなど声優として幅広く活躍。2007年に第13回おひさま大賞童話部門最優秀賞を受賞し、文筆業では「あさのますみ」名義で絵本・童話を中心に執筆。2015〜2020年まで、『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』のパーソナリティを務め、投資についての話題をまとめた番組本『山田先生とマネー番組をはじめたら、株で300万円儲かった』(扶桑社)も発売。

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はじめての投資で300万円の利益が出る

ーー浅野さんは、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者で公認会計士の山田真哉さんとパーソナリティを務めたお金をテーマにしたラジオ番組『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』をきっかけに投資を始めたそうですね。

そうなんです。ラジオが始まったのは38歳ごろだったかな。新しいラジオ番組の打ち合わせをするときに「お金に関する番組」をやりたいと提案して、スタートすることになりました。

ただ、この時点で投資に興味はあったものの、スタート当初は「金融の知識がゼロ」状態。番組開始時点ではクレジットカードさえ使っていませんでした

あさのますみ

ーークレジットカードもですか(驚)!

そうなんです。実際は銀行のカードにクレジット決済機能がついていたんですけど、それは使わずになんでもかんでも現金で払っていました。

今ではクレカも使っていますが、当時はクレカにすら漠然とした怖さがあったというか、無知からくる恐怖心があって。現金じゃなくてカードでお金を払うのが日常化したら、自分がどれくらいお金を使っているのかよく分かんなくなっちゃうかも……みたいなことも考えていました。それほどまでに、お金に対して無知だったんです。

ただ、勉強している様子も番組の中でリスナーの方々に聞いてもらうようにしたら、真面目に学べるんじゃないかなと(笑)。「途中で嫌になっちゃいました」みたいな言い逃れができませんからね。

ーー番組が開始した当初はお金の基礎について学ぶ機会も多かったと聞きましたが、番組以外でもお金に関する勉強をしていたのでしょうか。

何から始めたらいいのかも分からなかったので、最初は小学生新聞をとったり、「お金の勉強をゼロから始めたい人へ」みたいな初心者向けの本や経済新聞を読んだりして、分からない言葉に引っかかったら都度調べて、さらに分からないことがあったらまた調べて……というのをしていましたね。

1日1時間と時間を決めて、移動や電車を待っているときなど、隙間時間に勉強するようにしていました。

ーーその後、実際に株式投資を始めてから短期間で、株で300万円の利益を出したそうですが……。

ラジオが始まってしばらく経った頃、縁があって証券会社の人を紹介していただいて。その方にすすめてもらったマザーズ株(ベンチャー企業向けの株式市場)を試しに買ってみたら良い結果になったんですよ。それで「投資って楽しいかも」と思って、上限を100万円に設定して少しずつ投資をするようになったんです。

そのあと番組の企画で、「仮のお金1,000万円」で、みんなでバーチャル投資をしようという話になりました。

すると、100万円では買えないような単価の高い株が世の中にはこんなにあるんだということを知ってしまって。その高い株に投資してみたらバーチャルの世界ですごく利益が出て、「リアルなお金だったらよかったのにな」と思ったんです(笑)。

それがきっかけで、上限を100万円から1,000万円にして投資をしてみることにしました。そしたら、当時私が主に投資をしていたマザーズ株の調子がよく、とんとん拍子にうまくいって。数カ月で300万円の利益になったんです。

あさのますみ

ーーすごい……! 投資は、株式投資一択だったのでしょうか。

最初はそうですね。投資商品はいろいろとありますが、代表的な投資商品ということもあって興味がありました。

それと、一緒にラジオをしていた山田さんが、FX投資(外国為替保証金取引)で5,000万円の損失を出したという話を聞いて「怖い!」と思って。外貨は私にはまだ読みきれないと思ったのと、あとは伝説の投資家のウォーレン・バフェットさんの「よく知らないものには投資しない」といった姿勢に影響を受けたこともあって、イメージを持ちやすい株式投資をしていましたね。

駆け出し時代は不安で「現金貯金」一択だった

ーーお話を聞いていて、浅野さんは投資や資産形成に積極的な印象を持ちましたが、声優デビュー当初、20代の頃はどのようにお金と向き合ってきたのでしょうか。

私は23歳のときに声優としてデビューしたのですが、自分がこの仕事で長くやっていけるのか当時は全然分かりませんでした。声優って、必死にがんばっても簡単に振り落とされてしまう世界。

なので20代の頃はずっと「この仕事で食べていけるんだろうか」という不安がつきまとっていました。

だからそのときは、投資がどうっていうよりは、まずは稼いだお金を貯蓄しておいて、万が一仕事がなくなったときにもある程度の年月を食べていける状態にしておかなくちゃ! というマインドで。

ーーいつ仕事がなくなるか分からない状態だと、投資をする余裕なんてなさそうですね……!

あさのますみ

そうなんです。だって声優業で収入が一番少ないとき、1カ月で6,000円くらいの収入だったんですよ(笑)。

私は実家が貧しかったので、両親の存在もずっと心に引っかかっていました。声優として私がどうにか独り立ちできたとしても、両親が病気になったりして急に援助が必要になったら私も共倒れになってしまうかもしれないと思って。

だから「家族みんなを助けられるくらいの額」という目標の金額を立てて、長らく現金貯金に励んでいました。

ーーまずは貯蓄から、ですね。ラジオ番組が始まる頃にはすでに投資への興味もあったようですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

30代後半の頃、先ほど言った「目標の貯金額」を貯めることができたのが大きいです。

本当は40歳くらいまでに貯められたらいいなと思って設定した額だったのですが、30歳ごろから「あさのますみ」という名義で文筆業も始めたこともあってか、想定より早く到達することができました。声優一本だと何かがあったときに取り返しがつかないから、もうひとつくらい別の仕事を持ちたいなという考えもありましたが、思ったよりもうまくいって。

ラジオが始まる少し前なので、37歳くらいかな。そのあたりから、貯金は貯金として置いておいて、それを超えて稼いだ分は投資をしてみてもいいのかなと考えるようになりましたね。

積極的な投資は「お休み中」。その理由は?

ーー実際に投資を始めた結果、非常に幸先の良い投資デビューだったと思うのですが、2023年現在は株式投資をしておらず、また、持っていた証券口座のひとつを解約したと聞いています。こちらは、なぜでしょうか?

株式投資だけじゃなく、実は投資全般から今は身を引いているんです。

あさのますみ

ーー 投資全般から……なぜでしょうか? 

投資を始めてから株以外の投資商品を購入するなどしていたのですが、ヒヤリとすることが何度かあって。

投資を始めてすぐの頃、定期預金の金利があまりに低過ぎるので、限りなくリスクが少ないけれど、定期預金よりは利率がいい投資ってあるのかなと思って、「定期預金の代わりになるような投資はないか」と証券会社の方に相談してみたんです。

すると、社債(債券)を提案してもらって。安定しているしリスクも大きくないし、実際に始めてみたところ割とバックがあったので、いいなと思ったんです。

しばらくして購入した社債の満期を迎えたので、同じように「定期預金よりは少しいいけど、放っておいていい、リスクの低い投資商品」を聞いたら、今度は外貨をすすめられて。私は先ほど言ったように外貨はまだ早いと思っていましたし「大丈夫なのかな」と不安だったんですが、証券会社の担当者といろいろ話した結果、それを買うことにしました。するとその外貨が暴落してしまって……。

ーーそれは怖いですね……!

しかも、私はこの投資分を「定期預金の代わり」で始めたので、元々考えていた「貯金を超えた投資分」のお金ではなくて「家族や自分に何かあったときのために貯金していたお金」の半分をここに使ってしまったんです。結構な額だったし、大切なお金だったので、毎日証券口座を見ては「なんで投資しちゃったんだろう」と落ち込む日々でした。結局、何年か保有して結果的にはマイナスを防ぐことはできたのでよかったですが。

あさのますみ

これを機に、証券会社の方に頼るのはもちろんいいけれど、私自身が知識をつけてから相談しなくてはいけないと思いました。そうじゃないと、「あの人がいけるって言ったのに」とか「あの人がああ言ったから」って、人のせいにしちゃうと思って。投資は、最後は全て自己責任になる世界なんだなあと痛感しましたね。

今は、このときの暴落がまだトラウマになっていて、立ち直る期間として投資はお休みしているんです(笑)。

ーーそうだったんですね……! 確かに、頼りきりにならないようにする、というのは一番大事なことなのかもしれませんね。当時を振り返ったとき、どういった知識や認識、判断基準を持った上で証券会社の方に相談しておけばよかったと感じますか。

証券会社の人は投資仲間でもなければ私の先輩でもない。また、お得な情報を教えてくれるスペシャリストでもないんですよね。当たり前ですが、投資には必ずリスクがある。これを念頭に、提案されたものには必ず自分でもリターンだけでなくリスクも調べて、自分の頭で判断することが絶対に必要だと、今は考えています。

今はとにかく、堅実に。iDeCoや小規模企業共済で

ーー成功も失敗も経た浅野さんですが、今はどのようにして資産形成・資産運用をされているのでしょうか。

今はできることを地道にやろうと思っています。

まずは、小規模企業共済を積み立てています。これは、自営業の人たちの退職金の代わりになるようなもの。ラジオが始まったときに山田さんに勧められて、所得控除になるのでやっています。たまに今の積み立て金額のお知らせが来るんですけど、それを見るたびに「これが私のことをいつか助けてくれる」と思いますね。

あと、先ほど投資はお休みしていると言いましたが、iDeCoは続けています。それと、ふるさと納税もやっています。ふるさと納税は、夫の分も私が選んでいて(笑)。ほしいものリストを作るのも、楽しみのひとつです。

ーーいつもSNSでふるさと納税のおかずが入った朝ごはんをアップしていて、とてもおいしそうです。

そうなんです。返礼品は食べ物に全振りしてますね(笑)。松阪牛とか普段買わないですから、そういうのが届くのが楽しくて。

あさのますみ
ふるさと納税で届いたお肉を使った朝食(写真提供:浅野真澄さん)

あとは、寄付金控除の制度を使ってNPO団体に寄付もしています。私は動物の保護団体に寄付していて。これも夫を巻き込んで、「この団体に寄付するのどう?」と言って相談をして一緒にやっていますね。

ーー堅実な資産運用、節税対策をいろいろとしているんですね。

最近、私は生活のリズムが立てづらい職業だということに改めて気付いたんです。何かを創作したり、声優の仕事がすごく忙しくなったりすると、どうしても投資から頭が遠ざかってしまう

だから、そういう自分でも続けられる投資って、ハイリスクなものじゃなくて、地道にできるものなのかもしれないと思うようになりました。

投資を始めてすぐの頃は、短期間で株を売り買いするのも好きで、面白いなとも思っていましたが、ずっと張り付いて見ていなきゃいけないとか、このタイミングを逃したらマイナスになる……みたいなものは、できる時期もあるけど一生を通してはできない。今思えば、昔やっていたのは投資ではなく投機に近かったなと。

自分に向いている投資や資産運用の仕方ってなんだろう? ということは、ずっと考えているテーマですね。

“フラットな情報”に触れよう。最後に信じられるのは自分自身

ーーいろいろな経験をしている浅野さんだからこそ思う、投資や資産運用の初心者の方に伝えたいことはありますか?

全然投資をしたことがない人が投資を勉強しようとしたときに、「100万円を1カ月で貯める方法」みたいな、いかにも成功しなさそうな情報を得てスタートしようとする人も少なくないと思うのですが、なんでそこから始めるの? ってツッコミたくなりますね(笑)。

キャッチーで極端な主張の本が世の中にはたくさん売られています。でも私はいつも、なるべく“フラットな情報”を手にしたいなと思っています。もちろん誰かや何かのバイアスが完全にかかっていない情報なんてないと思うんですけど。

ーー“フラットな情報”……例えばどんなところから情報収集をしていますか?

パソコンを立ち上げたときに、日経新聞とウォール・ストリート・ジャーナルが開くように設定をして、見出しだけでも流し読みしてチェックするようにしています。あとはNHKオンデマンドや『Newsモーニングサテライト』を見て、そこで取り上げられた会社を調べてみるとか。

もちろんテレビや新聞が「完全に“フラット”か」と言えばそうじゃないかもしれませんが、少なくともSNSや掲示板などに書かれている「次はこの投資がくる!」といった、どこの誰か分からない人が発信した情報には触れないようにしていますね。

あとは、FPの資格を取る勉強をすることもオススメです。「増やす」方向だけに目を向けるのではなくて、自分の資産を「守る」方向性というのでしょうか。金融に関する広くて浅い知識をベースとして持ってみるのはいいと思います。

あさのますみ

ーーありがとうございます。最後に、浅野さんにとって「お金」とはどういう存在かを教えてください。

お金は、私にとっては「自由」と直結しているものだと思います。全然お金がない家で育った子ども時代は、短い紐で柱に繋がれているような感覚でした。どこにも行けないし、何の選択肢もない。だけど、お金があるといろいろ選ぶことができます。やりたいと思ったこと、欲しいと思ったものを選べる自由が手に入る。

お金の話になると、汚いものだったり怪しいものだったり、ネガティブに思う人もいるかもしれません。だけど、私は選択肢が広がる、自由と直結しているいいものだと思うので、お金の話をもっと積極的にしてもいいんじゃないかなと思っています。

私たちは経済活動から離れて生きることはできません。今は積極的な投資をストップしていますが、私はお金のことを一生勉強していきたいし知っていきたい。目を背け続けることはできなくて、どこかで対峙することになると思うので、だったらそれって早い方がいいんじゃないかなと考えています。

そろそろ立ち直って、2024年1月からスタートした新NISAの勉強からもう一度、そして証券口座をまた探すところから始めようかなと思います!

取材・文:あかしゆか
撮影:安井信介
編集協力:野村英之(プレスラボ)
編集:はてな編集部
ヘアメイク:村松亜樹

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