トランプ再選と日銀の正常化政策は今後にどう影響するか?2024年12月の住宅ローン金利を専門家が予想
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こんにちは公認会計士の千日太郎です。
トランプ氏の再選によって米国では減税や規制緩和の期待が膨らみ、輸入関税引き上げや不法移民対策からインフレが再燃するとの懸念から市場は大きく揺れています。
日本の住宅ローンへの影響としては、米国のインフレ懸念からドル高円安に振れており、これに対する日銀の金融政策を通じて時間差で変動金利タイプに影響してくるでしょう。
また、長期金利の上昇は固定金利タイプには比較的ダイレクトに影響が出そうです。
こちらは2024年11月から12月にかけての主要銀行の住宅ローン金利予想となっています。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
金利タイプ | 11月参考(※) | 12月予想 |
---|---|---|
フラット35 (買取型) | 1.84%~ | 1.83~1.85%で推移 |
民間の長期固定金利 | 1.6%~2.4%台 | 上昇傾向 |
20年固定金利 | 1.3%~1.8%台 | 上昇傾向 |
10年固定金利 | 0.9%~1.2%前後 | 上昇傾向 |
変動金利 | りそな銀行が下げた | 下げる動きは他行に波 |
※11月の金利については参考として主要銀行の金利から、小数点第2位を切り捨て表示しています。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から2024年12月の住宅ローンの金利動向を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2024年11月11日時点のものを記載しております。最新の金利情報は必ず金融機関等の公式サイトをご確認ください。
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監修者イーデス編集部
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10月の日銀会合は利上げ見送りと『追加的な利上げを展望していく状況』
こちらは2024年7月1日から11月11日までの日経平均株価と長期金利の推移です。
7月31日の金融政策決定会合で日銀が政策金利を0.15%引き上げた後は、米国の景気後退懸念も重なって円高と株安がすすみ、8月5日にはブラックマンデーを超える史上最大の下げ幅となりました。
すぐに株価は戻ったのですが、その後日銀は利上げ発言を封印し、内外の市場動向やその背後にある海外経済の状況を丁寧に確認していくとして9月10月と連続して政策金利の据え置きを決めています。
10月会合では、8月の株安原因となったアメリカ経済のリスクが低下しているという見方が示されており、一方アメリカ大統領選挙に関連して『結果次第では市場が大きく変動する可能性が高いため、それに十分備えておくことも必要だ』など、大統領選挙を受けた市場動向を注視すべきとする意見も複数出ています。
今後の金融政策については『一時的に様子見したあと追加的な利上げを展望していく状況』という見方も出ており、今後の利上げをめぐっては積極的な立場と慎重な立場で議論が行われています。
トランプ氏の再選によって住宅ローンの変動金利に与えるであろう影響
トランプ氏の再選により、時間差で民間銀行の変動金利タイプが上がることになりそうです。
同氏が公約に掲げる減税と規制緩和は景気を浮揚させるものであり、国内産業を守るための輸入関税の強化と不法移民対策の強化は価格転嫁と人手不足を通じて物価の上昇につながります。
つまり、アメリカのインフレ再燃が懸念されるわけですね。
これを反映して為替はドル高円安に振れています。このまま円安が加速すれば、輸入価格の上昇を通じて国内の物価の上振れリスクが強まり、日銀が政策金利の引き上げを判断する材料になるのです。
日銀の中では利上げに積極的な立場と慎重な立場で拮抗しているようですが、今の政策金利が低すぎる点においては、意見が一致しているものと考えられます。
7月の利上げが150円円後半の円安となっていたことからすると、12月も為替を意識した決定が行われるでしょう。
政策金利の引き上げは民間銀行の短期プライムレート(短プラ)の引き上げにつながり、数か月の時間差で住宅ローンの変動金利の引き上げとなります。
11月には日銀に反して新規客向けの変動金利を下げる銀行が出てきた
11月の変動金利にはちょっとした異変がありました。
りそな銀行は9月から10月にかけて基準金利を0.15%上げたのですが、11月には新規客向けの変動金利タイプの適用金利を0.1%下げました。
これは基準金利からの引下げ幅を増やすことによるものですので、既存客の金利は下がらず0.15%上がったままとなります。
また、SBI新生銀行は11月に基準金利は0.15%上昇させていますが、新規客向けの変動金利タイプについては上昇を0.01%に抑えています。
つまり既存客の変動金利は0.15%の上昇となりますが、新規客は0.01%の上昇というわけです。
このような、既存客向けの変動金利を日銀の利上げに合わせて引き上げる一方で、新規客向けの変動金利をあえて上げない対応は三菱UFJ銀行が最初に行ったものですが、それに類似の対応を上記の2行が採用してきたということになります。
日銀は、前述のように今後利上げを展望していく立場なのですが、民間銀行は全く別の方向を向いているというのが面白いです。こうした状況は時代の変わる過渡期に特有のものでしょう。
まだまだ変動金利が銀行の主力商品であり、住宅ローンの利用者から安定した預金の獲得を狙っている状況にあると見ています。
なお、千日太郎は主要銀行の金利推移を分析し、毎月お勧めの住宅ローン金利タイプを紹介していますので、下記の記事も参考にしてください。
金利タイプ別2024年12月の金利予想
では、住宅ローンの各金利タイプ別に2024年12月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
11月11日までの公開情報を前提とした予想になります。
【金利タイプ別】
2024年12月の金利予想
公的融資フラット35の金利動向
下のグラフは2024年7月から11月までのフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移です。
オレンジの折れ線グラフは長期金利の推移であり、黄色の棒グラフがその機構債の条件公開のタイミングで決まったフラット35(買取型)の金利です。
(機構債発表日) | 7月金利 (6月21日) | 8月金利 (7月19日) | 9月金利 (8月22日) | 10月金利 (9月19日) | 11月金利 (10月18日) |
---|---|---|---|---|---|
長期金利 | 0.95% | 1.03% | 0.87% | 0.82% | 0.96% |
機構債の表面利率 | 1.28% | 1.34% | 1.17% | 1.16% | 1.27% |
フラット35 | 1.84% | 1.85% | 1.82% | 1.82% | 1.84% |
フラット35は下図のように独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。
しかしこのグラフによると、長期金利が上がっても下がっても、フラット35の金利がほぼ横ばいで推移しています。
住宅金融支援機構は非営利団体であるため急激な金利の上昇時は住宅ローンの金利上昇を抑える傾向があり、ここ最近は金利低下時も下げない傾向が続いているのです。
つまり今後の長期金利がこれまでと同じくらいの水準で推移していくとすれば、12月のフラット35の金利についてはこれまで同様に1.83~1.85%前後で推移すると予想しています。
民間の超長期固定金利の動向
3月のマイナス金利政策解除後は全体的に上げる銀行が多かったのですが、8月から9月にかけては多くの銀行が長期金利の低下に伴い0.1~0.2ポイント下げました。
しかし9月から11月にかけては多くの銀行で上昇に転じています。
マイナス金利政策の解除後は、上がったり下がったりの繰り返しなのですが、おおむね右肩上がりの緩やかな上昇傾向となっています。
目下の長期金利は米国の金利上昇の波及を受けて上昇傾向にあるうえ、トランプ氏再選によるインフレ再燃と12月の日銀追加利上げを警戒して、上げる銀行の方が多いと予想しています。
20年前後の長期固定金利の動向
20年固定については2023年まで複数の主要銀行で低金利競争が行われていたのですが、米国の利上げが始まったあたりから20年固定から撤退し、30年や35年固定金利と変わらない水準の金利で連動する傾向が強くなっています。
そのため12月の20年固定金利は超長期固定金利と同様に上げる銀行の方が多いと予想しています。
また、SBI新生銀行の住宅ローンの基準金利については、指標とする市場金利はなく銀行独自の判断によっており、必ずしも長期金利や短期政策金利などの市場金利と連動せず、SBI新生銀行の20年固定は12月も横ばいと予想しています。
10年固定金利の動向
10年固定金利は、各民間銀行が変動金利に次いで主力としている金利タイプで、競争によって下がりやすい傾向のある商品です。
さらに固定期間が比較的短いこともあり、固定金利タイプの中では変動金利に近い低金利となることもあります。
その代わり、その時々の銀行の営業方針や金利の展望によって、大きな振れ幅で上がったり下がったりしやすい金利タイプでもあります。
直近の動向では、上がったり下がったりの繰り返しなのですが、おおむね右肩上がりの緩やかな上昇傾向となっています。
目下の長期金利は米国の金利上昇の波及を受けて上昇傾向にあるうえ、トランプ氏再選によるインフレ再燃と12月の日銀追加利上げを警戒して、上げる銀行の方が多いと予想しています。
変動金利の動向
変動金利は、日銀が金融政策決定会合で決める短期政策金利の影響を受けます。
日銀が政策金利の据え置きを決めた9月の金融政策決定会合の主な意見が公開されており、その金融政策運営に関する意見のなかでは2025年度後半に1%まで利上げしていくことが示唆されています。
同じく据え置きを決めた10月の主な意見でも、2025年度後半と言う時期と1.0%という水準に変更はなく、引き続き日銀の姿勢に変更は無いということになります。
現在の政策金利は0.25%であり、1.0%まであと0.75%です。
一回の利上げが通常0.25%であることに鑑みれば2025年度後半までにあと3回利上げにチャレンジしようとしているわけですね。
11月には会合がありませんが、前述のように新規顧客向けの変動金利を引き下げるりそな銀行の動きが他行に波及すれば下げる銀行も出てくる可能性があります。
まとめ~トランプリスクと35年の住宅ローン
今のところは、トランプ氏の当選を想定したトランプトレード通りの展開が見られます。
また為替は円安に振れていますが、ある程度は織り込み済みであったこともあり、極端な動きにはなっていません。
しかし、金利や為替は極めて多くの要素が絡まり合って形成されるものであり、今後も想定通りに推移するという保証はどこにもありません。
住宅の購入契約の時点で最低一つの住宅ローンで本審査を通し、契約を行うことになりますが、引き渡しと住宅ローンの実行までには数か月のタイムラグがあります。
その間に市場に大きなショックを与えるような事件が起こることは十分に有りうるのです。
購入契約の段階で一つの住宅ローンだけ契約し、その後の情報収集を怠っていると、割高な金利で住宅ローンを借りることになるかもしれません。
この数か月の判断で35年間の毎月返済額が決まります。民間と公的融資、変動と固定など、複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておき、住宅ローンの実行月まではしっかり情報収集するよう努めてください。