
トランプ大統領誕生で長期金利は高どまり2025年2月の住宅ローン金利はどうなる?専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
トランプ氏の大統領就任は1月20日ですが、就任前から掲げている輸入品への一律関税を実現するため緊急事態宣言を検討していることが報じられると米長期金利は上昇し、日本にも波及しています。
トランプ次期大統領の関税強化がインフレ再燃につながるとして、FRBは当初4回と見込んでいた2025年の利下げ回数を2回に減らしており利下げに慎重姿勢を示しています。
これに対して日銀は2025年の追加利上げ姿勢を維持していることから、日本の10年国債利回りは節目の1.1%を上回り2011年6月以来、およそ13年7か月ぶりの高水準となりました。
こちらは2025年1月から2025年2月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 1月予想参考(※) | 2月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.86%~ | 横ばいで推移 |
民間の長期固定金利 | 1.7%~2.5%台 | 上昇傾向 |
20年固定金利 | 1.5%~1.9%台 | 上昇傾向 |
10年固定金利 | 1.0%~1.4%前後 | 上昇又は横ばい |
変動金利 | 横ばい | 新たな利用者限定で金利を下げる動き |
※1月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2025年2月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2025年1月11日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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2025年世界の10大リスクはトランプリスク
地政学リスクを専門に扱うアメリカのユーラシア・グループが2025年の世界の「10大リスク」を発表しています。
- 深まるGゼロ世界の混迷
- トランプの支配
- 米中決裂
- トランプノミクス
- ならず者国家のままのロシア
- 追い詰められたイラン
- 世界経済への負の押し負け
- 制御不能なAI
- 統治なき領域の拡大
- 米国とメキシコの対立
トップリスクにあげた「Gゼロ」は大国によるリーダーシップの空白です。
「世界の警察官」「自由貿易の擁護者」はかつてアメリカが担っていたポジションですが、トランプ政権はこれを望んではいません。第一次政権よりも増した数の力を背景に「アメリカ・ファースト」を推し進めようとしています。
ならず者国家が勢いづき、事故、誤算、紛争の可能性が高まるだろう。世代を超えるような世界的危機、さらには新たな世界大戦が発生するリスクは、私たちが生きてきた中で見たことがないほど高まっている。
2位は「トランプの支配」です。
トランプ次期政権のメンバーにはFBI長官にFBIを批判してきた元側近を指名するなど、適性を疑問視されるトランプ氏に忠実な人物が起用されています。トランプ大統領に対する行政権力の監視や法の支配が弱体化する危険があるというのです。
3位は「米中決裂」です。
米中対立が一段と激化して、トランプ氏が公約した追加関税は穏健なものにとどまったとしても、中国のレッドラインを超えることになるだろうと予想しています。
4位は「トランプノミクス」です。
トランプ氏の政策は今年、インフレ率の上昇と成長の減速により、経済の強さを損なうことになると予想しています。
5位は「ならず者国家のままのロシア」。
ウクライナで停戦が成立する可能性が高いものの、ロシアは今年、米国主導の世界秩序を弱体化させる政策をさらに推進すると予想しています。トランプ氏は大統領選挙で自分が当選すれば24時間以内にウクライナ戦争を終わらせると豪語していましたが、その後6か月欲しいと前言を撤回しています。
これらの上位リスクには直接、間接に何らかの形でトランプ氏が原因となっています。
もうトランプリスクだと言っちゃってもいいのではないでしょうか?
コロナのパンデミックに匹敵する市場の反応
一人の人物がここまで世界のリスクに関わるのは類のないことですが、市場にもトランプリスクの兆候が色濃く出ています。
こちらはトランプ氏が再選を果たした2024年11月7日から直近までの米ダウ平均株価と米長期金利の推移をグラフにしたものです。

赤い印をつけているのは株価が下がると同時に長期金利が上がる動きを見せているポイントです。
株価と長期金利を同じグラフ上に表示させると「X」の形で交差します。これはちょっと珍しい動きなのです。
通常は市場でリスクが意識されるとリスク資産である株式が売られ、安全資産である債券が買われます。
これによって株価が下がり、債券価格が上がることで債券の利回りが下がり長期金利は下がります。つまり株価も長期金利も下がる動きになるため、グラフが交差することはほとんど無いのです。
つまり「X」の形で株価が下がって長期金利が上がるということは、安全資産とされる債券も売られて債券価格が下がっていることを意味します。
これと同じことが2020年3月の新型コロナウイルスによるパンデミックでも起こりました。投資家のリスク回避が行きすぎて安全資産とされる債券まで売りに走ったために、債券価格が下って長期金利が上がるという現象なのです。
新型コロナウイルスのパンデミックは世界レベルのリスクでしたから、国債によってリスクを軽減できないわけですね。
トランプリスクがこれに匹敵するものだと市場が身構えていることは、前述したユーラシア・グループの「10大リスク」を見れば頷けます。
住宅ローンの固定金利は上昇し変動金利は利上げ前を維持
2025年はトランプ氏による世界レベルのリスクが顕在化していくフェーズにあるため、長期金利は上昇傾向が続くものと見ています。長期金利は住宅ローンの固定金利タイプに影響します。
固定金利タイプについては多くの銀行で長期金利に連動するという建前を維持しているため、後述するフラット35を除いて固定金利タイプは上昇傾向となるでしょう。
これに対して変動金利タイプは日銀の政策金利の影響を受けます。
日銀は早ければ2025年度後半に政策金利を1.0%の水準まで段階的に利上げしていく考えを公表しています。
現時点で政策金利は0.25%ですから、あと0.75%の上げ代が残っていることを意味しますね。
0.75%の上げ代は住宅ローンの変動金利の今後の上がり代でもあると言われています。
ただし、これまでの変動金利の上げ幅は銀行によって対応に差が生まれています。
まずメガバンクの三菱UFJ銀行は、新規顧客向けに対しては金利引き上げ無し、つまり利上げ前の水準に据え置き、既存顧客に対する変動金利の引き上げは0.15%と政策金利の引き上げ幅よりも小幅に抑えています。
これに対して大きく上げているのは利上げ前にトップレベルの低金利を誇っていたauじぶん銀行や住信SBIネット銀行です。
基準金利の上げ幅は政策金利と同じ0.25%とし、新規顧客向けには金利の引き上げを0.15%に抑えるという措置をとっています。
多くの銀行に共通しているのは、既存顧客向けの金利引き上げ幅よりも、新規顧客向けの金利引き上げ幅を小さく設定していることです。
特に新規顧客向けの金利を低く抑える傾向は利上げ直後から徐々に拡大傾向にあります。
2024年11月にはりそな銀行が新規顧客に対して変動金利タイプの適用金利を0.1%下げました。
また、SBI新生銀行は基準金利を0.15%上昇させましたが、新規顧客向けの変動金利タイプについては上昇を0.01%に抑えました。
2024年12月にはPayPay銀行とauじぶん銀行がいったん上げた金利を新規顧客向けに下げる対応をとっています。
民間銀行は利上げに備えて預金者を集めるフェーズにある
日銀は、前述のように今後利上げを展望していく立場なのですが、民間銀行は日銀の利上げに備えて預金者を集めるフェーズにあると見ています。
伝統的な銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが利益の源泉です。
融資金利だけ上げても預金のボリュームが少ないと早い段階で頭打ちになると考えます。低金利で調達する預金が銀行の利益の上限を決めるといっても過言ではありません。
銀行としては、まずは預金利息に魅力を感じてもらって多くの預金を集め、しかる後に利上げした水準でどんどんお金を貸すことでドンドン儲かると考えるわけです。
住宅ローンの変動金利を低金利に抑えるのも、住宅ローンを入口として預金者を集めようとする動きなのです。
そのため、新規顧客向けに対してのみ変動金利を低金利に抑える動きになるのですね。これは金利ある世界への過渡期に特有のものです。
まだまだ変動金利が銀行の主力商品であり、住宅ローンの利用者から安定した預金の獲得を狙っている状況にあると見ています。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2025年2月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2025年1月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
2025年1月11日までの公開情報を前提とした予想になります。
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年9月から2025年1月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。

(機構債発表日) | 2024年9月金利 (2024年8月22日) | 10月金利 (9月19日) | 11月金利 (10月18日) | 12月金利 (11月20日) | 2025年1月金利 |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.87% | 0.82% | 0.96% | 1.05% | 1.07% |
機構債の表面利率 | 1.17% | 1.16% | 1.27% | 1.35% | 1.36% |
フラット35 | 1.82% | 1.82% | 1.84% | 1.86% | 1.86% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしこのグラフによると、長期金利が上がっても下がっても、フラット35の金利がほぼ横ばいで推移しています。住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向が続いているのです。
今後の長期金利については前述したように上昇傾向と見ていますが、これまで同様にフラット35の金利については変動が抑えられると想定し、2月のフラット35の金利についてもおおむね横ばいで推移すると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
1月の民間の超長期固定金利タイプについてはトランプリスクによる長期金利の上昇を反映して金利を上げた銀行と、預金をしてくれる顧客獲得のためにあえて金利を下げた銀行に分かれました。
2024年後半からのマイナス金利政策解除後の傾向としては、各銀行で上がったり下がったりの繰り返しなのですが、下がる月の下がり幅よりも上がる月の上がり幅の方が大きく、全体的には右肩上がりの傾向となっています。
長期金利は上昇傾向が続いており、2025年1月20日トランプ氏の大統領就任後も上昇傾向は続くと見られ、住宅ローンの固定金利にも上昇圧力がかかると考えられます。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定については2023年まで複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、利上げ後も横ばいを続けていたのですが2024年12月にはとうとう上昇しました。
2025年2月の20年固定金利は超長期固定金利と同様に上昇傾向が続くと見ています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行が変動金利に次いで主力としている金利タイプです。
営業方針から、長期金利に反して下がることも期待できる商品です。さらに固定期間が比較的短いこともあり、固定金利タイプの中では変動金利に近い低金利となることもあります。
その代わり、その時々の銀行の営業方針や金利の展望によって、大きな振れ幅で上がったり下がったりしやすい金利タイプでもあります。
日銀の利上げ後は、おおむね右肩上がりの緩やかな上昇傾向となっており、今後も上昇傾向がつづくと予想しています。
ただし、10年固定は変動金利と超長期固定金利の折衷案として一定の需要があり、低金利に抑えようとする傾向もあります。
日銀が1月の会合で追加利上げをすれば上昇、日銀が利上げを見送れば横ばい又は下がる可能性もあると見ています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受け、その日銀は今のところ2025年度後半に1%まで利上げしていく方針を維持しています。
2025年1月の会合で追加の利上げ行われるか、この記事を書いている時点では未定ですが、2025年度後半と言う時期と1.0%という到達点に今のところ変更は行われないと見ています。
民間銀行の傾向としては3月の住宅ローン実行のかき入れ時が近づいていることと、前述のように新規顧客向けの変動金利を上げない、又は下げる動きが多くの銀行に波及してくる可能性があります。
まとめ~2025年はトランプリスクの年
トランプ氏は大統領就任前ですが、関税をかけるために緊急事態宣言を検討していることだけではありません。
しばし沈黙を守っていたアメリカのトランプ次期大統領は1月の記者会見で「デンマーク領のグリーンランドを購入したい」、「パナマ運河のアメリカへの返還を求める」、「カナダは51番目の州に」、「メキシコ湾の呼称をアメリカ湾に」などと、領土拡張への野心を隠さず、これらの目的達成ために軍事的経済的威圧も辞さない姿勢を示しています。
トランプ氏が大統領になり、これらを実行に移す影響は、金融市場を通じて私たちにも影響します。
住宅の購入契約の時点で最低一つの住宅ローンで本審査を通し、契約を行うことになりますが、引き渡しと住宅ローンの実行までには数か月のタイムラグがあります。
その間に市場に大きなショックを与えるような事件が起こることは十分に有りうるのです。
購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。
この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。
民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。