アメリカ利下げ日銀は利上げで2025年1月の住宅ローン金利はどうなる?専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
市場ではトランプ氏の再選による影響が一通り収まったタイミングですが、12月17日18日にはアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会:米国の金融政策を決めるための会合)、18日19日には日銀の金融政策決定会合で両国の政策金利が決定されるというイベントが控えています。
アメリカは0.25%の利下げ、日銀は0.25%の利上げを予想する投資家が多く、これを織り込んで為替は円高ドル安方向へ振れています。
また日銀の利上げは民間銀行の提供する金融商品の金利を引き上げる方向に働きます。
預金の金利が上がるのは良い面ですが、住宅ローンの金利にも上昇圧力がかかってきます。
こちらは2024年12月から2025年1月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 2024年12月参考(※) | 2025年1月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.86%~ | 横ばいで推移 |
民間の長期固定金利 | 1.7%~2.5%台 | 上昇傾向 |
20年固定金利 | 1.5%~1.9%台 | 上昇傾向 |
10年固定金利 | 1.0%~1.3%前後 | 上昇又は横ばい |
変動金利 | auじぶん銀行とPayPay銀行が下げた | 新たな利用者限定で金利を下げる動き |
※12月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2025年1月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2024年12月7日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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日本の政策金利は今後0.75%の上げ代がある
こちらは2008年5月から2024年11月までの日米の短期政策金利の推移です。
2008年秋のリーマンショックによって日米ともに金利を下げてゼロ金利政策をとりました。しかしその後の展開は全く異なります。
アメリカではITバブルによって利上げ、2019年のコロナショックによる利下げ、コロナバブルによるインフレを抑え込むための利上げ、そして2024年9月からは景気後退を防ぐための利下げに現在に至ります。
これに対して日本は約17年間利上げできず、むしろマイナス0.1%にまで下げ、2024年7月に0.25%へ利上げを達成したばかりです。
日本の政策金利の振れ幅はアメリカと比較して非常に小さく、その変動のサイクルも長いものになっています。
その主な理由は、政策金利を極限まで下げたマイナス状態でも日本経済が長い期間デフレが続き、政策金利をこれ以上下げられない状態が続いていたためです。
これは正常な状態ではないので、日銀の植田総裁は今後、政策金利を上げたり下げたりすることで物価の安定を図る正常化を目指して、いったん政策金利をあるべき水準まで上げようとしているのです。
そのあるべき水準とは「中立金利」というもので、景気を熱しも冷やしもしない、経済に対して中立的な水準であると言われています。
日銀の試算によるとこの中立金利は1.0%~2.5%くらいの範囲にあり、早ければ2025年度後半に1.0%の水準まで段階的に利上げしていく考えを公表しています。
現時点で政策金利は0.25%ですから、あと0.75%の上げ代が残っていることを意味しますね。0.75%の上げ代は住宅ローンの変動金利の今後の上がり代でもあると言われています。
日銀の利上げに反して住宅ローンの変動金利は利上げ前を維持
日銀は2024年7月に政策金利を0%から0.25%に引き上げました。住宅ローンの変動金利も同じ幅で上がっても良かったのですが、実際には銀行によって対応に差が生まれています。
千日太郎の金利予想記事では利上げ前から予想していたことですが、抜け駆けして変動金利の上昇を抑える銀行があり、その傾向が広がってきています。
最初に金利の上昇を抑えたのがメガバンクの三菱UFJ銀行です。
既存顧客に対する変動金利の引き上げは0.15%と政策金利の引き上げ幅よりも小幅に抑え、さらに新規顧客向けに対しては金利引き上げ無し、つまり利上げ前の水準に据え置いています。
これに対して大きく上げているのは利上げ前にトップレベルの低金利を誇っていたauじぶん銀行や住信SBIネット銀行なのですが、基準金利の上げ幅は政策金利と同じ0.25%とし、新規顧客向けには金利の引き上げを0.15%に抑えるという措置をとっています。
多くの銀行に共通しているのは、既存顧客向けの金利引き上げ幅よりも、新規顧客向けの金利引き上げ幅を小さく設定していることです。
特に新規顧客向けの金利を低く抑える傾向は利上げ直後から徐々に拡大傾向にあります。
11月にはりそな銀行が新規顧客に対して変動金利タイプの適用金利を0.1%下げました。
また、SBI新生銀行は基準金利を0.15%上昇させましたが、新規顧客向けの変動金利タイプについては上昇を0.01%に抑えました。
12月にはPayPay銀行とauじぶん銀行がいったん上げた金利を新規顧客向けに下げる対応をとっています。
ただし、このような金利を利上げ前に据え置こうとする動きは変動金利タイプにのみ見られ、固定金利タイプについては多くの銀行で長期金利に連動するという建前を維持しています。
民間銀行は利上げに備えて預金者を集めるフェーズにある
日銀は、前述のように今後利上げを展望していく立場なのですが、民間銀行は利上げに対抗しているかのように見えるのですが、実態としては日銀の利上げに備えて預金者を集めるフェーズにあると見ています。
伝統的な銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが利益の源泉です。
融資金利だけ上げても預金のボリュームが少ないと早い段階で頭打ちになると考えます。低金利で調達する預金が銀行の利益の上限を決めるといっても過言ではありません。
銀行としては、まずは預金利息に魅力を感じてもらって多くの預金を集め、しかる後に利上げした水準でどんどんお金を貸すことでドンドン儲かると考えるわけです。
PayPay銀行は12月から普通預金の金利キャンペーンを開始しています。
ドル預金と半々で預けた場合にそれぞれの預金を2%にするという驚きの内容ですが、これは日銀がさらに利上げしていくことを想定して、より多くの利益を得るための預金集めキャンペーンです。
住宅ローンの変動金利を低金利に抑えるのも、住宅ローンを入口として預金者を集めようとする動きなのです。
そのため、新規顧客向けに対してのみ変動金利を低金利に抑える動きになるのですね。これは金利ある世界への過渡期に特有のものです。
まだまだ変動金利が銀行の主力商品であり、住宅ローンの利用者から安定した預金の獲得を狙っている状況にあると見ています。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2025年1月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2025年1月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
2024年12月7日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2025年1月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年8月から12月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。
(機構債発表日) | 8月金利 (7月19日) | 9月金利 (8月22日) | 10月金利 (9月19日) | 11月金利 (10月18日) | 12月金利 (11月20日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 1.03% | 0.87% | 0.82% | 0.96% | 1.05% |
機構債の表面利率 | 1.34% | 1.17% | 1.16% | 1.27% | 1.35% |
フラット35 | 1.85% | 1.82% | 1.82% | 1.84% | 1.86% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしこのグラフによると、長期金利が上がっても下がっても、フラット35の金利がほぼ横ばいで推移しています。
住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向が続いているのです。
今後の長期金利については、日米中央銀行の会合というイベントを控えており、それによって変動する可能性がありますが、これまで同様にフラット35の金利については変動が抑えられると想定し、1月のフラット35の金利については12月とおおむね横ばいで推移すると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
3月のマイナス金利政策解除後は全体的に上げる銀行が多かったのですが、8月から9月にかけては多くの銀行が長期金利の低下に伴い0.1~0.2ポイント下げました。
その後は長期金利の上昇に伴って上昇を続け、12月もトランプトレードによる長期金利の上昇で大幅な上昇となっています。
マイナス金利政策の解除後は、上がったり下がったりの繰り返しなのですが、下がる月の下がり幅よりも上がる月の上がり幅の方が大きく、右肩上がりの傾向となっています。
今後については、日米中央銀行の会合によって上下どちらにも振れる可能性はあるのですが、2025年1月にはトランプ氏の大統領就任を控えて長期金利が上がりやすい状況にあり、住宅ローンの固定金利にも上昇圧力がかかると考えられます。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定については2023年まで複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、利上げ後も横ばいを続けていたのですが12月から上昇へ転じました。
そのため2025年1月の20年固定金利は超長期固定金利と同様に上昇傾向が続くと見ています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行が変動金利に次いで主力としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
さらに固定期間が比較的短いこともあり、固定金利タイプの中では変動金利に近い低金利となることもあります。
その代わり、その時々の銀行の営業方針や金利の展望によって、大きな振れ幅で上がったり下がったりしやすい金利タイプでもあります。
日銀の利上げ後は、おおむね右肩上がりの緩やかな上昇傾向となっており、12月にはトランプトレードによる長期金利の上昇を反映して大幅に上がりました。
ただし、10年固定は変動金利と超長期固定金利の折衷案として一定の需要があり、低金利に抑えようとする傾向もあります。
日銀が12月の会合で追加の利上げを行うとすれば上昇、日銀が利上げを見送れば横ばいで推移すると見ています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。前述のように2025年度後半に1%まで利上げしていくことが示唆されています。
12月の会合で追加の利上げ行われるか、この記事を書いている時点では未定ですが、2025年度後半と言う時期と1.0%という水準に変更は無いだろうと思います。
民間銀行の傾向としては3月の住宅ローン実行のかき入れ時が近づいていることと、前述のように新規顧客向けの変動金利を上げない、又は下げる動きが多くの銀行に波及してくる可能性があります。
まとめ~2025年はトランプ大統領の就任
2025年1月には再選を果たしたトランプ氏が大統領に就任します。
日銀の植田総裁は11月の日経新聞社の独占取材で、トランプ政権がどのような経済政策を行うかについて『大きなクエスチョンマークがある』と警戒感をにじませており、今年までとは明らかに違う環境になってくることが予想できます。
そのため、12月は利上げして影響無さそうな最後のタイミングかもしれないこともあり、個人的には利上げの可能性が高めであると見ています。
トランプ大統領がこれまでにない政策を実行することによる影響は、金融市場を通じて私たちにも影響します。
住宅の購入契約の時点で最低一つの住宅ローンで本審査を通し、契約を行うことになりますが、引き渡しと住宅ローンの実行までには数か月のタイムラグがあります。
その間に市場に大きなショックを与えるような事件が起こることは十分に有りうるのです。
購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。